個人事業主・フリーランスになりたての人が混乱することのひとつは、「確定申告」です。確定申告とは、1年間における収入と費用を計算して税務署に届け出ることをいいます。ひとつひとつの取引を生真面目に記録してコツコツと帳簿つけていくこともできますが、手間がかかります。このような背景もあり最近、個人事業主・フリーランスの確定申告の労力を大幅に削減する「クラウド会計ソフト」が大注目!3強といわれる「やよい」「マネーフォーワード 」「Freee(フリー)」を比較して、特徴と向いている人をまとめました。
そもそも確定申告って?
「確定申告」とは、1年間の事業の収支を税務署に届け出ることです。
本題に入る前に、確定申告の概要を簡単におさらいしておきましょう。
確定申告の対象になる人は?
会社員や公務員は、収入から税金が天引きされています。これを「源泉徴収」といいます。源泉徴収があるため、会社員や公務員が確定申告を自分で行う必要はありません。
一方、個人事業主・フリーランスは、事業の収支を自分で直接、税務署に申告します。個人事業主・フリーランスのうち確定申告の対象にならない場合は、所得が基礎控除の38万円を下回る場合です。
白色申告と青色申告の違い
個人事業主・フリーランスの確定申告には、2つの種類があります。
- 白色申告
- 青色申告
白色申告と青色申告の違いは、白色申告が「10万円」控除であることに対して、青色申告は「65万円」控除であることです。
個人事業主・フリーランスとして生計を立てていれば、65万円控除の青色申告を行うことが大切です。ですが、青色申告に必要な書類は作成することが難しく、大きな負担になっていました。しかし、クラウド会計ソフトが普及することによって、これらの常識がだんだん変化し始めています。
クラウド会計ソフトによる青色申告の負担軽減
青色申告で提出する書類は、以下のふたつです。
- 青色申告申請書
- 確定申告書B
クラウド会計ソフトを利用すると、①と②どちらの書類もオンラインでほとんど自動的に作成することができます。当然、日々の帳簿付けをする必要はありますが、それらをきちんと行うだけで済みます。
このようにして、クラウド会計ソフトの市場はどんどん規模が拡大しています。
クラウド会計ソフトとは?
今までの会計ソフトは、PCにインストールして情報を自社サーバーに保管する「インストール型会計ソフト」と呼ばれるものです。これに対して、「クラウド会計ソフト」は、ブラウザ上で操作を行い、他社サーバー(クラウド)に情報を保管します。
とはいえ、株式会社MM総研による「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2018年3月末)」のデータによると、会計ソフトを利用している事業者のうち75.5%が「PCインストール型会計ソフト」を利用しています。
「クラウド会計ソフト」は全体の14.4%に留まり、まだまだ主流とはいえませんが、これから、もっとシェアが広がっていくでしょう。
クラウド会計ソフトを利用する最大のメリットは、簿記(会計)に関する知識がほとんどなくても、わかりやすい操作方法にしたがって、誰でも簡単に帳簿をつけられることです。確定申告の時期にはこれらの帳簿から自動的に必要書類を作成することができ、便利です。
クラウド会計ソフト3つを比較、向いている人は?
クラウド会計ソフト市場は、3社が市場シェアをほぼ占めています。「やよい」と「マネーフォーワード 」、「Freee(フリー)」の3社です。これら3つのクラウド会計ソフトは、料金や機能などに、大きな違いはありませんが、プラン別の料金体系と無料キャンペーンを次の表にまとめました。
上の表で示したプランと料金体系を頭に入れつつ、それぞれのサービスに向いている人を考えてみましょう。
やよいの青色申告/白色申告 オンライン(ベーシックプラン)に向いている人
やよいの特徴は、サポートが手厚いことです。他のソフトでは、具体的な仕訳や経理の相談は、なかなか対応してくれません。しかし、やよいは幅広い問い合わせに、電話対応してくれます。クラウド会計ソフトを使うのが初めてで、人に相談しながら簿記の知識をつけていきたい事業者にはうってつけかもしれません。
マネーフォーワード(MF )クラウド会計/確定申告(パーソナル)に向いている人
マネーフォーワードの特徴は、堅実かつ柔軟なサービスを提供していることです。仕訳入力や書類作成がわかりやすく行うことができ、細かいところまで機能が作り込まれているため、ニーズに合わせて微調整可能です。
マネーフォーワードを操作するためには、やよいと同じように、最低限の簿記の知識が必要なため、簿記の学習をしたい事業者はマネーフォーワードを検討すると良いでしょう。
Freee(スタンダードプラン)に向いている人
Freeeのコンセプトは、「簿記の知識がなくても使える」です。そのため、言葉通りに簿記に関してまったくの無知、あるいは初心者を対象にサービスが作られています。
Freeeに向いている人は、簿記の知識をつける必要がなく、しかし確定申告をきちんと行いたい事業者です。他のソフトと違い、Freeeを利用する上で、簿記の「借方」と「貸方」の知識も必要ないため、これから簿記を学んでいこうとする人には、不向きかもしれません。
クラウド会計ソフトを比較してわかったこと
ここまでで3つのクラウド会計ソフトの特徴とそれに向いている人について、理解していただけたはずです。
クラウド会計ソフト市場におけるシェアを見てみましょう。前述の株式会社MM総研による「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2018年3月末)」のデータを再び引用すると、①やよい(55.4%)②マネーフォーワード(21.1%)③Freee(16,5%)です。やはり、「やよい」ブランドは、崩し難いところですね。
前述したように、3つのクラウド会計ソフトに大きな違いはありません。しかし、選ぶポイントはあります。まとめると、
- 簿記の知識への考え方
- UI/UXとの相性
- サポートの手厚さ
です。これら3つのポイントは、大事な要素となるのではないでしょうか? ただ、使ってみないとわからないところも多いと思いますので、余裕があればすべてを短期間使ってみて、判断することをお勧めします。クラウド会計ソフトは、これから長く付き合う相棒ですので、費用をケチって損をしないようにしましょう。
まとめ:クラウド会計ソフトを比較し始めたらキリがない
インターネットでクラウド会計ソフトを細かく比較しているサイトは山ほどあります。しかし、些細な違いをいくつも網羅的にあげて、良し悪しを論じても、結論は出ないのではないでしょうか。そこで、後半で述べたように「まず、使ってみる」ことを重視することをおすすめします。