正社員はどうなるの?〜同一労働同一賃金について考える〜

契約社員や派遣社員、アルバイトのみなさん、またはワーキングマザーなど制約のある人にとっては「待っていました!」の朗報です。それは、働き方関連法案の中のひとつ、同一労働同一賃金制。漢字ばかりでちょっと難しい制度のような感じがしますが、契約社員や派遣社員、アルバイトのみなさんの待遇改善に向けて、ようやく一歩前進となる施策です。

正社員で働いている人はピンとこない人も多いと思いますが、いわゆる非正規と呼ばれる立場の人は、「あの人(正社員)より働いているのにボーナスがない」「あの人(正社員)より長く働いているけど給料が上がらない」といった不公平、不平等な扱いに悔しく、悲しい気持ちでいっぱいなのです。

そんな不平等や不公平を変えていこうというのがこの制度で、これまでの雇用の構造を大改革する施策になるかもしれません。つまり、非正規社員と正規社員の待遇の差をなくしたらどうなるか?正社員はどうなるか?ということです。今回はこの同一労働同一賃金ついてご紹介したいと思います。

公平・平等を目指す「同一労働同一賃金制」

同一労働同一賃金とは同じの仕事(職種)に従事する労働者は、同じ水準の賃金が支払われるべきという概念。当たり前だろ!とツッコミを入れたくなりますが、(日本ではあまりありませんが)人種や宗教、国籍で報酬が差別されていた歴史があった欧米諸国では古くから注目されていたようです。

日本ではどうでしょうか。1986年に男女雇用均等法が施行されたのはご存知の人も多いと思いますが、その名の通り男女の差別を禁止するもので、雇用形態の差について言及されている法律ではありません。日本で、正規・非正規間の待遇の格差について問題にされ始めたのは2000年代後半から。それは、リーマンショックなどで非正規社員の割合がぐっと増えたタイミングです。

会社員といえば正社員がほとんどだったのが、非正規の割合が増えたことによって、あらゆる仕事が非正規に任されるようになりました。例えば、正社員が1人産休に入ったから契約社員が代わりに入るとか、正社員だけでは処理できない量だから派遣社員を増員するとか。もともと正社員が任された仕事を急速に非正規で賄うようになったことで、正規と非正規で担当する仕事に差はないのに、非正規だけボーナスがなかったり、有給休暇が少なかったり、昇給率が低かったり、雇用期間が定められていたりと待遇に大きな差が生まれ、同じ組織内で不公平・不平等が増していきました

ワーママになって分かった不平等感

正直、私も長らく正社員で働いていましたが、契約社員や派遣社員の皆さんの気持ちはわかりませんでした。というよりも、確かに2000年代前半までは、あまり周りにいなかったように思います。いたとしても、社員とは圧倒的に違う仕事や働き方をしていたので違和感はありませんでした。

2007年に第一子を出産した私は、そんな非正規で働く人たちの気持ちが初めて分かったのです。産休から復職した私は、10時から16時という時短勤務からスタートしました。所定の1日8時間労働より2時間(25%)減だったので、給与も相当分が少なくなりました。給与だけでなく、賞与まで25%のマイナスだったので、年収にしたらかなりインパクトがあったのを覚えています。「新卒入社の頃より、ずっと低いじゃん」という嘆きを超えた驚きがありました(私だけでなく、出産前より年収が激減したと驚く現象は、ワーママあるあるです)。

私が復職したタイミングで同じ部署のフルタイムの正社員が1人異動になりました。なので、その人の仕事を75%稼働の私が引き継いだわけですが、この不公平感お分かりでしょうか。働く時間も、それに伴って年収も新卒以下なのに、フルタイムで働いていた(産休前の私の年収同等の)人の仕事をまるまると受けることなった私。仕事の量と質は産休前同等を課せられたのに、年収だけ25%マイナスという状況です。なんとも言えない気持ちでした。

ちょうど時代はすぐにリーマンショックになり、同じ部署に契約社員や派遣社員といった非正規の人たちが増えていきました。彼らや彼女たちも、やはりフルタイムの正社員と差がない仕事をしていましたが、はっきりと違った待遇差がありました。それは、賞与がないということです。1回の賞与は、給与の1.5ヶ月から2ヶ月分が支給されていましたが、彼らはどんなに仕事を頑張ってもなしでした。驚くことに、半期の目標設定や評価があるにも関わらずです。正社員であれば、賞与の査定のための振り返りや評価と考えられますが、賞与もないのに目標へのコミットはどうするのでしょうか。もちろん、基本給のアップには繋がるかもしれませんが、もちろん賞与ほどの額には及びません。

このような環境を目の当たりにして、フルタイムの正社員のほうが“異常に”守られた、好待遇な立場だったことが分かったのです。日本は終身雇用の正社員が前提として何十年も過ごしてきました。定年まで働く正社員が当たり前で、大企業を中心に年功序列や賞与、福利厚生などの待遇は手厚いものとして確立されました。解雇規制もあり、日本の企業は正社員をクビにすることも基本的にはありません。個人にとって「正社員」はとても安定した、好待遇な働き方です。一方で企業からすると反対です。実績が良くても悪くても、年齢とともに賃金を上げなければならない、途中でクビにもできない人材は、かなりのリスクになります。

リーマンショックなどを経て企業はそのようなリスクを回避すべく、正社員の雇用を最低限に抑えて、パートや派遣、契約社員などの非正規社員を増やす方向にシフトしました。結果、“異常に”好待遇な正社員と、正社員ほどの待遇がない非正規とのギャップがどんどん広がり、国としても見逃せない問題になっていたのだと思います。

同一労働同一賃金制は、処遇平等に向けて、待遇が違うなら仕事内容の違いも明確にする、仕事内容が同じなら待遇を同じにするといったことが定められています。

正社員がいなくなったら…

雇用形態の格差、非正規雇用の増加、働き方の多様化、働き方改革…、このような傾向からわかること。私見も入りますが、将来的には正社員や非正規雇用などの雇用形態がなくなることを意味しているように思います。

前述の通り、正社員は終身雇用を前提として、定年まで安定した好待遇を受けていた雇用形態です。高度経済成長期からバブル期くらいまでの日本の大多数の労働者が正社員だった時代は問題ありませんでしたが、非正規が増えてきた今、正社員はある意味、特別扱いされた一部の限られた人たちになってしまいました。正社員になった人はその待遇や地位を守ろうとします。労働組合が良い例ですが、その待遇を手放したくないと抵抗するでしょう。しかし、日本はすでに超少子高齢化社会で、安定した待遇などはもはや風前の灯火です。

世界的に見ても日本の正社員はかなり特質です。フルタイム、パートタイムの違いはあっても、雇用形態の違い、ましてそれによる待遇の違いなどは、世界広しといえ、どの国にもない仕組みではないでしょうか。働き方の多様化といった流れで、フリーランスや副業を政府が推進していますが、これも終身雇用を前提とした正社員の終焉を見据えているのかなと考えています。

アメリカでは、「ギグ(Gig:単発の業務の意味)エコノミー」と言われるインターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態が進んでいるといいます。日本も同様に、正社員で一生に1社勤め上げるというキャリアから、それぞれの能力やスキルを活かしながらさまざまなプロジェクト(仕事)に参加するような、フリーランスで成り立つ社会になっていくのかもしれません。

まとめ

雇用形態がなくなるかもしれない。正社員がなくなるかもしれない。そんな大きなインパクトを与える可能性もある同一労働同一賃金制。ですが、施行されても、すぐに社会が変わることはないでしょう。

それほどに、今の正社員は守られた存在です。待遇を急に悪くすることもできないし、クビにもできない。法でがっちり守られている正社員は、企業だろうと、国だろうと、その聖域に手を出すことはなかなか難しいのが現状です。なので、これから非正規やフリーランスといった正社員以外の働き方を推進することでそれらの割合を増やし、徐々に正社員割合を減らしていくという変化になるのではないかなと考えています。

正社員は確かに待遇も良いですし、何より安定しています。来月には仕事がなくなるかもしれないといった心配は無用です。しかし、その一方で多様な組織で多様なスキルが身につけられるフリーランスや非正規の人たちとの経験値の差といったものは必ずあると思います。将来を見据えてさまざまな働き方に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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