みなさんはプロジェクトで失敗した経験はありますか。「納期に間に合わなかった」「成果物がクライアントの描いていたものと違った」「当初の予算からコストが大幅にオーバーしてしまった」などさまざまな失敗談があると思いますが、それはなぜ起きてしまったのでしょうか。ここでは、実際の失敗談を交えながら、プロジェクトを成功に導くための秘訣について見ていきたいと思います。
プロジェクトマネジメントの基本
まず、おさえておきたいのが、プロジェクトマネジメントの世界標準と言われるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)です。PMBOK(「ピンボック」と読みます)はプロジェクトマネジメントのノウハウや手法を体系立ててまとめたもので、1987年にアメリカの非営利団体PMIが(Project Management Institute)が発表してから、プロジェクトマネジメントのバイブルとして広く浸透してきました。
このPMBOKには3つのゴールとして、
Quality(品質)、Cost(原価)、Delivery(納期)
が定められており、そのゴールを達成するために必要な知識のエリアとして、
スケジュール管理、品質管理、組織管理、コミュニケーション管理、リスク管理、調達管理、ステークホルダー管理
などがあげられています。このようにプロジェクトマネジメントは、さまざまな角度から総合的にプロジェクト全体を管理をしていくことが求められるということがわかります。
PMBOKはあくまでコンセプトや考え方を示すものなので、実際には場数を踏んで経験を積んでいかなければいけませんが、プロジェクトマネジメントの理論を心得るという意味で参考にするのがよいと思います。
プロジェクト成功に導く3つのコミュニケーションスキル
プロジェクトは多角的な視点から管理をしていなかければなりません。その際に必要なスキルにはどのようなものがあるのでしょうか? 実際に成功しているプロジェクトに目を向けてみると、プロジェクトマネージャーに高いコミュニケーション力が備わっているということがわかります。ここではプロジェクトを成功に導くために必要なコミュニケーション力を3つのスキルに分類して紹介したいと思います。
①ニーズを引き出し、理解するためのコミュニケーションスキル
クライアントやユーザーがどのような成果物をイメージしているのかを具体的に描くために必要なコミュニケーションスキルです。相手からうまく情報を引き出し、それをまとめられるかがポイントです。これはプロジェクトが実際に始まる前段階のステップにおいてもっとも重要になります。このスキルが不足していると、お互いに違うイメージを描いたままプロジェクトが走り出してしまうという事態を招いてしまいます。
②状況変化に対応するためのコミュニケーションスキル
プロジェクトは生き物と言われますが、それだけ変化のある中で迅速に対応することが求められます。その状況に応じて、適切な判断のもと、チームメンバーやステークホルダーへ協力を仰ぐことができるコミュニケーションスキルが不可欠です。このようなコミュニケーションが不足してしまうと、次々と突然舞い込んでくるリクエストにメンバーからの不満が生じてしまうかもしれません。
③ロジカルなコミュニケーションスキル
プロジェクトを進めていると、クライアントやユーザーからさまざまなリクエストを受けることがあります。しかし全員のニーズを満たすことはスケジュールや予算などの観点から難しいといったときに、プロジェクトマネージャーはロジカルな交渉で相手を説得できなければいけません。このスキルが不足していると、変更事項を多く生じさせてしまい、プロジェクトメンバーを振り回してしまうといった事態になりかねません。
もちろんプロジェクトメンバー全員がこういったコミュニケーションスキルを身につけていることができれば理想ですが、現実的にはなかなか難しいところがあるでしょう。したがって、まずはプロジェクトマネージャーがお手本となってメンバーを牽引していくことが、プロジェクトの成功には不可欠だと思います。
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プロジェクトの失敗例
ここでは実際に起こったプロジェクトの失敗例を見ていきたいと思います。反面教師という言葉がありますが、同じ失敗を繰り返さないためにこういった失敗例もおさえておきましょう。
ケース1:クライアントのニーズと違った
営業ステータスを管理するアプリケーションの導入に関する失敗談です。プロジェクトチームはクライアント側の担当者とのミーティングを重ね、完成イメージを固めていきました。そのアプリケーションは、各営業マンが顧客情報と仕事の進捗情報を入力し、その情報をもとに営業マネージャーが管理するというような最終イメージで進めることが決まりました。
ところが、実際にアプリケーションの開発がスタートしてしばらく経った後で、実際にユーザーとなる営業マネージャーから、「営業マンをただモニターするのではなく、顧客情報から営業戦略を立て、顧客にアプローチができるようなものじゃないと、営業マンはアプリを活用しない」というフィードバックが受けてしまいました。すでに開発は最終段階に来ていたので、その後の修正には時間がかかり、さらに機能を追加したため当初の予算からもオーバーしてしまいました。
ケース2:ステークホルダーからのリクエストをまとめきれなかった
ある大きなイベントの企画・運営に関するプロジェクトでの失敗談です。プロジェクトリーダーは各ステークホルダーとのミーティングを重ね、イベントのスケジュール・全体案を固めるためミーティングを重ねました。しかし、それぞれのステークホルダーからは、自分たちの都合を優先した返事が返ってくることが多く、プロジェクトがなかなか前に進みません。そうこうするうちに、当初予定していたイベントスケジュールから大幅な遅れが生じてしまいました。
どちらのケースもコミュニケーション力が不足していたことから生じてしまった失敗談だと思います。最初のケースは、キーパーソンからのニーズの引き出しが足りていなかったこと、2つ目のケースはプロジェクトリーダーがただの聞き役になってしまって、複数のステークホルダーをうまく仕切ることができなかった点が大きく影響していると考えられます。このように、プロジェクトを成功に導くには、プロジェクトリーダーには高いレベルのコミュニケーション力が求められるのです。
「コミュニケーション力が鍵!? プロジェクトの成功と失敗の分かれ道とは?」についてのまとめ
プロジェクトリーダーの存在・役割はプロジェクトの結果を左右する大変重要なポジションです。リーダーには、ただメンバーを管理するだけではなく、プロジェクトを推し進めていけるようなコミュニケーション力が大切です。このコミュニケーション力はすぐに身につくものではなく、さまざまなプロジェクトにおいて経験を重ねながら学んでいくものだと思います。
もし、みなさんがプロジェクトを任せられた際には、ぜひ基本的な理論や過去の失敗談から学び、次の成功へとつながるような取り組みを行なってみてはいかがでしょうか。