実際に数字を見ても、働いている女性が妊娠とともに離職するという時代は終わったことが分かります。「平成29年度の雇用均等基本調査(速報版)」によると、育児休業取得者の割合は、女性が83.2%にのぼっていて、実にこの20年で2倍近い割合に増加。出生数自体は減っている一方で、どんなに保育園を増やしても増やしても入園枠が足りないというのも納得してしまう数字です。 そもそも保育園に入れるかどうか不安という気持ちから始まり、入れても仕事との両立に自信ないなど、育休から復職にかけて女性が感じる不安要素は限りなくたくさんあります。そこで今回は復職に向けてよくあるモヤモヤについてご紹介したいと思います。
いつまで休むべき? 復職タイミングの見極め方
待機児童の改善策として、国は育休の長期化に向けた方針を打ち出し、先進的な企業では、子どもが3歳になるまで育休が許されていたり、自治体によっては1歳未満の保育を認めず、認可保育園は1歳以上といった規定を設けていたりするところも出てきました。 女性個人も、育休に入るまでは仕事が第一優先で、なるべく早くに復職して仕事をバリバリしたいと思ってるいた人も、いざ出産してみると育児が第一となり、なるべく長く子どもと過ごしたい、自分の手で育てたいといった母性が出てくることもよくあることです。
最初に結論を言うと、どの程度の期間、育休を取ることが正解といった答えはありません。各個人の思い、優先順位、ライフスタイル、ワークスタイル、家族の状況などそれぞれで、いつまで休むのがベストとは言い切れませんが、現状、国で育児休業が認められている子どもの満1歳を軸に(育児休業は保育園入園の状況などにより、2歳まで延長可能ではありますが)、1歳未満と1歳以降に大雑把に分けて、それぞれ考えられるメリットとデメリットをご紹介したいと思います。
<子どもが1歳未満の復職>
メリット
- 月齢が低い赤ちゃんであればあるほど、ママと離れることに抵抗感がないため(まだママを強く認識する前に限る)、入園の際に大泣きで後ろ髪を引かれるといった状況になりにくい。赤ちゃんにとってもストレスになりにくい。
- 休職期間が数ヶ月という短さなので、復職が心理的にも実務的にもスムーズ。
- (自治体によるが)0歳児の保育園入園を受け入れをしている地域では、1歳児からの入園より0歳児のほうが格段に保育園に入りやすい(1歳児枠はかなり限られている)
デメリット
- 月齢の低い赤ちゃんは免疫力がまだ強くないことが多く、個人差はあるものの、しょっちゅう熱を出すなどの体調不良に(毎週熱を出すのも珍しくないと言われるほど)。ゆえに、復職したはいいけれど、まともに出勤できず肩身の狭い思いをすることも。
- リアルタイムでの認識は難しいが、子どもがある程度成長してから振り返ると一番可愛いといわれる時期にゆっくり一緒にいることができなかったと後悔することも珍しくない。
<子どもが1歳以降>
メリット
- 子どもは成長とともに免疫力が付いてくるので、個人差はあるものの大きくなればなるほど体調を崩しにくくなる。つまり、仕事を突発的に休むことが少なくて済む。
- 一番可愛いとされている限られた赤ちゃん時代をともに過ごすことができる。
- 育休中に有意義な活動に励める。例えば、親子留学や旅行、資格取得、ボランティアなど、復職したらまずできないであろう自己研鑽や子どもとのリフレッシュ活動など、〝人生の夏休み〟的な捉え方で存分に楽しむことができる。
デメリット
- 休職期間が長くなればなるほど、復職にあたって心理的かつ実務的ハードルが高くなる。特に長期間育休が許されている会社だからといって復職後のポジションが約束されているわけではなく、長期間会社を離れる事で元いた部門がなくなってしまい、まったく違う未経験の職種に復職することになったりすることもある。
- (自治体によるが)0歳児枠を受け入れている地域では、1歳以上になると受け入れ枠がかなり限定されるため、保育園入園が狭きものになってしまう。
- 赤ちゃん時代に長期的にママと過ごしていたため、ママっ子になっていることが多く、個人差はあるものの、保育園に馴染むのにそうとう時間がかかる。子どもにとってもストレスに。
このように、どの程度の期間、育休を取るかはメリット・デメリットがあり、一概にこの期間が良いということはありません。ただ上記に書いている通り、復職時期は仕事と育児と保育園という3つの要素のバランスが大切です。仕事のことや保育園のことだけを考えて早く復帰しても「もっと子どもと一緒に過ごしたかった」と後悔することになるかもしれませんし、逆に子どもが可愛くてそれ以外の要素を後まわしにすると、保育園に入れない、組織編成により復職先がなくなったなどの状況になることも。所属企業の状況や、住んでいる自治体の方針などをきちんと確認した上で、自分の尊重したいことを最大限活かせる期間にできるといいですね。
保育園に入れない場合は?
早い人は妊娠期間から保活を始めて、春の復職を考える人は年末年始で入園の申し込み、これから2月頃の結果に向けてドキドキする時期ではないでしょうか。認可保育園へ入園を希望している場合、どうしても保育園に入れるか入れないか、または入りやすいか入りにくいかは住んでいる地域によってかなり差が出てきます。東京都でいうと、待機児童が多い地域として有名な世田谷区や目黒区、調布市や府中市などは、希望する保育園に入るのが本当に難しいと言われていて、兄弟で別々の保育園に通っているといったこともよく聞くことです。
「#保育園に入りたい」の活動も有名ですが、こういったとても保育園に入りにくいエリアのママたちが発起人となって始めたことのようです。一方で、同じ東京都でも案外すんなりと保育園に入れるエリアもあります。私自身、娘が3人いますが、3人とも自宅からすぐ近くの第一希望の保育園に入れました(すべて0歳児枠でしたが)。
つまり、一番の保活は住む場所を選ぶということなのかもしれません。子どもが生まれてみないと、保育園事情や子育てにまつわる助成制度などあまり調べずに住む場所を考えてしまうことも多いかと思います。ですので、せめて妊娠がわかって出産後(例えば育休期間中に)改めて子どもを育てるのに適している場所に引っ越すなどをすることも良いのかもしれません。0歳児保育を受け入れていない地域などは、できるだけ長く子どもと過ごしたい人に向いているでしょうし、逆に早く復職したいのであれば0歳児保育をしている地域でないとダメでしょう。自分自身の思い描くライフスタイルが実現できそうな自治体をまずは探してみましょう。ちなみに、子どもが保育園に通いだしてから別の自治体に引っ越すのはかなり面倒です。
そもそも引越し先に保育園が見つけられるか、入れるかもわかりません。ですので、引越しは絶対に入園前がおすすめです。 また、認可保育園に入れなくても、最近は認証保育園や無認可の保育園も多くできています。認可保育園のように一定の品質が保たれていたり、保育料が自治体によって定められていたりすることがないので、品質も値段もピンキリですが、選ばなければ何かしらは見つかる可能性が高いです。特に、順次オープンしていたり、増設している施設も多く、春に限らず、入園のタイミングも園次第さまざまなのも魅力です。
自分の大事な子ども、しかもまだ小さな赤ちゃんを預けるとなると、なかなか品質を落としてでも預けたいという気持ちにはならないため割高な保育園を選んでしまうことになるかもしれませんが、例えば東京都であれば、認証保育園の場合は助成金が受け取れるので、結果的に認可保育園相当の金額で預けることができます。どういう保育園に入れるのかも仕事と子どもとのバランスになってきますが、認可保育園だけ!と決めつけるのではなく、あらゆる預け先の情報を調べることで入園の可能性はぐっと高くなります。保活成功の肝はリサーチに尽きます。
復職の「ソレダメ!」は、新たな挑戦
最後に復職のソレダメをご紹介します。育休中の女性で案外多くいるのが「転職したい」という人。それまでの勤め先にはワーキングマザーが少なく、働き方もハードなので、育児との両立がイメージできないから、転職したいというのです。転職だけでなく、育児と両立しやすそうだからフリーランスになってみようかとまったくそれまでと違うワークスタイルを考える人までいます。なぜか別の道を選んだほうが〝楽〟と思ってしまうようです。実際に、育児と仕事の両立を考えて、転職やフリーランス転身を果たす人も絶対にいないわけではありません。
しかし、その多くが元の職場に戻るより厳しい道です。 育児と仕事の両立とは、それまでの働き方とはまったく違いますので、不安に感じて当然です。しかし、それをまったく新しいフィールドで実現することのほうがよっぽど難しいのは言うまでもありません。復職のときに何よりも大事なのが、休職に入るまでに培ってきた人間関係や実績による自分への信頼度。その信頼関係があるからこそ、育児中でも乗り切っていくことができます。新たな職場、フィールドでは信頼関係がゼロの状態。その中で、さらに今まで経験したことのない働き方を実現するのはそうとうな覚悟と努力が必要になってきます。決して甘くはない道です。
育休から復職までのよくあるモヤモヤについてのまとめ
心理的にも実務的にも、より負担なく復職したいのであれば、一度は元の職場に戻ること。最初に述べたとおり、育休を取得する女性は年々増え続け、ワーキングマザーを取り巻く環境は劇的に変化しつつあります。所属企業は遅れているからと思っていても、その変化は目覚ましいはずです。それでも自分の思い描くワークスタイルがその会社では実現できないと判断した場合は転職などのキャリアチェンジを検討しても良いかもしれませんが、最低1年程度は様子をみてください。復職してしばらくは新たな挑戦はお預けにしておきましょう。