何かを成し遂げるためには、ほとんどの場合目標を設定し、それに向けた行動を起こすでしょう。ビジネスシーンにおいては、その目標を確実に達成するために、戦略を練ることも少なくありません。そこで重要なのが、そもそもの目標設定の方法です。適切に設定した目標であれば、達成できる可能性は高くなります。
目標設定を上手に行うために、コツやフレームワークについて解説します。
適切に目標設定をすることはなぜ必要か?
ただ単に目標を設定すると、それはただの願望や夢であり、ひとりよがりだったり空回りしたりすることがあります。それでは、目標を達成できる可能性は極めて低くなるでしょう。
目標は適切に設定せねばなりません。まず、目標設定がなぜ必要かを考えてみましょう。
取るべき行動が明確になる
目標設定があると目指すものと現状とのギャップが明確になるので、達成に向けて取るべき行動を具体的にイメージしやすくなります。
進捗状況・成果を可視化しやすい
目標設定なしに、進捗状況や成果は可視化できません。
進捗状況や成果の把握は非常に重要で、達成に向けて順調に進んでいるか、常に気にかけておく必要があります。スケジュールの遅延や品質の低下が発生していたら、直ちに軌道修正します。
モチベーションの向上
ゴールが見えないと、途中で頑張るモチベーションを見失ってしまいます。明確な目標であれば、達成まであとどれくらいかが分かるため、モチベーションは向上します。
目標設定が曖昧だったり不適切だったりすると、チームのメンバーが「やらされている感」を抱いてしまうことがあります。また、高すぎる目標では現実味がなく、低すぎる目標ではやりがいが見出せないため、設定する意味がありません。
これではチームのパフォーマンスが落ちてしまうので、適切な目標を設定する必要があるのです。
目標を設定する5つのコツ
やみくもに目標を掲げるのでなく、適切な目標を設定するべきだということを前章ではお伝えしました。では目標設定にはどのようなコツがあるのでしょう。ここでは5つのコツを紹介します。
Why・When・Whatを明確にする
目標設定をするときは、Why・When・Whatの3つの要素に分解します。
・Whyー『なぜその目標にすべきか』
・Whenー『いつまでに達成すべきか』
・Whatー『何を目標にすべきか』
これらを明確にしてから目標設定をすると、目標の解像度がアップします。プロジェクトマネージャーやチームのメンバーにとって、わかりやすく伝わりやすい目標であることは、今後達成に向けて進む際に非常に重要です。
また、これらの要素を深掘りする過程で、目標の実現可能性や意義、達成するプロセスも見えてくるでしょう。
目標を数値化し測定を可能にする
達成度や進捗状況が測定できるように、目標は数値化しましょう。
例えば、「顧客を増やす」「営業成績アップ」という目標は漠然としており、何を目指すべきかがイメージできません。「上半期に新規顧客100名獲得」「1年で営業成績20%アップ」などと数値化すれば、目標を何%達成しているかが測定できます。
作業の途中でも進捗状況や達成度を正確に把握できるので、必要に応じて行動計画を見直し、目標値に近づけられるでしょう。
また、数値化することで逆算が容易になるため、目標達成までの行動計画が具体性を持ちます。「上半期に新規顧客100名獲得」という目標に対し、「何月までに何名獲得」というマイルストーンをおいたり、メンバーひとりあたりの目標値を割り出したりできるので、目標の細分化も可能です。
達成可能な目標にする
目標に向かって実際に手を動かすメンバーにとって達成可能な目標であることも、コツのひとつです。
「今月中に新規顧客を100名増やす」という目標を掲げても、30日程度しかない1ヶ月間での達成は、あまりに非現実的です。
このような高すぎる目標では、達成可能性が高すぎてやる気をなくしてしまいます。また、果敢に挑んだとしても、疲弊するだけという結果になりかねません。逆にあまりに低い目標では、やりがいを感じられずモチベーションの低下につながります。
目標は易しすぎず難しすぎず、届くか届かないかというレベルで設定しましょう。この按配を適切に設定するには、日常的に自分やチームの能力やキャパシティを知っておく必要があります。
目標に対しての進捗を定期的に振り返る
目標達成に向けて前に進むことばかりを考えていると、省いてしまったり形式的なものになってしまったりしますが、進捗状況を定期的に振り返る時間は必ず確保しましょう。
振り返りを行い、予定通りのペースや品質で進んでいることがわかれば、
・順調に達成した要因は何か
・より良い手段はないか
などを検討し、今後に活かせるようなナレッジを得ます。
遅延や品質低下がみられる場合、
・行動計画は妥当であったか
・どこかに無理が発生していないか
などの要因を探り、計画を立て直すことができます。
このように定期的な振り返りの積み重ねによって、確実な目標や行動計画を立てるスキルが身につきます。
状況の変化に合わせて柔軟に目標を再設定する
5つめのコツは、目標は絶対ではない、ということです。目標を達成するまでの過程では、計画時には想定していなかったことが起こり得ます。そんな時には、目標を再設定しましょう。
現状の目標のまま進むことができるのか分析を行い、変化した状況とマッチしないと判断したら、当初の目的にこだわらない柔軟さを持っておきます。
ここで重要になるのは状況の変化をいち早くキャッチするために、絶えずアンテナを外に向けておくことです。具体的には、報告や連絡、相談がしやすいチームビルディングや、進捗状況を随時確認できるツールの導入などをして、風通しの良い環境を整えましょう。
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目標設定に役立つフレームワーク
最後に、目標設定する際に役立つフレームワークを3つ紹介します。どれも難しいことを覚える必要はないので、すぐに取り入れられる方法です。
SMART
「SMART」は、ピーター・ドラッカーが提唱したフレームワークです。KPIやOKRの目標管理をするフレームワークの中でも、特に目標設定をする際によく用いられています。
SMARTには、目標設定に必要な要素が全て詰まっているといわれています。
構成する要素は以下の5つで、頭文字をとってSMART(スマート)と呼ばれています。
- Specific 具体的である
- Measurable 計測できる
- Achievable 達成できる
- Realistic 現実的である
- Time-bound 期限が明確である
これらの要素を満たした目標であれば、目標は達成しやすくなると考えられています。
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PDCAサイクル
問題の解決や状況の改善を図ることを目的としたループ型のフレームワークが「PDCAサイクル」です。品質管理の父といわれる、W・エドワーズ・デミングが提唱しました。
PDCAサイクルでは、以下の4つの項目を順に回します。
- Plan 計画
- Do 実行
- Check 評価
- Action 改善
当初は生産管理や品質管理のプロセスの中で、改善すべき箇所を分析し見直すためのフレームワークとして提唱されたモデルで、継続的に回すことで、絶えずフィードバックを得ることができます。
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マンダラチャート(マンダラート)
「マンダラチャート」は、大谷翔平選手が高校時代に作成したことで有名なフレームワークです。
マンダラのような9×9の81マスを用いて、目標を達成するために取り組むテーマや具体的なアクションを洗い出します。
詳しい手順は以下となります。
- マンダラ中央のマスに設定した目標を記入(採用目標達成)
- 中央を囲む8マスに、目標を達成するためにやるべきタスクを記入(体力づくり、コントロールなど)
- 中央9マスを囲むマンダラの、真ん中のマスに2で挙げたタスクをそれぞれ記入する
- 3で記入した周りの8マスに、2と同じようにそれぞれのやるべきことを記入(体力づくりのマスの場合、体のケア、柔軟性など)
マンダラチャートにリストアップすることで、目標の細分化ができます。また、目標とやるべきタスクを紐づけた形で洗い出せるので、行動計画を立てる時に役立ちます。
81マス全て埋めるのは簡単ではありませんが、マンダラチャートに向き合うことで、思いもよらないアイディアが浮かぶこともあります。
まとめ
目標設定が曖昧だと、スローガンのような存在になってしまい、具体的な行動にうつすことが困難です。達成するために何をすべきかがわかるような目標設定を行いましょう。
今回解説した目標設定のコツやフレームワークは、ビジネスに限らず広く活用できる方法です。また、個人・チーム問わず使えるので、どんな立場の人であっても役に立つはずです。