世の中にあるほとんどの業務やプロジェクトは、複数のメンバーによって成り立っています。それらのチームには、もれなく「リーダー」がいるでしょう。
チームにおけるリーダーは、非常に重要な役割を持ちます。ではどんなリーダーであれば、良いチームが作られ、組織が成長するのでしょう。リーダーとしての素質とは何か、考えてみました。
リーダーとはどのような人物を指すのか?
あなたの所属するチームのリーダーはどのような人ですか? もし自分がリーダーと呼ばれる立場だったら、どのようなリーダーでありたいですか?
まず、リーダーとはどのような人物か、改めて見つめてみましょう。
リーダーの定義
リーダーとは、指導者、統率者、指揮官、先導者と訳すことができ、周囲の人々をまとめ、先導する人を指します。企業や組織においては、目的を達成するための目標を定め、ゴールまでの道のりを導く人を意味し、一定数のメンバーを統制し、先導する役割を持つ人のことをリーダーと呼びます。
人々の意識を変える影響力を持っていることが多いでしょう。
リーダーとマネージャーの違い
ビジネスシーンには、リーダーと似た意味で使われる「マネージャー」と言う言葉があります。マネージャーとは、一般的に管理者という意味を持ち、複数の人をまとめて目的達成のために管理するという点では、リーダーとよく似ています。
しかし両者には決定的な違いがあります。それは、周囲に与える影響力です。チームの方向性を定めて更なる高みに率いるリーダーに対し、マネージャーは目標を達成するために、的確な指示や管理を行います。
そのため、マネージャーに求められているのは、着実な管理能力と言えるでしょう。
リーダーとリーダーシップの違い
リーダーから派生した「リーダーシップ」という言葉があります。組織をまとめる役割、つまりポジションを指すリーダーに対し、リーダーシップとは、目標を目指すことで周りに良い影響を与え、同じ方向に導く能力のことを意味します。
リーダーシップは、リーダーとして必要な能力と言っても過言ではありません。次章から、リーダーの役割や能力について詳しく解説しましょう。
リーダーの定義と役割は?
リーダーの定義や役割は、明確に決められているものではありませんが、一般的にリーダーとは組織の目標達成や課題解決を目指し、かじ取りを行う人物のことを指します。
リーダーの役割を、大きく6つに分けて説明します。
計画・準備をする
計画し、準備することは、リーダーの役割です。どんな組織やチームにも目標やビジョンがあるでしょう。リーダーはそれらを達成するためのプロセスをできる限り正確に見立て、いつまでに、何を、どのような手段で行うかなど、具体的な計画に落とし込みます。
全体の士気を高める
メンバーの士気を高めることもリーダーの役割の一つです。メンバーの士気は、作業効率や成果物の品質に大きく関わります。
士気を高めるためには、適切な声かけや必要に応じたミーティングなどを行うことが必要です。メンバー一人ひとりとコミュニケーションをとり、心理的安全性が高い関係性を築きましょう。
メンバーのことを理解して仕事を割り振る
メンバーごとに、スキルや経験、知識、得意不得意はさまざまです。リーダーはそれらを理解し、もっとも高いパフォーマンスを発揮できる仕事を割り振る必要があります。
これができるかできないかで、チームの作業効率は大きく変わります。
滞りなく業務が進んでいるか随時確認する
リーダーはメンバーに指示をして終わりではなく、作業が滞りなく進んでいるかを常に気にかけておきます。
計画通りに進んでいるかはもちろん、特定のメンバーに負担が集中していないか、割り振りは適切かなど、広い視野・高い視座を持って確認し、不都合が発生していたら見直しを行いましょう。
メンバーの育成をはかる
組織を大きくするためには、メンバーの育成もリーダーの重要な任務と言えます。
それぞれの能力に合わせた目標設定をし、定期的なフィードバックを行いましょう。また、メンバーに仕事を任せ、適度な距離で見守ることも大切です。
次の計画を考える
リーダーは目の前の目標や課題だけでなく、次なる計画を考える必要があります。現状の課題・解決策を見つけ出すのはもちろんのこと、円滑に業務が進むようにリスクヘッジを行うなど、先々を見据えておきましょう。
リーダーに向いている人の特徴・資質
では、どのような人がリーダーに向いているのでしょう。リーダーを任せたり、次世代のリーダーとして育成をしたりする際は、後述する特徴や資質を持っている人を選ぶといいでしょう。
コミュニケーション能力が高い
チームを束ね、導くリーダーに、なくてはならないのがコミュニケーション能力です。目標を達成するためには、メンバーと適切なコミュニケーションをとる必要があります。
コミュニケーションによって、仕事が円滑に進む信頼関係や帰属意識が作られると言ってもいいでしょう。
判断能力が高い
判断力が高い人も、リーダーに向いているでしょう。判断力とは、これまでの経験や知識から現状を把握し、今後より良い結果になるような意思決定を行う力です。
特にリーダーに求められるのは、結果に責任がともなう決断ばかり。組織の理念やビジョンはもちろん、自分自身の軸を理解した上で、覚悟を持った判断を下せる人は優秀なリーダーになることでしょう。
謙虚さがある
さまざまな個性を持つメンバーを束ねるためにも、リーダーには謙虚さが求められます。メンバーに対し、傲慢な態度を取ったり、否定的なことを言ったりする人は信頼できません。
分からないことは分からないと素直に言い、自分に足りないスキルはメンバーの力を借りるなど、誠実で率直な態度がリーダーには必要なのです。
責任感が強い
強い責任感もリーダーの資質と言えます。優秀なリーダーは、メンバーが失敗したとしても個の責任として突き放すことはせず、チームを先導する自分の責任だと考えます。
また、責任はリーダーが持つと言う宣言の元でメンバーの挑戦を後押しすれば、メンバーが臆することなく仕事ができる環境が整うでしょう。
周りから信頼されている
メンバーと一丸となり目標を達成するためには、チームの信頼を得ることが大切です。信頼されるリーダーは、メンバーを信頼して仕事を任せ、困った時には手を差し伸べるような、安心感を与える人である必要があります。
そうすることで、メンバーが自主的についてきてくれるのです。
学び続ける姿勢がある
リーダーには学び続ける姿勢が求められます。常に高い目標を目指してチームを率いるリーダーは、向上心を持っています。
さらに、リーダーが学んだことをメンバーにアウトプットすることで、チームとしての成長にもつながります。本を読んだりセミナーに参加したりするだけにとどまらず、周りの人と密に連携し、新しい知見を得たり、情報を共有したりすることも重要です。
ポジティブ思考
プロジェクトにはピンチやトラブルがつきもの。チームで乗り越えなくてはなりません。そんな時、リーダーは誰よりもポジティブでいなくてはなりません。
ここで言うポジティブとは、ただ闇雲に気楽なことを言うのではなく、置かれている状況を冷静に見つめ、目標達成のために解決策を見つけ出そうとする姿勢のことを言います。
リーダーがポジティブでいれば、自然とメンバーにも伝染し、チームの雰囲気はよくなるはずです。
リーダーに向かない人の特徴・資質
一方、下記に挙げるような特徴や資質を持つ人はリーダーに適しているとは言い難いでしょう。アサインする際には注意が必要です。
優柔不断
リーダーに最終的な判断が委ねられるのは、珍しい話ではありません。リーダーはメンバーはもちろん、多方面の関係者からの意見を吸い上げ、最適な判断を下さねばなりません。そこで優柔不断な態度をとることは、致命傷と言えるでしょう。
難しい判断も多くあれど、優柔不断な態度で曖昧な意見を言い続けていると、メンバーは不安な気持ちを抱きます。また、やるべきことが分からず、間違った行動や遅い対応につながってしまい、決定的なミスを引き起こす恐れさえあるでしょう。
全て自分一人でやってしまう人
業務の多くを自分一人で全てやってしまう人も、リーダーに不向きです。リーダーがメンバーの成長機会を奪っていると言っても過言ではありません。
また、自分一人で完結させてしまうリーダーの元にいるメンバーは、「信頼されている」「任されている」という気持ちを抱くことができず、モチベーションを下げてしまいます。リーダーへの不信感にさえつながるでしょう。
人の意見に耳を傾けない人
チームのメンバーあってのリーダーであると考えると、メンバーの意見を聞き、寄り添うことは、リーダーとして欠かせない資質と言えます。自分の意見だけを押し通そうとする独りよがりな人は、リーダーには適していません。
独裁的な振る舞いをするリーダーは、信頼を得ることなく、いずれついてくる人もいなくなるでしょう。
責任が取れない、人のせいにする
責任をとらず、人のせいにするリーダーでは、メンバーは誰もついてこないでしょう。たとえメンバーのミスであっても、自身のチームのミス、フォローしきれなかった自分のミスとして捉えられなければ、優秀なリーダーとはいえません。
知識や経験が不足している
リーダーには豊富な知識や経験が必要不可欠です。リーダーは計画を立てたり決断を下したりする機会が多々あります。そんな時には、これまで培ってきた知識や経験が必要なのです。
また、自分よりも能力や経験がないリーダーの下につきたいと考える人は、決して多くないでしょう。知識や経験があってこそ、ついていきたいと思わせるリーダーになれるのです。
リーダーシップの6つのタイプ
リーダーにはさまざまな特徴や資質があることが分かりました。最後に、リーダーシップの6つのタイプを解説します。周りの人がどのようなタイプかを知っておくことで、適切なアサインができるでしょう。
ビジョン型
ビジョン型と呼ばれるタイプは、組織の目標やビジョン、ミッションを明確にして、チームを導きます。ここで紹介する6つのタイプの中でも、もっともポジティブでカリスマ性を持つと言ってもいいでしょう。
特筆すべきは、ビジョン型のリーダーはゴールを明確に提示するものの、ゴールまでのプロセスはメンバーに委ねて見守るという点です。リーダーはサポートとして立ち回り、メンバーが主体性を持って仕事をすることになるので、チームの自主性が高まります。
コーチ型
文字通り、リーダーがコーチのようなポジションを担うのがコーチ型です。リーダーは司令塔となり、メンバーが主体的に業務を行うという点はビジョン型同様です。
コーチ型のリーダーは、メンバーとの1対1の関係性に重きを置き、個々の目標をサポートします。それによって、メンバーの考える力を育て、可能性を引き出せるのです。
ただし、大所帯のチームではキャパオーバーとなり、その機能を果たせなくなる場合もあるので、注意が必要です。
関係重視型
関係重視型のリーダーシップは、良好な人間関係・信頼関係の構築を重視します。居心地の良いチームを作れる点は大きな強みとなるでしょう。
しかし、リーダーを含めたメンバー同士の距離感が近づきすぎると、やりとりが曖昧になってしまったり厳しい判断を下したりすることが難しくなってしまう懸念があります。責任の所在が曖昧になってしまうこともあるでしょう。
関係重視型のリーダーは、他のタイプの性質も持ち合わせておくことをおすすめします。
民主型
民主型とは、メンバーの提案を幅広く拾い上げ、業務に反映させるタイプのリーダーシップです。些細なことでも試してみる性質を持つため、ユニークなアイデアが出ることが期待できます。
メンバーの持つ経験や知識を有効活用できる点が大きな強みと言えるでしょう。
その反面、メンバーの意見を尊重するゆえ、意思決定に時間がかかることもしばしば。迅速な意思決定が求められる業務には、適していないかもしれません。
ペースセッター型
リーダー自らが手本となり、メンバーに目標までのプロセスや成功イメージを提示することでチームを引っ張るのがペースセッター型です。
たとえ高い目標だったとしても、リーダーが率先して行動し、高いパフォーマンスを発揮すれば、メンバーのモチベーションは高まりチームの組織力も増すでしょう。
ただし、ペースセッター型の場合、リーダーは高いスキルを持っていなくてはなりません。またチームのメンバーも同様で、リーダーとメンバー間の能力差が開きすぎていると、リーダーの行動がメンバーを苦しめる場合もあるでしょう。
強制型
強制型は、チームの全意思決定をリーダーが行うタイプです。リーダーは強い権限を持ち、メンバーはリーダーの決定にしたがって動きます。そのため、メンバーの自主性は育ちにくいというデメリットを持ちます。
しかし、危機的状況などの緊急時に強い力を発揮するという点では、非常に優れていると言えます。また、短期間で目標を達成しなけれならないケースにおいても、強制型のリーダーシップは高いパフォーマンスを発揮するでしょう。
リーダーを育てるには見極めが重要
リーダーの手腕一つで組織やチームは大きく変わります。過去には年功序列などの順番でリーダーが決まっていた時代もありましたが、そのような決め方では組織やチームの成長は望めないでしょう。
これからのビジネスシーンでは、リーダーに適した人材を見極めて、育てていく必要があります。今一度、リーダーのあり方や重要性を見直してみてはいかがでしょうか。