昨今は社会情勢の変化がめまぐるしく、自分でも気がつかないうちにストレスを抱えていることもあるでしょう。
ストレスは身体にさまざまな不調となってあらわれ、不調を感じながらも放置していると、症状の悪化により改善が難しくなってしまいます。
今回はストレスが限界に達したときに出る症状やストレス解消法を紹介します。
ストレスを見過ごさないためにも、自分に思い当たるものがないか当てはめながら読み進めてください。
ストレスによる症状
ストレスによる症状は人それぞれ個人差がありますが、ここでは一般的な症状を「身体」「考え方」「感情」「表情」「行動」の5つにわけて解説します。
これらの症状はストレス以外の原因でも起きることがありますが、ストレスとして考えられる明確な要因があったり、一時的に起きたりしている場合には、軽度であっても早めに対処するようにしましょう。
身体
ストレスによる身体の不調としては以下が挙げられます。
・眠れない、熟睡できない、朝起きられない
・食欲がない、過食になる
・便秘や下痢などのお腹の不調
・疲労感、倦怠感
・頭痛、肩こり
・動悸、ふらつき
睡眠の変化や食欲の変化は比較的自覚がしやすいため、ストレスが軽度な時から気がつきやすい反面、放っておきがちです。しかし、疲れているのに熟睡ができず何度も起きてしまったり、朝起きられなかったりという症状は重症度が高い可能性があります。特に不眠症になると、うつ病を発症する可能性も高まるため注意が必要です。
▶️参考:Chang PP et al.(1997)Insomnia in young men and subsequent depression. The Johns Hopkins Precurors Study.
また、動悸やふらつきの症状は倒れる危険性もあります。症状を自覚したら、無理をせず休むことが大事です。
▶️参考:厚生労働省 こころの耳「No.5 身体症状に着目したストレス反応」
考え方
次に、ストレスによる考え方の症状です。
・どうせやってもうまくいかないと考える
・悪い結果しか考えない
・呆然として物事を考えることができない
・自分はダメな人間だと悲観的に考える
・自分は悪く思われていると考える
ストレスを抱えると、考え方がネガティブになる傾向があります。
気持ちが落ち込み物事を悪い方へばかり考えたり、悲観的になり自分を責めたりしてしまいます。
感情
ストレスによる感情の症状には、以下が挙げられます。
・些細なことでイライラする
・不安感が強くなる
・気分が落ち込む
・やる気がなくなる
・さみしさや悲しみを感じる
・興味がわかない
ストレスにより自律神経が乱れ、副交感神経よりも交感神経が優位となり、イライラや不安を感じやすくなります。また、憂鬱な状態が続くことにより、意欲や集中力の低下などが起こり、場合によっては仕事や生活に影響を与えることもあるでしょう。
表情
ストレスを抱えると、表情には以下のような症状があらわれます。
・表情がなくなる
・笑顔がみられない
・硬い表情になる
・暗い表情になる
普段は笑顔が多かったのに、笑顔がみられなくなったり無表情になったりしている場合は、ストレスが限界に達している可能性が高いでしょう。周囲から「元気がないね」「怒っているの?」などと言われたときは要注意です。
行動
最後に、ストレスが行動にあらわれたときの症状には以下のようなものがあります。
・飲酒や喫煙の量が増える
・睡眠や生活のリズムがくずれる
・家に閉じこもりがちになる
・仕事のミスが増える
・浪費が多くなる
人と交流を避けて家に閉じこもりがちになり、お酒やたばこの量が増えるなどの症状は、ストレスが限界に達していることのあらわれかもしれません。
特にお酒やたばこなどは、依存状態になる可能性があるため注意が必要です。
ストレスが限界に達したときの症状
ストレスが限界に達したときの症状の中には、早急に医療機関の受診をした方が良いケースもあります。ただし、その症状は誰が見てもわかるものとは限りません。
今までとは違う変化に自分で気づく場合と、自分では気づかずに周囲が変化に気づく場合とがあります。どのような変化に気をつけるべきかを解説します。
自分で気づく変化
自分自身で気がつく変化には、以下のような症状が挙げられます。
・疲れがたまっているに眠れない
・今まで楽しいと思っていたことが楽しめない
・疲れやすく、やる気がおきない
・急に涙が止まらなくなる
このような症状が、一時的ではなく1週間以上長く続く場合には、うつ病などの精神疾患が疑われます。できるだけ早期に、医療機関へ受診をした方がよいでしょう。
周囲が気づく変化
ストレスが限界に達したときの症状は、本人よりも家族や友人・職場の同僚など、周囲にいる人が気づくことの方が多いかもしれません。
これから挙げるような変化が身近な人にあったら、ストレスを感じていないかさりげなく声かけをして、場合によっては受診を促してみましょう。
プライベートで起こる変化
プライベートな場面で起こる変化は、家族や友人が気づくことが多いでしょう。
個人差はありますが、症状としては以下のような変化が考えられます。
・家に閉じこもりがちになり、家族との会話もさける
・身なりや服装を気をつかわなくなる
・考え込むことが多く、独り言が増える
・些細なことを気にする
・怒りっぽくなり、口調が荒くなる
・他の人が自分の悪口を言っていると思い込む
・飲酒量が増え、酔うと性格や言動が変わる
・自分には能力がないなど、自信をなくしている発言をする
これら症状はあくまで一例と捉えて、普段の様子とは違う気になる変化があった場合には、医療機関の受診を検討したり促したりしてください。
職場で起こる変化
職場で起こる変化には、以下のような症状が挙げられます。
職場の同僚や部下、または上司にこのような症状が感じられたら、本人だけでなく上司にも相談して対処することをおすすめします。
・遅刻や早退が増える
・無断欠勤をするようになる
・突然休暇を申し出たり、頻繁に休暇をとる
・ミスが目立つようになる
・異動願いや退職希望を申し出る
・部署内での言い争いなど衝突が増える
・本人に対してのクレームが増える
・ぼーっとしていたり、居眠りをしたりしている
周囲の人に上記のような症状がある場合、業務内容や会社の体制に問題がないかを見直すことも大切です。同時に、症状が悪化しないように本人に対して適切なアドバイスを行い、場合によっては受診を促しましょう。
ストレスが原因で引き起こされる病気
現代社会では、誰もがストレスを抱えながら生きていると言っても過言ではありませんが、誰もが持っているものと放っておくと、気がつかない間にストレスが限界に達し、さまざまな病気を引き起こす原因となります。
ここでは、ストレスが原因で引き起こされる病気にはどんなものがあるのか、具体的に解説します。
うつ病
うつ病は気分障害の一つで、心の状態がくずれることにより起こる病気として広く知られています。
睡眠が乱れる、食欲がなくなるなどの身体症状や、気力がなくなる、悲しみを感じるなどの精神症状が主な症状です。
治療には、抗うつ剤を用いる薬物療法と精神療法があります。
自律神経失調症
自律神経失調症は、自律神経が正しく働かない状態を指し、うつ病のように明確な病気とは分類されていません。主な症状は動悸、めまい、消化不良などがあり、ストレスや過労が起因となることが多いようです。
自律神経のバランスがくずれると、身体の機能の調整がうまくできなくなるため、さまざまな不調につながります。
適応障害
環境の変化などのストレスに対応できずに、精神面や行動面に問題を引き起こす状態が適応障害です。気分の落ち込みや不安、身体的な不調があらわれます。
早めの対処が必要ですが、有効性を示す治療法は見つかっていません。ストレスの原因を見極め、環境に慣れるように専門家から心理的なサポートを受けることをおすすめします。
急性胃腸炎
ストレスにより胃酸が過剰に分泌され、胃の免疫力が低下して起きるのが、急性胃腸炎です。激しい腹痛や下痢・嘔吐などの症状があり、時には発熱の症状もあらわれます。
急性胃腸炎になると、免疫力の低下によりウイルスや細菌などにも感染しやすい状態になるため、早めに医療機関を受診しましょう。
じんましん
じんましんの要因として知られているのはアレルギーですが、ストレスでも起こる場合があります。ストレスにより自律神経やホルモンが乱れることで、じんましんを引き起こすのです。
特にストレス性のじんましんは、症状が繰り返し起きる場合が多いようです。ストレスを改善しないと何度も繰り返してしまうので、皮膚科だけでなく心療内科や精神科などを受診し、総合的な治療を受けるとよいでしょう。
ストレス解消法
ここまで解説したように、ストレスが限界に達すると心身にさまざまな影響を及ぼします。そのため、ストレスは限界に達する前に上手に解消することが重要です。
心身の安定や健康的な毎日を送るためにも、最後にストレス解消法を解説します。
十分な睡眠をとる
1日の疲れをしっかりととるために、睡眠を十分にとりましょう。睡眠は時間だけでなく質も大切です。1日6時間以上、質の良い睡眠がとれると、成長ホルモンが多く分泌されるため、ストレスを感じにくくなります。
夜寝るときには部屋の明かりを暗くして、朝起きたら光を浴びると体内時計が上手にコントロールできます。
食事内容を見直す
栄養バランスのとれた食事はストレス軽減に役立ちます。メンタルヘルスにも影響を与えるので、ストレスの状況により食事内容を見直すとよいでしょう。
ビタミン、ミネラル、アミノ酸など、必要な栄養素を適切に摂取できるのが理想です。
また、うつ病に影響するといわれている脳内伝達物質は、アミノ酸から作られているので、不足しないようにたんぱく質もしっかりとりましょう。
継続的に運動をする
適度な運動は、ストレス軽減や心身の不調をやわらげるのに効果的です。ウォーキングや軽いランニングなど生活にとり入れやすい運動を行いましょう。
通勤時に一つ前の駅で降りてウォーキングをしたり、朝の30分動画を見ながらエクササイズをしたりなど工夫して、継続的に運動をすることをおすすめします。
まとめ
毎日を過ごしていく中で、ストレスを完全にとり去ることは難しいでしょう。それゆえにストレスが限界に達していることに気がつかなかったり、限界に達するまで我慢してしまったりしているかもしれません。
ストレスが限界に達すると、心や身体に症状があらわれ医療機関の受診が必要となる場合があります。
日頃からストレス解消を意識して行うとともに、いつもと違う心や身体の変化を自覚したら、躊躇せず医療機関へ相談しましょう。