ツァイガルニク効果とは?意味や事例などをまとめて紹介

ツァイガルニク効果は、私たちの生活の至るところで活用されている心理現象です。しかし、その言葉を初めて聞いたという人も多いのではないでしょうか。

ツァイガルニク効果はビジネスやコミュニケーションの場において、非常に効果的なテクニックとなります。ツァイガルニク効果とは何か、そしてどのような活用ができるのかを、具体例を用いて解説します。

ツァイガルニク効果とは?

ツァイガルニク効果とは、うまくいった物事よりも、失敗した物事や途中でリタイアした物事の方が記憶に残りやすい心理現象のことをいいます。

精神病理学の研究者 ツァイガルニクの研究によって明らかになりました。

人は、終わった物事に対してはすっきりと完結し、ほかの物事に意識が向くようになります。しかし、不完全な物事や中途半端なままの物事には違和感を持ち続けてしまいます。

目標に向かって行動している最中、人は緊張した状態を保っていますが、目標を達成すると緊張状態から解放されます。つまり、目標が達成されないままの事柄を抱えていると、緊張状態が続き、記憶に残りやすいというわけです。

その事柄が心残りとなり、興味や関心、完結させたいという強い欲求が起こります。この欲求は、マーケティングやライティングなど、さまざまなビジネスシーンで活用されています

ツァイガルニク効果が起こる要因

ツァイガルニク効果は「心理的リアクタンス」という心理現象が高まるほど起こりやすいといわれています。

心理的リアクタンスは、行動を制限されることでより一層行動に対する欲求が高まる心理現象のことです。続きは会員登録をしないと見られないページほど、続きが気になってしまったり、課題を終わらせないと遊びにいけないと思うほど余計に出かけたくなったりした経験は、誰しもあるのではないでしょうか。これらが心理的リアクタンスの一例です。

行動に対する欲求が満たされないことで不満が高まり、ツァイガルニク効果が起こると考えられているのです。

ツァイガルニク効果を活用するメリット

ツァイガルニク効果はビジネスにおける効率を上げるためのテクニックとして活用されています。

目標達成へのモチベーションを高める

ツァイガルニク効果を応用すると、モチベーションを高めることができます。

作業を中断する時、キリのいいところまでやりたくなります。しかし、キリよく完結させると脳が作業のことを忘れてしまい、次の仕事に取り掛かるのが億劫になります。

そこで、敢えて未完のまま作業をストップしておくと、ツァイガルニク効果によって続きが気になり、完了に向けてモチベーションを維持できます。

作業効率向上につながる

ツァイガルニク効果を活用したスケジュール管理は、生産性の向上につながります。中途半端なままの物事には違和感を持ち続けるというツァイガルニク効果を活用すると、作業効率がアップするのです。

例えば、ミーティングまでにこのタスクを完了させるという目標を持つと、中途半端で終えたくない気持ちが働き、効率良く作業ができるでしょう。

深い印象を与える

ビジネスシーンでは相手の印象に残ることも重要です。相手へ効果的に印象を与えるためにも、ツァイガルニク効果が活用できます。

例えば、流暢できっちりまとめられたプレゼンテーションは、聞き流されてしまい印象に残りにくいといわれています。プレゼンテーションの内容が良いものであることは大前提ですが、相手の要望や課題をヒアリングしながら、確認事項を持ち帰ったり質問を振っておいたりするなどし、敢えて全てを伝え切らないことで相手に深い印象を与え、次につなげられるといわれています。

ツァイガルニク効果の事例

ツァイガルニク効果の活用をより具体的にイメージするために、2つの事例を紹介します。

ブルーマ・ツァイガルニクによる実験

ソビエト連邦の心理学者だったブルーマ・ツァイガルニクは、ツァイガルニク効果の仮説を検証するために実験を行いました。

この実験では、被験者164名にいくつかの簡単な作業をさせました。その作業のうちのいくつかは途中で意図的に作業を中断させて、別の作業を行うよう促します。実験後、被験者には、割り当てられた作業を覚えている限り書き出してもらいました。

一見すると、最後までやりきった作業の方が記憶に残るように思えますが、実験の結果、中断させられた作業は最後までやりきった作業より90%も多く記憶されていたそうです。

この実験により、やりきった作業よりも途中でストップした作業の方が記憶に残りやすいことが証明されました

身近な事例

付録付きの雑誌を定期的に発行している『デアゴスティーニ』も、ツァイガルニク効果によって購入を促しているモデルです。

デアゴスティーニといえば、継続して購入することでコレクションが完成したり、フィギュアやプラモデルが少しずつ組み立てられたりする付録が特徴的で、長年にわたりファンやコレクターの心をつかんでいます。

デアゴスティーニの創刊号は通常価格よりも低価格で販売されています。興味のある人は気軽に購入できますが、それだけでは作品が完成しないため、「完成させたい!」というツァイガルニク効果がはたらき、継続した購入につながるのです。

ツァイガルニク効果が活用されているビジネスモデル

ツァイガルニク効果の、中途半端な事柄は続きが気になる、最後まで終わらせたいという心理現象は、ビジネスモデルとしても広く知られています。

マーケティング

「詳細はこちら」などの文言による誘導は、続きが気になるというツァイガルニク効果を活用したビジネスモデルです。チラシやテレビCM、webサイトなどを閲覧したユーザーを誘導し、集客や購入を促します。

また、伝えたい内容の一部分のみを表示したバナーや見出しは、ツァイガルニク効果によって印象に残りやすいとされています。

採用人事

採用説明会などの場で、最後まで話を聞いてもらったり会社に興味を持ってもらったりするために、ツァイガルニク効果を活用して参加者の集中力を高めるケースがあります。

プレゼンターは説明会の冒頭で「◯◯については後ほど詳しくお話しします」と前置きをし、情報の一部を開示しないまま進行します。そうすることで参加者に引っかかりのある状態を作り、「さっき話していた◯◯の話が気になる」という気持ちによって、集中力を高めるのです。

セールス

アポイントメント取得にもツァイガルニク効果を活用した事例があります。約束を取り付ける際、単に都合の良い日時を聞くのではなく、相手の興味や関心をひく話題を持ちかけたり、参考資料を送ったりし、「詳細は後日お話しする」と伝えることで、アポイントメントの取得率を大幅に上げることができるとされています。

ツァイガルニク効果の活用例

私たちの生活の中には、たくさんのツァイガルニク効果が活用されています。

質問形式や虫食い形式になったキャッチコピー

ツァイガルニク効果を活用している例として、キャッチコピーが挙げられます。

成功に導くための3つのテクニックとは?
秘訣は〇〇にあり!

というように、質問形式や虫食い形式のキャッチコピーを前にすると、人は答えが知りたいという気持ちになるのです。

また、CMに入る前に「この後、衝撃の結末!!」といったキャッチコピーを入れることもツァイガルニク効果を狙った例で、結末を意識させることで視聴者の離脱を防ぐ効果があるとされています。

情報の一部を無料や格安で提供する

情報の一部を無料または格安で提供しているサービスも、ツァイガルニク効果を活用しています。

例えば、漫画アプリで1巻だけ無料で読めるサービスがありますが、そこまで読んでしまうと、続きが気になって購入したいという気持ちになります。冒頭のみ無料で公開されているニュースも、続きを読むために会員登録をした人が少なくないはずです。

YouTubeで冒頭の10分ほどを公開し、続きを公開しているオンラインサロン等の有料サービスへ誘導するのも同様のケースです。

ツァイガルニク効果をビジネスに活かすコツ

では、どのようにツァイガルニク効果をビジネスに活かせるのでしょう。身近な活用方法を紹介します。

タスク管理を徹底する

ツァイガルニク効果は生産性を上げる反面、常に未完了のタスクを抱えている状態がストレスになることもあります。モチベーションや作業効率アップにツァイガルニク効果を活かすには、負荷をコントロールする必要があります。

そのためにはタスク管理を徹底しましょう。

いつ・どこまで・どのようにやるかをあらかじめ決めて仕事の区切りがつくようにすると、作業にメリハリがつきます

こまめに休憩をとる

未完の状態でいると違和感があるという特性により、休憩をとらずいつまでも作業をしていると、集中力が途切れ、かえって効率が下がったりミスをしたりすることもあるでしょう。

そうならないためにも、こまめな休憩をとります。

ツァイガルニク効果を利用した時間管理術としておすすめしたいのが、ポモドーロ・テクニックです。ポモドーロ・テクニックとは、25分仕事をしたら5分休憩するサイクルで仕事をして、集中力を高めるテクニックです。25分経ったらキリの悪いところであっても作業をストップしますが、ツァイガルニク効果によって休憩後すぐに業務に戻れるのです。

▶︎ポモドーロ・テクニック関連記事
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作業の時間を計測する

作業にメリハリをつけるためにも、作業時間の計測をおすすめします。すると、ツァイガルニク効果によるストレスのかからない適切な業務量を予想できるようになります。

日々の作業の記録を残し、最も生産性や効率の良い働き方を見つけ出すことができれば、適切な目標設定ができるでしょう。

まとめ

日常に隠れるツァイガルニク効果やその効果をはじめ、利用するメリットがわかりました。心理現象やビジネスモデルというと難しい印象を持つかもしれませんが、日々の会話などの小さなところから始めることができます。

自分を管理するため、そしてプロジェクトやチームのメンバーに効率良く作業をしてもらうためにも、ツァイガルニク効果を取り入れてみましょう。

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