行動規範とは?浸透させる方法やメリット・企業の実施例を紹介

企業の経営や組織の運営において、行動規範は従業員一人ひとりの行動の要となる重要な概念です。行動規範は策定さえすればよいものではなく、いかに従業員に浸透させて継続するかも非常に重要です。

本記事では行動規範の概念や重要性、浸透させるための方法などを解説します。企業の実例も紹介しますので、より現実味をもってとらえることができるでしょう。

行動規範とは

行動規範とは、企業や組織の中で大切にする価値観や指針を示したものを指します。「ミッション」「ビジョン」「バリュー」のうちの「バリュー」が行動規範にあたります。

「ミッション」とは企業や組織の存在意義、「ビジョン」は企業や組織が目指す方向性や目標、「バリュー」はミッションやビジョンを達成・実現させるための具体的な行動を意味します。具体的な行動のために、企業や組織としての考え方を言語化して、行動規範として定めるのです。

また、企業運営のために守るべき規律や法律、法的なリスクへの対応も行動規範には含まれます。

行動規範の基本原則

行動規範の概念には、以下の4つの基本原則があります。

1.人権(世界人権宣言に基づく):人権の保護、人権侵害への加担の禁止する
2.労働(ILOの原則に沿った):結社の自由の保護、強制労働、児童労働、差別を廃止する
3.環境:生態系と責任ある行動を支持し、環境にやさしい技術を推進する
4.反汚職:恐喝や贈収賄を含むあらゆる形態の汚職を防止する

4つの基本原則を根底に置いて、それぞれの組織や企業の実情に即した、独自の行動規範を策定します。行動規範の策定にあたっては、法令で決められた項目などは特にはありません。企業や組織において守るべき項目を策定していきます。

一例として、東京商工会議所の「企業行動規範」を参考にしてください。

行動規範を定める意義

企業や組織が行動規範を定めるのにはどのような意義があるのでしょうか。

行動規範を定めると、企業や組織の一員としてどう行動していくべきかの基準が明確になります。これにより、企業全体で統一化した行動が叶い、永続的な運営へと導いていくことができるでしょう。

企業や組織の存続や発展のために、行動規範を定めることは大きな意義があると言えます。

行動規範の必要性・策定するメリット

行動規範を定めることは、企業や組織にとって意義のあることだと解説しました。
ここからは、行動規範の必要性や策定のメリットは、具体的にどのようなところにあるのかを見ていきましょう。

あるべき姿の可視化

行動規範を策定するためには、遵守すべき法令や、企業や組織が目指す方向性などを整理することから始めなければなりません。あらゆることを棚卸ししてそれらを整理し、将来を見据えた長期的な姿を模索していきます。

議論を重ねてあるべき姿を可視化していくことは、企業の成長にとても重要です。

企業文化が醸成される

行動規範を従業員に浸透させることにより、企業や組織内の価値観や判断基準などを共有することができます。行動規範の定着や浸透は、従業員個々が企業文化や風土を理解することに繋がります。

行動規範を土台に企業文化が根付き、醸成されていくでしょう。

企業ブランド力強化

行動規範は内部だけでなく、外部に発信することでも効果を発揮します。
顧客や取引先へ積極的に周知することにより、ブランドイメージへの理解が深まり、企業ブランド力の向上が期待できます。

企業のブランド力強化は、企業の信頼を向上させたり採用活動にも良い影響を与えたりします。

従業員のモチベーションアップ・エンゲージメントの向上

行動規範が従業員に浸透していくと、企業の指針が明らかになり、どのような考えで行動すべきかや求められる姿などが理解できるようになります。

その結果、行動規範に基づいた上で、従業員自身で自由に仕事をアレンジすることができます。自らで決定をしながら仕事が進められるため、モチベーションや自己決定力、エンゲージメントが向上するでしょう。

人材育成の促進

行動規範は人材育成の促進にも効果的です。

行動規範により、企業が求める考え方や価値観の共有が行えるので、企業イメージがしやすくなります。個々の従業員のやるべきことが明確になり、積極的に業務に取り組むことができるでしょう。

自社への誇りやモチベーションもアップします。

採用力向上・離職率低下

行動規範が明確になっていると、企業が求める人物像が見えてきます。求職者は、自身の興味関心や考え方に合っているかを事前に検討した上で応募が可能になります。

また、採用する側も採用基準が明確になり、企業の風土や考え方に適した人材を選ぶことが叶うため、ミスマッチが起きにくくなるでしょう。採用力が向上することは、離職率の低下にも繋がります。

行動規範を浸透・定着化させる方法

行動規範は策定するだけでなく、浸透させたり定着化させたりすることも重要です。
浸透や定着化をさせるには一定程度の時間を要することを念頭において、以下の方法を実践していきましょう。

経営者のメッセージを従業員に伝える

行動規範を策定したら、まずは経営者自らが従業員へ伝えることが大切です。
行動規範策定の意義や目的、企業が目指す形や思いを自身の言葉で説明しましょう。

経営者の思いが伝わり、従業員が理解することから行動規範の実践が始まります。

マネジメント層の実践

行動規範の浸透のためには、まずはマネジメントをする立場の人間がしっかりと実践することも大事です。行動規範に則った意思決定や行動を心がけましょう。

マネジメント層が実践しているか否かは、従業員への浸透に大きく左右します。行動規範を意識した行動を、より一層実践して従業員に示すことが重要です。

繰り返し発信

行動規範を一度周知してそのままでは、理解して実践できる従業員はほとんどいないでしょう。繰り返し発信を続けることで、徐々に浸透していきます。

全社会議の冒頭や朝礼などで繰り返し取り上げて、行動規範の考え方や注意点などを解説する機会を設けましょう。社報や掲示板などを利用して、目にする機会を増やすのもよいでしょう。

実際の業務と結びつけさせる

行動規範を浸透させるには、実際の業務とどう結びつくのかを理解させることが大事です。

具体的な事例を挙げて、行動規範に基づいた行動の仕方や考え方をレクチャーしたり、従業員同士でディスカッションしたりすることで、浸透させていきます。

推進体制の構築

行動規範の浸透は、経営陣やマネジメント層からの働きかけだけでは成り立ちません。社内全体として推進していけるように、推進体制の構築を検討しましょう。

推進メンバーを中心として、推進活動の計画を立案し、実施していきます。

理解度や定着度合いの計測

行動規範が浸透しているかを把握するために、定期的に理解度や定着度合いの計測を実施するとよいでしょう。

社内アンケートの実施などで、理解度や定着度合いを計測し、その結果を元に推進活動の内容を検討したり、場合によっては行動規範の内容の見直しを提案したりします。

見直しの実施

理解度や定着度合いの計測により、行動規範の見直しの必要性を感じたり、社会情勢などにより行動規範が実態とそぐわなくなったりしたら、見直しの実施を検討しましょう。

経営陣や策定メンバーにて検討会を実施して、より良い内容に見直していくことにより、継続的な定着に繋がるようにします。

行動規範の実例

行動規範を策定して、効果的に運用している企業を5社紹介します。ぜひ策定される参考にしてください。

トヨタ自動車株式会社

自動車業界大手のトヨタ自動車株式会社では、1992年に制定された「トヨタ基本理念」に基づき、「トヨタウェイ2020」と共に「トヨタ行動指針」が策定されています。

世界中のトヨタで働くトヨタの従業員が、使命を果たすために心がけるべきことをまとめています。2023年10月に最新版が刊行され、時代に即した内容に記載が改められるなど、進化を続けています。

トヨタ行動指針

東京ディズニーリゾート

東京ディズニーリゾートでは、あらゆるゲストが幸福を感じられる場所であってほしいというウォルト・ディズニーの思い「ファミリー・エンターテイメント」の基本コンセプトの実現のために、パーク運営の行動規範を定めています。

Safety(安全)
Courtesy(礼儀正しさ)
Inclusion(インクルージョン)
Show(ショー)
Efficiency(効率)

「The Five Keys〜5つの鍵〜」と呼ばれる上記5つの行動基準に従って、キャストが自身で判断や行動をしています。

パーク運営の基本理念

Google

Googleでは「10の事実」と題して、以下を定めています。
また、これらのリストを随時見直し、変わりがないかを確認しています。

1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
2. 1 つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
3. 遅いより速いほうがいい。
4. ウェブ上の民主主義は機能する。
5. 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
7. 世の中にはまだまだ情報があふれている。
8. 情報のニーズはすべての国境を越える。
9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。
10. 「すばらしい」では足りない。

Google が掲げる 10 の事実

UZABASE

UZABASEでは行動規範として以下の7つのバリューを掲げています。

1.自由主義で行こう
2.創造性がなければ意味がない
3.ユーザーの理想から始める
4.スピードで驚かす
5.迷ったら挑戦する道を選ぶ
6.渦中の友を助ける
7.異能は才能

そして、7つのバリューを多様なメンバーが理解できるように、「31の約束」を制作しています。「7つのバリュー」「31の約束」もホームページから閲覧できるようになっています。

7つのバリュー
31の約束

ローソン

ローソンでは具体的な行動規範を「ローソン倫理綱領」として制定しています。中でも、心がけるべき共通の考え方を「ローソンWAY」として定めています。

「ローソンWAY」は以下の5つです。

1.マチ一番の笑顔あふれるお店を作ろう。
2.アイデアを声に出して、行動しよう。
3.チャレンジを、楽しもう。
4.仲間を想い、一つになろう。
5.誠実でいよう。

グループ理念・ビジョン・ローソンWAY

まとめ

企業の考え方や守るべき法令、目指す方向性などをまとめた行動規範は、企業のミッションやビジョンを実現するためになくてはならないものと言えるでしょう。

しかし行動規範が策定されても、浸透や定着化がなされなければ形骸化してしまい、その意味をなしません。従業員一人ひとりが理解し実践していけるように、企業の実施例を参考に工夫が必要でしょう。

ぜひ本稿を参考に、独自の行動規範を策定し、浸透や定着化を目指しましょう。

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