インサイド・アウトという言葉をご存じでしょうか。
人は何か不都合なことが起きた時に、自分以外の相手や物、環境に原因や責任があると解釈してしまいがちです。ですが、そうではなく自分の内面を変えることで物事を良くしていこう、という考え方をインサイド・アウトといいます。
インサイド・アウトはスティーブン・R・コビィー著「7つの習慣」の中で提唱しています。
本稿ではインサイド・アウトの言葉の意味や「7つの習慣」について、また、インサイド・アウトの実践のポイントなどを紹介します。
インサイド・アウトとアウトサイド・イン
「7つの習慣」の中でインサイド・アウトは中核をなす大切な考え方ですが、その対局の考え方にアウトサイド・インがあります。
「7つの習慣」で説かれているインサイド・インの考え方はどのようなものなのか、アウトサイド・インの考え方と対比させて考えていきましょう。
そもそも「7つの習慣」とは?
インサイド・アウトの考え方を提言している「7つの習慣」は、アメリカで経営コンサルタントとして活躍した、スティーブン・R・コヴィー氏の代表的な著作です。1990年に出版されて以来全世界で4,000万部以上、日本でも250万部以上の発行部数を誇る、ビジネスパーソン必読のベストセラーといっても過言ではないでしょう。
著書の中でコヴィー氏が唱えているのは、成功につながるために重要な「7つの習慣」です。テクニックで得られた成功は長続きはせず、真の成功は人間として価値のある人格を手に入れることであると説いています。以下がコヴィー氏が唱える7つの習慣です。
第1の習慣: 主体的である
第2の習慣 :終わりを思い描くことから始める
第3の習慣 :最優先事項を優先する
第4の習慣: Win-Winを考える
第5の習慣 :まず理解に徹し、そして理解される
第6の習慣 :シナジーを創り出す
第7の習慣 :刃を研ぐ
インサイド・アウトは、これらの7つの習慣を実践して人生の成功を得るための根本となる、重要な考え方とされています。
インサイド・アウトとは?
インサイドとは自分の内面を指します。自分の考え方や物の見方・行動・人格などが原理原則に則っているかを自分自身で見つめ、自分の内面を気にかけ、自分を変えていくことで外部を良い方向へ変えていこうとするのが、インサイド・アウトです。
物事が上手くいかなかった事象が起きた時、その原因を他人や環境など自分の外側にあると考えるのではなく、自分のここがよくなかったかもしれないから、次回は改めてみようとする考え方です。
インサイド・アウトの考え方を身につけると、自然と主体的な行動ができるようになり、自分自身を成長させることができるのです。
アウトサイド・インとは?
一方、アウトサイド・インはインサイド・アウトとは真逆の考え方です。問題の原因を自分の外側にあると考え、相手のせいにしたり環境の変化を求めたりしてしまいます。
アウトサイド・インの考え方では、物事に対して主体的に行動することはできません。また、アウトサイド・インの考え方で過ごしていても物事は好転せず、望んでいるような結果は得られないでしょう。
アウトサイド・インで考える人が多い理由
前述のように、アウトサイド・インの考え方では主体的な行動ができず、自分自身の成長は望めません。それどころか、物事が好転することもないでしょう。
にもかかわらず、アウトサイド・インで考える人は多くいます。自分自身のことを振り返ると、問題の原因を相手や環境のせいにしてしまった経験がある方は多いのではないでしょうか。
ではなぜ、アウトサイド・インで考える人が多いのでしょうか。それは、問題の原因が自分にあることを認めたくないという思いがはたらくからです。また、問題の原因を相手のせいや環境の問題だと捉えることで、自分の気持ちが楽になるからです。
しかし、アウトサイド・インの考え方では問題は解決せず、状況も改善はしないでしょう。
自分自身の成長や物事の好転を望むのであれば、インサイド・アウトの考え方で自分の内面と向き合うことが大切です。
インサイド・アウトの考え方を身につける方法
ここからは、どのようにしたらインサイド・アウトの考え方が身につくのか、「7つの習慣」の中から読み解いていきましょう。
個性主義と人格主義
コヴィー氏が成功者の文献について調査を進めると、社会的イメージの作り方や交渉術など、その場しのぎのテクニックなどが多く取り上げられ、どれも表面的であることに気がつきました。このような考え方を「個性主義」とコヴィー氏は定義しています。
個性主義は二次的なものであり、まずは一次的な「人格」を磨かなければ、本当の成功は果たせません。人間の内面にある人格的なものを重視することを「人格主義」とし、「7つの習慣」は人格を磨く基本的な原則を、具体的に定義しているのです。
原則中心
「7つの習慣」は人格を磨くための原則をまとめた書籍とも言えます。第1の習慣から第7の習慣のそれぞれで、基本的な原則を取り上げています。コヴィー氏は、自分の中心に「原則」をおくことが大切だと説いています。
人生において、お金や仕事・家族・友人・娯楽などはとても大切なものです。しかし、どれかに偏ってしまうと、真の成長は難しくなるでしょう。
掲げられた原則を守ることで人格を良い方向へ自らが変化をさせると、良い結果をもたらし、新しいパラダイムを手に入れることができるとコヴィー氏は説いています。
パラダイムシフト(転換)
パラダイムとは物の見え方や考え方を指します。人は、それぞれの経験や体験、育ってきた環境を土台に物事を見ているため、同じものを見てもパラダイムが異なります。
例えばプロジェクトチーム内で、ひとつの事象に対して見解に相違が生まれるのは、メンバーそれぞれパラダイムが違うことによるものです。つまり、私たちはパラダイムに支配されているといえるでしょう。
自分の人格を良い方向へ変化させるためには、まずはパラダイムを転換させる必要があります。このパラダイムの転換を、コヴィー氏は「パラダイムシフト」と表現しています。
私的成功と公的成功
成長には、依存→自立→相互依存の3つのステップがあるといわれます。
このうちの依存状態から自立へと成長した状態を、「7つの習慣」では私的成功と呼び、第1の習慣から第3の習慣までを習得することで、私的成功の習慣が得られると説いています。
第1の習慣から第3の習慣の実践は、自分自身を見つめて、自分の本質と向き合う時間になります。目指したい自分になるために、内面を意識しながら実践することで、依存状態から脱却して精神的な自立を果たすことができるでしょう。
一方、自立を果たし相互依存へと向かうステップを、公的成功と呼んでいます。自立した人同士が支え合い、協力しながら、成功を手に入れるまでのステップとなり、「7つの習慣」では第4の習慣から第6の習慣が該当します。
トリムタブ
トリムタブとは、船舶用語で船についている小さな舵のことです。タンカーのような大きな船を動かすのには大きな舵が必要ですが、その大きな舵を動かすのに必要なのが小さな舵、トリムタブです。
トリムタブを動かすことで水の流れをコントロールして大きな舵を動かし、大きな船の進路を変えることができるのです。
同じように、私たちの小さな変化や成長が、プロジェクトや企業を大きく動かす原動力となる可能性があるのです。
インサイド・アウトを実践するポイント
インサイド・アウトは自分自身を見つめ、変化させる考え方なので、自分のみで実践が可能です。相手の都合などを考える必要がないので、実践しやすいともいえるでしょう。
最後にインサイド・アウトを実践するポイントを紹介します。
自分から変わろうと心がける
自分自身のことなので、とにかく自分から変わろうと心がけましょう。
問題が起きた時にも、他人や環境のせいにしないように意識することが大切です。
自分自身が変わろうと考えるように意識することで、インサイド・アウトの習慣がつき、自然と身についていきます。
人のせいにしない
問題が起きた原因は自分にある、自分の内面を変えよう、というインサイド・アウトの考え方を持つために、まず「人にせにしない」と自分に言い聞かせると良いでしょう。
問題が起きた時に「〇〇のせいだ」とアウトサイド・インの考え方が浮かんでしまうと、
インサイド・アウトの考え方に到達するまでに、自分の中で回り道をしてしまいます。まずは「人のせいにしない」という考え方を実践することが、インサイド・アウトへの近道となるでしょう。
まとめ
スティーブン・R・コビィー氏の著書「7つの習慣」は、発売から月日が経過した現在でも、多くのビジネスパーソンが指南書として求める名著です。
7つの習慣を実践するための根本となるインサイド・アウトの考え方は、ビジネスだけでなく日常生活を円滑に豊かにするために大事なものです。日々意識することが成長につながり、貴方の成長が組織を良い方向へと導くトリムタブになるかもしれません。
本稿を読んだ今日から、実践してみてはいかがでしょうか。