コーチングとは? ティーチングとの違いや使い分け、手法を解説

働き手不足が問題視される昨今、貴重な人材をどのように育成するかは企業にとって重要な課題です。本稿ではコーチングやティーチングのメリット・デメリットや使い分け、コーチングの手法を解説します。人材育成を効果的に行うために、知っておいて損はありません。

コーチングとは

人材育成方法としてよく耳にする「コーチング」ですが、そもそもどんなことをするのでしょう。コーチングの概念を知ることから始めましょう。

コーチングの意味

コーチング(coaching)の語源であるコーチ(coach)は、四輪大型馬車、長距離用バス、客車などの意味を持ちます。これらは全て目的地まで送り届ける手段であることから、コーチングは「目標達成を支援する」という意味で使われるようになりました。

コーチングは相手の話に耳を傾け、観察や質問を繰り返すことで自分では気づいていない本質的な答えを引き出す目標達成の手法です。

主に1対1で行い、何かを指示したり教えたりすることはありません。適切な質問をすることで相手の持つ考えや視点を引き出し、自力で答えを見つけ出すように気づきを与えるのがコーチングです。

コーチングによって目指すものが明確になり、自発的な行動につながります。そのため、相手の自己実現や目標の達成を促すために効果的な方法だと考えられています。

一人で悩んでいると視野が狭く固定されがちで、置かれた環境や周りの価値観に縛られてしまうことは珍しくありません。コーチングによって、自分では引き出すことのできなかった視点を発見し、物事を多角的にとらえる力が養われるのです。

ティーチングとの違い

コーチングと並んでよく使われるのがティーチング(teaching)です。教える(teach)に由来する言葉で、経験が少ない相手に対し、ナレッジや経験を持つ人が自分の持っているノウハウやスキルなどを具体的に伝えることをいいます。


人材育成にはコーチングとティーチングの2つの手法を使い分けると良いとされています。次章から、それぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう。

コーチングのメリット・デメリット

まず、コーチングのメリットとデメリットを挙げてみましょう。

コーチングのメリット

コーチングの大きなメリットは、自分で考える習慣が身に付くという点です。先のことを予測するのが難しい昨今、求められるのは自立した人材であることから、これは大きな強みになるはずです。

さらに、自分で導き出した答えであれば、高いモチベーションを持って能動的に動くことができるでしょう。

また、企業や組織におけるコーチングは、上司と部下の良好なコミュニケーションを構築します。

コーチングのデメリット

コーチングは大人数を相手にできないため、効率が良いとはいえません。時間をかけて丁寧に行うことから、すぐに成果が得られないことや、相手の中にある答えを導き出すため、相手の経験値が低い場合は引き出すことのできる答えに限りがあるということもデメリットです。

また、コーチングを行うためにはスキルが必要な上、信頼関係が構築されていない間柄では、本来の気持ちを引き出すことが難しいでしょう。

ティーチングのメリット・デメリット

では、ティーチングはどうでしょう。こちらもコーチング同様にメリットとデメリットがあります。

ティーチングのメリット

ティーチングであれば、短い時間で必要な情報や技術を伝えることが可能です。一度に受け入れできる人数に限りがなく、一度に大勢の人を育成することができます。

ティーチングはロジカルで明確な学習プロセスであり、相手はすぐに理解して習得できるでしょう。

ティーチングのデメリット

ティーチングができるのは、教える側が持つ知識や経験の範疇のみであり、それ以上の知識や経験を伝えることができません。また、教える人と教わる人のやりとりは一方通行になりがちです。

ティーチングに頼りすぎると自分の頭で考えなくなり、自立が促せないことや、相手の潜在的なアイディアを活かすことができないという点もデメリットとなるでしょう。

コーチングとティーチングの使い分け

このようにコーチングとティーチング、どちらにもメリットとデメリットが存在します。そのため、状況や立場によって組み合わせや使い分けをし、デメリットを補います

相手の経験やスキル、仕事の重要度や緊急度などを基準に、どちらを用いて人材を育成するか判断するといいでしょう。

この章では、コーチングやティーチングがどのようなシーンで有効かをまとめてみました。

コーチングが有効なケース

相手がある程度の経験やスキルを持っていれば、相手の中にあるものを導き出し活用する手助けができるコーチングが有効です。

ただし、コーチングは気づきを与えながら本質を引き出していく手法のため、時間がかかります。そのため重要度や緊急度が高い場合には難しく、重要度や緊急度が低い場合に適しています。キャリアデザインやチームマネジメントなど、今後の大きなビジョンについてじっくり時間をかけて考える時に行うといいでしょう。

ティーチングが有効なケース

一方、重要度や緊急度が高い場合には、時間を要さずにできるティーチングが向いているといえます。相手の経験やスキルが不足している時は、ティーチングによって具体的な方法を教え、基礎的な力を身につけることで、初動を早めることができます。

コーチングのやり方

コーチングでは「傾聴・質問・承認」を徹底することが重要です。話をすることで思考や感情が整理されるのはもちろん、話に耳を傾けてもらえることで、大切にされていると感じ、自己重要感を満たすことも目的です。

本稿の最後に、コーチングの具体的な手法を、順を追って解説します。

現状確認

現状確認は「プレ・コーチング」とも呼ばれ、コーチングのための環境を作るプロセスです。コーチングを行うコーチは、声のトーンや話し方、表情などに気を配り、話しやすい雰囲気を整えます

コーチングは基本的に1対1で行いますが、話をすることに身構えてしまい、十分に相手の気持ちを引き出すことができないこともあります。コーチングに入る前に、信頼関係や協同関係を構築し、話しやすい環境作りを心がけましょう。

目標・ゴールの明確化

「どうありたいのか」「どうなりたいのか」「何をしたいのか」など、本質的な目標を掘り下げていきます。このプロセスによって、乗り越えなければならない課題が浮き彫りになり、目的を達成するための思考や行動に移りやすくなるのです。

ここで心がけるべきは、相手や自分の憶測や主観ではなく、事実確認をすることです。目標やゴールを明確にするには、5W1H(誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように)の観点で対話を進めるとよいとされています。


また、自発的に考える習慣が身に付けば、目標への過程で壁にぶつかったとしても、自力で立て直すことができるようになるでしょう。

目標・ゴールの明確化は、現状との比較になくてはならないプロセスです。ゴールがイメージできると自省が促され、モチベーションがアップし目標達成への行動力になるでしょう。

ゴールの先にある「本当の目的や欲求」を明確に

通常、ゴールの先には「本当の目的や欲求」が存在します。「なぜ目標を実現したいのか」「問題を解決するメリットは何か」を掘り下げます。

これらは心の深い部分にある価値基準や強い欲求に紐づいているため、人の行動を後押しする熱量を引き出し、目標達成や問題解決に大きな力を与えてくれます。

この先コーチングを進めるにあたり、ここで明確にした「本当の目的や欲求」まで叶えられるのか、という点は常に意識をしましょう。

達成を妨げる問題や課題の洗い出し

目標に向かうにあたり、問題や課題となりうる要素を洗い出します。これにより、目標を達成するために、どのように課題をクリアするかを明確にできるので、ゴールの達成度合いが大きく変わるといっても過言ではありません。

固定観念に縛られ自分の現状を正しく理解できていなかったり、問題の所在を受け入れていなかったりする傾向があっても、コーチングによって気づきを得ることができるのです。

必要なリソースの把握

今置かれている現状や抱えている問題をふまえ、目標と現実との間にあるリソースの差異を把握します。そのためにも、目標の達成に必要なリソースと現状あるリソースを明確にしましょう。

時間やお金、人間関係、スキル、経験、環境など、リソースの差異を埋めるために何をすべきかをコーチングによって導き出します。

行動計画の立案

目標達成に向けた行動計画を練ります。ここでも5W1Hを基準にし「何を、いつまでに、誰と、どこで、どのように行うのか」を具体的に考えていきます。

行動計画に対して「何からやるか」「いつまでにやるか」など、相手の意思を確認しながら意欲を引き出しましょう。

コーチングは行動計画を作り、行動を促して終わりではありません。この次のステップが非常に重要となります。

フォロー・振り返り

定期的に進捗確認やフィードバックを行います。

計画通りに進めているのであれば相手の行動を承認し褒め、行動に移せていなければ「どうして行動できなかったのか」を聞き、「次に何をすべきか」「どのように改善すべきか」を分析するようにしましょう。

まとめ

コーチングを行う上で何より大切にしたいのが「コーチングにおける主体は相手である」ということ。コーチの役割は、相手が自ら考え、気づき、アクションを起こせるようにサポートすることです。

コーチングやティーチングは相手の成長を左右する重要な手法です。企業の成長を担う優秀な人材を育てるためにも、コーチングやティーチングを実施してみてはいかがでしょう。正しく導入することで、人材育成の質は大きく向上するはずです。

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