アサーティブコミュニケーションとは?意味や具体例・DESC法についても紹介

アサーティブコミュニケーションとは、相手を尊重しながら自己主張するコミュニケーションスタイルです。

コミュニケーションの活性化や良好な人間関係の構築に良い影響を与えることから、ビジネスシーンでも重要視されています。

本稿では、アサーティブコミュニケーションとは何かを解説するとともに、実践に役立つDESC法やシチュエーション別の具体例について紹介します。

アサーティブコミュニケーションとは?

アサーティブコミュニケーションとは、アサーティブ(assertive)とコミュニケーション(Communication)を組み合わせた言葉です。

アサーティブには、「はっきり自己主張する」という意味があります。ここでの自己主張は、一方的に自分の意見や考えを伝えることではありません。アサーティブが意味する自己主張とは、相手を尊重したうえで、自分の意見を伝えることです。

コミュニケーションとは、自分以外の人と意思疎通を図る行動を指します。

つまり、アサーティブコミュニケーションとは、自分の意見を押しつけたり、我慢したりするのではなく、お互いを尊重したうえで考えや意見を交わすコミュニケーションスタイルです。

アサーティブコミュニケーションを身につけるメリット

アサーティブコミュニケーションには、さまざまなメリットがあります。
ここでは、サーティブコミュニケーションの主なメリットを3つ紹介します。

円滑な意思疎通

アサーティブコミュニケーションでは、自分の意見を伝えるときに、必ず相手の気持ちに配慮するため、円滑な意思疎通が可能となります。

円滑な意思疎通が実現すると、チームとしての結束は強まり、組織としての生産性向上も見込めます。

健全な人間関係の構築

お互いがアサーティブコミュニケーションを身につけることで、攻撃的な自己主張は減少するでしょう。安心して意見を交わせるようになり、健全な人間関係の構築が実現します。

メンタルヘルス対策

自分より立場が上の人が多い職場では、萎縮してしまい、自分の意見を伝えられません。悩みやストレスを抱え続けた状態では、やがて健康障害を起こす恐れがあります。

アサーティブコミュニケーションを身につけると、批判を恐れることなく上司に意見が言えるようになり、メンタルヘルスを良好に保てます。

アサーティブコミュニケーションの実践を支える4つの要素

では、アサーティブコミュニケーションはどのように身につけるのでしょうか。

アサーティブコミュニケーションは、以下の4つの要素から成り立っています。

・誠実
・率直
・対等
・自己責任

これら4つの要素を意識することで、自然とアサーティブコミュニケーションが実践できるとされています。それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。

誠実

誠実とは、私利私欲にとらわれるのではなく、真心をもって人と向き合うことです。

アサーティブコミュニケーションでは、相手に対してだけでなく、自分に対しても誠実である必要があります。相手の考えを受け入れ、自分の考えもしっかりと示すことが大切です。

率直

率直とは、自分の気持ちを飾ったり隠したりせず、ありのままでいることです。

相手によって解釈が異なるような、曖昧な表現は避け、率直な気持ちを伝えましょう。「私は〜だと思います」「私は〜してほしいです」など、主語を自分にすると、相手を尊重しながら自己主張もできます。

対等

アサーティブコミュニケーションでは、年齢や役職にかかわらず、対等に向き合います。言葉遣いや態度は、関係性によって調整が必要です。しかし、自己主張は相手との関係性に左右されることなく、対等に行われるべきです。

必要以上に謙遜したり横柄な態度をとったりすることなく、対等な態度を心がけましょう。

自己責任

アサーティブコミュニケーションの実践には、自分の行動の責任は自分にあるという意識を持つことが重要です。

たとえ、コミュニケーションの結果に不満があったとしても、第三者に責任転嫁するのではなく、自分の発言が招いた結果として受け入れましょう。

自己主張に関するコミュニケーションスタイルの3つのタイプ

自己主張に関するコミュニケーションスタイルには、大きく分けて3つのタイプがあります。

3つのタイプとは、「アグレッシブ型」「ノンアサーティブ型」「アサーティブ型」です。それぞれのタイプについて、詳しく見ていきましょう。

アグレッシブ型

アグレッシブ型とは、自己主張を積極的かつ一方的に行うタイプです。

アグレッシブ型コミュニケーションの例は以下です。

・相手を見下した発言が多く、威圧的なトーンや言葉で発言する
・他者の話を途中で遮り、自分の意見を押しつける

アグレッシブ型は、相手の気持ちを軽視する傾向があり、自分の意見を主張することが最優先です。意見が食い違った際には、攻撃的な態度を取ることもあります。

過度なアグレッシブ型コミュニケーションは、パワーハラスメントにもつながるため、注意が必要です。

ノンアサーティブ型

ノンアサーティブ型とは、自分の感情や意見よりも相手を優先する受け身タイプです。

・自主的な発言はなく、他人の意見に同調する
・質問をされても、曖昧な返事しかしない

ノンアサーティブ型は、自分の意見や感情をはっきりと示さないため、相手と意見がぶつかったり、対立したりすることは少ないでしょう。しかし、相手の要求を優先しすぎるあまり、不満が溜まり、精神的ストレスを抱える可能性があります。

我慢しすぎると感情が爆発し、ノンアサーティブ型からアグレッシブ型へと転換する危険性も潜んでいます。

アサーティブ型

アサーティブ型とは、相手を尊重したうえではっきりと自己主張ができるタイプです。

アサーティブ型コミュニケーションの例は以下です。

・自分の意見を具体的かつ伝わりやすい言葉で述べる
・意見が対立している相手とも建設的な話し合いができる

アサーティブ型は、たとえ意見が食い違ったとしても、相手を否定することもなければ、自分の意見を抑制することもありません。相手の権利と自分の権利のどちらも尊重できる、理想的なコミュニケーションスタイルといえるでしょう。

アサーティブコミュニケーションの実践に役立つDESC法

アサーティブコミュニケーションを実践するための手法に「DESC法」があります。

DESC法とは、Describe・Explain・Specify・Chooseの4つ単語の頭文字をとった言葉で、「デスク法」と読みます。

DESC法は、アサーティブコミュニケーションを4ステップに分解したものです。4つのステップを順番にクリアすることで、アサーティブコミュニケーションを実践できます。

Describe(事実を描写する)

アサーティブコミュニケーションでは、まず状況や問題などの事実を客観的に描写し、事実のみを伝えます。

たとえば、相手が待ち合わせに10分遅れてきた場合は、「あなたが待ち合わせに10分遅れた」ことのみが事実です。「待ち合わせに10分も遅れて、だらしない」「10分も待たせてどういうつもりだ」などのように、自分の感情や憶測、相手への評価などは加えないことがポイントです。

Explain(気持ちを説明する)

続いて、事実に対する自分の意見や気持ちを説明します。ここでのポイントは、相手を責めたり攻撃したりするのではなく、自分の感情に焦点を当てることです。

相手が待ち合わせに10分も遅れてきたことに対し、「不安になりました」「何かあったのではないかと心配しました」など、自分の率直な気持ちを説明します。自分の気持ちを説明するとはいえ、感情的に伝えるのではなく、冷静に伝えることを意識しましょう。

Specify(求めるものを提案する)

事実を描写し、気持ちを伝えた後には、解決策や打開策などの自分が求めるものを提案します。

「遅刻しないでください」といった抽象的な要求よりも、「時間に遅れる場合は、事前に連絡をいただけますか?」のように具体的な提案をしましょう。

ここで注意したいのが、あくまでも提案であって、命令や強制ではないということです。相手の同意を得られるよう丁寧に伝えます。

Choose(相手の反応に対する行動を選択する)

最後に、相手の反応に対する行動を選択します。

要求や提案は、必ずしも受け入れられるとは限りません。たとえ提案が断られたとしても、感情的になるのは禁物です。柔軟な対応ができるよう、複数の選択肢を用意しておくと良いでしょう。

相手の意見を聞いたり、再度解決策を提案したりしながら最適解を導くことで、アサーティブコミュニケーションが実現します。

【シチュエーション別】アサーティブコミュニケーションの具体例

ビジネスシーンで考えられるシチュエーション別に、アサーティブコミュニケーションの具体例を紹介します。ぜひ参考にしてください。

困難な依頼を断る場合

ビジネスでは、困難なお願いをされることも少なくありません。とくに、依頼主が上司や顧客の場合は、依頼を断りづらいものです。

ここでは、上司から今日中に資料を作成してほしいと依頼されたが、自分の仕事で手一杯なので断りたい場合の、アサーティブコミュニケーション例を紹介します。

1.Describe
まずは、「自分の仕事が手一杯で、時間を割けない状況です」と引き受けられない事実を伝えます。

2.Explain
「できません」と伝えるだけでは、突き放したような印象を与えてしまいます。「ぜひ引き受けたいのですが、自分の仕事もあるため、今日中の提出は難しいです。」と自分の気持ちを説明しましょう。

3.Specify
「納期を明日まで延ばしていただければ、引き受けられるのですがいかがでしょうか」と、具体的な提案を行います。できないという否定的な表現から肯定的な表現へと転換することで、相手は提案を受け入れやすくなります。

4.Choose(相手の反応に対する行動を選択する)
納期を延ばしてもらえるなら引き受ける、納期を延ばしてもらえないなら他のメンバーに依頼してもらうなど、お互いを尊重できる行動を選択しましょう。

上司に依頼した提出物のチェックを催促したい

上司がいつまでたっても提出物のチェックをしてくれないケースは、往々にしてあります。上司に敬意を払いつつ催促をしたい場合にも、アサーティブコミュニケーションが役立ちます。

上司に依頼した提出物のチェックを催促したい場合の、アサーティブコミュニケーション例を紹介します。

1.Describe
まずは、「先日提出した○○の期日が迫っています」と事実を伝えます。

2.Explain
早くしてほしいと思っていても、「早くしてください」「まだですか」といった催促する言葉は避けましょう。「期日が迫っているため、焦っています」と、自分の気持ちを丁寧に伝えます。

3.Specify
「提出物をご確認いただけますでしょうか」という提案では、後回しにされる可能性があります。「明日までに提出物をご確認いただけますでしょうか」と具体的な期日を明示した提案をしましょう。

4.Choose
提案を受け入れてもらえない場合は、「確認はいつ頃になりますでしょうか」「私に何か手伝えることはありますか」など、上司のスケジュールを尊重したうえで、自分の意見も尊重できる行動をとりましょう。

ミスの多い後輩へフィードバックをする場合

自分より立場が下である後輩へフィードバックを行う場合、高圧的なアグレッシブ型コミュニケーションになりがちです。パワーハラスメントにならないように十分注意しましょう。

ミスの多い後輩へフィードバックをする場合のアサーティブコミュニケーション例を紹介します。

1.Describe
個性や性格といった個人的な要素には触れず、客観的な事実である「業務上のミスが多い」ことだけを伝えます。感情的になったり、威圧的になったりしないよう、声のトーンや言葉遣いに気をつけましょう。

2.Explain
「ミスが多いとクライアントからの信用を損ない、今後の取引にも支障をきたさないかが心配だ」「ミスが多いと納期の遅延が発生して困る」など、ミスが多いことに対する気持ちを伝えます。相手を萎縮 させることがないよう、ここでも冷静さを保ちましょう。

3.Specify
「ミスを未然に防げるよう、作業手順を見直してはどうだろう」「わからないことは早めに質問してほしい」など、具体的な解決策を提案します。一方的な要求にならないよう、業務の偏りが発生していないか、困っていることはないかなど、部下の意見も取り入れると良いでしょう。

4.Choose
部下が提案に納得した場合は、具体的な行動へと移します。あくまでも、ミスの多さを指摘することが目的ではありません。お互いにスムーズな仕事を進めるためのコミュニケーションであることが伝わると、部下のモチベーションも維持できるでしょう。

提案を受け入れてもらえない場合、事実への解釈が異なっている可能性があります。そのような場合は、1つ目のステップであるDescribeに戻り、事実の確認から行いましょう。

まとめ

アサーティブコミュニケーションとは、相手の意見も自分の意見も尊重するコミュニケーションスタイルです。

職場で円滑な意思疎通や良好な人間関係の構築を目指すなら、ぜひ身につけたいコミュニケーションスタイルといえるでしょう。

アサーティブコミュニケーションはお互いに身につけることで、より効果を発揮します。ぜひ、職場やチームメンバー全員でアサーティブコミュニケーションの実践に取り組みましょう。

アサーティブコミュニケーションとは?意味や具体例・DESC法についても紹介
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