ストレス社会といわれるほど、現代はストレスにさらされているといっても過言ではないでしょう。そんな中でも「自分は大丈夫」「それほどストレスは抱えていない」と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、無自覚なストレスが存在することをご存じでしょうか。
自分ではストレスがないと思っていても、知らず知らずのうちにストレスを溜め込み、突然大きなストレスとなって表出してしまうことがあるのです。
そうならないために、本稿では無自覚なストレスとはどんなものなのか、気づく方法や対処方法などを解説します。早期にストレスを自覚し、改善できるようにしましょう。
無自覚のストレスとは?
ストレスとは、外部からの刺激や圧力などの影響により、心身が緊張状態に陥ることをいいます。業務においては、繁忙期で忙しく残業が続いている、チームメンバーと意見が合わない、上司から叱責を受けた、などの事象が挙げられます。もちろん、仕事だけでなくプライベートにおいてもストレスは起こり、ストレスがかかると心身にさまざまな反応があらわれます。
ところが、日頃からストレスを感じないように過ごしていたり、些細なことは我慢したりしていると、ストレスがあるのにストレスを自覚できなくなってしまいます。この状態を無自覚のストレスといいます。
無自覚なストレスが発生する原因
では、どうして無自覚なストレスが発生するのでしょうか。その原因を考えていきましょう。
ストレス状態に慣れてしまっている
先ほども例に挙げた、残業が続いている状態では、はじめは残業にストレスを感じていたとしても、残業が常態化すると次第に感覚が麻痺してしまい、ストレスを自覚できなくなる場合があります。
ストレス状態が長期化することで、ストレスがあることが当たり前となり、心身が慣れてしまうのです。
お酒やたばこなどに依存しストレスが解消したと感じている
ストレスを解消する目的で、お酒を飲んだりたばこを吸ったりする方もいるでしょう。その時はストレスが解消されたと感じるかもしれませんが、実はこれらの行為は一時的にストレスを和らげているにすぎません。
また、お酒やたばこへ依存してしまう危険性があり、身体への悪影響を及ぼしかねないため注意が必要です。
自分のストレスサインを自覚できていない
ストレスがある時に起きる症状は人により異なります。自分がストレスを感じた時にどんな状態になるのかを自覚できていないと、無自覚なストレスが発生してしまいます。
自分が発している些細な心身の変化を見逃さず、自分のストレスサインを自覚できるように意識しましょう。少しでも不調を感じたら、思い切って休むことも大切です。
無自覚のストレスを放置するとどうなる?
たとえストレスを自覚していなくても、ストレスを受けると心身にはさまざまな影響があらわれます。ストレスによる心身の不調は、軽度なうちに対処できれば改善も早いですが、無自覚のストレスは自分で気づくことが難しいかもしれません。
無自覚のストレスをそのまま放置し積み重ねていくと、やがてストレスは限界に達してしまい、うつ病などの精神疾患を引き起こす可能性もあります。自分がストレスを感じていないか意識を傾けるとともに、周囲の人が変化に気づくことも大切です。
ストレスで起こる身体的症状
無自覚のストレスに気づきやすくなるために、ストレスで起こる身体的な症状を理解しておくとよいでしょう。
前章で挙げたうつ病のほかにも、自律神経失調症・適応障害・急性胃腸炎など、医療機関を受診した方がいい病気や、眠れない・食欲がない・やる気がおきない・イライラする・怒りっぽくなった・不安でたまらないなどといった症状としてあらわれる場合もあります。
ストレスで起こる身体的症状については「ストレスが限界に達した時に出る症状とは?ストレス解消法についても解説」で詳しく解説しています。あわせて読んで確認してください。
ストレスが限界に達した時に出る変化
無自覚なストレスを抱えたまま、ストレスが限界に達するとさまざまな変化となってあらわれます。ここではプライベートで起こる変化と職場で起こる変化にわけて解説します。どちらの変化も自分で自覚できる場合と、自分では気づけず周囲が気づく場合とがあるでしょう。
プライベートで起こる変化
プライベートでは、以下のような変化があらわれます。自分だけでなく、家族にこのような変化がみられたら、無自覚のストレスが蓄積して限界に達しているかもしれません。
・今まで興味を示していた事柄に関心がなくなる
・身だしなみに気を遣わなくなる
・外出が億劫になり、家に引きこもりがちになる
・家族にイライラをぶつける
・ふさぎこむことが多くなる
職場で起こる変化
職場であらわれる変化には、以下の変化があるでしょう。中には業務に支障をきたす変化もあるため、早期に変化に気づき、対処することが肝要となります。
・無断欠勤や遅刻が増える
・今までしなかったようなミスをする
・クライアントや顧客からのクレームが増える
・部署内での会話に参加しなくなる
・退職希望を口にする
企業ができる無自覚のストレスに気づく方法
従業員が無自覚のストレスを抱えたまま業務を遂行し、心身に不調があらわれることは、本人にとっても企業にとってもマイナスでしかありません。
従業員が深刻な状況にならないように、企業ができる無自覚のストレスに気づく方法を紹介します。
ストレスチェック
従業員がメンタルヘルスの不調になるのを未然に防ぐ目的で、50人以上の従業員がいる企業には、年に一度のストレスチェックが義務化されています。
従業員が質問に回答する形式で行い、ストレスを数値化することで、無自覚のストレスを可視化することに役立ちます。
社内に相談窓口を設ける
ストレスチェックの結果、高ストレスではないと判定されても、さまざまな要因でストレスを抱え、心身に不調があらわれる場合もあります。
そのような従業員に向けて、気になることを相談したり、メンタルヘルスに関して質問できたりする相談窓口を社内に設けておくと、早期に気づくきっかけとなるでしょう。
医療機関などと連携
中には相談窓口では対応しきれない、重篤な症状を抱えている従業員もいるかもしれません。
ストレスにより起こる症状の中には、医療機関の受診が必要となる深刻なケースもあるため、早期に適切な治療を受けられるように、企業が医療機関と連携しておくことも重要です。
個人でできる無自覚なストレスへの対処法
無自覚なストレスを抱えたままにしておくと、気がつかないうちに心身に負荷がかかってしまいます。
そこで、ここからは個人でできる無自覚なストレスへの対処法を紹介します。
生活習慣の見直し
生活習慣が整っていると、ストレスの軽減が図れます。生活習慣を見直してみるとよいでしょう。
食生活の改善
必要な栄養素が不足していると、ストレスへの抵抗力が低下してしまいます。ストレス予防に効果がある食材を積極的に摂取するようにこころがけましょう。
ストレス予防に効果がある食材として、豚肉・卵・バナナ・ナッツなどのビタミンB群やブロッコリー・パセリ・芋類などのビタミンC、うなぎ・アボガド・大豆などのビタミンEなどが挙げられます。
睡眠の質の向上
良質な睡眠はストレスの軽減につながります。睡眠の質を向上させるには、睡眠時間だけでなく、睡眠のタイミングも重要です。
できれば睡眠の3時間前には夕食を終えて、ぬるめのお湯にゆったり浸かり、朝は日光を浴びましょう。
適度な運動
リモートワークや一日中デスクに向かう仕事では、運動不足になりがちです。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、ストレスの軽減に効果があるといわれています。
通勤時に一駅前から歩いたり、早朝や夜間にウォーキングしたりなど、意識的に運動を心がけるようにしましょう。
ストレス緩和法の実践
疲れやストレスを感じた時、緩和法を実践すると軽減につながるでしょう。
ここでは3つ紹介します。ぜひ実践してみてください。
軽く体を動かす
長時間パソコンの前での作業や立ち仕事などにより、無自覚のストレスが生じているかもしれません。
首や肩を回す、背伸びをする、トイレやお茶を入れに近くを歩くなど、意識して軽く体を動かすようにしましょう。
深呼吸
業務に追われストレスがたまると、知らず知らずに呼吸は浅くなってしまいます。時々深呼吸をすることでリラックスができ、体のこわばりが和らぐでしょう。
大きく息を吐くと、自然と大きく息を吸うことができます。深呼吸により副交感神経の働きが高まり、気持ちを落ち着かせることができるでしょう。
甘いものを食べる
脳が疲れている時に甘いものを食べると、脳内の快感中枢が刺激され、エンドロフィンやセロトニンというリラックス効果のある物質が分泌されます。
チョコレートやキャンディなどを食べることで、リラックスできるでしょう。ただし、食べ過ぎには注意が必要です。
適切に休息を取る
どんなに業務が立て込んでいても、適切に休息を取ることも忘れてはなりません。昼食時などの休憩時間は仕事のことは考えないようにするなど、オンとオフの切り替えをしっかりと行いましょう。
就寝前にストレッチや好きな音楽を聴くなど、リラックスタイムを設けるのもよいでしょう。
専門家に相談する
悩みや問題を抱えている時は、思い切って専門家に相談してみましょう。
厚生労働省では相談窓口の案内を行っています。電話やメール、SNSなどで気軽に相談することも可能です。
▶️厚生労働省:こころの耳「相談窓口案内」
また、内容によっては、身近な友人や家族、職場の同僚や上司などに相談してもよいかもしれません。誰かに話すことは、ストレスを軽減させる効果が期待できます。
副業や転職を検討する
ストレスの軽減対策を試みても、どうしてもストレスが軽減できない場合は、環境を変えてみるのもよいでしょう。
副業などで新しい仕事を始めたり、場合によっては転職を検討したりするのもひとつの方法です。今とは違う仕事に触れることで、新たな発見があったり、今の仕事の良さを再発見したりするきっかけとなるかもしれません。
まとめ
ストレスの多い現代社会では、ストレスを自覚し上手く解消をしていくことが重要です。
ストレスを感じていないと思っても、無自覚なストレスを抱えている可能性があることを自覚しておきましょう。
また、ストレスで起こる症状を理解しておくと、自分自身や周囲の変化を早期に発見することができます。対処方法を実践して、ストレスが限界に達することがないように毎日を過ごしていきましょう。