問題は、予告なく起こることがほとんどです。自分の判断だけではどうにもならず、誰かの力を借りないと解決できないような問題が起こったとき、どのようにしてプロジェクトをまとめたらよいのでしょうか?
今日は、問題が発生したときの「士気のマネジメント」について考えていきます。
プロジェクトの士気は、メンバーの気持ちの持ち方から
「士気」とは、大辞林によると「戦いに臨む、兵士の意気込み。また、集団で事に臨む人々の意気込み・熱意。」と説明されています。今回考えるのは集団、つまりチームで問題に臨む場合のメンバーの意気込みや熱意です。プロジェクトの「士気」について考える前に、まずは個人の気持ちの持ち方について考えましょう。
気持ちの持ち方で結果は変わる 身近な例「部屋の片付け」で考える
仕事に限らず、私たちの生活には「やりたいこと、やって楽しいこと」と「やりたくない、できれば避けて通りたいこと」があります。やりたくないことをやらずに過ごせるのであればよいのですが、どうしてもやらなければいけない場合も多くあります。
例えば、「部屋の片付け」を例にとって話をしましょう。「今日は疲れてるから、部屋の片付けは明日にしたいなぁ……」とイヤイヤ片付け始めても、片付けは進まず、部屋はなかなかきれいになりません。しかし、「明日は彼女が来るから片付けよう!」とウキウキして取り掛かると、いつもは億劫な片付けもやる気になることでしょう。本棚のホコリを取ったり、オブジェや花を飾ったりするかもしれません。同じ「片付け」という作業でも、イヤイヤやるのとウキウキやるのとでは結果は大違いなのです。
これは仕事にも当てはまります。仕事ではウキウキすることは少ないかもしれません。しかし、クライアントから「すごく便利になった!」と感謝されたり、上司や先輩に「よくやった」と褒められることを想像したりすることで、前向きな気持ちが湧きあがります。前向きな気持ちで仕事に取り組むと、仕事のアウトプットは変わってくるはずです。
プロジェクトの士気を考える
プロジェクトの雰囲気は、マネージャーやリーダーなど、チームを管理する立場の人が大きく左右します。例えば、メンバーを怒ったり怒鳴ったりするマネージャー・リーダーであれば、問題が起こった時、メンバーは「怒られる」と考えるようになります。これでは、メンバーが問題を隠蔽したり、報告をためらい遅れたりというリスクを高めてしまいます。反対に、メンバーを頭ごなしに叱らず、信頼して作業を任せてくれるマネージャー・リーダーであれば、問題が起こったときも報告がすぐに行なわれたり、「解決のためには何から作業すればいいか」とメンバーが自ら考えたり、と問題解決に向けてのアクションがスムーズに行なわれる可能性が高まります。
そのため、マネージャー・リーダーは、問題が起こったときに初めてプロジェクトの士気を考えるのではなく、常日頃からプロジェクトの士気を考えて行動するべきなのです。
問題が起こったとき 最初に気をつけたい2つのこと
問題が起こったときは、まず直接的な原因を特定します。
ただし、この時にその直接的な原因となった部分を担当(作成・開発)したメンバーを決して犯人扱いしないということに注意してください。そうでないと「自分のせいでプロジェクトに迷惑をかけてしまった」と責任を感じてしまうか、「これは自分のせいではなく、指示した○○さんのせいだ」「設計した○○さんが悪い」と他人の責任で生じたことを自分が尻拭いさせられているように感じてしまい、先に述べたような「前向きな気持ち」で仕事をすることができなくなってしまいます。
問題の原因となった行動をとった人を犯人扱いしたり責めたりしないという考え方は、航空会社大手のANAの整備部門でも取り入れられています。(参考:https://toyokeizai.net/articles/-/122126)ANAでは、問題を報告した部下には、叱ったり犯人扱いしたりするどころか、ねぎらいの言葉をかけるそうです。それにより問題を報告しやすく、ひいては事故を減らすことにつながっているそうです。
次に、プロジェクト内の他のメンバーが行なうことを明確にします。ここでのポイントは、決して原因部分を担当したメンバー一人にすべてを作業させないことが大切です。問題の原因を作ってしまったというだけでも精神的なショックが大きいのに、そのリカバリーを一人でしなければならないのは、さらに大きな精神的負荷を抱えることになってしまいます。さらに、一人で作業をさせてしまうと作業を押し付けられたと考えがちになり、「やらされている感」が生じてしまいます。そのため、他のメンバーを巻き込んでフォローすることが必要です。
問題解決のための作業を行う この段階で気をつけたい3つのこと
マネージャー・リーダーは、プロジェクトの責任者としてクライアントから叱責を受けてムシャクシャすることもあるかもしれません。そのような時でも決してメンバーに八つ当たりしたり、仕事を押し付けたりしてはいけません。
平常時では「リーダーは常に冷静でいるべきだ」「メンバーに八つ当たりしないなんて当たり前だ」と考えていても、問題発生時にカッとなってつい行動してしまうマネージャー・リーダーも多くいます。必要以上に悲観したり、明るくしたりする必要はありませんが、チームの雰囲気を作っているのは自分だということを意識しましょう。
その上で、「プロジェクト全体で問題を解決していこう」という姿勢を作ることが大切です。先ほど述べたように、問題となった作業を担当したメンバー一人だけではなく全員でリカバリーすることは、そのメンバーだけではなくチームの雰囲気や士気によい影響をもたらすのです。そのためには、メンバーそれぞれに分担した作業の状況をプロジェクト全体で見える化するのもいいでしょう。見える化することで、遅れている人や作業で困っている人がわかるようになり、メンバー間の助け合いもしやすくなります。
問題が発生すると「朝会」「夕会」などで集まり、メンバーに報告をしてもらうことも多いですが、口頭で聞いたことだと右から左に流れやすいだけでなく、「作業を中断したくないのに招集された」と、頭の中では作業の内容を考えて聞いてないメンバーも出てきます。そのため、ホワイトボードや模造紙などを使って、作業の進捗や問題点などを常に見えるようにしておくのがよいでしょう。Excelファイルなどの電子ファイルだと情報共有しているだけで、メンバーへの「見える化」にはならないこともあるので、あえてアナログツールを使うことをお勧めします。
まとめ 問題を解決するのは日頃の士気マネジメント
問題が発生したときは、パワーでゴリゴリ解決していくでもなく、淡々と黙々と解決していくでもなく「プロジェクト全体で」解決していくことが大切です。そのためには、日頃からプロジェクトの雰囲気を作っていくことが、問題発生時の「士気マネジメント」につながります。
皆、気分よく仕事をしたいものです。「自分のプロジェクトの雰囲気はどうかな?」とたまにはプロジェクト全体を見渡して考えてみましょう。