2020年に入り「新型コロナウイルスの影響で」という言葉を何回聞いたでしょう。確かに新型コロナウイルスは各国に数々の影響を及ぼしており、経済へも非常に大きな打撃を与えています。ウイルス感染拡大の心配もさることながら、このままでは経済へ与える影響が心配になる今日この頃です。
これほど社会にインパクトのある出来事があると、人々の価値観は変わると言えます。「オンライン○○」が急速に普及し、「リモートワーク」や「テレワーク」という言葉の認知度も驚くべきスピードで浸透しています。そして新型コロナウイルス騒動が去った後には「当たり前のもの」となっているかもしれません。
騒動が落ち着いた後の世の中がどのように変わっているか、自身の業界やクライアントのことをちょっと考えてみましょう。今はそれに備えるチャンスではないでしょうか。
リモートワークとは
リモートワークとは、特定の場所への出勤を伴わない働き方を指します。そのため、オンライン上でやりとりができる環境である必要があります。業務の中でオンライン化できることはありませんか?
新型コロナウイルスがいつまで影響を及ぼすか、現時点では分かりません。国をあげてリモートワークを推奨している今だからこそ、導入を検討してみてはいかがでしょう。新型コロナウイルスの影響を受け、国やリモートワーク先進各社のサポートが充実しているのが今なのです。騒動が終息した時に、世間から遅れをとらないためにも検討してみましょう。なお、本記事の情報は2020年3月現在のものとなります。
リモートワーク導入の助成金
新型コロナウイルスの影響で、リモートワーク導入に向けた数々の施策が打ち出されています。導入に費用がかかるのはコロナウイルスが蔓延してもしなくても同じこと。もし、オンライン化できる業務があるのなら、この機会をうまく利用してはいかがでしょう。
時間外労働等改善助成金
厚生労働省による「時間外労働等改善助成金(テレワーク、職場意識改善コース)」は、すでに今年度の申請の受付を終了していたにも関わらず、新型コロナウイルス感染症対策として新たに特例を設け、申請受付を開始しています。
この助成の対象項目の中に「テレワーク用通信機器の導入・更新」があります。対象は新型コロナウイルス対策として、特別休暇制度を新たに整備の上、特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中⼩企業で、その経費の一部を助成してくれる制度です。
2020年2月17日から3月25日までに導入に向けた取り組みを実施すること、と定められています。また、2020年5月末までの取り組みについても、同年4月以降に受付開始となる「働き方改革推進支援助成金」で助成が行われる予定だそうです。
パソコン、タブレット、スマートフォンの購入は助成の対象に入りませんが、就業規則・労使協定等の作成・変更、労務管理担当者や社員向けの研修、周知・啓発、社会保険労務士など専門家によるコンサルティング費用にすることができます。
参考:厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisiki.html
サービス等生産性向上IT導入支援事業
経済産業省が推進する支援で、通称「IT導入補助金」と呼ばれています。新型コロナウイルスの影響を受け、緊急企画として募集が始まりました。そのため、リモートワークを導入する企業が優先され、申請時にリモートワーク導入の確認が行われます。
対象は中小企業や小規模事業者等で、クラウドソフトの導入など、IT化に有効な補助金です。
参考:IT導入補助金2020
生産性革命推進事業のIT導入補助
生産性革命推進事業は中小企業や小規模事業者が対象の「ものづくり補助金」、「持続化補助金」、「IT導入補助金」という3つの補助金制度の総称です。その中の「IT導入補助金」がリモートワークを導入するにあたり必要となる、業務効率化ツールやリモートワークツールを導入するための補助金にあたります。
3月末に臨時分が一時締め切りとなりますが、2020年度内は6月、9月、12月にも締め切りが設定される予定です。
参考:経産省資料
東京都の事業継続緊急対策(テレワーク)助成金
都道府県独自の施策を打ち出している例もあります。例えば、東京都には都内に本社もしくは事業所を持つ中堅・中小企業等に向けた助成があります。こちらは東京都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」への参加が条件となっています。
リモートワークの導入に必要な機器やソフトウエア等の経費に充てることができ、パソコン・タブレットはもちろん、VPNルーター等、機器の設置・設定作業費や導入機器等の操作説明マニュアル作成費、リモートワークに必要なツール利用料など、幅広い使い道が認められています。
リモートワーク先進各社がノウハウを公開中
新型コロナウイルスの影響を受け、通勤を避けるためや一斉休校の煽りを受けた子育て世代の社員を抱える企業などは、準備もままならないままリモートワークを導入せざるを得なくなったケースもあるでしょう。
そんな中、数々の助成金が打ち出されると同時に、多くのリモートワーク先進各社がそのノウハウの無料公開をはじめました。トライ&エラーを重ねた各社のノウハウは本当に貴重なもの。そのノウハウから学ぶことがたくさんあるのではないでしょうか。
Lenovo
スマートフォンやタブレット、PCなどでおなじみのLenovoは、2015年から週に何日まで可、というような日数に上限を定めない「無制限テレワーク制度」を続けています。そのため、社員の間でもリモートワークが根付いています。Lenovoが毎年実施する「全社一斉テレワークデー」は有名で、働き方改革を推進するだけでなく、今回のような新型コロナウイルスの影響で通勤が困難になった時も変わらずに業務が行えます。
そんなリモートワーク先進企業であるLenovoのノウハウが濃厚に詰まっているのが「テレワークスタートガイド」。リモートワーク導入時に注意すべき点や、労働関係法規遵守のための注意点、阻害要因の対策から、リモートワークにおける勤務制度、パソコンのセキュリティ対策、オンライン会議の方法など、リモートワーク導入のコツや社員のコミュニケーションがスムーズにできるようなポイントが盛りだくさんです。
参考:はじめようテレワークスタートガイド
https://www.lenovo.com/jp/ja/news/article/2020-02-28
サイボウズ
新型コロナウイルスの流行を受け、「がんばるな、ニッポン。無理して出社させない選択肢を」という新聞広告を出したことが話題になったサイボウズも、リモートワークで得た経験を公開しています。サイボウズの社内で実際に使われていた資料も見ることができます。通常有償で提供されている、リモートワークに関する講演で使用される資料までも、無償で見ることができるのです。
その他、リモートワークなど多様な働き方を推進するためのヒントが書かれた本、「サイボウズ流 ワークスタイル変革スタートブック」の無料公開も行っており、コロナ騒動が終息した後にも役に立つ情報をたくさん公開しています。
また、Twitterで「#サイボウズにテレワーク相談」とハッシュタグをつけて質問をすると、可能な限り回答をもらえるのだとか! Twitter上に投稿された数々の質問と丁寧な回答は価値ある情報ばかりです。
マイクロソフト
マイクロソフト中国法人の社員の経験によるリモートワークの簡単なノウハウ「Working remotely during challenging times」は、日本マイクロソフトのサイト内で抄訳が公開されています。簡単に読めるボリュームで、これからリモートワークに取り組もうとする際に社員に共有しやすい内容です。
一斉休校を受け、教職員を対象にOffice 365 A5ライセンスの半年間無償提供を決めたのがマイクロソフトです。これによりオンライン授業が可能になりました。また、リモートワークを導入した企業に向けても、Office365のE1ライセンスを6ヶ月間無償で提供しています。
さらに日本ではリモートワークへの馴染みが薄いことも加味し、よりスムーズな導入のために電話サポートをする「セキュアリモートワーク相談窓口」を開設しています。Office365のほかにビジネスチャットツール「Teams」の使い方やビデオ会議のサポートなど、手厚いサービスを受けることができます。
参考:Microsoft 困難な状況下でのリモートワークについてhttps://news.microsoft.com/ja-jp/2020/03/03/200303-working-remotely-during-challenging-times/
リモートワークのメリット
このように多くの施策やノウハウが公開されていますが、せっかく導入を考えるならそのメリットを再度確認しておくと、より積極的にリモートワークが普及するのではないでしょうか。新型コロナウイルスの流行でより色濃く感じるリモートワークのメリットを挙げてみました。
出勤リスクの回避
新型コロナウイルスの流行拡大を阻止するため、人の移動を最小限にするよう要請を受けています。マスクも満足に手に入らない近頃では、公共交通機関での出勤を避けられるだけで感染リスクを避けることができるでしょう。
それ以外でも、地震や台風などの災害時、社員が出社せずに仕事ができることは、出勤リスクを最小限におさえていると言えます。また、最近で言えば2020年のオリンピックをはじめとした大規模イベント開催時も、たくさんの人が押し寄せるであろう中での出勤を回避することは、社員の安全を守るだけでなく混雑緩和にも一役買うことができます。
通勤時間の短縮
1日24時間は誰しも平等ですが、そのうち何時間が通勤時間に充てられているのでしょう? 1日片道1時間だとしたら往復2時間、そうすると1日のうち、残りは22時間となります。睡眠時間を引いて、勤務時間を引いて・・・と考えると、節約すべきは通勤時間と考えます。
リモートワークを導入し、通勤時間がなくなったり、近場のコワーキングスペースへの通勤のみになったりするといかがでしょう? リモートワークによる通勤時間の短縮は、私生活においても大きなメリットがあります。
ライフステージへの順応性
人生において、子育てをしたり介護をしたりと、ライフステージはしばしば変化します。
時間の使い方もそのステージごとに大きく異なるため、リモートワークが導入されることにより、生活に馴染みやすくなり、ライフステージの変化によるストレスが少なく済みます。また、企業にとっても人材の離職防止に繋がり、優秀な人材と長く一緒に仕事をすることができるのです。
今回のような一斉休校においても、柔軟に対応が可能となるのがリモートワークのメリットです。
人材活用
通勤時間の削減が叶うと、通勤に不安を持つ障がい者や妊娠、子育て世代や高齢者が働きやすくなります。それにより、出勤に対する不安で仕事をすることができない人材を採用することができます。その人材の中にはきっと優秀な人材が眠っているはずです。
コストの削減
リモートワークを実施することで、広いオフィスが不要となり家賃コストを下げることができます。また、交通費の支払いが少なくなるケースも多く、社会保険料の負担減も期待できます。
逆に、新型コロナウイルスの影響でリモートワークに切り替わった人々は口々に、コーヒー代や光熱費がかさみ、消耗品の減りが早いと言います。いかにチリも積もれば・・・なコストが掛かっているかを実感します。
リモートワーク導入の注意点
急にリモートワークを余儀なくされた環境下、たくさんの苦労を超えて多くの人が仕事をしていることと思います。今回急なリモートワーク導入により多く耳に入ったのが「環境はすぐには整えられない」ということでした。
オンとオフの切り替えが難しいことや社員間のコミュニケーションがうまくいかないことは社員にとってもストレスとなりやすいため、タスク管理やコミュニケーションツールを活用し仕事にメリハリをつけることが重要となります。
このようなリモートワーク用のツールの環境は企業側で整えられることですが、仕事場の環境は社員自身で整える必要があります。単身の場合は、ツールさえ整っていれば通勤の必要がないリモートワークの方が快適だったというケースもあります。しかし、自宅に家族が居る場合は今まで通りの仕事ができるのか、どのように切り離すのか、家族の理解を得られるのか。それらは家族を持つ人にとっては大きな課題です。リモートワーク導入において、社員にはこのような負担があることを企業は理解しておいた方が、よりスムーズな導入となることは間違いありません。
仕事をする環境はリモートワーク導入に大きく影響するので、配慮が必要です。そのほか、リモートワーク導入の注意点は先進各社のノウハウを参照することをおすすめします。
まとめ
新型コロナウイルスの流行は、経済史上に残る出来事と言えます。特に働き方に関しては、今後、「コロナ前」「コロナ後」と称される程、大きな影響を与えるのではないでしょうか。働き方を大きく変えるとなると腰が重く、「そのうちやる」になってしまいますが、今が「その時」かもしれません。
新型コロナウイルスでの打撃は巨大かもしれませんが、そんな中でも新型コロナウイルスのおかげ! と思えることをしておきませんか? 今更ということはありません。この経験が糧となり、何かに生かされることもきっとあるでしょう。