新卒でベンチャーに就職するって⋯本当にいいの? 確かに新卒ベンチャーと言うと、どこかカッコいい印象があり憧れる気持ちはわかります。しかし、雰囲気で新卒ベンチャーに入ることは、思ってるより危険がいっぱいですよ。この記事では、新卒でベンチャーに入社することを視野に入れている学生が、最低限知っておくべきことを解説しています。まずは、ベンチャー企業の定義や歴史を知ることから。さらに、新卒ベンチャーに対する7つの噂が正しいのか? 解説します。
ベンチャー企業の定義とは?
ベンチャー企業の明確な定義はありません。ただ一般的に、若手が活躍する勢いのある中小企業を指すことが多いです。ベンチャー企業は、3つのカテゴリに分けられます。
メガベンチャー
メガベンチャーは、もともと小さなベンチャー企業が成長して大企業になったものを指します。例えば、楽天やDeNA、リクルートなどがあります。メガベンチャーと日系大手企業の違いは、意思決定の速さや新事業への参入、実力主義など、さまざまです。
ミドルベンチャー
ミドルベンチャーは、従業員数が数百人規模のベンチャー企業です。レバレジーズやクックパッド、Speeeなどが代表的です。ミドルベンチャーは、創業期におけるさまざまな試練を乗り越え、ノリに乗っているメガベンチャー予備軍です。
アーリーベンチャー
アーリーベンチャーは、数名から数十名規模の従業員を抱えるベンチャー企業です。まだまだ企業として、成長する事業を生み出すことができずにくすぶっています。アーリーベンチャーの数は多いものの、ほとんどが上手くいかずに廃業します。
ベンチャー企業の歴史も勉強しよう
新卒でベンチャー企業に就職する前に、ベンチャー企業の成り立ちを理解しておくと、参考になるのではないでしょうか。ここではベンチャー企業の歴史を解説します。
明治維新後
1968年の明治維新。260年続いた江戸幕府体制が終わりをむかえます。明治維新後に大きな役割を果たした人物といえば、渋沢栄一です。彼は、第一国立銀行(現:みずほ銀行)を立ち上げ、現代日本を代表する企業の創設に関わりました。渋沢栄一の他には、三菱を創設した岩崎弥太郎も有名な起業家です。
第2次世界大戦前後
第2次世界大戦前後には、日本の経済を牽引するグローバル企業が生まれていきました。例えば、トヨタ自動車や村田製作所、ソニーやクボタ などです。ここから数十年日本は、世界でも類を見ない経済成長を遂げることになります。
第1次ベンチャーブーム(1970年頃)
1970年頃は、第1次ベンチャーブームといわれています。難しい技術を利用するハイテク分野における企業が次々と台頭しました。第1次ベンチャーブームで生まれた企業としては、日本電産やキーエンスなどが筆頭です。
第2次ベンチャーブーム(1980年代前半)
1980年代前半には、第2次ベンチャーブームが生まれました。製造業が中心の二次産業から、サービス業が中心の三次産業へと、産業が変化を遂げていった時代です。ソフトバンクが生まれたのは、この時でした。
第3次ベンチャーブーム(1995年頃〜2005年頃)
バブル経済が崩壊して経済が衰退していく一方、政府はベンチャー企業に対する優遇策により活路を見出そうとしました。つまり、第3次ベンチャーブームは、行政主導により起きたともいえます。1999年からはITバブルも重なって、楽天やサイバーエージェント、DeNAなどが誕生しました。
第4次ベンチャーブーム(2013年頃〜現在)
2013年頃から、第4次ベンチャーブームが起こり現在まで続いています。特徴としては、グローバル化や社会的意義、イノベーションの創出などをキーワードにした企業が次々と生まれています。
新卒ベンチャーの7つの噂
新卒でベンチャー企業に入社することは、賛否両論あります。世の中の賛成の声と反対の声を聞いていると、いくつかの論点があるようです。ここでは、それらを「新卒ベンチャーの7つの噂」と題して、真相にせまります。
噂①:若手にも大きな裁量権がある
若手にも大きな裁量権がある。これは、YESでもありNOでもあります。「噂①」に否定的な人は、ベンチャー企業で大きな裁量権が手に入るのはごく一部の優秀な人材だけ、という主張をしています。一方、「噂①」に肯定的な人は、ベンチャーは人手不足だから新人でも責任のあるポジションを任せられると、言います。
筆者はやや否定的です。本当に優秀な人材なら、日系大手企業に入っても裁量権を手にいれることができ、ベンチャーに入社する必要がないからです。また、少しズレますが新卒入社してすぐに大きな裁量権を与えられることは、本当に良いことなのでしょうか。きっとビジネス経験に乏しく、右往左往することになるだけではとも思います。
噂②:実力主義で成り上がれる
実力主義で成り上がれる。これはYESといっていいでしょう。一般的にベンチャー企業は、成果を出すことが第一ですので、優秀な人材ならどんどん任されることも増えていくでしょう。ただひとつ考えておくべきことがあります。それは、競う相手は上の世代ということです。つまり、外資系企業や大手総合商社から転職してきた中途入社の人たちとしのぎを削らなくてはなりません。自分の実力に自信がなければ、新卒ベンチャーはやめた方がいいかもしれません。
噂③:さまざまな仕事を経験できる
さまざまな仕事を経験できる。これもYESでしょう。日系企業では、部署や役職がきちんと決められて、自分の業務以外のことをやることは多くありません。これに対して、特にアーリーベンチャーでは部署や役職があってないようなものです。よって、いろいろな業務を経験することができます。ただし、その業務が成長につながるかどうかはわかりません。雑用や庶務をやることもよくあるからです。新人はできることが少ないため、これらを任されることが多いです。
噂④:遅くまで残業をする
遅くまで残業をする。これは、YESの声が大きいでしょう。メガベンチャーならば、十分な人材を確保していて労働時間に対する意識も高いです。しかし、規模の小さいベンチャーでは、人手が足りていないことが多く、一人ひとりの負担が大きくなってしまいがちです。特に、創業当初のベンチャーでは顕著です。自分の時間の多くを仕事に費やしていいのか、一度自分に問わなければなりません。
噂⑤:会社と一緒に成長できる
会社と一緒に成長できる。これは規模にもよりますが概ねYESです。アーリーベンチャーは、まさにこれから成長していこうとする組織ですので、その一翼を担えることはとても魅力的です。企業によっては、ストックオプションの制度を設けていることもあり、従業員のモチベーション向上に一役買っています。しかし、会社が成長していくかどうかはわかりません。もしかしたら倒産して転職ということにも。それは覚悟しておきましょう。
噂⑥:給料が他の企業よりも高い
給料が他の企業よりも高い。これはNOでしょう。例えば、メガベンチャーの初任給は、外資系企業や大手総合商社、大手広告代理店などと比べても遜色がない金額です。ただし、日系の大手企業は福利厚生が充実していることが多く、それらも考慮して考えると結果的に、ベンチャーよりも可処分所得が高いという結論になります。よって、初任給の高さにつられて安易に入社を決めてしまうことだけは、絶対に避けなければなりません。
噂⑦:起業する時に経験が活きる
起業する時に経験が活きる。これはYESです。新卒ベンチャーを選ぶ理由として、もっともふさわしいでしょう。どのようにベンチャー企業は成長していくのか? ビジネスプランは? マーケティングは? マネジメントは? 学ぶことはたくさんあります。噂⓻に関しては、次の章で詳しく説明します。
新卒ベンチャーは起業家の卵にうってつけ
ベンチャー企業に新卒入社する一番のメリットは、将来的に起業をしたいと考えている人が必要となる経験や知識を習得できることです。ここでは、3つのポイントをご紹介します。
経営層と距離が近い
ベンチャー企業は従業員の数が少ないため、入社直後から経営層とコミニケーションをとる機会が多いです。彼らと接することで、どのように事業を成長させるかについて学ぶ、貴重な意見を聞くことができます。もし不明点や疑問点があれば、すぐに経営層に相談できる風通しの良さがベンチャー企業にはあります。
ビジネス・プロセスを俯瞰できる
日系大手企業やグローバル企業に入社するとします。すると、組織が巨大なため自分がしている仕事が全体の中でどのような役割を担うのか、意識することが難しくなります。これに対して、ベンチャー企業の事業は、まだまだ発展途上なため自分の役割を明確にすることができます。これによって、ビジネス・プロセスを俯瞰する視点を養えます。
スピード感を養える
インターネットの普及・発展に伴って、ビジネス・サイクルが短くなってきています。市場で生き残っていくために現在の企業に求められることは、スピード感です。伝統的な企業では、意思決定のプロセスが複雑かつ冗長で、変化に対応することができません。一方、ベンチャー企業の意思決定は早く、市場ニーズの変化に合わせて事業を展開していくことが可能です。そのような経験をしていくうちに自然とスピード感を養うことができます。
まとめ
新卒ベンチャーに関して解説しました。ベンチャー企業の定義と歴史に対する知識が身についたのではないでしょうか? ベンチャー企業は、規模によってメガベンチャー、ミドルベンチャー、アーリーベンチャに分類できましたね。また、明治維新に端を発するベンチャーブームを紐解くことで、ベンチャー企業は、産業の移り変わりとともに変化を遂げてきたことがわかります。さらに、新卒ベンチャーに関する7つの噂を検証しました。100%間違いない! とは言い切れませんが、客観的に分析した結果として判断材料のひとつになることは間違いありません。ベンチャー企業は、将来的に起業をしたいと考えている人にとって魅力的です。くれぐれも雰囲気で入社を決めないようにご注意ください。