2019年10月から12月放送のドラマ「同期のサクラ」が、回を重ねるごとに話題を集め、初回は8.1%だった視聴率も、最終回は最高の13.7%を記録しました。(ビデオリサーチ調べ、関東地区)
それもそのはず、毎回サクラのじいちゃんが送ってくるFAXに心を打たれる人が続出。じいちゃんが亡くなり、FAXが送られてこないとわかると、じいちゃんロスに陥る人も出たほどです。サクラや同期の仲間のように働く大人である私たちの心を掴んだ、忘れたくない名言をまとめてみました。
同期のサクラ
「同期のサクラ」は、サクラと同期たちが花村建設に入社した1年目から始まります。1話につき1年が経過し、ドラマが進むと共にサクラと同期たちも歳を重ねていきます。
泣いたり笑ったりしながら大人になるサクラと同期たちの人間模様に自分を重ね、昔を思い返したり、今の自分に重ねたり、未来の自分の姿を見たりするうちに、自分も同期の仲間のような気分になって見ていた人も少なくないはずです。
サクラと仲間の成長や人間模様もさることながら、隣人の変化やその年に流行したアイテム、流行語など、時代を映すアイテムも盛り込まれていたことが、サクラと同期の10年間をよりリアルにしています。
だんだんと愛着がわくサクラと、回を増すごとに深みを増すじいちゃんのFAXを1話ずつまとめてみました。
1年目 自分にしか出来ないことがある
夢と希望でいっぱいの新入社員時代。新人研修で出会い、同じ班になったサクラと同期の菊夫、百合、蓮太郎、葵の5人は、研修の課題としてサクラの故郷に架ける橋の模型を作ります。ですが、言いたいことをはっきり言い、妥協のないサクラは、仲間として認めてもらえず、突き放される場面も。
そんなサクラにじいちゃんは「お前には自分にしか出来ないことがある」というFAXを送りました。
サクラはその言葉を受けて、自分を貫いた模型をひとりで作ったのです。ですが、社長に対しても遠慮のない物言いで、希望の配属先に就くことはできませんでした。
「自分にしか出来ないことがある」という思いを胸に、サクラと同期の10年が始まります。このじいちゃんのFAXがあったからこそ、サクラは同期に本気で立ち向かえたのかもしれませんね。自分にしかできないことは、自分のためだけでなく他の人の役にも立つのです。
2年目 大人になるとは自分の弱さを認めることだ
仕事にこなれてきた2年目、夢と希望で乗り越えた1年目とのギャップや学生と社会人の間で踏ん張る同期の菊夫がフォーカスされています。パワハラ上司に逆らえない菊夫。「サラリーマンの不幸は嫌な上司の下につくこと」だと言う同期も。
大人とは何か? どうしたら大人になれるのか? 若さでしか乗り越えられないような、体力も気力もギリギリのところで仕事をする菊夫にどんな言葉をかけたらいいのか? と悩んだサクラにじいちゃんが送ったFAXは「大人になるとは自分の弱さを認めることだ」。
良いところ、頑張っているところばかり見せ、虚勢を張っていてはいつか擦り切れてしまいます。蓋をし、目を背けがちな弱さを認めて受け入れることで、ひとつ大人になるのではないでしょうか。
目標や夢を見失いかけていた菊夫は、パワハラ上司の言いなりになってしまった自分の弱さを持って、自分がやりたいことを再確認できたのです。弱みを出しては負けだという根性論のなかで成長した菊夫は、弱みを受け入れ、でも甘んじることなく自分のやりたいことを貫き通すのでした。
社会に出て浮き彫りになる自分の弱みに心が折れそうになるけれど、弱みを受け入れ、周りの人にも受け入れてもらうことで、人は成長できるのですね。辛い時ほど「自分自身を一番応援してあげてください」
3年目 本気で叱ってくれるのは本当の友だ
3年目ともなると、女子社員は最初の結婚ラッシュがやってくるのではないでしょうか? また、転職を考える人が増えるタイミングでもあります。
生き生きと仕事をする男子同期を横目に、どこにいても、何をしても自分の居場所だと思えない百合が、「会社は女性社員を男性のサポート役くらいにしか考えていない」と、女性の働き方で思い悩む回です。
「天職どころか転職したい」と言う百合は、寿退社をすることに。そんな百合にサクラが言いたいことをぶちまけるのですが、二人はそれで大喧嘩に。どうしたら仲直りができるのか? と悩むサクラにじいちゃんは「本気で叱ってくれるのは本当の友だ」というFAXを送ります。
本気の発言には重みがあります。でも、本気で向き合いたいことには本気でぶつかり、そしてぶつけられた本気には軽々しく腹を立てずにしっかり向き合うと、その先には新たな道が見えてくるのではないでしょうか。
サクラと百合は本気の喧嘩をした先に、じいちゃんのいう通り、本当の友になりました。この先も本当の友の存在は大きく影響するのです。
4年目 辛い時こそ、自分の長所を見失うな
不器用な蓮太郎は、4年目にしていまだに花を咲かすことができずにいました。一級建築士の試験にも落ち、社内コンペにも参加させてもらえず、夢だった建築士を諦めかけてしまいます。
蓮太郎に夢を諦めてほしくないサクラでしたが、説得に失敗した自分に落ち込んで、じいちゃんに救いを求めます。じいちゃんのFAXには「お前まで自分を嫌いになってどうする? 辛い時こそ、自分の長所を見失うな」と書かれていました。
見失いかけていた蓮太郎の長所をもう一度掘り起こしたいサクラと同期たち。蓮太郎の設計図をもっと良いものにするために、みんなで手を加えました。長所も同じように、辛い時ほど自分では見失いがちです。そんな時は、蓮太郎のように周りの力を借りることもひとつの手段です。ここでも「弱さを認めること」、「本気の仲間を作ること」が生きていますね。
そして長所を見失いかけた時は、サクラと同期たちと同じように、アンパンマンの歌を歌ってみませんか? いいこと(長所)だけ、思い出せばいいのです。
国民的ヒーロー、アンパンマンの人気は、作者であるやなせたかしさんが50代後半をすぎてからのことだったと言います。遅咲きの花だっていいのです。蓮太郎は大器晩成だっただけ。しっかり結果はついてきます。
5年目 大切なのは「勝ち」より「価値」だ
5年目まで自信満々に生きてきた葵は、5年目に社長賞を受賞します。ですが、それは自分の実力ではありませんでした。入社当時からリーダーを目指し自信満々だった葵が、自分は負け組だと落ち込む姿に、なんと声をかけていいのかわからなくなるサクラ。じいちゃんはどんなアドバイスをくれるのでしょう。
じいちゃんはそんなサクラに、「そいつがダメなのは結局勝ち負けにこだわっているからだ。大切なのは『勝ち』より『価値』だ」とFAXを送ります。
どうしても他人と比較しがち、比較されがちで、勝ち負けで評価をされることが多くあります。勝ちか負けかの2面でしか物事を見ないでいると、自分より優れている人はたくさんいるので、いつも誰かと戦い、どこかに挫折のタネが隠れているような世界を生きねばなりません。それではいつどこで自分を見失うかもわかりません。
また、葵のようにリーダーになりたい人にとって、勝ち負けだけで判断をしないことはとても重要です。勝ち負けではない「価値」を知ることで、人を評価する力もつきます。
どちらが上でどちらが下か、そんなマウンティングやパワーゲームに囚われず、そのものの価値を知り、価値を大切にできるようになった5年目の同期たち。サクラの価値がわかり、ますますサクラを好きになる様子が見受けられました。
6年目 人生で一番辛いのは自分にウソをつくことだ
6話は同期ではなく、仕事と子育てを両立する先輩、すみれの回。男性社会を生きるすみれの苦労がわかります。もっとこうしたい、ああなりたいという理想はあるものの、会社という組織に属した以上、会社の言うがまま。それでも、娘のためにと仕事をしてきたすみれですが、娘の成長と共に、そしてサクラのありのままの生き方を見て、自分を見失ってしまいます。
尊敬する先輩を心配したサクラは、いつものようにじいちゃんに相談をします。じいちゃんからの返信には「生きていれば辛いことばかり。でも、人生で一番辛いのは自分にウソをつくことだ」とありました。
自分の思い通りに生きることに疑問を持たず、信念を持っていたサクラでしたが、この回では、自分の思い通りに生きることの辛さも漏らしています。今まで躊躇なく発していた意見さえも、必死で飲み込んでいる姿が。6年目ともなると、ありのままでいてはならないと気付いているのでしょう。今回のFAXはそんなサクラにも響いたのではないでしょうか。
でも今回、会社に意見したすみれは、役職を解かれ異動を命じられてしまうのです。ですが、自分の生き方を貫いた故に、すがすがしく異動に応じるのです。
7年目 桜は決して枯れない たとえ枯れても必ず咲いてたくさんの人を幸せにする
ついにじいちゃんの暮らす美咲島にサクラと同期が訪れ、じいちゃんとの対面を果たします。ここでサクラは辛い判断を下さねばなのですが、さらに悲しいことに、じいちゃんはこの7年目に亡くなってしまいます。
サクラに最後に送ったFAXは「桜は決して枯れない たとえ枯れても必ず咲いてたくさんの人を幸せにする」でした。
サクラへの最後のメッセージをもって、じいちゃんのFAXは2度と届かないのですが、じいちゃんのFAXに助けられ、自分にしかできないことをして周りを変えてきたサクラ。そして、サクラに影響され、これまでサクラに助けられていた同期たちは、視聴者にとってもまるで他人と思えない仲間となりました。
偉大なるFAXの紹介はここで終わります。じいちゃんロスになる必要はありません。これらのメッセージを大切にしまっておきましょう。
まとめ
「私には夢があります。一生信じ合える仲間を持つことです。」
あなたには夢はありますか? 今はなくとも、昔はありましたか? そんな「夢」を思い出すドラマでした。
そして必要な時に取り出す救急箱のようなFAXの数々が、サクラと同期、そして私たちの背中を押してくれるメッセージとなったことは、SNSの投稿でも明らかです。また、デジタル化の進む近年、じいちゃんの直筆の文字がさらに印象深く残ったことでしょう。
じいちゃんのFAXを噛み締めながら、サクラと同期のこれからを願わずにはいられません。そして、じいちゃんのFAXに救われ、背中を押された全ての人が、夢を持ち、それに向かって邁進できますように。どうか、みんなの夢が叶いますように。