近年、「コミュニティ」というものに対し、過剰なまでの需要があるとコミュニティビルダーは話しています。本来コミュニティは第三者の手を使わずとも、自然と出来上がるものであったはず。それでもコミュニティビルダーというポジションが成り立っているのは、求められるコミュニティの質が高まっているからだといいます。
実際に数々のコミュニティを作り上げたコミュニティビルダーの話を元に、目標を達成するためのチーム作りのポイントをまとめてみました。他とは違う、レベルの高いチームを作り上げたい人、必読です。
チームにおけるコミュニティビルダーの役割
コミュニティビルダー、コミュニティデザイナー、コミュニティマネージャー、コミュニティコネクターなど、最近ではコミュニティ〇〇という肩書きが山ほどありますが、それらが形成し、維持するのは、「円滑なコミュニティ」である点で共通しています。
明確な資格があるわけではないので、実際のところどれも「自称」でしかありませんし、コミュニティ〇〇を名乗らずとも、自然とその役割を果たしている人がいるのも事実です。
今回話を聞いた「コミュニティビルダー」の役割は、目標が達成できるコミュニティを作ることであり、そのコミュニティのメンバーをサポートすることです。特筆すべきは、目標を達成するのはチームのメンバーであり、コミュニティビルダーではありません。
チーム作りに長けているコミュニティビルダーは、その役割の中、どのような点に気を配っているのでしょう。具体的なポイントを聞いてみました。
コミュニティビルダーが心がけている3つのポイント
目標達成に向け、個々の実力が発揮しやすいチーム作りには、どのようなポイントがあるのでしょう。日頃から気をつけているという3つのポイントを紹介します。
1.紹介は的確に有意義に
チーム発足時のメンバー間や対クライアントとのやり取りにおいて、チームのメンバーを紹介する機会が圧倒的に多いのがコミュニティビルダーです。ここで必要なのは、的確で、尚且つ意味のある紹介をすることです。
名前と肩書きの他に、その人の得意なことや強み、プライベートなことも含め、個人の魅力が伝わるような紹介をします。それによって、人と人がつながる工程を一歩も二歩も前進させるのです。相手との相性を踏まえた紹介をすると、ただの挨拶だけで終わらず会話のきっかけになったり、印象に残ったりと、今後の関係性の構築に大変役立ちます。
また、つなげた人にはそれぞれを紹介した意図を伝えます。「趣味が一緒なので紹介しました。」「仕事への姿勢が似ているので、いいコンビニなると思うから紹介しました。」といった紹介の意図を知ることで、そのつながりがより良いイノベーションを生み出すつながりになる可能性があります。逆につなげ方を失敗してしまうと、生まれるべきものも生まれない可能性もあるのです。
コミュニティビルダーは両者をつなげたその先まで意識して、それぞれを紹介する必要があります。そのため、誰よりも先にチームのメンバーを理解せねばなりません。ですが、それによって距離を縮める時間が短縮され、チームのメンバーの実力を存分に発揮できる環境がいち早く整うのです。
2.自走する仕組み作りを意識する
コミュニティはコミュニティビルダーの城ではなく、育てるべき子どものような存在です。いつまでも面倒をみたいけれど、いつかは手を離すのだということを自覚せねばなりません。マラソンランナーは自分以外にいて、コミュニティビルダーはあくまで併走しているだけ。ランナーの様子をみながら、休憩を挟んだり水分補給を促したりするために走っているというとイメージがしやすいでしょうか。
この点をはき違えてしまうコミュニティビルダーは、まるで手柄をかっさらう嫌な上司のような役割になってしまいます。
後々自分がいなくとも、目標を達成できるようなチームを作りあげることがコミュニティビルダーの目指す「自走する仕組み作り」なのです。自走し始めたコミュニティが成果をあげ続ける様子を対岸で見ることになっても、この上ない達成感を得られることでしょう。
3.コミュニケーション手段の手配
コミュニティが発足したら、メンバー間の距離を縮めることや連絡や相談をしやすくするために、コミュニケーションの手段を整えます。これがあるのとないのとでは、チームの結束や業務のスムーズさが違ってきます。
コミュニティの発足の目的やメンバーの属性に合わせ、負担にならない手段を用意する必要があります。例えば、スマホやパソコンを使わないような年齢層のコミュニティであれば、昔ながらの名簿を作成することが最も負担の少ない有効的な連絡手段かもしれません。また、働くママたちのコミュニティであれば、日常使っているLINEにグループを作ることが最も身近で手間のかからないコミュニケーションの手段だと考えられます。
ビジネスのチームにおいては、ベタながらも報告・連絡・相談がしっかりできるコミュニケーション手段を用意せねばなりません。最近では便利なコミュニケーションのツールがたくさんある中で、慣れない人、苦手な人がいるのも事実です。コミュニティビルダーはそれらのサポートをすることで、チームのコミュニケーションを活性化させ、結束力や業務の効率が良好なチームに育て上げるのです。
コミュニティビルダーはどうあるべきか?
コミュニティビルダーを軸としてチームが成り立つと勘違いされることが多くありますが、それではただのワンマンなチームになってしまうかもしれません。チームを作るにあたり、コミュニティビルダーはどのような心構えをもてばいいのでしょう。
コミュニティビルダーはチームのイベンターや盛り上げ役ではない
例えば、チームにおけるイベントといえば、飲み会や親睦会が思い浮かぶでしょう。コミュニティビルダーとして、幹事を名乗り出てしまいがちですが、それが続くと日常的にコミュニティビルダーに依存したチームになってしまいます。
ではどうしたらいいかというと、幹事になる誰かをそっと育てることです。コミュニティを長期的に見ると、単発の盛り上がりだけあっても意味がありません。コミュニティビルダーのスキルが試されるのは、いかに持続するチームを作れるかという点なのです。
チームの帰属意識を高め、継続するためにもイベントや盛り上がりは必要ですが、そのためには、コミュニティビルダーと同じ目線で考えることのできるリーダー格や、目的をずらすことなくチームを盛り上げることのできるムードメーカーなど、チームの一人ひとりの育成をせねばなりません。ワンマンにならないようチームのメンバーを巻き込んでこそ、雰囲気をよくすることができるのです。
コミュニティビルダーはリーダーではない
リーダー格を育成するといいましたが、前にも書いた通り、コミュニティビルダーに依存したチームにしないためにも、必要なのがリーダーです。コミュニティビルダーだけが一人でからまわっているチームをよく目にしますが、それはコミュニティビルダーがチームの中心に立ってしまい、メンバーをうまく巻き込むことができなかったからだといえます。
チームの中に主体となるメンバーを作りだし、そのメンバーを通じてチーム全体の熱量が上がるような一体感を生み出さねば、いつまで経っても自走できないチームになってしまうのです。コミュニティビルダーがやるべきことは、チームのメンバーが主体的に動くための手助けなので、チームがうまく回り始めたら少しずつ裏方にまわり、チームが気がつかないほど細やかに潤滑油をさしているような存在を目指しましょう。
ニーズ・解決すべき課題を意識する
シンプルに人が複数集まればいいだけのチームであれば、コミュニティビルダーは必要ありません。チームにコミュニティビルダーとして就く以上、そのチームが会社やクライアントから求められているニーズや解決すべく課題を意識せねばなりません。
誰よりもそれらを意識することで、チームの目的意識やゴール設定をコントロールし、時に脱線しそうな時は、軌道を正すことがコミュニティビルダーのあるべき姿なのです。共通した目的を持ち、それを互いにシェアし続けているチームは、目標達成に向かって歩んでいると言えるでしょう。
チームの中にいると、時に熱くなり視野が狭くなることがしばしばあります。コミュニティビルダーは自分の感情を持ち込まず、常に客観的な視点で居続けます。
コミュニティビルダーの失敗した話
最後に失敗から学んだ実例を一つ紹介します。
チームに向けてのアナウンスや質問を投げかけても反応が鈍い。目的さえ達成できればよいのだと思う反面、その静かすぎるチームに焦りを感じていました。
コミュニケーションツール上でも、発信に対する無反応が目立ち、誰かの意見を待ってから意見する様子が垣間見え、結果会話が生まれないのです。もちろんチームをよくするための意見やアイディアも一向に出てきません。
この原因を推測したところ、以下の失敗が明らかになりました。
コミュニケーションツールに対するフォロー不足
利便性重視で選んだコミュニケーションツールは、チームのメンバーには目新しいツールでした。しっかりフォローしたつもりが、コミュニケーションツールに慣れすぎていた自分にはわからなかった落とし穴が! なんと、通知設定までフォローできておらず、オンタイムで投稿を見ていた人はわずかだったということがわかりました。何かを教える時は、一番疎い人の目線で考えることが大事なのだと身に染みた出来事でした。
チームを細かく分けておく必要があった
チームスタート時からの失敗に加え、大所帯のグループだったことが「発言のしにくさ」を加速させていました。先輩や上司がいたら、それを差し置いて意見する勇気はない、自分が発言しなくとも上の人が決めてくれるといった感想は後になって聞いたものです。様々な立場の人がひとまとめになったグループは、発言しやすいとは言い難い環境です。意見しやすい環境を作るには、チームをさらに細かく分けるとよかったのだと今では思います。
まず、班や係のように会話が成り立ちやすい人数で、なるべく知った顔をグループ化します。そこに任務を与えることで、発言のせねばならない環境を作り出し、さらにその意見を吸い上げることで、発言してよかった! という気持ちになってもらうのです。小さな輪から組み立てていくことで、大きな輪になるのです。
コミュニティビルダーとして真っ先に意見してはならない
チームを活性化させようと必死で、誰かの発言があれば間髪入れずに返信を入れていたのですが、どうしても意見の交換が起こらない。それもそのはず、コミュニティビルダーが真っ先に発言してしまうと、ユニークな意見や反対意見は出づらくなります。活性化のために早々意見を述べたい気持ちをグッと堪えて、メンバーの意見を待つことも大切です。
必要以上に仲良くすることやチームで群れる必要はなくとも、チーム間のコミュニケーションはなくてはならないもの。メンバー目線、メンバーファーストが足りず、このような結果になりましたが、原因を割り出し、途中からでも軌道修正をすることができたそう。チームビルディングはトライ&エラーがあって当たり前なのです。なんと言っても構成するのは一筋縄では行かない人間なのですから。
まとめ
コミュニティビルダーの肩書を持つ人がチームにいない場合、誰かがその役目を担うことになるでしょう。そんな時にも意識して欲しい、現役コミュニティビルダーが心がけているポイントを紹介しました。
様々な人で作られるチームが、それぞれのスキルを生かし、実力以上のものを作り出せるものになるか、潰し合うばかりで成果の出ないものになるかは、コミュニティビルダーの腕の見せ所です。チームは生き物なので、思ったようにいかないことも多いかもしれません。それでも一人ではできないことができ、それぞれの実力を単純に足したものよりも大きな力を持つ可能性を秘めているのが、チームで挑む団体戦なのです。目標を達成したときの喜びを噛み締めるためにポイントをおさえ、最高のチームを作りましょう。