生まれ育った土地、学生時代を過ごした土地など、思い入れのある土地にいつかは戻りたいと思う人は少なくありません。ですが、戻っても働き口がない、不便など、何かしらの理由で、地元は定年後、セカンドライフを過ごす場所だと思っていませんか? 働き盛りでも地元に戻る方法はないのでしょうか?
地元が好きな人!集まれ〜
オウチーノ総研が、首都圏で生活をする代の地方出身者370名に「地元に関するアンケート調査」をしたところ、81.4%が「自分の地元が好き」と答えています。自分の育った町に対する愛着や生活環境、両親や友人がいるからなど、好きな理由はそれぞれです。
参考 https://corporate.o-uccino.jp/wordpress2/wp-content/uploads/2013/06/pr20130620_jimotoai.pdf
私も地元が大好きで、大人になっても居住地は地元。地元同士で結婚した友人は、地元高校に本籍を置くほどに地元が好きです。広島カープファンや阪神タイガースファンを見ていても、地元が好きだと感じている人が多いことは明らかです。
また、マイナビによる2019年卒を対象とした「Uターン・地元就職に関する調査」では、「地元(Uターン含む)就職を希望しますか?」という質問に対し、「希望する」と回答したのは35.2%、「どちらかといえば希望する」が24.3%という結果が出ました。全体の6割程度が地元就職を希望しているのです。
参考 http://mcs.mynavi.jp/enq/uturn/data/uturn_2019.pdf
ですが、都内で働く友人は地元に戻るにあたり、とてもとても悩んでいます。どんなに地元が大好きでも、都心を離れ地元に戻るという決断は簡単ではありません。
地元が好きでも働けない!その理由
前述のマイナビによる調査で、残りの4割が地元就職を希望しない理由として、「都会の方が便利だから」「志望する企業がないから」という2つを多く挙げています。また、事業者同士のコミュニティが都心に比べて少ない、考えが古いので働きにくい、都心に比べて賃金が安い、更には都心でキャリアを積んでから移住しようという計画段階である、というリアルな話も耳にします。
実現すれば地元就職するかもしれないものという質問に対しては、「働きたいと思うような企業が多くできる」「給料がよい就職先が多くできる」という2つが多く挙がっているのです。この調査から、地元に戻りたいけれど仕事面のデメリットを感じ実現できない、ということがわかります。このままでは地元移住計画は叶えることができません。
地元に移住した暮らしを想像する
一度デメリットから離れて、実際に地元に移住するとどんな暮らしが待っているのか想像してみましょう。まず、帰省するたびに「あと何回会えるのだろう」と切ない気持ちになっていた両親の近くで暮らせることや、サポートができることは喜ばしいことです。また、実家の土地が広いのなら、その敷地に家を建てられるなど、ゆとりのある暮らしが望める人も多いのではないでしょうか。都心ではなかなか叶わない、「広い庭つき一戸建て、駐車場完備」が建てられるかもしれません。仮にそのような土地がなくとも、都心との坪単価の差は歴然です。
また、都心に比べて水や空気がおいしく、海や山、川、森林など自然環境に恵まれた場所で生活したい、子育てをしたいと考えるなら、地方の暮らしは充実します。都心のような利便性はなくとも、農作物や海産物が新鮮でおいしい、地方ならではの豊かさを感じることもできますね。
マリンスポーツ、登山、スノースポーツなど、趣味の面ではどんな生活が浮かぶでしょう。趣味に打ち込みやすい環境なら、地元の暮らしはプライベートが充実するかもしれません。今まで休日に取っていた趣味の時間は日常生活にすんなり溶け込み、気軽に楽しむものとなります。いかがでしょう?ちょっとワクワクしませんか?
仕事に費やしていた時間を趣味にかける、という人生のシフトチェンジが地元移住計画の1つの理由なのです。
在宅ワークの可能性を考える
もう1つ、地方移住の手段として在宅ワークはいかがでしょうか? 在宅ワークの場合、仕事面でのデメリットはどれくらい影響するのでしょうか。
在宅ワークなら、都心でも地方でもパソコンと通信できる環境さえあれば仕事は成り立ちます。つまりは、都心にいるのと変わらずに仕事をすることができるのです。地方に住みつつ在宅ワークをする人はどのように仕事をしているのでしょう。
地元外からの仕事を請け負うことができる
在宅ワークはオンラインで仕事のやり取りが可能な為、活動エリアは地元に留まらず全世界です。打ち合わせや会議もZOOMなどのweb会議ツールを使えば、地方からでも参加することができます。そのため、地方に住んでいても都心との仕事のやり取りができるのです。最初は小さな仕事からスタートしたとしても、「志望する企業」の仕事に関わることもできるかもしれません。
都心と変わらない賃金(報酬)
私が高校生の時、住んでいる地域の最低賃金は750円ほどでした。ですが、修学旅行で行った地方都市でアルバイト募集の張り紙を見てびっくり、その地域の最低賃金は100円安い650円だったのです。これが初めて知った賃金格差だったのですが、この賃金格差は今でも変わらずあります。これが地方移住を躊躇う原因なら、在宅ワークには関係ありません。
在宅ワークでは、地域の最低賃金をベースに報酬を決めることはありません。同じ仕事に対して、都心に住んでいても地方に住んでいても同額の報酬を得ることができます。にも関わらず、地方では生活費が安く抑えられるというケースもある為、お金の面での心配も軽減されます。
都心の情報が変わらず入ってくる
地方にいながらも都心の仕事を請け負うことで、クライアントとのやり取りやミーティングが発生します。そのため、地方にいながらも情報や空気感は変わらずに入ってきます。また、SNSのようなツールの発達により、情報のタイムラグはほぼなくなっていると言ってもいいでしょう。オンライン上で人脈を広げることすら可能な時代なのです。
たとえ都心に住んでいたとしても、黙っていては情報が入ってきません。欲しい情報は取りに行くものという点では、都心も地方も同じです。地方に住んでいたとしても、取り残されたような気持ちにはならないのでご安心を!
在宅ワークを副業に
地方の賃金格差を埋めるために、副業として在宅ワークに挑戦することを考えてはいかがでしょう。これまで在宅ワークというと、デザインやプログラミングなどの専門職だけと思われがちでしたが、副業解禁元年と言われる2018年以来、副業を認める会社が増えると同時に、在宅ワークの需要も増えていると言えます。クラウドソーシングの普及も影響し、在宅ワークを見つけることも容易になっています。データ入力やテープ起こし、事務代行や人事代行、テレアポなど、特別な資格がなくても請け負うことのできる職種が多くあります。
通勤に充てていた時間、残業していた時間など、地方移住を機に時間配分を「東京時間」から「地元時間」にチェンジし、都会の満員電車や混雑の中で生活していた体力をもって、在宅ワークをする余裕が生まれるのではないでしょうか。
在宅ワークは地方移住の強い味方
在宅ワークの可能性は今後まだまだ広がると考えられます。フリーランスとして在宅ワークを選ぶこともあれば、一企業の社員でいながらも地方在住の在宅ワークが可能な企業も増えています。もし地方移住を視野に入れているのなら、在宅ワークに積極的な企業を探してみるのもいいでしょう。通勤の必要もないので、バスの本数が少なくても、終バスが早くても気になりません。時間の使い方も自由なので、仕事の合間に畑仕事に励むもよし、地元のための地域貢献に取り組むこともできます。なんだか実現できそうな気がしませんか?在宅ワークと地方移住の愛称はバッチリです。
地元移住計画を進めよう
近年、特に過疎の進む地域では移住者支援や地域活性化を目指す政策のもと、移住に伴う補助金や住宅補助の制度が充実しています。若い世代の定住を促すために、引っ越し祝い金や結婚祝い金、出産祝い金がもらえたり、保育園入園が容易だったりするのは地方ならではです。物価や地価が安く、生活費が都心よりかからない可能性もありますね。敢えて調べないと気がつかない、知ってびっくりの政策が多いので、リサーチをきっかけに地元移住計画が一気に進むなんてこともあるのでは。
愛川町の場合
一例として、神奈川県の愛川町の政策を紹介します。愛川町は神奈川県の中央部に位置し、エリアとしては都心と言われる地域の中にありながら、豊かな自然に囲まれています。ただし、愛川町には駅がなく、都心に通勤するには少し不便な立地といえます。最寄りの駅までバスで45分ほどかかりますし、もちろん都心に比べて本数は格段に少なく、終バスも早い地域です。「うちの地元みたい!」と思いませんか?
この愛川町で起業しようと思ったら、まず起業にかかる経費の5分の1以内、10万円を限度に補助を受けることができます。新しいパソコンが欲しい、ホームページを立ち上げたい、申請書類の作成など、起業のスタートアップに必要な資金をサポートしてくれます。さらに、在宅ワークを目指す場合、起業にかかる経費の5分の1以内、15万円を限度に補助を受けることができます。これは個人事業でも申請ができ、地元資源の活用のような制約もありません。
また、空き店舗を活用し起業の拠点にする場合、改造、改築にかかる経費の3分の1以内、20万円を限度に補助をするという制度があるので、理想のオフィスも夢ではありません。愛川町は、時間は掛かれど都心に出やすいこともあり、「ちょうど良い地元感」として移住者が多い地域です。
地元移住のきっかけを掴むには
政策は毎年変わるので、常に新しい情報を調べる必要があります。もっと高額の制度や期限付きの制度もあるので、これ!といった制度を見つけた時はチャンスかもしれません。移住支援を積極的に行っている地域では、若者向けの就職相談会、30~40代向けの転職セミナー、地方移住の助成金の相談会など、移住者の受け入れ態勢が整っています。都心にいるとなかなか気付くことができないのですが、思っている以上に地方のドアは開いています。
地方創生プロジェクトのホームページをみると、仕事の情報や相談会、セミナーの情報を得ることが出来ます。
また、総務省が実施する「ふるさとワーキングホリデー」という制度を使って、移住のお試しをしてみるのはいかがでしょう。糸口がつかめるかもしれませんよ。
http://www.soumu.go.jp/furusato-workingholiday/
まとめ
一言で地元と表しましたが、生まれ育った場所という意味だけではなく、ゆかりのある場所という意味で表現しました。学生時代を過ごした青春の地、毎年夏休みに訪れていた田舎、各々にとって複数の「地元」を持っていることでしょう。思い入れのある土地で暮らす地元移住計画は、地方のデメリットばかりが全面に出ると躊躇してしまい、移住は叶わないと思いがちです。
でも今は地方創生の風が吹いています。そしてフリーランスや在宅ワークのような働き方は、地元移住計画には追い風です。地方移住計画の実行のみならず、もっとすると二拠点生活も叶うかもしれませんね。