『LIFE SHIFT(ライフシフト)』で「人生100年時代」を生き抜くための知恵を学ぼう!


「人生100年時代」。この言葉を提起したのは『LIFE SHIFT(ライフシフト) 100年時代の人生戦略/著:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット』(以下「本書」)というベストセラー本です。今回は、本書のうち「現役世代が人生100年時代を生き抜くために、どうするべきか」について書かれている内容を抜粋、要約してお伝えします。

人生100年時代は必ずやってくる

本書によると、いま先進国で生まれる子どもの半分以上が105歳より長く生きるといいます。また、いま20歳の人たちは100歳以上、40歳の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が50%を越えるそうです。このように具体的な数値を上げられると「人生100年時代」という言葉がぐんと身近に感じられますね。

著者らは「長寿化」が、すべての人々に多大な影響を与えることに加えて、遠い未来の話ではなく、現実的に差し迫っている現象であるにも関わらず、世間一般の注目をあまり集めていないことに、問題意識を持っています。確かに、世の中の人々は、人生を「教育」⇒「仕事」⇒「引退」の3ステージに分けて考えている傾向があるようです。しかし本書は、長寿化によって人生が「マルチ(多数の)ステージ」になることを予見しています。それに対応するためには、人生100年時代を前提とした「ライフプラン」をきちんと考えなくてはなりません。

ここまで読んで「今の働き方でいいのだろうか…?」と不安になった方も多いと思います。そのような不安を解消するために、本書の内容から「具体的にどのような行動をとるべきか?」について書かれた箇所のエッセンスを要約して伝えていきます。

人生100年時代を生き抜くための秘訣。「無形資産」を増やす

人生100年時代の最大の恩恵は「人生に多くの時間(≒可能性)をもたらすこと」だと著者らは述べています。したがって考えるべきは「増えた時間をどのように利用し、構成するべきか」だと。この点に関して、本書は「無形資産にもっと時間を投資すべき」としています。「無形資産」は、お金や車、家など(有形資産)のように定量的に価値をはかることができない、資産のことをいいます。本書では、無形資産を3つに分けて考えています。順番に見ていきましょう。

①生産性資産:仕事の所得を増やす

「生産性資産」は、

  1. スキルと知識
  2. 仲間
  3. 評判

から成り立ちます。

「スキルと知識」において重要視すべきは、それらの質量ではなく、それらを使ってどのような「体験」をしたかです。その背景には、単純なスキルと知識は、オンライン学習で簡単に身につけることができ差がつかなくなったことがあります。つまり「経験学習」により身につけた「暗黙知(知恵や洞察、直感の土台)」が経済的な価値を生む源泉となるということです。

本書では「仲間」を少し難しい言葉で「職業上の社会関係資本」と定義して、一般的な交友関係とは違う点を強調しています。著者らはその中でも「相互が強く信頼し合う小規模な仕事仲間のネットワーク(ポッセ)」が、自己成長にとって大きなプラスとなると論じています。このような「仲間」を作るには、多くの時間を要するため、意識的に時間を費やすことが大切です。

「評判」は、企業におけるブランドを考えるとよくわかると思います。トヨタやソニーのようなブランドは、経済的な価値を生む大きな要素の一つだということは間違いありません。しかし、著者らは「評判」はこれまでの行動の産物でありながらも、完全にコントロールすることができない点を指摘しています。ただ少なくとも、評判を失墜するような行動や言動をしないように努めるべきです。

②活力資産:肉体的・精神的な健康と幸福をもたらす

「活力資産」は、

  1. 健康(精神と身体)
  2. 友人関係

の2つに分けることができます。

人生100年時代に「健康」が大切だということは、もはや自明でしょう。たとえ、100歳まで生きられるとしても、健康を維持できないのであれば、長寿化は恩恵ではなく厄災に変わります。健康を維持するために必要なことは「バランスのとれた生活」です。一番大切なことは、脳の機能を健全に保つことだと、著者らは述べています。加齢による脳機能の低下は、3分の1は遺伝的要因によって決まりますが、残りの3分の2は生活習慣で決まることが明らかになっています。つまり、食事や運動、睡眠などの生活習慣の改善に取り組むことがとても重要になるのです。

私たちに幸福感や充実感を与えてくれるのは「前向きな親しい友人たちのネットワーク」だと、本書には書かれています。当然、それを作り上げるには多大な時間と労力がかかります。しかしながら、孤立している人たちと比べたときに、このようなネットワークを持つ人たちは、より活力があり、前向きで、エネルギッシュだと、近年の研究により明らかになっています。もし自分の人間関係が仕事仲間だけに閉じていると感じたなら、学生時代の友人や趣味を共有する仲間などと、積極的かつ継続的に連絡を取り合ってみたらいかがでしょうか。

③変身資産:人生の変化に対応する

「変身資産」は、

  1. 自分に関する知識
  2. 多様性に富んだネットワーク
  3. オープン・マインド

で構成されます。

人生100年時代では、さまざまなライフステージの変化に直面すると前述しました。このときに大切なことは、自分の軸を持つことです。変化の荒波に流されているだけではどこにも辿り着きません。自分の船に帆をはって、大海原に舵を切ることが求められるのです。自分に関する知識は、変化の道筋を示すことに加えて、変化を経験しつつも自分らしさを保てるようにします。それによって新しいステージにおける成功率も高まると、著者らは述べています。自分のまわりの人たちに意見を求めて、内省を繰り返すことによって少しずつ、自分のことを知っていきましょう。

多様性に富んだネットワークは、人々の変化を促進します。これらのネットワークは、前述した「仲間(ポッセ)」と「友人関係」とは異なります。これらと比べると、より大規模でそれほど親密ではなく、長期的に効果を発揮します。本書によると、新しい仕事を見つけるときに一番、頼りになるのは、このようなネットワークのようです。理由は、すでに知っていることの重複が少なく、新しい情報に触れる機会が増えるからです。

オープン・マインド、すなわち、新しい経験に対して開かれた姿勢は、マルチステージの人生にとって、誰もが身につけるべきものです。人間は、今のままでいたいという「現状維持バイアス」を持ち、変化に対して不安を持つ生き物です。著者らは、自分の人生を自分で決めることは、多くの選択肢と向き合わなければならないため、リスクが伴うと述べています。しかし長寿化は、本記事を読んでいるみなさん全員が直面する事象です。それを好機とするか不運とするかは、みなさん次第だといえます。

人生100年時代がもたらす新しい「ライフステージ」。それぞれにおいて、どの無形資産に投資すべきか?

ここまで「人生がマルチステージになる」ということを何度か述べてきました。では、人生100年時代に新しく生まれる「ライフステージ」とは、一体どのようなものでしょうか?本書は、新しい3つのライフステージについて言及しています。これらと(有形/無形)資産との関係性を以下の表にまとめました。

ライフステージ有形資産無形資産
生産性資産活力資産変身資産
エクスプローラー×
インディペンデント・プロデューサー
ポートフォリオ・ワーカー

「エクスプローラー」は、自分自身について理解を深めたり、自分を取り巻く世界について学ぶために、さまざまな場所に出かけ、人々と意見を交わします。これによって「変身資産」を増やすことができます。一方、出費は抑え身軽に動くために、有形資産は必要最低限です。エクスプローラーに、年齢制限はありません。いつどのタイミングでも、エクスプローラーとして生きることができます。

「インディペンデント・プロデューサー」は、旧来のビジネスからはずれて、自分のビジネスを始めた人たちを指します。一言でいうなら、自分の職を生み出す人です。金銭的な見返りはあまり期待することができませんが、独立して生産的な活動に専念するため、無形資産を充実させることができる点が特徴です。その中でも、実践を通じて「生産性資産」を大きく増やすことが可能になります。

「ポートフォリオ・ワーカー」は、異なる種類の活動を同時におこなうライフステージです。ポートフォリオ・ワーカーも、年齢や時期に関わらず実践することが可能ですが、著者らによるとすでに「無形資産」を蓄えた人たちにとって魅力的な選択肢となるようです。ただ、いくつもの活動に関わっていたらそれぞれの活動で成果を出すことが難しいと考える人も多いでしょう。しかし、各活動において相乗効果を生み出すようにナレッジとノウハウについて共通点を見出すことができれば、この問題を解決できます。

まとめ:一番大切なことはアイデンティティを貫くこと

ここまで『LIFE SHIFT(ライフシフト) 100年時代の人生戦略/著:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット』の思想を、現役世代がすぐに実践できるように内容を要約してお届けしました。本記事を読んでいるみなさんも100歳以上生きる可能性は大いにあります。しかしそれに対処する準備をしていると自信を持って答えられるでしょうか?本記事の内容を読んで、興味を持った方はぜひ本書を購入して、自分なりの答えを見つけましょう。

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