ナレッジマネジメントとは?意味や効果・具体的な手法をわかりやすく紹介

社員が持つ情報やノウハウを、組織で共有する方法として「ナレッジマネジメント」という手法があります。働き方が多様化する現在、ナレッジマネジメントはさまざまな企業から注目を集めています。

チームのリーダーやマネージャーになり、ナレッジマネジメントの導入を検討している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ナレッジマネジメントとは何か、広まる理由や具体的な手法について解説します。ナレッジマネジメントで重要な暗黙知と形式知についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメント(Knowledge Management)とは、個人が持つ知識を組織で活用する経営管理手法のひとつです。

個人の知識には、これまでの経験によって得た知識やスキル、ノウハウ、技術などが含まれます。ナレッジマネジメントによって、それら知識を組織全体で共有することで、企業全体の業務改善や生産性向上を促せます。

ナレッジマネジメントが広まる理由と背景

ナレッジマネジメントが広まる背景には、日本企業における組織体系の変化があります。

これまでの日本企業には、ベテラン社員の知識や熟練工の技を自然に継承できる、風土や文化がありました。しかし、少子高齢化や働き方の多様化、終身雇用制度が崩壊しつつある現在、従来のような技術継承は困難となってきています。

現在のビジネス環境は、目まぐるしく変化し、複雑化も増していることから、企業は常に新しい情報を取り入れ、迅速な意思決定や行動も重要になりました。

従来のように技術継承を自然な流れに任せるだけでなく、個人が持つ知識や技術をより短期間で継承する仕組みが求められるようになったことにより、ナレッジマネジメントは広がりをみせています。

ナレッジマネジメントで重要な「暗黙知」と「形式知」とは

ナレッジマネジメントでは、暗黙知を形式知へと変えることが重要とされています。

暗黙知と形式知、2つの言葉の意味をご存じでしょうか。ナレッジマネジメントを実施する前に、まずは暗黙知と形式知について理解を深める必要があります。

暗黙知

暗黙知とは、個人の経験や直観などに基づいた知識です。具体例として、営業の交渉術やマニュアルには記載されていない効率的に業務をこなすコツなどがあげられます。

暗黙知は、実戦経験や個人の視点を通してのみ得られる主観的な知識のため、第三者が正しく理解できるとは限りません。言語化して共有したとしても、肝要なことが伝わらない可能性もあります。

このようなことから、暗黙知は、共有しづらい知識であるといえるでしょう。

形式知

形式知とは、言葉や文章などで言語化された知識です。言語化しづらい暗黙知の対義語と理解してよいでしょう。

具体例として、組織内で共有している作業マニュアルや業務フローなどがあげられます。作業マニュアルがあれば、業務の遂行方法がわかるため、新人でも経験者と同様に業務を遂行できるでしょう。

経験の有無にかかわらず、誰とでも共有できる客観的な知識が形式知です。

ナレッジマネジメントの手法

ナレッジマネジメントに関心はあるものの、どのように取り組むべきかがわからず、導入が進んでいないケースも少なくありません。

ナレッジマネジメントには、大きく分けて4つの手法があります。

経営資本・戦略策定型(増価×集約)

経営資本・戦略策定型とは、組織内にある膨大な知識を集約して整理し、経営戦略に活かす手法です。自社が保有しているデータや競合他社の事例など、多角的に捉え、分析を行うことで、戦略的かつ現実的な経営判断が可能となります。

競合他社と比較した上で、社内の業務プロセスの洗い出しを行えば、改善点も明確となり、業務効率の改善や業務プロセスの見直しにも役立ちます。

顧客知識共有型(増価×連携)

顧客知識共有型とは、顧客優先を第一に考える手法です。顧客からのクレームや意見、対応履歴などをデータ化し、顧客対応の標準化を図ります。

トラブルについてもデータ化し、共有しておくことで、次に同じトラブルが発生した際にスムーズな対応が可能となります。個人の対応スキルに任せるのではなく、組織として対応の方針を定めることで、担当者による対応の差をなくし、顧客満足度の向上も図れるでしょう。

ベストプラクティス共有型(改善×集約)

ベストプラクティス共有型とは、社員個人が持っている知識やノウハウなどの暗黙知を形式知化し、共有することで、組織全体のスキル平準化またはスキル向上を図る手法です。

例えば、営業部門で成果を残している優秀な社員の行動や思考の分析を行い、勝ちパターンとしてデータ化します。そのデータを営業部門で共有することで、他の社員の営業力も向上し、結果的に組織全体の業績向上にもつながります。

専門知識型(改善×連携)

専門知識型とは、組織内にある専門知識をデータ化し、誰でも簡単に検索・閲覧できるようにする手法です。基本的には、問い合わせが多い質問と回答をFAQ形式化します。

顧客からの問い合わせが頻繁に発生する部門では、専門知識を持った社員に業務が偏りがちです。問い合わせの対応ばかり行い、重要な業務が後回しになることも少なくないでしょう。

専門知識型のナレッジマネジメントを行うことで、専門知識がない社員でも問い合わせの対応が可能となります。問い合わせ業務の属人化を防ぎ、対応の迅速化や品質向上にもつながります。

暗黙知を形式知化する「SECIモデル」

言語化しづらい暗黙知を形式知へと変換する際には、SECIモデルを活用すると便利です。

SECIモデルとは、暗黙知を形式知に変える変換プロセスをモデリングしたものです。SECIモデルは、「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」、4つのプロセスで成立します。

共同化(Socialization)

共同化とは、共通の体験や経験を通して、暗黙知の相互理解を深めるプロセスです。

言語化が難しい暗黙知は、体験することで共有が可能となります。マニュアルなどを用いて説明するのではなく、実体験を通すことで経験に基づいた勘やノウハウを共有できます。

この段階では、暗黙知を暗黙知として伝えることが大切です。

表出化(Externalization)

表出化とは、共同化で得た暗黙知を形式知に変換するプロセスです。

共同化した暗黙知を他社と共有できるよう、言葉や図、映像などを使って形式知に変換します。具体例などを盛り込むなど、誰が見てもわかるようにまとめることが大切です。

暗黙知を表出化することで、より多くの人とナレッジの共有が可能となります。

連結化(Combination)

連結化とは、表出化した形式知を組み合わせて、新たな形式知を創造するプロセスです。

形式知は単体でも機能しますが、形式知同士を連結させることで、体系的な知識を作り出すことができます。このプロセスではじめて、個人の暗黙知が組織の形式知となります。

内面化(Internalization)

内面化とは、連結化で生まれた新たな形式知を、個人の知識として蓄積し、新たな暗黙知を生み出すプロセスです。

頭で理解した形式知を実践することで、新たな経験や知識、コツや勘といった暗黙知に変換します。

内面化によって得た暗黙知は、再び共同化のプロセスへと戻ります。暗黙知と形式知の相互交換を繰り返すことで、組織の知識財産を蓄積することができるでしょう。

「SECIモデル」の4つの「場」

SECIモデルによって暗黙知を形式知に変換するためには、それぞれのプロセスに適した「場」を用意することも大切です。

ここでは、「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」に合わせた4つの場について解説します。

共同化が行われる「創発の場」

創発の場とは、他社と知識の交換を行い、共有する場を指します。言わば、従業員同士のコミュニケーションの場です。

研修や営業同行などのように、同じ業務を経験する場が該当し、休憩時間の雑談や飲み会、社内SNSなども創発の場といえます。

個人の暗黙知がほかの誰かの暗黙知となり、共同化が行われます。

表出化が行われる「対話の場」

対話の場とは、対話によって暗黙知を言語化し、形式知へと変換する場です。

朝礼やミーティング、チーム内でのディスカッションなど、対話を通して、暗黙知を形式知としてまとめ、共有します。突発性のある創発の場とは異なり、対話の場ではあらかじめ対話する場所を用意しておきます。

連結化が行われる「システムの場」

システムの場は、複数の形式知を集結し、組み合わせを行う場です。

システムの場は、形式知を集めやすい場所が適しているため、SNSやグループウェアなど、ICTを活用した構築が望ましいとされています。従業員が必要に応じてアクセスでき、チャットなどで気軽に話し合える環境にあれば、形式知の連結化は加速するでしょう。

内面化が行われる「実践の場」

新たな形式知を個人の暗黙知へと変換するのが、実践の場です。

形式知を得ただけでは、その情報の背景や意図までを理解することは難しく、暗黙知にすることは困難です。業務として体験するほか、研修やシミュレーションなどで実践することで、形式知が個人の知識として内面化され、新たな暗黙知を生み出すことができます。

ナレッジマネジメントを効率よく進めるためのツール

ナレッジマネジメントについては理解できたものの、どのような方法で進めればよいかがわからないという方も少なくないでしょう。

ここでは、ナレッジマネジメントを効率よく進めるためのツールを紹介します。

Excel

Excelは、ナレッジマネジメント専用のツールではありませんが、高機能な表計算ソフトなので、ナレッジマネジメントにも活用できるツールです。

企業のパソコンにインストールされている場合が多いため、ナレッジマネジメントのスモールスタートが可能です。関数を使った計算やマクロ機能を活用すれば、ナレッジの入力や集計の効率化が図れます。

ITシステム・ツール

ナレッジマネジメントの効率化を目指すなら、ITシステム・ツールの活用もおすすめです。

特に、ナレッジマネジメント専門のツールを導入すれば、暗黙知から形式知への転換もスピーディーに行えます。導入コストはかかりますが、生産性の向上や関連システムとの連携など、ナレッジマネジメント以外のメリットも得られます。

まとめ

ナレッジマネジメントとは、個人の知識やスキルを組織で共有し、組織全体の生産性や競争力の向上につなげる経営手法です。

暗黙知を形式知へと変換するサイクルを繰り返すことで、蓄積された知的資産は、企業の強みとなるとともに、個人の成長にもつながります。

変化が激しいビジネス環境では、より円滑なナレッジマネジメントが求められています。ITシステムやツールを導入し、効率よくナレッジマネジメントを進めましょう。

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