ナレッジ・マネジメントの重要性が叫ばれ久しくなりました。
ナレッジ・マネジメントとは、1993年にピータードラッガーが「知識社会」提唱した経営革新方法論のひとつです。どのような会社にも、たとえば日報や、メール、会議などで情報共有や報告を行なっていることで、ナレッジ・マネジメントの一助を担っているとも考えられます。ある形でナレッジ・マネジメントが存在していると考えられます。
しかし、積極的にそれらを統一し情報共有しようとする意識が薄いために、その知識の共有システムは会社によってさまざまになされているという状況にあります。現在のようにITが進化を遂げる前までは、日報やメール、会議などでの情報共有や報告が効率のよい方法になり得ましたが、いまや生産性の高さが、これからの企業が生き残るための指針のひとつとなる時代。情報共有のための時間を無限にさくことはできません。ナレッジ・マネジメントを成功させることができれば、生産性や効率性の向上が期待できます。
ここでは、ナレッジ・マネジメントを成功させた事例を紹介し、あなたの職場にも役立てられるヒントを読み取っていっていただきたいと思います。>>「ナレッジマネジメント」記事まとめ
新人育成にナレッジ・マネジメントを使用しない場合
以前筆者が新卒で入社した商社では、ベテラン女性上司が1人サポートでついてくれ、文字通り手取り足取り、業務上に必要な心得からあらゆることを教えてくれました。
その会社は大企業で、人材も豊富におり、売上も毎年非常によく、余裕のある会社でした。そのため、新入社員への教育は非常にきめ細かくされる環境でもありましたが、ナレッジの共有は教育画係から口頭で伝えられることが主でした。新人でしたため、まだ具体的な仕事に対しての情報共有というよりも仕事をするための準備が中心でした。
そのような時間をとったきめ細やかな指導を行ってくれた会社から、小規模の会社にすぐ転職することになったのですが、そちらは代表を入れても当時は4名の組織。まさにOJTで仕事を学ぶことになりました。比較的社歴も浅かったために、ナレッジ共有というよりも、実務を通してナレッジを作っていくことになりました。筆者が経験した2社の新人への教育環境はまったく異なるものでした。1社目の新人への教育スタイルのメリットはきめ細やかさと、実際の仕事を行うまでシュミレーションが十分になされるため、失敗が少ないこと。デメリットは、社員教育に時間がかかりすぎることでした。2社めの教育方法のメリットは、すぐに仕事の戦力として活動できるということ。デメリットは、知識不足からへのミス、失敗が避けられないということでした。
いまやどの企業も、長時間労働や滅私奉公な働き方ではなく、生産性の高い働き方を模索しています。
そんななかで筆者が経験した1社目のような社員教育スタイルは時代遅れともいえるかもしれません。伝統工芸の世界や料理人の世界では、まず師匠の仕事を見て盗むことから仕事が始まり、一人前をめざすわけですが、一般的な企業ではそうもいきません。そして、2社目のような小規模ならではのOJT方式も、失敗というリスクがついてまわる可能性もあります。現在のように、社員教育に時間と手間もコストもかけられず、またリスクも最小限にしながら業務を推進していかなくてはならない時代とニーズに答えるためにも、早く、かつ効率的に業務上に得た知識や経験を社内共有できるシステムを使用して社員に情報を浸透させ、新しい情報や知識を常にアップデートしていくことが求められるのです。
ナレッジ・マネジメントに使用するツールは様々に分かれる
グループウェア
情報を共有したり、社内コミュニケーションを行なうことができるツールの総称。社員の予定表や日報、文書を共有できるのが一般的機能。
SFA・CRM
SFAはセールス管理や支援をするために使用するシステム、CRMは、顧客管理のためのシステムを指す用語です。SFA・CRMは、セールスならびに顧客の情報管理や共有に長けたシステムと言えます。
エンタープライズサーチ
社内情報の検索システムを指します。問題解決のために運用し、大きな役割が期待できます。
ナレッジ・マネジメント社内システム運用成功例
幅広い知識やスキルが、どの担当者にも高いレベルで求められる特定の業界や業務内容の企業にとって、ナレッジ・マネジメントはビジネス上で必要不可欠なものになります。そんななか、コンサルティングする企業のブランド力の強化と経営課題を解決するミッションを持つ株式会社博報堂ブランドコンサルティングは、本格的なナレッジ共有の体制作りをすすめ、社内システムのなかに膨大な社内資料を効率的に検索できる仕組みをもつナレッジ・マネージメントシステムを導入しました。導入したことにより、情報共有に付帯する個々の負担を大幅に削減することができ、業務効率を上げることができたといいます。そしてそのシステム導入をもとに、システムの可視化がすすんだために、社内におけるナレッジ・マネジメント、知識の情報共有への意識を高めることができたと報告されています。このシステム運用は、顧客管理のためのCRMシステムを導入したと言えます。
参考URL https://www.sei-info.co.jp/quicksolution/case-studies/customers/hakuhodobc.html
特にコンサルティング業界や広告業界など、人材の出入りが多く、また仕事のバックボーンが異なる人材が集まる会社においては、社内情報共有が非常に重要だといえます。バックボーンが異なる人材同士でも、それぞれのスキルがシナジーとして仕事に生かされるためには、共通認識、共通知識を統一し、クライアントとの問題解決に取り組む姿勢が必要となります。必要な情報がナレッジ・マネジメントから効果的に引き出される状況が大きな仕事の成果を生むこととなったのです。
ほか、コピー機、FAXなどOA機器の販売やPC、ならびにPCサプライ品の販売、そしてシステムインテグレーション事業、保守サービス、教育支援などの事業を主に展開している1961年創業の株式会社大塚商会は、 卸部門を担当するビジネスパートナー事業部において、2000年からWebサイト「BP PLATINUM 」を開設していました。そのサイトは、同社がメーカーから仕入れた商品を検索したり、受発注管理ができたり、キャンペーン情報などを入手できるもので、その他にも商品選びや構成に関する相談などを行うこともできる得意先専用のサイトです。
その後同社が取り扱う商品の増加を受け、2008年初頭に、BP PLATINUM のリニューアルを検討。検索精度や性能、レスポンスなどについて良い結果を産む検索エンジンシステムを導入するに至りました。検索エンジンシステムを導入してから、従来かかっていた検索時間が大幅に短縮され、受注も増加したといいます。このナレッジマネジメントは、対顧客にセールス管理や支援を行うSFAシステム導入と言えます。
ナレッジ・マネジメントの前に立ちはだかる壁
ナレッジ・マネジメントは、社員の皆に役に立つと思われますが、すすめていくと、決まって壁が立ちはだかります。
それは、まさにナレッジ・マネジメントを使って仕事をしてほしい社員たち、その存在です。とかく情報共有のデータ作成には業務時間をとられがち。それを面倒と考えたり、意味を見いだせなかったりする人。または育児、介護休暇を取ってもナレッジ・マネジメントの恩恵をうければ、一定の成果をだせると考えられるわけですが、そのような人たちの存在を良しと思わない人がいるかもしれません。あるいは、故意に有益な情報を隠して、自分だけの手柄にしたい人があえて情報共有に協力したがらないケースも出てくるかもしれません。
情報提供者だけのこれまでは、手柄やノウハウは自分だけの知識や財産であったのに、ナレッジ・マネジメントを行うと他者にそれらが簡単に知られてしまうことに不満を持つ社員もいるかもしれません。そのために、ナレッジ・マネジメントの実データを作成することのメリットや、有益な情報を提供した人材に対しての報酬方法などを精査して、社員ひとりひとりが積極的にナレッジ・マネジメントに協力できる体制作りが最も大切なことであるといえるでしょう。
うまく運用することができれば、社員にも、会社にも、大きなメリットをもたらしてくれるナレッジ・マネジメント。ぜひあなたの会社でのケースも考えて、業務上の問題解決のソリューションに生かしてみてください。