TeamHackers読者のみなさん、こんにちは。今回のインタビューのお相手は、中米の小国であるベリーズと日本を行き来して働く小澤美佳(コザワ ミカ)さんです。
日本では、オンラインアシスタントサービスを主としておこなう株式会社ニットで営業・広報担当として働く小澤さん。
新卒で入社したリクルートでの働き方、ベリーズでの観光会社立ち上げの経験など、現在に至るまでのキャリアをうかがうことで、日本と海外の働き方に対する違いが見えてきました。
1. キャリアの礎をつくったリクルート時代
2008年の新卒採用枠で、求人広告、人材派遣、販売促進などのサービスを手がけるリクルートに入社しました。身近な例だと、住宅情報誌の「SUUMO」や結婚情報誌の「ゼクシィ」などはリクルートのサービスです。
最初の配属先は「人材領域」でした。リクルートは転職サイトの「リクナビNEXT」を保有しています。リクルートが契約している販売代理店の方々に、各企業へ向けて「リクナビNEXT」の広告枠を売っていただくための「代理店営業」に4年間従事しました。
最初の3年半の営業時代は順風満帆でしたが、営業マネージャーになってからは本当に大変だったことを今でも覚えています。
1-1.「仕事」と「生活」の両立の難しさ
営業マネージャーになってからは、たった1人で40人のメンバーをマネジメントしており、以前と比較にならないくらいの業務量をこなしていました。
「営業戦略の立案」や「組織デザイン」、「人材マネジメント」、「人材育成」などの業務を請け負いながら、チームメンバーからの相談やクライアントからのクレーム対応などにも追われる毎日で、睡眠時間が3時間という日も少なくありませんでした。
毎日、やりがいを感じて仕事をしていましたが、プライベートのことなんて二の次になっていて、当時、お付き合いしていた方からは「俺と仕事、どっちが大事なの?」といわれる始末でした。
1-2. 徐々に考えるようになった「自分のキャリア」
しかし、この経験を通じて自身の「マネジメントスキル」が磨かれたことも実感しています。自分らしいキャリアを追求することの大切さや、よりよい働き方についても深く考えるようになりました。
最後の1年は「リクナビ」の副編集長になり、大学で学生さんや親御さんに向けたキャリア形成の講演をしていました。しかし、この頃からずっと「リクルートで働き続けることに迷い」を感じるようになっていたのです。同じような仕事の繰り返しではなく、もっと広い世界を見て視野を広げられたらと考えていました。
悩む私の頭に思い浮かんだのは、5年前に一人旅で訪れた中米の小国・ベリーズ。当時、現地で出会った社長から声をかけられた私は、約10年働いたリクルートを退職し、単身でベリーズに渡りました。
2. 中米の国・ベリーズで過ごした日々
おそらく、ほとんどの方がご存じないと思いますが、ベリーズは中央アメリカの東岸に位置する国で、カリブ海とマヤ遺跡が有名な場所です。
社長に誘われて入社した観光会社の仕事を通じて、さまざまな人に出会いました。以前は社名を出せば簡単にドアを開けてもらえたのに、ベリーズではそうはいきません。これまで大手企業の名のもとに丁寧な対応を受けていた仕事が、おざなりに扱われてしまうこともありました。
そこで、私は初めて「これまで自分はリクルートという大きな看板に守られていた」ということを痛感したのです。自分は、日本という小さな島国の「井の中の蛙」だったことを思い知りました。
それでも私はベリーズで働く夢をあきらめませんでした。新しいことにチャレンジしていきたい、世界にひとつしかない仕事をしたいと考えるようになった私は、現地の観光会社を退職。そして、現地で観光会社を立ち上げ、ベリーズを訪れた観光客をアテンドしたり、宿泊施設を手配したりするようになりました。
仕事と並行しながら「南米の小国・ベリーズで観光会社を立ち上げた日本人」という触れ込みで、いろいろな雑誌に取り上げられ、取材を受けたこともありました。また、旅行会社のツアーにもベリーズ観光を組み込んでもらうことで、PR活動に勤しんだものです。
2-1. ゆったりした時間が流れるベリーズとの別れを決意
ベリーズは時間の流れがゆっくりで、みんな明るくておおらかなのです。ベリーズで過ごしたことで「日本人がいかにせわしなく働いているか」ということがわかりました。
それと同時に、観光会社での仕事はとても好きではありましたが、「一生この仕事だけでやっていくのか?」と自分自身に問いかけたときの回答は「NO」でした。
もともと「キャリアの追求」や「HR」のプロとして人生を歩んできた私は、ベリーズでの生活を通して、改めて自分の大切にしている価値観や仕事に気づき、その世界に戻りたいと思うようになりました。
そんな「HR」業界への思い抱きながら、日本に一時帰国した際に出会ったのが株式会社ニットです。
「未来を自分で選択できる社会をつくる」というビジョンを掲げたこの会社は「たくさんの人の人生をキラキラさせることに貢献したい!」と考えていた私にとって非常にフィット感のある会社で、ここに入社することを決意しました。
3. リモートワークの可能性に気づいて
日本に帰国してからニットのカスタマーサクセスを経て、現在は営業・広報担当になりました。
人手不足で業務に追われている企業に対して「オンラインアウトソーシングサービス」を紹介することが主な仕事でしたが、この仕事に携わって、私は初めてリモートワークの可能性に気づきました。
3-1. オンラインアウトソーシングサービスの魅力
オンラインアウトソーシングサービスを依頼するお客様の多くは、人手不足に悩み、ルーティンワークがたまってしまっている状態であるケースが大半なのです。当然のことながら生産性が高いとはいえません。
しかし、時間をとられがちな日々の定型業務などを外部に委託すれば、従業員が自分の本来やるべきの仕事に専念できます。その分野の経験に長けた外部アシスタントに任せることで業務の最適化につながり、企業の生産性は飛躍的に上がることが期待できます。
また、働く側からみても然りです。たとえば、パートナーの転勤や親御さんの介護、出産・育児など、何らかの事情があって外で働けない人も、リモートワークであればどこでも空いた時間で働くことができるのです。
このサービスの奥深さを知ったことで、さらなる働き方の可能性に気づくことができました。
4.「変化の仕掛け人」となりたいと考えた学生時代
さまざまな仕事を経験してきましたが、私の「行動力の源」は小学生時代の経験にあるような気がします。
当時、私は家庭の事情で弟と離れ離れになっていた時期がありました。その後、弟と1年ぶりに再会したとき、なぜかすっかり笑顔を失ってしまっていた弟の表情を今でも忘れられません。
このときから私は「自分の周りの大切な人がいつも笑顔であってほしい」と強く願うようになったのだと思います。
それからずっと、私は何か変化を与えることができる「変化の仕掛け人」になりたいと考えています。リクルート時代にたくさんの人の就職や転職をサポートしてきた「キャリアカウンセラー」としての経験を活かしつつ、多くの人のキャリアや働き方の選択肢を増やし、「人」「組織」「企業」「社会」に良い変化を起こすような仕事が出来ればと思っています。
5. 自分の「人生の軸」について考える
私はこれまで、リクルートやベリーズ、そして現在に至るまでさまざまな仕事を経験し、多様なバックグラウンドや考え方を持つ人に出会ってきました。これらの経験を経て私が気づいたことは「自分の軸を重視する」ことの大切さです。
私はベリーズで暮らしていたこともあり、日本と海外の働き方や生活の違いについて聞かれることがあります。正直、どの国であっても良いところも悪いところもあります。
ただ、人生やキャリアに悩んだときに、自分のなかの「生き方の軸」、つまり「人生において何を大切にしているのか」ということが決まっていなければ、その後のさまざまな選択においても迷いが生じてしまう恐れがあります。
そのため、まだ自分の人生の軸が見つかっていないという方は、一度「なぜ自分はいまの仕事をしているのか」「自分は何がしたいのか」について考えてみると、新たな道が開けるかもしれません。
まとめ
日本にはまだまだ「オンラインなんて怪しい」という人も多く、オンラインアシスタントサービスを紹介しても拒否反応を示す人がいるのも事実です。そういう意味では、日本で多様な働き方が認められるのはまだ先のことかもしれません。
しかしながら、視野の広い人は進んでオンラインアシスタントサービスを取り入れていて、在宅ワークで活躍している人も増えてきていることが事実です。
自分が何をしたいのかを理解し、自分の能力を把握している人であれば、働き方やキャリアの選択肢をどんどん広げられると私は考えています。そのためにはひとつひとつの過去を大切にして、自分の強みを確認して活かしていくことが大切だと思うのです。