「朝型が一番は嘘」。フリーランスは、自分で働く時間を決めることができます。そのため、朝に働いても、夜に働いても構いません。それにもかかわらず、Twitterのタイムラインを見ていると、「早起きってサイコー!」「朝日を浴びると仕事が捗る!」「みんな朝型になろうよ!」など、朝型を崇拝する言動が目立ちます。
しかし朝型になると、本当に仕事の生産性が上がるのでしょうか? 調査をしてみました。すると、驚きの結果にーー。
「朝型が一番」に感じる違和感
筆者は、生粋の「夜型」です。朝は11時~12時に起き、深夜2時~3時に眠ります。小学校のラジオ体操は一度も参加したことありません。 中学・高校は、毎年100回以上遅刻をしていました。 朝型になろうと試みたことは何度もありますが、すぐに挫折。はじめのうちは自分を責めていましたが、ふと疑問に思う。「どうして朝型にならないといけないんだろう?」
このような疑問を抱いて以来、「朝型が一番」に違和感を感じるようになりました。そして、自分と同じように朝型になろうと努力してもなれずに、自分を責めている人がいるのではないかと思い、調査してみることにしました。
世の中が「朝型」をもてはやす理由は3つあった
ここでは、世の中が「朝型」をもてはやす理由をまとめました。調べてみると、精神論のような根拠として成立しないものが多々ありました。例えば、朝早く起きると太陽から活動エネルギーをもらえるといったようなものです。 そのような曖昧なものは排除し、検討に値するような3つの理由を紹介します。
理由① : 偉大な成功者はみな早起きをしているから
1つ目の理由は、偉大な成功者はみな早起きをしているから、というものです。
具体的人物を挙げると、元アップルCEOのスティーブ・ジョブズ氏やスターバックスCEOのハワード・ショルツ氏、英国初の女性首相のマーガレット・サッチャー氏、などです。確かに、彼らにとって早起きをすることは、常人には成し遂げられない結果を残す上で、大切なことの一つだったのでしょう。
理由② : 朝の時間は誰にも邪魔されず仕事に集中できるから
2つ目の理由は、朝の時間は誰にも邪魔されずに仕事に集中できるから、というものです。
朝早く起きると、他の人はまだ眠っているため、まわりは静かです。また、仕事の連絡によって作業が中断されるというようなことも、起こりにくいでしょう。したがって、目の前の仕事に集中することができます。
理由③ : 一日の中で朝がもっとも脳の疲労が少ないから
3つ目の理由は、朝が一日の中で最も脳の疲労が少ないから、というものです。
人間は睡眠によって、一日の活動によりたまった疲労を解消しています。このことを考えると、朝が一の中で最も脳の疲労が少ないということは妥当な意見でしょう。その結果、一日の中でもっとも仕事に集中することができるという主張です。
「朝型」をもてはやす理由への反論
ここでは、前章で述べた「朝型をもてはやす3つの理由」それぞれに反論を試みます。確かに、上述した理由は、朝方を推奨するのに一定の説得力があります。しかし違った観点からみると、本当にその理由は「朝型が一番」という主張の根拠になりえているか疑問です。それでは、順番に意見を述べていきます。
反論① :「夜型」の成功者の存在を忘れていないか?
朝型をもてはやす理由として。「成功者はみな朝型だから」とありましたが、夜型の成功者の存在を忘れていませんか? 代表的な「夜型」の成功者は、英元首相のウィンストン・チャーチル氏です。彼が就寝するのは深夜3時だったそうです。他にも、米元大統領のバラク・オバマ氏や連続起業家のイーロン・マスク氏も「夜型」の成功者として知られています。このように、社会で成功できるかどうかは、「朝型」か「夜型」かではなく、もっと他のところに要因があるのではないでしょうか。
反論② : 深夜も早朝と同様に邪魔されないのではないか?
早朝は誰にも邪魔されずに集中できるというのはわかりました。しかし、深夜はどうでしょう? 深夜も誰にも邪魔されずに集中できるという点においては、同じではないでしょうか? 深夜に仕事の連絡がくるということは稀でしょうし、ほとんどの人は眠っています。つまり、「誰にも邪魔されずに集中できる」という理由は、「朝型」を正当化することにはならないでしょう。
反論③ : 仕事の生産性を決める要素は脳の疲労だけなのか?
一日の中で朝がもっとも脳の疲労が少ないという理由は、もっともなように思えます。けれども、仕事の生産性を決める要素は、脳の疲労だけではないのではないでしょうか? もし朝スッキリ起きれない人が夢うつつとしているとき、その人は効率よく仕事をすることはできないでしょう。要するに、脳の疲労が少ないというだけでは「朝型」で仕事をする決め手にはならないのです。
【研究結果】「夜型」が「朝型」になることは難しい
ここでは、睡眠に関する専門家の研究について紹介します。結論からいうと、「夜型」が「朝型」になることは難しいというのがいくつかの研究結果でわかっています。すなわち、「夜型」がいくら努力しても、「朝型」になることはほぼ無理なのです。それでは、専門家の睡眠に関する研究を紹介していきます。
朝型か夜型かは、「351」の時計遺伝子により決まっている
1つ目の研究結果は、衝撃的です。「朝型」か「夜型」かは、体内に351個ある時計遺伝子の種類の比率によって決まるというものです。この研究結果は、英科学誌の『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されました。つまり、「朝型」か「夜型」かは、生まれつきであるとされました。ただしこの研究分野は、まだまだ詳しいメカニズムは明らかにされておらず、今後の研究に注目する必要があります。
朝日を浴びることによる体内時計シフトは一過性のもの
2つ目の研究結果は、日本における睡眠研究の権威・三島和夫氏(秋田大学大学院教授)の記事にあります。同氏によると、早朝に強い朝日を網膜に浴びると翌日に体内時計を朝型にシフトする作用があるといいます。しかし、この体内時計時刻の光位相反応(朝型シフト効果)と呼ばれる作用は、一日しか持続しないようです。つまり、効果は一過性だということです。さらに、「夜型」の人ほど効果が持続しにくいらしく、「朝型」に変わることは難しいとしています。
まとめ:自分の睡眠リズムに合わせて仕事をするのが一番
本記事では、 「フリーランスは朝型が一番」に違和感を感じ調査をしました。結果、根拠となる理由には反論の余地がありました。睡眠の研究においては、「朝型」か「夜型」は遺伝的に決まり、抗うことが困難だとされています。つまり、フリーランスで仕事をしている人は、無理に「朝型」にシフトする必要はありません。自分の睡眠リズムに合わせて仕事をすることが、生産性を上げる一番の方法なのです。