「年功序列」と聞いて、読者のみなさんは実際のところ、前時代的でもう過ぎ去った話と一蹴し、考察に値しないと考えるのではないでしょうか?
確かに、年功序列というと、年長者の理不尽な振る舞いにも従わなきゃいけないというニュアンスが強く、現代の価値観にそぐわない気がしますよね。
でも、ここでは年功序列にもいいことがあったと主張します。主軸となるのは、上司の有能・無能に依存しない成長戦略です。
「年功序列」の基礎知識をおさらいしよう
これから「年功序列」という制度について考察をしていきます。まずはじめに、年功序列とは、そもそもどのような仕組みなのかということを解説します。また、年功序列のメリット・デメリットを理解することで、年功序列の全体像を俯瞰します。
「年功序列」とは、どういう仕組みか?
「年功序列」とは、勤続年数に応じて役職と賃金を上げる人事制度のことです。年功序列は、終身雇用・企業組合とともに、1960年代〜1980年代の高度経済成長を支えた日本型経営のひとつとして知られています。しかし、バブル崩壊後の1990年代に入ると、年功序列を維持するための条件である企業と経済の持続的成長が失われます。すると、個人の能力・実績に応じて賃金が決まる「成果主義」の考え方が広まり、今となっては年功序列はしばしば批判の対象にあがるようになりました。
「年功序列」のメリット
「年功序列」のメリットは次の5つがあります。
- 企業への帰属意識・愛社精神が高まる
- 人事評価システム運用のコストが低い
- 長期的な人材教育が可能になる
- 社員同士のチームワークが強固になる
- 従業員が定着しやすく離職率が低い
「年功序列」は、従業員に安心・安全な雇用機会を提供します。役職や賃金は年齢に比例するので、結婚や育児などの将来の見通しも立てやすく、企業の一部を担っているという意識も高くなります。すると、離職率が低くなり、上司や部下、同僚との人間関係も深まっていくというわけです。
「年功序列」のデメリット
「年功序列」のデメリットは、次の5つです。
- 生産性向上意欲の低下
- 人件費が年々肥大化する
- 優秀な若者を雇用しにくい
- ぶらさがり社員の増加
- 有能な社員ほど離職しやすい
「年功序列」では、社内における人材競争が起きにくいので、社員のモチベーションが構造的に低くなります。また、実力のある新卒や社員ほど機会損失が大きくなるため、雇用(維持)がしにくいです。さらに、とりあえず所属しているだけの「ぶらさがり社員」も年齢を重ねれば賃金が上昇するので、組織として人件費の高騰に対する見返りが少なくなります。
「年功序列」のいいとこどりをしよう!
前章では、「年功序列」の仕組みとメリット・デメリットを解説しました。年功序列は、すでに時代遅れであるという世間の意識が醸成されているように思えますが、上手にいいとこどりをして、所属する個人や企業を強くするアイディアを提唱します。
上司の有能・無能に依存しない成長戦略を描く
「年功序列」で、もっとも不幸なパターンは、上司が無能であるときです。部下は、上司が無能だと成長もしにくいばかりかヤル気も大幅に低下します。しかし、無能な上司を撲滅することは現実的に不可能でしょう。よって、上司の有能・無能に依存しない成長戦略を描くことが必要です。ここでは、2つの戦略を紹介します。
1つ目の戦略は、上司の「良いところを吸収」して、「悪いところを反面教師に」する姿勢をとることです。年功序列では、上司の仕事を部下は間近で見ることができるので、この戦略を用いて仕事のノウハウをどんどん身につけることができます。このとき、上司が有能か無能かは関係しないことがわかりますね。
2つ目の戦略は、上司を学びの対象(サンプル)として客観的に分析し続けることで、論理的思考と批判的志向の能力を高めることです。つまり、上司が有能でも無能でも、「どうしてこの人は仕事が上手くできるのか?」(論理的思考)、「どうしてこの人の仕事は駄目なのか」(批判的思考)を、常に持ち続け鍛える、ということです。
身につけた知識・スキルを自分流にカスタマイズする
前項で述べた上司の有能・無能に依存しない2つの成長戦略をとり、仕事の優れたノウハウと論理的思考・批判的思考の3つの成長材料を手に入れたとしましょう。次にやることは、それらを自分流にカスタマイズすることです。
これを実現するためには、仮説を立て、検証する、いわゆるPDCAサイクルをぐるぐると何度も回していく必要があります。もちろん、失敗も数多くあるでしょうが、3つの成長材料を駆使すれば、必ず飛躍的に成長できるときがやってくるでしょう。
ノウハウを後輩に伝え人材成長サイクルを生み出す
3つの成長材料を手に入れた上で、PDCAサイクルを回し続け、仕事における成功・失敗を繰り返し経験した人材は、間違いなく仕事ができるようになっているでしょう。もちろん、口でいうほど簡単ではないのは百も承知ですが、決して不可能ではありません。
では、次にやることはなんでしょうか?それは、ここに書かれている成長戦略を部下に伝え、自分を部下の成長の素材として提供することです。これを繰り返していけば、優秀な人材が次々と生まれていき、組織は必ず強くなります。これが、年功序列のいいとこどりをするというアイディアになります。
それでも「年功序列」が嫌なら、副業で自分の実力を試す
これまで、年功序列でも人材と組織は成長できるという論旨で解説を進めてきました。しかし、どうしても「年功序列」に我慢できない、という人がいるならアドバイスがあります。それは、今ブームとなりつつある副業をして自分の実力がどのくらいビジネスで通用するか腕試しをすることです。
もし仮に、副業が上手くいかなくっても、会社に所属していれば致命傷は避けれます。これが、いきなり成果主義の企業に転職して、上手くいかなかったとしたら、悲惨な結果になります。したがって、もし自分の会社が副業OKなら、検討する価値はあります。
まとめ:「年功序列」のいいとこどりをしよう
本記事では、日本の高度経済成長を支えた「年功序列」という今や時代遅れと認識されている制度について、さまざまな角度から論じてきました。筆者は文中でも述べたように、年功序列のいいとこどりをすることで、人材や組織が強くなることは可能だと考えています。よって、自分の会社が「年功序列」で辟易としている人も、まだ希望があるということを示せていたら、幸いです。