半世紀にもわたって愛される『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング)の内容をわかりやすくまとめます。アイデア作成が必要なすべての方に普遍的な原理をギュッと詰め込みました。この記事を読むと、アイデアにどのように向き合えばいいのかを知ることができます。
原理:アイデアとは、新しい組み合わせのこと
『アイデアのつくり方』は、1965年に初版が発行されて以来、半世紀にもわたって人々に支持されてきた不朽の名作です。著者のヤングは、26歳で広告業界に入り、斬新的な広告コピーで成功を収めて、42歳に引退しました。ヤングは、アイデアをつくるには「原理」と「方法」を知ることが重要だと述べています。
アイデア作成において、最も大切なことは「アイデアとは、新しい組み合わせのこと」という原理を知ることです。とはいえ、新しい組み合わせを見つけることは、誰にでもできることではありません。しかしヤングによると、異なる要素あるいは事実に関連性を見いだして、アイデアに昇華させる技術は、意識的に訓練することで後天的に獲得することができます。
わかりやすい例を補足すると、「Fin-Tech」や「HR-Tech」のように、ある業界とテクノロジーを組み合わせることにより、イノベーションやディスラプションを生み出すことが挙げられます。このように、ヤングの『アイデアのつくり方』で語られている内容は、広告業界だけではなく、さまざまな状況下において応用できる汎用性を持つと考えられます。実際にヤングの元には、あらゆる業界・業種の人々から賛辞の手紙が寄せられたようです。
アイデア作成の方法
前章で『アイデアのつくり方』の原理を紹介しました。ここでは『アイデアのつくり方』の方法を、五つのプロセスに分類して順番に解説していきます。これらの方法は、意識的なこともあれば無自覚なこともあります。しかし優れたアイデアはみんな、これらのプロセスを経て生まれていると、ヤングは断言しています。
①資料を収集する
一つ目のプロセスは「資料を収集する」ことです。ヤングは、資料を一般資料と特殊資料の二つに分けて論じています。
まず一般資料とは、生み出そうとしているアイデアに直接的に関連していない資料のことです。ヤングは、民俗学や言語学などを例にしていましたが「教養」と言い換えてもいいでしょう。
次に特殊資料とは、広告であれば製品の特徴や仕様などの、差し当たって考えるべき、特定の情報になります。これは、どのようなアイデアが必要かによって大きく異なるため、皆さんの中で柔軟に定義すべきでしょう。
ここで注目すべきは「新しい組み合わせ」が、一般資料と特殊資料における事実によって構成されるということです。つまり、直近の活動に関わる情報だけ収集するのではなく、日常的に教養を高めて広範な知識を蓄えておくことが重要です。ヤングは、優れた広告コピーを書きたいなら広告書籍を読むのではなく、社会学を学んだ方が良いというように、アドバイスをしています。
②集めた資料を咀嚼する
二つ目のプロセスは「集めた資料を咀嚼する」ことです。ヤングは、小さなカードに特殊資料の情報を書き留めておくことを推奨しています。また、一般資料にはスクラッチブックを用意して、常日頃情報をストックしておくべきとも述べています。これらを気ままに、分類・整理することを繰り返すことで、万華鏡のように集めた資料を、さまざまな角度から検証することができます。
ヤングのように、アナログな資料の咀嚼の仕方はもちろん効果的です。実際に、ライフハックの本などを読むと、カードを使った情報整理を勧めているものも多くあります。ただ近年、資料を蓄積、分類・整理するためのさまざまなアプリが存在しているので、それらを活用して自分に最適な情報の咀嚼の仕方を、追求してみるのも面白いでしょう。
③問題を放棄する
三つ目のプロセスは「問題を放棄する」ことで。「えっ!」と驚く方もいるかと思いますが、アイデアが生まれるプロセスがすべて意識的ではなく無自覚であることもあることは、すでに述べた通りです。ヤングは、シャーロック・ホームズが忙しさの合間を縫ってしばしば音楽会にワトソンを連れて出かけていたことを例に挙げています。
「問題を放棄する」時に大切なことは、自分の感性を刺激するようなことに十分な時間を割くべきということです。つい忙しいと、そのような時間を取らずに目の前の問題にこだわり続けてしまうことは、よくあるでしょう。しかしあえて一端、問題を棚上げすることによって、逆に問題の解決に近づくこともあります。
④アイデアが突然やってくる
四つ目のプロセスは「アイデアが突然やってくる」です。よく、散歩している時やシャワーを浴びている時に、新しいアイデアが生まれたという話を聞きますよね。しかしこれは、何の努力もしないでただアイデアが突然ひらめいたということではありません。ここまで説明してきた①〜③のプロセスをきちんと経ることによって、優れたアイデアがやってくるのです。
ここでやってきたアイデアは、すべて完璧なものではありません。全体の一部であったり、不完全なように思うかも知れません。しかしヤングが強調しているのは、必ずそれらをどこかに書き留めておくことです。それをきっかけに突破口が生まれ、優れたアイデアへと私たちを導くことがしばしばあるのです。そのため、いつアイデアを思いついてもいいように、メモと紙あるいはスマホを常日頃、持ち歩くとよいでしょう。
⑤アイデアを実際的にする
五つ目のプロセスは「アイデアを実際的にする」ことです。④でやってきたアイデアはよちよち歩きの赤ちゃんのようなもので、現実世界において生き抜くには、あまりにも無防備すぎます。そこで、アイデアを実現するために、さまざまな具体的な行動をとり、アイデアを実現させなくてはなりません。しかしこれは、①〜④に費やす時間や手間を考えたら、さほど難しいことではありません。新しく生まれたアイデアへの愛があれば、十分に達成することができるでしょう。
まとめ:アイデア作成の秘訣ここにあり
ここまで『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング)の中で述べられているアイデア作成の「原理」と五つの「方法」を紹介してきました。「アイデアの誕生」という論理的に説明することが難しい情報を体系的に解説した本著は、極めて価値が高い書籍です。本記事では、読者の方が5分でエッセンスを学べるようにまとめました。ただ、書籍も60分あれば読破することができるほどコンパクトですので、気になった方は一読することを強くお勧めします。