マネジメント
2018.06.25

サッカーワールドカップ日本代表にみる戦略と戦術・プロジェクト管理の考え方

ヴァイッド・ハリルホジッチ氏を、ワールドカップの2ヶ月前に電撃解任した日本サッカー協会。
大きな大会の前、ぎりぎりのタイミングで監督を解任するという前代未聞のニュースのために、今回の日本サッカー代表チームの印象は悪くなっていました。その後、西野朗氏に監督が変わっても、前時代のスター選手を呼び寄せ続けるだけで、若い新人にチームを明け渡すような新風も感じられない雰囲気がありました。そして、いよいよ迎えた6月19日。ロシア・ワールドカップ(W杯)グループHの第1戦が行なわれ、日本はコロンビアと対戦。前半開始6分に、香川真司のPKで先制点を奪い、一度は同点に追いつかれましたが、後半28分に大迫勇也が決勝点を奪い、2-1で、10年南ア大会以来8年ぶりとなる、初戦での勝利を収めました。
参考URL https://dot.asahi.com/dot/2018062000006.html?page=1

試合内容からは、ベテランの決定力と同居するミスや衰え、同時にこれからの活躍が期待できる若手の台頭を見て取れました。試合後のインタビューでは、選手一人ひとりから、力強い言葉とモチベーションを感じましたが、特に印象に残ったのは、西野監督のコメントでした。代表監督就任期間はたった2ヶ月の監督。この歴史的な勝利を手にしても、「選手がタフに戦ってくれた。その結果だと思います」と選手への賛辞を述べるにとどまり、自分の戦術や手腕をアピールすることはありません。
参考URL https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180619-00780150-soccerk-socc.view-000

第一に、選手をたたえる。そして自分の手柄については口にしないという姿に、真摯なリーダーシップを垣間みた気がします。この記事では、サッカー代表チームを参考に、ビジネスでも共通する戦略と戦術を進めるためのヒントや、プロジェクト管理の考え方について紹介していきます。

見る者にカタルシスをもたらすリーダーシップとは?


代表監督の電撃解任のためか、前評判が悪かった日本代表。ロシアワールドカップにおけるグループリーグHには、コロンビア、セネガル、ポーランドなど日本よりも格上の国がそろい、サッカー評論家や専門誌においても、日本は一勝もできなのではないかと予想されていました。西野氏へと代表監督を交代しても、ワールドカップ前の親善試合ではガーナ戦、スイス戦ともに敗退してしまった日本代表。三戦目のパラグアイ戦にて、ようやく西野監督就任から初めての勝利を手にします。

しかし、勝利をしても、世間は盛り上がり不足のまま、比較的淡々とワールドカップの幕開けを迎えました。就任してから、6月19日のコロンビアとの試合を2-1で勝利を手にするまでには、様々な批判や冷笑、品評が耳に入り、つらい立場であったであろう西野監督。98年フランス、10年南アフリカでのワールドカップの2回代表監督を務めた岡田武史元監督が、コロンビア戦終了後に、西野監督をおもんぱかり、「選手の心をつかんで、チーム一つになって戦った。なんかジーンときますよね」などとコメントしたことには、感慨深いものがありました。

参考 URL https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180619-00000176-dal-socc

早大サッカー部の先輩と後輩の間柄でもある岡田氏は、代表監督という周囲からの評価と視線に常にさらされ続ける、西野氏の立場が痛いほどわかるのでしょう。日本のサッカーに大きな足跡を残す名将とも言える岡田氏が感銘をうけるほどの、西野監督のリーダーシップとは、どんなものなのでしょうか。

観察の重要性を忘れない

西野監督は、『勝利のルーティーン 常勝軍団を作る、「習慣化」のチームマネジメント』という本を2014年に上梓しています。その本で、西野監督は監督の仕事に必要な能力として、選手たちの日常を観察する力の重要性を説いています。今回のワールドカップでの監督の仕事に関しても、実際に監督は、就任する前はサッカーの日本協会技術委員長を担当していたため、長期間にわたり選手達や、周囲の環境などを観察していたであろうことが容易に想像できます。

観察の結果、監督就任から2ヶ月という短期間の間に、チームに必要な要素や団結力などを育むための処方箋を作ることが可能になったと考えられます。観察力とは、サッカーで勝つためだけでなく、仕事のチームビルディングにも必要な構成要素です。人材を観察するというのは、その人物の仕事の出来不出来を評価・ジャッジするのではなく、人材が現時点で持っている能力やこれから開花するであろう才能なども総合的に見極め、適所に置くという大仕事をするためにリーダーたちは積極的に身につけておくべき能力なのです。

周囲に忖度させない安心感


前任のハリルホジッチ氏は、よくも悪くも大変厳しい指導者で、選手を高みへと成長させるために、厳しい言葉などもかけていたと言われます。そんなハリル氏の通訳を担当されていた樋渡群氏は、ハリル氏解任後に行われた会見の時に男泣きするほど、真摯に通訳という仕事をし、代表の勝利のために力を尽くしていたようです。まじめで高潔なボスニアの英雄、ハリル氏。厳しい先生のようなその姿も相まって、チームメンバーとのコミュニケーションは難しいものがあったのでしょうか。一方で、思い出されるのは元サッカー日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏のフランス語通訳を務めたフローラン・ダバディ氏。現在はキャスターやジャーナリストとしての活動を行っていますが、そんな彼の通訳時代は、岡野俊一郎JFA最高顧問(トルシエ監督当時はJFA会長)から「あまりトルシエさんの言っていることを直訳しないで欲しい。日本の選手は傷ついてしまうから」と言われたとインタビューで語っています。
参考 URL https://www.footballchannel.jp/2016/06/01/post155603/2/

ダバディ氏は、監督と選手をつなげる調整役として、周りの空気を読む力を使い、通訳をしていたことがわかります。彼は当時、単なる通訳者以上の存在感を示していました。彼が通訳を担当して、選手と監督のコミュニケーションに力を尽くした当時の日本代表は、日韓ワールドカップで初の決勝トーナメント進出という成績を残しています。

フランス語ネイティブのハリル氏、英語はあまり得意でないということですが、トルシエ氏は、英語も話せたということで、戦術を選手達に語るとき、英語を使って話せば、周囲にはわかる人もおり、フランス語だけを話すハリル氏よりも、コミュニケーションが取りやすい監督であったのではないかと推測できます。しかし、直訳をたしなめられるほどの語気の荒さ、それをオブラートに包もうとするサッカー協会の配慮、あるいは忖度について考えさせられるものがあります。その点、西野監督は日本人。日本人好みの伝達はもちろん問題なく、協会との摩擦も少なく、選手に指示をだせるというわけです。

ビジネスにおいても、リーダーが周囲に忖度されるようになってしまうと、いくつもの弊害が生まれる恐れがあります。いつの間にリーダーが裸の王様になってしまっていないか、リーダーがお飾りのようになってしまい、機能していないのではないか、あなたの職場におけるリーダーの資質や役割を考えてみてください。リーダーは、現場を理解する能力、上層部と部下、それぞれの立場を理解して軋轢を少なくするコミュニケーションをはかる能力、今後どのように状況や環境が変化していくのかを考える「想像力」を備えていることが望まれます。その力を養い、ビジネスに挑みましょう。

管理と放任のあいだでバランスをとる

ビジネスにおいて、ガチガチに人材を管理してしまうと、うまく機能してくれません。観察力を駆使して、最適な人材を最適な場所に据え置いても、がんじがらめだと、ミッションがうまく伝わらずに、本来その人材が持っている能力もうまく発揮されなくなる可能性も出てきてしまいます。そして、観察のうえ人材をジャッジし、もうその人材が不要である、ということ決断を行なったときの対応も非常に大事です。バッサリと人材を切ってしまうと、その人材についていた人たちの反感を買い、場の雰囲気が損なわれる恐れもあります。

今回の日本サッカー代表においても、ハリル氏の解任理由についていろいろ噂がありますが、ベテランを起用したくなかったハリル氏に対して、ベテランの人気を無視できない協会が、スポンサーへの配慮を行なったため解任となったのではないかと言われています。確かに、サイドバックの長友佑都も「おっさん、おっさんと言われていた」と話しているように、3対会出場のベテラン勢は、「おっさん」に片足を突っ込んでいる年齢ではありますが、人気もスポンサーもがっちり固まっています。
参考URL https://www.excite.co.jp/News/soccer/20180620/TokyoSportsWorldCup_2914.html

そんな「おっさん」達をバッサリと切り捨てることなく、彼らに力を発揮させて、若手にベテランの意地を見せるという結果を出した西野監督のリーダーシップと采配のバランス感覚には驚かされます。
ビジネスにおいても、プロジェクトを完遂させるためにはリーダシップとバランス術という管理能力を欠かすことはできません。

試合終了後のインタビューで、フォワード、ミッドフィールダーの本田圭佑選手のインタビューが気になりました。日本のサッカー界のスターは、ベンチスタートが不満だったように感じられました。周囲のモチベーションに響かないかと心配になるテンションの低さも少し気になりました。本田選手の姿を見ると、2010年の南アフリカワールドカップでの、川口能活選手のキャプテンとしての姿を思い出してしまいます。出場機会はなく、ベンチ入りしていましたが、常に精一杯、周囲のサポートに徹していたその姿に、感動とスポーツマンシップを感じたものです。

サッカー選手一人ひとりを見ても分かるように、能力と、人間性とがないまぜになり、その人が存在しているのだと気づかされます。人を見極めるには、様々な視点が必要なものです。それぞれ違った能力を持った、多様な人がいる中で、どのように皆がひとつのゴールを目指してプロジェクトを進めていくのかを、常にリーダーは把握していなければなりません。しかし、がっちりとした管理をして、決めたことを決めたとおりにこなしてもらうスタイルでは、いつか息切れしてしまう時が来ます。理想的には、各人にふさわしい仕事をそれぞれ適所に配し、責任を負わせて行動できるように促すことがプロジェクト成功への道につながる鍵であると考えられます。

ビジネスリーダーは、西野監督のように観察力を駆使して、力のある人材が、自分の判断に自信を持って行動してビジネスで最高の結果を得る場を作れるように、リーダーシップを取って努力しましょう!

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