事例紹介
2018.11.22

WORK LIFE RULES 〜偶然の出会いが人生を変える〜 Vol.2 モラトリアムからの卒業

〜あらすじ〜

主人公・佐藤翼は地元の一般的な私立大学に通う、ごく一般的な大学生。

なんとなく過ごしてきた大学生活も3年目を迎え、人生の一大イベント「就職活動」と向き合うことになる。まずは昔バンドをやっていたからという安易な理由で音楽業界を志すも全滅。しばらく心折れていたところ、友人に誘われ一般的な合同企業説明会に行くことになった。

資料配布・ムービー・日程説明…決まり切った進行が繰り返されうんざりしていた中、最後に立ち寄ったパチンコ店企業のブースで木村という総務部長に出会う。広告業界を目指そうとしていた翼は木村を前に浅はかな考えを露呈させられ、完膚なきまでに論破される。悔しさとともに大きな気づきを得た翼は「相談料」として木村とお茶に行くことになった。

(本物語は筆者の学生時代から現在までの人生から得た「気づき」を生き方・働き方のルールとして、一部フィクションを交えて綴ったものです。)

※Vol.1はこちら → WORK LIFE RULES 〜偶然の出会いが人生を変える〜 Vol.1 終わりなき、旅のはじまり

Chapter1 【突然の依頼】

価値観が大きく変わった合同説明会の翌週、最後に立ち寄ったパチンコ企業「創賀」の総務部長木村さんからの誘いを受け、駅前の喫茶店でお茶をすることになった。木村さんが指定してきた喫茶店はもう何十年も営業しているような老舗。約束の時間より少し早く着いたけど。まあ、いっか。

お店に入る。すると、店内は目の前が真っ白になるくらいタバコの煙で充満していた。

「マジかよ」

ヘビースモーカーの溜まり場。タバコを吸わない僕にとって、そこはまさに地獄だった。出来るだけ息をしないようにしながら待つこと10分。

「やあ、久しぶり」 木村さんが現れた。

向かいに腰掛けるなり、タバコを吸い出す木村さん。吸わないの?と聞かれたが、タバコを吸わない旨を伝えると店員を呼び、ふたり分のコーヒーを注文し、再びタバコをふかす。(自分が吸いたいからってこの店選んだんだな、何て自己中心的な人なんだ。)

この前の合同説明会の感想や就活の近況を話していると、木村さんがおもむろに口を開いた。

「今日は一つお願いがあってさ」

お願いというのは、創賀の会社説明会に参加して欲しいというものだった。どうやら次回の説明会の予約人数が少ないらしい。なんで興味ない会社の説明会に行かなきゃならないんだ。一瞬そう思ったものの。お世話になっているし、お返しはしなきゃなと思い、了承した。

Chapter2 【トップセミナー】

〜数日後〜

『株式会社創賀 トップセミナー』

ホテルの入口にそう書かれた大きな看板がかかっている。札幌駅前の老舗ホテル。こんな大きな会場でパチンコ企業が会社説明会をするのか。合同説明会でブースがガラガラだっただけに、僕は大丈夫なんだろうかと他人事ながら心配になっていた。2Fに上がり、会場の前に差し掛かると、そこには木村さんの姿が。

「おお、助かったよ、ありがとう」パンフレットを渡され、会場内に案内された。

「え・・・」

中くらいのセミナーホール、200人は入るであろう会場一杯に学生が座っていた。「(満席にならないと怒るんだよ、ウチの社長)」木村さんが小声で言う。合説ではあんなに暇そうだったのに。何だこれ。何でこんなに来ているんだろう。僕はただただ驚いていた。

理由を聞こうとしたが、じゃあ、もうすぐ始まるから待っていてくれ、と木村さんは僕を案内しそばを離れた。

開演時間。スタージ横の司会台にモデルのような綺麗な女性が現れた。「ただいまより、株式会社創賀トップセミナーを開催いたします。まずは代表取締役社長 進藤明(しんどうあきら)より会社説明をさせていただきます。では、よろしくお願いします。」

ん、最初は会社紹介ムービーじゃないのか。いきなり社長が出てくると聞いて驚いた。司会に変わって背が高く少し色黒でがっしりとした男性がステージに登壇した。

進藤社長だ。

体型がっしりで強面。正直、怖いな、と思った。「やあ、皆さんようこそ。社長の進藤です。」笑顔で話し始める。ああ、見た目は怖いけど優しい人なのか。

そう思った時だった。

「では今から私が話すが、くれぐれも居眠りなどしないように。居眠りした人を見つけたらその場で退場してもらう。では…」

え、退場?何を言っているんだこの人は。学生相手にものすごい上から目線だな。進藤社長の講演は約30分に渡って続いた。興味のないパチンコ業界の話、最初は話半分で聞いていた。

10分後。

気づけば、夢中になって聞いていた。業界のこと、自社の歴史、経営方針、自身のこと。そして、新卒採用への想い。パチンコ業界かつ北海道で新卒採用を最初に始めたのが創賀。周りの社長にたくさんバカにされたこと、今の社内は中途採用者ばかりであること、それでもこだわるのは息子との約束のため。

息子が幼い時、学校でいじめられて帰ってきた。その理由は父親の仕事がパチンコだから。その時に、社員だけじゃなく、家族も誇れるような会社にしたいと誓ったこと。それを実現するために、優秀な人材を集める為に、新卒採用を始めた。

熱く語る進藤社長の話に会場内の学生全員が引き込まれていた。確かに、これはパチンコに興味あるとかないとか関係ないな。

何より。…この社長、絶対この会社を潰さないな。僕はなぜか直感的にそう確信していた。


何気ない誘いから参加したトップセミナー。たくさんの衝撃を受け、僕は妙な高揚感に包まれていた。

Chapter3 【迷い】

トップセミナーに参加してから1ヶ月後、木村さんとはその後もたまにお茶をしていた。喫煙者だらけのお店は勘弁して欲しい、そう伝えた後は分煙の喫茶店で会ってくれるようになった。広告を軸に就活を進めていた僕は木村さんに時折近況報告をし、アドバイスをもらっていた。いつものように近況報告が終わると木村さんから一言。

「あのさ、今日は僕の相談に乗ってくれるか」

そんな何十歳も上の社会人の相談になんて乗れるわけない、と思ったが特に僕のリアクションを待つことなく木村さんは話し始めた。

「僕さ、守備範囲が広すぎるんだよ」

木村さんの肩書きは総務部長。ただ実際にしている仕事は「総務庶務・施設管理・広告宣伝・人事・広報」だと言う。凄すぎる。よくそんなに出来ますね、と聞くと、

「広告やりたいんでしょ。ウチでやらないか。この通り、専属がいないからさ。」僕の質問は無視かよ、と一瞬思ったが。苦笑

僕がパチンコ店の会社で広告をやる。正直、ピンと来ない。まあ、考えてみてよ。と木村さんに言われ、その日の面談は終わった。

家に帰ってからもずっとモヤモヤ考えていた。確かに、広告はやりたい仕事だ。でも、パチンコ店の企業に入るのか。大体パチンコ店で働いた人が転職したくなったとして、次どこで働けるんだろう…

職種を取るか、業種を理由にやめるか、キャリアは次に繋がるのか。しばらく考えていた僕は、ふと、先日のトップセミナーのことを思い出した。

進藤社長、か。めちゃ怖そうだなぁ。でも想いは熱かったし共感した。何より、潰れない会社だと思うし。チャンスがあって、ポスト空いていて、初任給高い、か。

「決めた」

この時の僕の気持ちを、一言で。死なないだろうし、まあ、なんとかなるだろ。

Chapter4 【最終面接】

翌日、木村さんに選考に進む旨を伝えるととても喜んでくれた。

「もうさ、いきなりだけど社長に会ってよ」

最初から社長面接でいいと言う。1次選考から参加しなきゃならないのかと思っていた僕はホッとしたのと同時に、いきなりあの社長と会うのかと不安が襲ってきた。

翌週。

今日は進藤社長との面接だ。通算5回目(少ない)のリクルートスーツを着て、創賀の本社を訪れた。雰囲気やオーラに圧倒される人が多いので落ち着いていけ、と木村さんからのアドバイス。以前のような失敗をしないよう、この日の為に業界・企業研究もしてきたし、志望動機も作り込んだ。

社長室隣の応接室で待たされること10分。女性社員の案内で社長室の前に通された。

ノックは3回、と。「どうぞ」 部屋の中から落ち着いた声。部屋の手前に革張りのソファ、奥には豪華なデスク。進藤社長は、デスクに座っていた。浅黒く、彫りが深い顔に低い声。なるほど、これはオーラに気圧されかたまる人も出るわけだ。僕はソファに座るように促された。

「おお、君が佐藤くんか。広告をやりたいと言ってる変わり者、と聞いているよ」(木村さん、どんな伝え方してるんだ…苦笑)。こうして、面接は始まった。志望動機やどこに惹かれたのか、将来の夢などいくつかの質問を受けた後、何か話したいことがあれば、と言われたので僕は広告宣伝を担当したい旨を熱く語った。

そして。じっくり話を聞いていた進藤社長が口を開いた。

「わかった。内定だ。」
「ただし、一つ条件がある。」

ん?内定を出すのに条件?よくわからなかったが内定をもらえるのであればと思い、何でしょうかと聞いた。

「俺が良いと言うまで、現場で働いてもらう」

…何を言っているんだ、この人は。僕は広告がやりたいと散々熱く伝えたのに。話の中で共感もしてくれていた、それなのになぜ。

「いえ、意味がわかりません。僕は広告がやりたいんです。」

思わず僕は口に出してしまった。進藤社長の表情がみるみる曇る。

やってしまった。。

そう思った、次の瞬間。「わははは!」 爆笑する進藤社長。

「本当に君は変わり者だな。うちの会社で俺にNOというやつは誰もいないんだぞ。」
「じゃあ、教えてあげよう。」

進藤社長はそう言い、続けて僕に2つの質問をした。広告は誰に向けて発信するものだと思うか。その広告は誰の意思が込められているか。

「お客様に向けて発信。会社、の意思、でしょうか?」 僕は答えた。頷きながら、進藤社長は諭すように言った。

「そうだ。じゃあ、来春入社してすぐにチラシ作れと言ったら作れるのかね、君は。お客様の気持ちや会社の意思、店長の気持ちがわかるのかな。わかるのならやってもらおう。ただ、出来ませんでした、はナシだぞ。」

…わからない。そうか。そうか。なんて僕は…

僕の顔を見て、社長は言う。

「もう一度聞く。俺が良いと言うまで現場にいてもらうが、いいか」

もちろん。はい、と答えた。恥ずかしい。どこまで自分は自己中心的で浅はかなんだろう。

でも。どうせ恥をかいたのだから、ついでにもう一つ言いたいことを言おうと思った。

「社長、僕からも一つ約束してもらいたいのですが聞いていただけますか」

ん、なんだ。と進藤社長。

「社長の仰る通り、現場に行きます。ただ、毎月1回社長室に遊びにきてもいいですか?」

面接を終えた僕の手には内定通知書があった。木村さんがその場で発行してくれたものだ。そして、携帯電話には進藤社長の携帯番号が追加されていた。

Chapter5 【実家】

無事内定を得た僕は家族に報告するため、実家に帰ってきていた。両親とおばあちゃんの前で僕は就活を終えたこと、内定をもらったことを伝えた。内定先を尋ねられたので創賀の名前を伝えると…

「そんなの!絶対許さないぞ!!」

父が立ち上がって怒鳴った。母とおばあちゃんは、泣いていた。

なぜ4年制大学を出て、パチンコ屋なんかに入るのか。そう言われた。「パチンコなんて、夜逃げしてきた人が働く場所なんだよ」、おばあちゃんは泣きながら言った。

進藤社長の目指している理想と今目の前にいる家族が言うパチンコイメージの現実。そのギャップに僕は動揺した。世代が違うと、こうまでも印象が変わるものなのか。

僕は創賀がその辺のパチンコ店とは違うこと、目指している姿などを必死に伝え、説得を試みたが何時間話しても家族は納得しなかった。ただ、僕は諦めなかった。

翌日、両親を創賀の店舗に連れて行き、パチンコ店ぽくない外観・内装を見てもらった。その上で、家に帰ってから改めて会社が目指すビジョンなどの話をした。僕の熱意が通じたのか、両親は最終的に納得してくれた。

ただ、おばあちゃんは最後まで、聞きたくない、と言って話をさせてくれなかった。自分の意思をはっきり両親に表明し、行動し、説得する。僕にとって初めての経験だった。

こうして僕は大学生活というモラトリアムに別れを告げ、社会人デビューすることになった。この後、社会人初日にとんでもない洗礼が待っているとも知らずに。

〜つづく〜

WORK LIFE RULES – NO.2

臆せず意志を表明する

LINEにしろ、Facebookにしろ、リアルでの友人関係でも「空気を読む」場面は多い。ネット社会になり、気軽にいろんな人と繋がれるようになった分、そのコミュニティや繋がりから外れたくないと言う思いも強まっているように感じる。

みんなに嫌われたくないから合わせる。みんなに好かれたいので合わせる。誰もが一度は経験したことあるはず。

ただ、その一つ一つの「空気読み」が相手に誤った情報を与えていると考えたことはあるだろうか。本当は嫌なのに、何となく問題ないと答える。

相手は以後、あなたのその嫌いなものを嫌いであると認知しない。なので、またその場面が繰り返されることになる。そうして空気読みを繰り返すうちに本来の自分とは違う自分が出来上がってしまう。

好かれるか、嫌われるかではなくて。自分を正しく知ってもらう為にも、自分の意思を表明するのは大切で。

仕事の場面では特に意見を表明しなければ、自分の意思がない人とみなされて仕事を任されることもなくなりかねません。相手や場面によって言い方を工夫することは必要ですが、自分の意思をはっきり表明するのが大切ですね。

次回:Vol.3 社会の洗礼

※本ストーリーは筆者の20代〜30代の実体験をベースしたフィクションです。

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