『なぜ、あなたがリーダーなのか?』と聞かれたら、どう答えるでしょう?

「なぜ、あなたがリーダーなのか?」

本屋で書評にする図書を探していた時、好奇心をそそる表紙の「タイトル」が目に入りました。『なぜ、あなたがリーダーなのか[新版]――本物は「自分らしさ」を武器にする』(ロブ・ゴーフィー、ガレス・ジョーンズ 著 / 英治出版 刊)です。タイトルに一目惚れしたので、そのままレジまで持っていき、帰りの電車の中と就寝前に一気に読みました。印象としては、とにかく事例が多い! どうやら抽象的な論点で主張をぼかすタイプの本ではないようです。筆者の解釈も交えつつ、読み解いていきたいと思います。

世界中でいま起こっていること


本書によると、いま世界中で「生きにくい」と考える人たちが増えているようです。筆者の周りを見渡しても慢性的な疲れが顔に出ている人も実際、以前より増えたと思います。

本書は、昨今における時代の背景をやや難し目に3つに分けて説明してあります。

  1. 個人主義の行き過ぎ
  2. 技術的合理性という考え方
  3. ソフトな独裁

「個人主義の行き過ぎ」は、ここ十数年を振り返ればわかるように、一人ひとりが持つ自由度は比べようがないくらい急速な変化を遂げています。しかし、あらゆる面で選択肢が増えたことによってむしろ、人々がどのように生きていくか、について思い悩む人は増えました。そして頼るべきコミュニティーもない孤立した人々の存在がいることも無視できません。

「技術的合理性」は、倫理性を排除して効率のみを求めることをいいます。しかし、人は社会的な生き物であり、マシンのように動くことはそもそも得意ではありません。技術的合理性が幅を利かせる社会では、数字では語れない「情緒」「雰囲気」「感性」などを奪い去っているのではないかとも筆者は思います。

「ソフトな独裁」は、一定の生活水準を人々が満たしたら、現状を維持するような衆愚が生まれ、市民社会という場が失われるのではないかと考える動きです。これによって、人々の主体性に関する意識が欠落し結果、「生きにくい」と思うのではないでしょうか。

これらの背景を踏まえつつ、リーダーシップがどうして求められているのかを次章で解説します。

時代が優れたリーダーを求めている


前章で述べた、社会的背景により人々はいわば進むべき道を見失っています。では、どうすればいいのか? 本書のテーマである「リーダーシップ」について考えてみましょう。

現在、世界中でリーダーが不足しています。その原因と考えられるのは、次の2つです。

  1. リーダーシップを奨励する一方、組織構造がそれを阻害している
  2. 「リーダーシップとは何か?」についての議論が体系化されていない

本書がアプローチしているのは、2つ目の「リーダーシップに関する議論の体系化」です。
これまでのリーダーシップの研究は、リーダー個々の特性を分析することが行なわれていました。しかし、本書では次の章でご紹介するように、少しオリジナリティーのある角度からリーダーシップに関して論じています。

『なぜ、あなたがリーダーなのか』が主張する3つの軸

本書の中では、メインテーマの「リーダーシップ」そのもの対する3つの軸が繰り返し主張されています。一つひとつ順番に理解していきましょう。

優れたリーダーシップは状況に応じて姿を変える

最初に強調したいことは、リーダーシップには「絶対的な成功則」はない、ということです。つまり、他の成功者の真似をしても同じ効果はほとんど得られないでしょう。

本書で一番大事なことの一つですが、「リーダーシップはそれぞれの状況に左右される」ことを忘れてはなりません。すると、優れたリーダーになりたい人は、「原理・法則」ではなく、目の前の状況を正しく「分析・理解」する能力を磨くことになります。

ただ本書のサブタイトルにある「本物は『自分らしさ』を武器にする」という謳い文句を見ると、リーダーシップを状況に応じて変化させるなら、「自分らしさ」が損なわれるのではないかと考える人も多いでしょう。これに対して、著者は「カメレオン」を例にあげています。

カメレオンは新しい状況に置かれたとき、周囲を「観察」してから色を変えます。ですが、カメレオンの色が変わっても、カメレオンが入れ替わったわけではないですよね。著者が述べていることは、このようなニュアンスだと考えてください。

集団における肩書きを問わない

「リーダーシップ」という単語を聞くとすごくきちんとした地位の人が身につけるべき専門の知識。そう考える人もいるのではないでしょうか。しかし、リーダーシップは日常のいたるところで日々起こっていることです。例えば、立ち食いそばに行ったとします。そして従業員の動作を細かく見ていると、「この人が全体を取り仕切ってるな」と何となく予想がつきます。要するに、ほとんどの仕事において種類と規模は違えどリーダーシップは存在しているのです。そこに肩書きは必要ありません。

人と人との関係性に根ざす

「人と人との関係性」と「リーダーシップ」を組み合わせて考察してあるのが、本書のもっともユニークな点だと思います。極端にいうと、世界に自分一人しかいなければ「リーダーシップ」は絶対に存在しないですよね。それと同じことで、「自分と他者」の関係性に注目するのはリーダーシップを考える上でとても大切になるのです。

本書を読んで思ったことですが、リーダーとメンバーがいた時に、お互いの認識には必ずズレが生じます。特に、グローバル化が進みリモートの仕事も増えてきたこともあり、コミュニケーションの問題はこれからより本格的な議論になっていくでしょう。

また、リーダーとメンバーの距離感を適切に保つことも現代的な課題です。悲しい現実ですが、「リーダーシップ」と「フレンドシップ」はトレードオフであるということが定説になってきています。さらに、「親し過ぎ・離れ過ぎ」の微調整も慎重におこなっていかなければなりません。

「本物」のリーダーとは?

本書で繰り返し述べているのですが、メンバーはリーダーが「本物」か「偽物」かに対する直感を身につけており、「本物のように偽った」リーダーには、冷たい視線を投げかけます。それでは、「本物」のリーダーとは何か? 著者は3つのポイントを指摘しています。

発言と行動が一致している

発言と行動が一致しているとは、「有言実行」ということです。つまり、口だけで行動力がないリーダーは、メンバーから信頼されることはないでしょう。逆に寡黙で行動力だけある人は、また違う視点から議論するのが良いでしょう。

常に首尾一貫している

常に首尾一貫しているとは、「一貫性がある」ということです。一度チームで話し合いリーダーが決めた目標や理念が気分次第でコロコロ変わっていたら、その度にメンバーのヤル気はなくなっていくでしょう。一度決めたことは、最後までやり通す。とてもリーダーにとって大切なことでしょう。

自分らしさを打ち出している

本書は、リーダーの「自分らしさ」が大きな影響を持つということを、たくさんの事例を通じて繰り返し述べています。しかしそれと同時に、「自分らしさ」は全部オープンにすることは言語道断で、恣意的にコントロールされた自分らしさである必要があります。

過去の偉大なリーダーも、「自分らしさ」を打ち出すことで人々から親しまれるリーダーであるように、さまざな試行錯誤を重ねたものです。筆者は、「自分らしさ」は意識せずに個性をそのまま著名人が押し出しているものだと考えていましたが、少し言い方は悪いですが、個性を演出することはリーダーの役割の一つなのかと驚きました。

明確なビジョン(理念)を現実的なタスクに落とし込む

人にモチベーションを与える時に、さまざまな考え方が存在します。それぞれ独自のフレームワークを作り試行錯誤している方も多いので、眺めていると面白いものです。

本書のアプローチを解説していきます。
まず、モチベーションを与える時には2種類の要素を考える必要があるといいます。

1つ目は、いわば「押す」アプローチ、プレッシャー(圧力)をかける方法です。これはみなさんもわかりやすいと思います。違う言い方ですと、外発的動機づけといったりしますね。

2つ目は、いわば「引く」アプローチ、ビジョン(理念)を打ち出す方法です。要するに、チーム全体の目標を話し合って決めることで、社員のヤル気を引き出す、内発的動機づけともいいます。

本書は、2つ目の「ビジョン」を掲げる方法について掘り下げています。ビジョンを決める時に気をつける2つ気をつける点があるようです。

  1. 古くならないビジョンを作る
  2. しつこく伝え続ける

そして、ビジョンの段階だとまだ具体的な行動計画に結びついていないですよね。そこで、ビジョンを現実的なタスクに落とし込む必要があります。筆者は、「最初の一歩は早く、ただ焦り過ぎない」ことが肝要だと述べています。

まとめ:『なぜ、あなたがリーダーなのか』

『なぜ、あなたがリーダーなのか[新版]――本物は「自分らしさ」を武器にする』(ロブ ゴーフィー, ガレス ジョーンズ 著 / 英治出版 刊)における重要な論点を、筆者の主観も交えつつ解説してきました。読んだ感想としては、骨太な内容だったと満足感があります。リーダーシップは、今後も取り上げていくテーマですので、それぞれを関連付けながら解説していきます。

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