自らの組織の個性を理解して経営判断することの大切さ

  • 2018年12月25日
  • 2019年8月14日
  • その他
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企業が、自らの組織構造についてよく理解していなかったとしたら、どのような弊害が生じるでしょうか? 有り体に言えば、身の丈にあった経営判断ができなくなり、その結果利益を上げることが難しくなると言えます。それで済めば傷が浅く、場合によっては企業の存続自身が危ぶまれるケースも起こり得るのではないでしょうか。今回のレポートでは、企業が「自らの組織について、“個性”を理解して経営判断することの大切だ」ということを、事例を通じてまとめます。

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取り上げるのは「物流会社」


今回取り上げる業種は物流会社です。「物流」とひとくちに言っても、実に多様な会社が世の中に存在します。そして、多くの人にとって「会社名が違うだけで、サービス内容が同じように見える」こともその特徴です。
例えば、クロネコヤマトの宅急便と佐川急便の違いを教えてくださいと尋ねた場合、人はどのように違いを説明するでしょうか? ひょっとしたら多くの人が「うーん」と頭を抱えてしまうかもしれません。
しかし、物流は「物を運ぶ」という概要は同じでも、中身は想像以上に違います。

誰と誰をつなぐかで業態が異なる

同じように見えて違うポイントのひとつめ。それは、「誰と誰の間をつないだ物流なのか」という視点です。一般的には、BtoBBtoCCtoCの3パターンに分類されます。
それぞれのパターンについて簡単に触れていきましょう。

BtoBの物流

Business to Businessの略です。企業間の物流を指し示します。例えば、自動車メーカーで自動車を製造するために、部品となる鋼材を製鉄会社から輸送するようなケースです。重厚長大型の輸送とも言われる場合があります。物流会社が、直接一般消費者と接点を持たない形式になります。

BtoCの物流

Business to Consumerの略です。企業が一般消費者に対して物を送る場合を指し示します。最近の卑近な例で言えば、アマゾン(アマゾンマーケットプレイスを除く)が商品を注文者に届けるための物流がそれです。そのほかに、百貨店のお中元やお歳暮などの配送もBtoCに区分されます。

CtoCの物流

Consumer to Consumerの略です。個人と個人の間で行われる配送を意味します。例えば、ネットオークションで商品を落札した場合、出品者が落札者へ生じる配送がそれです。そのほかにも、最近の例で言えばUbarEatsの配達も、個別の飲食店から個人宅への配送となるためBtoCというよりはCtoCに近い事例に分類されると言えます。

このように誰から誰に届ける荷物なのか? という視点で業態が分かれることがわかります。そして、この「誰から誰」という部分は運送の品質や特徴にも影響が生じます。例えば、BtoCのなかで極めて要求品質が高いとされるのが百貨店配送です。それこそ荷物の受取り手は「先様(さきさま)」と呼称されるほど。包装紙がちょっと汚れていたり、曲がっていたりした程度でクレームが発生します。一方、配達時間に対しての要求レベルが高いのは、実はBtoBの物流です。製造業では「ジャストインタイム方式」が一般化しています。必要なタイミングで必要な材料を必要なだけ輸送することが物流会社に求められているわけです。少量多頻度。しかも時間通りに。送り手と受取り手が変われば、このように「物流におけるニーズ」も変化が生じます。

物流の手法でも違いが生じる

これまでは、送り手と受取り手という物流の“顧客層”によって生じる特徴の違いについて言及しました。次に着目したいのは、「どのように運ぶか」という手法の違いから生じる特徴の違いです。
大きく分類すると、陸運、空運、海運と3つになります。陸運では、「鉄道」と「トラック」による輸送が代表的な手法になります。空運は航空機による輸送です。海運は当然に船。もっとも、船と言ってもバラ積み船もあれば、タンカーや天然ガスを専門で運ぶ船など多様な種類があります。
基本的に、運輸手法の違いは運ぶ荷物の種類によって決まると言えます。もっとも、空運か開運かという選択においてはコストとスピードという選択肢も生じます。もちろん、空運の方がスピードは早いもののコストは高くなります。
このように「物を届ける」ということでは共通するものの、どのように誰から誰に何を届けるかという違いによって、多様な広がりを見せるのが物流なのです。

運ぶモノは物流会社の個性に直結

運ぶモノの個性は企業の個性に直結します。運ぶモノによって、それを保管し仕分けするための施設が変わります。例えば、BtoBでメーカーに納めるための建築資材を一時保管しようと考えた場合、温度管理ができるかなどは度外視して、ひたすら広く使い勝手の良い倉庫を用意すればよいことになります。他方で、生鮮食品を扱うのであれば、保管場所は冷凍冷蔵倉庫になります。運ぶモノによって、施設や設備、システムなどが変わるのです。
同じように物流システムを構築する場面では、空運にすべきか、陸運にすべきかなど用意すべき「手法」がモノやニーズによってあらかじめ決まってくるのです。無論、施設や手法をハンドリングするための組織運営にも違いが出てくることになります。

かつてメジャータイトルだった、ペリカン便から学ぶ

さて、これまでまとめたように、物流会社は取り扱うモノ、顧客のニーズによって施設から手法などの設備が変化し、それに応じて企業の個性が生まれます。しかし、その個性を見誤り、誤った組織運営をすると当然手痛いしっぺ返しをくらうことになります。ひとつ、かつて存在した宅配便ブランドである「ペリカン便」を例にとり考えてみましょう。

ペリカン便とは、どのような存在だったか?

2000年前後まで、宅配便として認知されていたのはヤマト運輸の「宅急便」、日本郵政の「ゆうパック」、そして日本通運株式会社(日通)の「ペリカン便」の3つだったといっても過言ではありません。当時は、アマゾンが台頭しておらず、そのためBtoCの運送を主に手がけていた佐川急便は、一般消費者にとってはメジャータイトルではありませんでした。これらの宅配便は小口配送と呼ばれていたジャンルです。当時、コンビニエンスストアで宅配便を利用した場合、多くは宅急便もしくはペリカン便であったことを考えればメジャータイトルでした。当時、ペリカン便の市場シェアは最盛期で1~2割程度と、決して低いわけではありませんでした。

ペリカン便がサービスを終えた経緯は?

もっとも、2018年の現在においてペリカン便の名前を聞くことはありません。現在、一部日通の海外向けサービスでペリカン便の名前が残るものの、国内の宅配便ではペリカン便サービスは終了しています。経緯を見ると、2008年に日通のペリカン便事業を行う会社としてJPエクスプレスが設立、当該事業を継承しました。その後2010年には、日本郵政(厳密には日本郵便)がJPエクスプレスからペリカン便事業を譲り受け、「ゆうパック」としてサービスを展開するに至りました。要は、ゆうパックに吸収されてしまったのです。そして吸収された理由は紛れもなく、ペリカン便の収益性が低かったことによります。

なぜペリカン便が消えてしまったのか?

では、なぜヤマト運輸や佐川急便と肩を並べていた日通のゆうパックが収益性を悪化させ、ゆうパックに吸収されるまでになってしまったのか。そこにはこれまでまとめてきた、物流業界における「個性を見誤り」、そのために「誤った組織運営上の判断をしてしまった」ことが大きいと考えられます。
そもそも、日通は総合物流の雄です。例えば、国内で精密機械を製造するにあたって、海外からレアメタルや配送上繊細な取り扱いが求められるパーツ類をオンタイムで届ける、といったこと。あるいは、国内メーカーに対して海外から大量の材料素材をどっさり届けるための物流網を構築する。こういったことを得意としています。そのため、「幹線」と呼ばれる重厚長大型の物流網を国内の主要都市間で持っているのです。しかし、宅配便は、街中にある小さな拠点から他頻度でオフィスや個人宅へと指定された時間に配達する物流網の構築が求められます。例えば、ヤマト運輸が街中のいたるところにサービスステーションを設けているように。それが日通には欠けていました。しかしながら、2000年当時の日通は、“総合物流の物流網において、最終的にお客様のもとに届けるために宅配便網は必要”という風に考えていたふしがある。しかし、それは率直に言えば誤解だったといえる。結局のところ、ビジネスの顧客と一般消費者とでは顧客層が異なる。本気で宅配便の収益性を向上させようと考えるならば、物流網の構築方法を抜本的に見直す必要があったといえるのです。

追い討ちをかけた個数至上主義

さらに追い討ちをかけたのは、2000年当時の日通は宅配便のシェア拡大のために個数を追い求めていたことが挙げられます。物流網がマッチしないのにもかかわらず、です。例えば、個数の確保のために多少赤字であっても佐川急便が得意とするようなオフィス間の配送を請け負ったり、きわめて高い配送品質が要求されるお歳暮やお中元の百貨店配送を請け負ったりとなりふり構わずに数を追うような展開すら行ったとされています。しかし、前述のように基本的に重厚長大型の配送網を持つ日通において、これらの個性に合わない配送をすることは、オペレーションに対して負荷をかけることになり、加えて収益性の低下を呼ぶものにしかなりませんでした。事実、日通はペリカン便事業を行っていた当時百貨店の配送において遅延というトラブルを経験します。また、日本郵政と統合後にも(これは日通というよりも統合会社の)オペレーションが追いつかず荷物の遅配を経験することになります。

失敗を経て、企業間配送に舵を切る


こうした苦い経験を経て、日通は宅配便事業から撤退しBtoBに軸足をうつしました。その後、企業に対して物流網の提案から構築までをサポートする事業を得意ジャンルとして、総合物流の雄として改めて存在感を発揮するようになっていきます。今や「運べないものはない」と言われるほどに。
このように、大手の日通ですら自らの組織運営、そして組織の個性をしっかりと見据え、それに応じた事業展開を行うことを忘れてしまうことがあるのです。有り体に言えば「身の丈にあった経営判断」を行うことの難しさが如実に表れています。自らの組織について「まずは個性を把握し」、その上で「どのような判断が個性を存分に発揮できるのか」を考えるのが肝要なのです。

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