マネジメント
2018.08.08

ナレッジマネジメントにもっとリスクや失敗を反映させよう

2018年の7月、例年にない記録的猛暑に日本各地から悲鳴があがっています。18日に岐阜で40度超え、23日には埼玉県熊谷市で観測史上最高の41.1度を観測し、連日、熱中症で搬送されたり、最悪死亡してしまう例も多く報道されています。
今年の猛暑について、気象庁は異例の会見を開いたうえ、これまで私たちが経験のないほどの暑さで、災害と認識するレベルであると述べていました。

そしてこの酷暑のなか、西日本豪雨における被害が甚大であった地域では、懸命の捜索・復興作業が続けられています。今年の夏は、西日本は豪雨、そして災害ともいえるほどの酷暑に見舞われている日本。そんななか、自民党の石破茂元幹事長が「防災省」創設について、富山県南砺市での講演で、「災害大国の日本で専任の大臣がいなくていいのか」と述べ、防災省設置の必要性を強調したニュースがありました。
参考URL https://www.yomiuri.co.jp/politics/20180723-OYT1T50007.html

災害は、忘れたころにやってきて、事前の対策や備えの必要性を繰り返し思い出させてきます。対策が行われていれば避けられた大きな被害があったとき、必要対策を事後に知るのではなく、事前に知っていたい。それは取り返しのつかない失敗を避ける為のリスクヘッジです。災害対応だけでなく、ビジネスでも、大きな失敗を避けるために、あえて、失敗についての情報構築をする必要性を私たちは見落としがちではないでしょうか。ここでは、今こそ求められる失敗についてのナレッジマネジメントの重要性について紹介していきます。

企業の失敗ナレッジマネジメントは構築されているか

ナレッジマネジメントとは、一般的には、会社・企業が業務を行ううえで蓄積してきた知識や経験(営業ノウハウ・技術情報、顧客情報など)を会社全体で共有できるようにし、企業の競争力を活性化・向上させる経営手法のことを指します。知識や経験の蓄積と一言でいっても、実際には多くのことがらを構築することが必要となります。社員のスケジュール管理もそうですし、顧客情報のデータベース化、売上実績など、様々な情報をデータ管理したうえで、全社員がそれを閲覧できるようにするためのデータ構築していくという、アナログ的なものから高度な情報のマネジメントまで存在して初めて、社員の活用が有効となるものです。

そして、情報構築に追加していく必要性を主張したいことは、企業や業務における、失敗についての情報です。これまでに一般的な情報をデータベース化して共有するというマネジメント方式についてはよく議論され、実行されている企業もありますが、このなかに失敗した経験が含まれているのかは疑問です。

どんな企業にも大小とわず、失敗が必ずあるものです。たとえば、家電の大手企業であった東芝。その東芝は、米原子力事業をめぐる損失額に対する債務超過が決定的になり、半導体事業を売却。稼ぎ頭の半導体事業を売却すると、足を引っ張っている原子力部門しか残らず、大手総合電機メーカーであった東芝は事実上、解体へと足を進めてしまうことになりました。
他にも、液晶と言えばシャープと言われたシャープも、太陽電池の工場を建設したところ、08年に米国で起きたリーマンショックによる世界的な金融危機や円高の影響が大きくなり、堺工場への約4300億円の投資が結果的に、同社を倒産寸前に追い込む形になってしまいました。

企業や業務内容が大きければ大きいほどに、情報共有が難しくなります。ナレッジマネジメントをうまく行っていないと、機会損失や業務上の障害が発生しやすくなってしっまうために、情報を集約して、共有していくことが、企業価値を高めるチャンスにもなりえるのです。

石破氏が設置を主張している防災省は、なぜ日本には設置されていないのでしょうか。現状、日本では災害が起こったときに、対応するための専任者や省はないために、案件や状況によって内閣府や国土交通省など、複数の府省庁にまたがって対応を行っている状況です。そうすると、災害が起こったときの対応方法や情報の蓄積などは、各府省庁にて分散されて行われてしまいます。結果、災害について情報が必要になったときには、ひとつの災害に対して複数の府省庁の情報を確認しなくてはならないということになります。

災害は社会にとっても、国にとっても非常に大きな問題です。まずどれだけの被害があったのか、次に対策ができていれば避けられたような二次的な被害はあったのか、そして失われた農産物の被害状況、様々な数字や情報を蓄積していき、これから起こりうるであろう新たな災害に備えるためにどうしていくべきかを常に講じていかなくてはなりません。

一方で、災害もまた、大きければ大きいほど、被害や社会に及ぼした全体像を把握が難しいものです。しかし、それを情報として構築し、後世の防災対策に役立てられるようにしなくてはならないのです。それは、国にとって必要不可欠なナレッジマネジメントと言えるでしょう。災害自体を予想することはできませんが、以前起きた災害について精査した情報を、災害対策のために参考にして、常に安全を守る国作り、地域作りをしていくことは、府省庁が行うべき責務でしょう。災害大国とも言えるこの日本で、石破氏が主張する「防災省」が設立されれば、防災リスクを考えるときに検討材料にしたい情報を、現在の各省庁から確認するよりも、一つの省でデータを構築していくほうが、知識や経験を生かしやすいと考えられます。ナレッジマネジメントは、共有しやすく知識として利用できる公汎性があることも必要です。そのために、石破氏の主張も一理あると感じます。

リスクナレッジマネッジメントの重要性

失敗は、誰もが避けたいものです。特に日本では、失敗を避けるために、あえて冒険をせず、堅実な働き方を求める傾向があります。それは、世界有数の経済大国のひとつである、優秀な人材も多い国であるにもかかわらず、起業をすることに消極的な国民性と一致しているものです。
一方、起業家精神あふれる世界一の大国であるアメリカは、大学在学中から起業を促すゼミがあるほどに、起業は一般的な働き方のひとつとして浸透しています。学生たちは、起業してみて、その仕事内容の問題点や、小さな失敗をクラスメートや教授に共有し、意見をもらいます。小さな失敗は、大企業が起こす大きな失敗よりも、リスクは小さく、失敗をもとに様々な学びを得ることができます。失敗をとって初めて、仕事の改良が可能になるのです。小さな失敗を続けて、学び、精査をし、その経験を大きな仕事へとつなげていくことができると言えます。

一方、日本での失敗の見方としては、いかに自分が失敗をしないでここまで仕事をしてきたかを証明するために、失敗を避けたり、ぼかしたりしがちです。しかし、小さな失敗から学んだことが、大きな失敗を回避してくれる可能性を忘れてはなりません。例えば東芝も、事前にアメリカ企業が撤退することになった原子力事業に関して、それに準じて撤退を決断していれば、現在のような状況に陥ることは避けられたのではないかと言われています。ほかにも、三菱重工業は、事業をすすめる国産旅客機「MRJ」の納入延期を繰り返しています。MRJは三菱重工業が社運をかけた事業ですが、2008年に着手し、当初は13年からの納入を予定していましたが、5度の延期を重なり、現時点の予定は20年半となりました。収入を得られない一方、1千億円台を見込んでいた開発費は設計変更などで拡大し、諸経費も含めて投じた資金は約6千億円にのぼるということです。
参考URL https://www.asahi.com/articles/ASL5842JLL58ULFA00H.html?iref=pc_rellink

これまで日本の先陣を切ってきた大企業が、実績を過信して、新たな事業への投資をいさぎよすぎるほどに行い、債務超過になるという図式は、賢明であるとはいえません。日本企業も、大きな失敗を未然に防ぐためにも、もっと小さな失敗についてナレッジマネジメントを行なったうえで、そこから学ぶべきことを熟考していかなくてはならないタイミングが来ているのではないでしょうか。

リスクナレッジマネジメントが危険回避を可能にする

筆者が住む都内でも、例年にない暑さを感じる出来事がありました。小学生の息子を夏休み中のプール開放に参加させようと準備完了したところ、筆者の携帯電話に届くように設定している緊急メールに気がつきました。そのメールには、プールサイドの気温が朝8時半に36度を越え、熱中症の恐れがあるためプール開放を中止する、という連絡が入っていました。プールで涼をとるという、小学校の夏休みに毎年繰り返されてきたプール開放。それは当たり前のものでなくしてしまうという、気象の恐ろしさを感じた出来事でした。実際、このようなプール開放中止の例は他県でも同様の対応がとられ、ニュースになっています。

参考URL https://www.asahi.com/articles/ASL7T6DR9L7TTIPE02H.html

この対応は、7月17日に愛知県の小学校の校外授業において、1年生の男児生徒が熱中症で亡くなるという事件を問題視した各地の学校側が、安全を期して、プール中止という判断を行ったものです。悲しい事件ではありますが、この事件をナレッジマネジメントとして生かし、酷暑の夏、学校運営をどうしていくべきかよく考えられた例と言えるのではないでしょうか。

まとめ

リスクや失敗は、本来であれば誰でも目を背けたくなるつらいことでしょう。しかしそこから私たちビジネスパーソンは多くを学ぶ事ができるのです。ナレッジマネージメントを考えるときに、成功例や凡例だけでなく、失敗も内容に含め、構築していきましょう。

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