事例紹介
2018.10.26

派遣社員と正規の差を埋めないまま同一労働同一賃金は可能か?【働き方改革】

2016年9月ごろに「働き方改革」が提唱されてから早2年の月日が流れました。中でも正規・非正規との格差をなくそうということで「同一労働同一賃金」にするための施策が進んでいると聞きます。それにしてもみなさん、非正規に対して不安定・スキルアップできないなどネガティブなイメージをお持ちではないでしょうか?
今回は、非正規の中でも特に派遣社員について焦点を絞り、われわれが思っているよりも不利な立場や扱いなのかということについて見ていきたいと思います。

正規社員と非正規社員

まずは前置きとして正規社員と非正規社員についての定義を行ないたいと思います。

正規社員は、使用者との間に雇用契約を結び、雇用された者はその使用者の元で永久的、または定年まで従業する雇用期間を定めない雇用形態のことを指します。

一方、非正規社員は、アルバイトやパート、契約社員などのような正規社員とは反対に雇用期間が決まっている(有期契約)雇用形態のことを指します。

今回は、正規社員・非正規社員(以降正規・非正規と略す)の間にあると言われている格差について明らかにしていこうと思っています。
特に非正規社員の中に含まれる「派遣社員」にフォーカスを絞って見ていこうと思います。

そもそも派遣社員って何?

では派遣社員とは一体どういうものなのか簡単に確認をしていきたいと思います。

厚生労働省では下記のように定義しています。

労働者派遣とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結んだ上で、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというものであり、労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な労働形態となっていることから、労働者派遣法において派遣労働者のための細かいルールを定めています。  参照:厚生労働省

つまりまとめると下記の図のようになり、

簡単にいうと派遣会社と雇用契約を結び、他の企業に派遣される人を派遣社員と言えます。気を付ける点としては、派遣先の企業と派遣社員との雇用契約はなく、派遣会社との雇用関係になっているため。派遣先企業の社員というわけではありません。

また派遣社員数に関しては、一般社団法人 日本人材派遣協会のデータによると2017年の派遣社員数は129万人となっており、働いている全体の人数の2.4%に当たります。つまり派遣社員で働いている人はいるものの全体的に見ると人数は少ないことが理解していただけると思います。

派遣社員のメリット・デメリット

さて簡単に派遣社員についての理解が出来たところでメリット・デメリットについて見ていこうと思います。
分かりやすくするために使用者と労働者それぞれについて書いていこうと思います。
まずは労働者視点から書いていきます。

派遣社員(労働者)のメリット

契約期間が決まっているので自分に合う仕事ができる

派遣社員の契約期間は契約によってきめられている場合が多く、一般的な契約期間は3か月と言われています。またどんなに長く働けても最長3年までと決まっています。確かに安定した職に就きたい人から見ると、デメリットでしかありません。ただ色々な職業を体験したい、または飽きっぽい人にとってはとてもメリットになると思えます。というのも、正社員の場合は転職をしたいと思っても仕事を辞めるのに手順を踏まなくてはいけない点と転職先が見つからない場合があります。一方、派遣社員の場合は、契約によって働く期間が決まっており、自分が付きたいと思う職に就くことが可能になっています。

希望する職種や勤務地で働くことが出来る

上記の内容とほぼ類似してしまいますが、会社の都合で異動をすることがなく、その都度に職種・職務内容・勤務地などを選択することができるので、自分の都合に合わせて働くことができます。

仕事を専門的にすることが出来る

派遣社員と一般的にいうと、事務作業などの雑用を想像される方も多いかと思いますが、ただそれだけではありません。中には仕事を専門的にしたい、今のスキルをよりスキルアップさせて、転職や次の職場につなげたいと考えている人もいます。自分の伸ばしたいスキルのみを学ぶことが出来るのでそのような方にはぴったりなのかもしれません。

バイトよりも賃金が高い

バイトも派遣に関しても時給換算で給料が支払われます。10月1日に新たに最低賃金が更新されましたが、東京を例にすると958円から23円のアップで985円。よもや1000円を超えそうなほどになっていきました。東京でのバイトの賃金を調べてみると、1000円や1100円が多く見られました。実際、入社するまで自分がしていたバイトの時給は1000円でした。一方、派遣社員の平均時給はというと、厚生労働省の平成28年度 労働者派遣事業報告書の集計結果を参考にすると時給1500円超となっています。つまり、バイトをするよりも派遣社員として働いた方がよりお金をもらえることになります。また職業経験も積めるので一石二鳥と言えるのではないでしょうか?

副業もすることが出来る

昔に比べてだいぶ副業を許可している企業が増えたものの、まだまだ副業に対して理解がない人が多いようです。派遣社員は派遣会社の就業規則を守れば、副業をすることが可能です。調べてみたところ、副業に対して禁止をするような規則はあまり見受けられませんでした。そのため正社員よりも気軽に副業を始めることができます。

派遣社員(労働者)のデメリット

雇用も収入も不安定

先ほども述べたように派遣社員は契約期間が決まっていて、最長でも3年となっています。なので初めの3か月で切られてしまうケースも少なくありません。また収入に関しても正規社員と比べるともらえる金額が少ないうえにボーナスが出ません。そのため雇用も収入も不安定になってしまい、一番の悩みの種になるでしょう。

ズレが生じることがある

派遣会社・派遣先の企業・派遣社員それぞれのニーズがずれているためズレが生じることがあります。派遣会社は、たくさんの人を派遣させ、派遣社員は働きたいというニーズがあります。一方、派遣先の企業の場合、単純に事務作業をしてほしい場合や正規社員では代替することができないスキルを持った人を求める場合などがあります。このようにそれぞれのニーズがずれてしまっているので、ギャップが生じて、「何か違うなぁ」と思うことがあるでしょう。

責任のある仕事を任せてもらえず、意欲が下がる

基本的には派遣先企業からの指揮命令に従い、正規社員ではないためか、立案や責任のある仕事を任せてもらうことが少ないです。加えて、すぐにいなくなってしまうだろうと正規社員に判断されることも多いので、簡単な仕事しか回ってこないケースもあるそうです。そのため派遣社員のモチベーションが下がってしまい、仕事に対する意欲も低下することがあります。正社員との格差を大いに感じることがあるようです。

派遣社員(使用者)のメリット

働き手がすぐに見つかる

契約は必要なものの、煩わしい入社手続きなどを必要としないため、プロジェクトなどの人員不足などにすぐに対応することが可能です。正規として雇うような時期やお金がないという時に気軽に雇えるのも便利な点です。

雇用し続ける必要がない

有期契約として雇用するので、仕事が出来ないもしくは気に入らない派遣社員だとしても雇用し続ける必要がないので、後腐れなく契約終了にできます。

採用活動の一環として

もちろん派遣社員の中には、ものすごいスキルを持っているなど優秀な派遣社員もいます。そのような人材を確保するための一環として派遣社員として雇う場合があります。その際には紹介予定派遣が多く利用されることが多いです。

派遣社員(使用者)のデメリット

どのような人が来るのかがわからない

このようなスキル・技術が欲しいという要望に関しては、派遣会社に対してリクエストすることが可能ですが、あくまで派遣社員は労務契約になるので「〇〇派遣会社の△△さん」などと言った名指しで人をリクエストすることはできないことになっています。

トラブルの場合は派遣会社を通す必要がある

記事の初めの方でも確認をしましたが、派遣先の企業と派遣社員との雇用契約はなく派遣会社との雇用関係になっているため、問題やトラブルが起きた際は派遣会社と連絡を取らなくてはならないのがとても面倒な点になっています。

いなくなってしまう可能性がある

せっかく仕事を覚えて、戦力になってきたというところで契約期間が終わってしまい、いなくなってしまうケースがあります。また優秀なので採用したいと思っても、派遣社員のような働きかたが好きという方もいらっしゃるので、自社の社員として育てることができないのもデメリットと言えます。

働き方改革で本当に変われるのか?

さて派遣社員とメリット・デメリットについてあらかたの理解ができたかと思います。ようやくここから本題に移っていこうと思います。

まずは平成25年4月に改正した労働契約法についてですが、派遣社員にも有期雇用だけではなく、「無期雇用」という選択肢が出来ました。
「無期雇用」に転換するためには、有期雇用を更新して通算5年を超えることが必要になります。加えて、5年たったら必然的に有期雇用になるというわけではなく、労働者の申し込みが必要となります。つまりは、労働者の意志によるということです。無期雇用になるということは、派遣会社に定年まで雇用を継続する。つまりは、定年まで辞めずに、派遣会社で働くということになります。どのようなライフイベントが起こるのか分からないので、派遣社員(労働者)は本当にこの会社でずっと働くのか考えてから無期雇用に転換することが必要になります。またこの無期雇用は、派遣社員だけではなく、アルバイトやパートも含まれます。

また無期雇用を促進するような法律もあります。平成27年9月に改正された労働者派遣法では、派遣社員が同じ派遣先の同じ部署で働けるのは3年までとなりました。つまり、派遣社員で3年雇ってしまったら、派遣先の企業(使用者)は部署を変えるか違う人を雇うかのどちらかになります。ただし無期雇用の場合は、制限がかからないため3年を超えても同じ部署で働き続けることができます。

次に「同一労働同一賃金」についてです。
同一労働同一賃金は、働き方改革委の大きな目玉の一つと言え、同じ業務を行なっているのならば、正規社員と非正規社員に関係なく同額の賃金を支払うようにしようという案です。しかしこれにはかなりの問題がありそうです。

同一労働同一賃金って可能?


まず同一労働同一賃金にするために給与をどちらのベースで合わせるのかがまず問題になっていきます。仮に同一労働同一賃金を実現するとしたら、今の正規雇用に対して非正規の給料を合わすのか、それとも非正規の給料に正規雇用の給料を合わすのか。どちらにせよ正規雇用で働いている人は不満に思うはずです。

もし同一労働同一賃金を実現させるならば欧州型のシステムを取り入れた方が良いのではないかと思います。欧州型では、職種や職務内容で賃金が決まっています。つまり、日本のように正規・非正規関係なしにその人と職務内容での契約になります。確かにこれなら同一労働同一賃金は可能かもしれない。しかし正規雇用のメンツはつぶされるし、日本が一気に成果主義への転換ということになります。

このような状況にも関わらず「同一労働同一賃金」を実現することは可能なのでしょうか?

まとめ

いかがでしたでしょうか?
確かに派遣社員は正社員に比べて給与をもらうことはできないかもしれません。ただ派遣社員として働くことで自分のスキルを伸ばしていけたり、フレキシブルに働けて良いといったメリットももちろんあります。無理に同一労働同一賃金を進めていくと正社員の不満が溜まることをご理解いただけたと思います。正規・非正規ともに不満が出ないようにすることはできるのでしょうか? 今後の働き方改革の動向が気になります。

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