男女で違う? チームワークとジェンダーの関係性

ビジネスを効果的に進めていくうえでのチームワークの重要性が叫ばれるようになっています。まとめ上手、アイディアマン、ムードメーカー……など、チームには様々な属性を持つメンバーが参加することになりますが、ここでは人間の最も根本的な属性の一つである性別という観点から、チームワークについて考えてみたいと思います。

アフガニスタンでの米軍女性部隊

米国の心理学者であるスーザン・ピンカーは米国海兵隊の「女性エンゲージメントチーム(Female Engagement Team、FET)」の隊員とインタビューしたときの経験を記しています

インタビューは偶然にも2011年にアルカイダの指導者、オサマ・ビン・ラディンがネイビー・シールズによって殺害されたことが発表された直後に行なわれました。ピンカー氏は、機密的で暴力的な作戦を実行していた(全員が男性である)ネイビー・シールズの部隊と、全員が女性で構成されているFETの働き方の違いを印象的に感じたそうです。FETもまたアフガニスタンの危険な地域に派遣されていましたが、彼女たちがそこで行なっていたのは、アフガン人の市民たちとの絆を築くという任務だったのです。

記事には、男女では集団で働く際に何をモチベーションの源と感じるのかという点で異なっているとあります。

イリノイ州ノースウェスタン大学の社会心理学の准教授であるウェンディ・ガードナーと、レナード・N・スターン・スクールの助教授であるエリザベス・シーリー・ハワードらの研究によると、女性は集団の中にいるときに一対一の関係性を築くことに積極的になるという。それとは対照的に、男性は集団の環境下で相棒を持つが、彼らは集団から、そして、集団の一員であるという自己認識からより多くの満足感を得る。

一対一の関係性を築くことに長けているという女性の特性は、アフガニスタンのような敵意に満ちた環境下でも力を発揮しました。FETと行動を共にしていた衛生兵はこのように発言しています。

あるFETのメンバーは「とても強い関係性を築いたので、私たちが通りを歩いていると、女性や男性、みんなが家から出てきて彼女の名前を呼びました。彼女がそこにいないときでさえ、私たちの姿を見るや否や、彼女に会うためにアメリカに行ってみたいと言っていた」

一方、男性が非社会的で協調性がないというわけではなく、関係性を築くうえで何を重視するのかということが異なっているそうです。ガードナー教授は言います。

「男性と女性は同様に自分の集団に対して惹きつけられ、忠誠心を持ちます。しかし、そのコミットメントの基盤が異なるのです。女性が集団に惹きつけられるには、関係性の繋がりが必要になるのです」

このような観察をもとに、ピンカー氏はチームワークについて、良いチームプレイヤーになるには複数のあり方があるのだと結論付けています。

社会的ジレンマの下では男性がより協調的になる

実際、特定の状況下では、男性のほうが女性よりも協調的になるという研究結果があります。それは、「社会的ジレンマ」と呼ばれる状況下に置かれた場合です。社会的ジレンマとは、集団の中で各個人が合理的な行動を行なうと、集団として最適な結果が得られないという状況を意味します。

具体的な例として銀行の取り付け騒ぎが挙げられます。ある銀行が倒産の危機にあり、預金が引き出せなくなるかもしれないという噂が流れた場合、それが正確な情報なのか否かにかかわらず、それぞれの預金者がとるべき合理的な行動は自分の預金を引き出して自宅の金庫に保管する、あるいは他の銀行に預けるということです。ところが、実際にすべての預金者がこうした行動をとると、実は噂が間違っており、その銀行には潤沢な蓄えがあった場合であっても、銀行は倒産してしまいます(その場合、預金を取り返すことが出来なくなるかもしれません)。

同研究では、このような、個人が自分の利益のための選択を行なうことで、集団として不利益をこうむってしまうという状況下でどれだけ協調的になるのかという点では統計的な男女差は見つかりませんでした。ところが、男性のみの集団にいる男性は、女性だけの集団にいる女性よりも協調的にふるまうという結果が明らかになりました。この理由として、研究者たちは進化の過程に要因があるのではないかと推測しています。

「人類の進化の歴史の中で、男性同士の連携は食べ物や財産などの資源を得るにあたって効果的な戦略であり続けてきた」と、アムステルダム自由大学の研究者、ダニエル・バリエットは言う。「狩猟も戦争も個人と集団の利益が相反する社会的ジレンマである。もし全員が自分の目下の利益に基づいて行動をすると、食料を得ることはできず、戦争には負けてしまう。これらの社会的ジレンマを乗り越えるためには、お互いに強調するという戦略が必要になる」

一方で、古代の女性は同性同士で協力し合う機会が少なかったとされているため、現代でもその影響があるというのです。もちろん、男女の考え方の違いのすべてを進化に帰結させることはできません。社会的に構築されたステレオタイプもまた男女の考え方に対しての影響力を持っているからです。

それが進化によって形成されたのか、あるいは社会的に構成されたのかという議論はあるにせよ、男性と女性はチームワークを行なう際に、それぞれの特徴があるということが分かりました。それでは、どのようにすれば男女で最適なチームワークを行なうことができるのでしょうか。

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フンボルト大学で行われた実験

どのようにすれば最適なチームワークを行なうことができるのか、それを明らかにするためにフンボルト大学で実験が行なわれました。この実験では、さまざまな男女の構成からなるチームが、異なる2つのインセンティブ構造の下でゲームを行なった際のパフォーマンスを分析しています。

ゲームは2つのチームで「神経衰弱」のような暗記ゲームのスコアを競います。各チームは2人組で、構成は「男男」、「女女」、「男女」の3種類。勝敗のほかに、チームにはインセンティブ(賞金)が与えられることになっています。インセンティブを与える際の仕組みは2種類あります。

「賞金共有」と呼ばれるシステムでは、各チームのメンバーが獲得したポイントの合計を等分し、2人のメンバーに報酬を支払います。「チーム対抗」と呼ばれるシステムでは、各チームが獲得したポイントを相手チームのポイントと比較し、より多くポイントを獲得しているチームが相手チームから4ポイントを奪い、その合計を等分して2人のメンバーに支払います。相手チームとポイントを競い合うチーム対抗システムのほうが競争的なインセンティブ構造と言えるでしょう。

それぞれのチーム構成、インセンティブ構造で複数回の試合を行なった結果、統計的に有意な結果が出たのは以下の2つの観察です。

観察1:賞金共有システムの下では、同性チーム内での男性と女性のパフォーマンスに有意な差は見られない。しかしながら、混合のチームの中では男性が女性よりも有意に良い結果を出す。

観察2:男性チームと男性チームの対戦および女性チームと女性チームの対戦では、男性が女性より有意に良い結果を出す。この差は男性チームが女性チームと対戦するときにはわずかに有意に異なるにすぎないが、混合チーム同士の対戦では、男性と女性のパフォーマンスに有意な差は見られない。

まとめると、賞金共有システムでは混合チームにいる男性が女性よりも良い結果を出し、チーム対抗システムでは男性チーム同士が対戦した際に男性がより良い結果を出すということが分かりました。つまり、性別とインセンティブ構造の組み合わせによって、男女のパフォーマンスに差が出る場合があるということです。

この研究結果は組織に対して難しい選択を迫ることになります。多くの組織は全体としてのパフォーマンスを向上させるという目標のほかに、男女の平等を実現するという目標を持っています。ところが、全体としてのパフォーマンスが良い「混合チーム+賞金共有システム」という組み合わせでは、男性のパフォーマンスが女性よりも有意に高くなってしまうのです。

統計的に分析してみても、組織のパフォーマンスを最大化させ、男女のパフォーマンスのギャップを最小化するという理想的なチーム構成とインセンティブ構造の組み合わせが存在しないことが分かりました。それでも、次善のものとしては、「混合チーム+チーム対抗システム」の組み合わせが挙げられるそうです。この組み合わせではチームのパフォーマンスが最大になる一方で、男女間のパフォーマンスの差は、それがもっとも小さくなる組み合わせ(同性チーム+賞金共有システム)よりも少し高いだけに抑えられるそうです。

「男女で違う? チームワークとジェンダーの関係性」についてのまとめ

海外で行われた研究をもとにチームワークにおける男女の働き方の違いを紹介しました。それぞれ得意な部分や苦手な部分がありますが、高いパフォーマンスを実現するためには、正しい制度の下で男女が協力し合うことが大切です。

参考文献:
https://www.theglobeandmail.com/report-on-business/careers/management/team-work-gender-and-the-power-of-bonding/article624856/
https://www.livescience.com/16245-men-cooperative-women-teamwork.html
https://www.wzb.eu/sites/default/files/%2Bwzb/mp/vam/genderdifferences.pdf
なお、記事中の引用部分は筆者が翻訳したものです。

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