ノマドワーカーも必見! アート業界で生き残るため私が身につけたサバイバル仕事術

先日発足した第4次安倍内閣。その重要政策の一つとして掲げられているのが「働き方改革」です。2012年以降盛んに耳にするようになったノマドワーク(ノマドワーカー)をはじめ、テレワークやモバイルワークなど、現在は周りを見渡してみても、多様な働き方を実現している人が増えてきているのではないでしょうか。

このコラムでは、昨今の多様化する働き方を出発点とし、かつて私が働いていたアート業界で出会った多くのノマドワーカーたちから学んだ仕事術について書いてみたいと思います。

ノマドワーカーと聞くと、旅をしながら悠々自適に仕事をする姿を思い描く人が多いとは思いますが、私の働いていたアート業界では、文字通り土地から土地へと移動しながら、(決して高額とは言えない給料を得て、)マルチタスクの仕事をこなしていくという、世間一般のイメージとはかけ離れたある意味「本気の」ノマドワーカーがたくさんいたのです。

▼目次

  1. 今さら聞けない、ノマドワークとテレワークの違いとは?
  2. アート業界はノマドワーカーの宝庫
  3. 判断は常に迅速に
  4. 報告・連絡・相談の基本は死守
  5. 何をおいても欠かせない、コミュニケーション力
  6. とにかく名刺配り。もらった名刺は整理して保管
  7. 失敗しても、適切なアフターフォローを
  8. まとめ

今さら聞けない、ノマドワークとテレワークの違いとは?


本題に入る前に、ノマドワーク(ノマドワーカー)の定義についておさらいしておきたいと思います。遊牧民(=ノマド)の意味をもつノマドワーカーとは、定住せずさまざまな土地を渡り歩く遊牧民のように、カフェやファーストフード店、時には旅先でといったように、場所や時間にとらわれずに仕事をする人を総称する言葉です。ちなみに、私も今このコラムを、356円のデカフェを飲みながら、近所のスターバックスコーヒーで書いていますが、平日午前中のスターバックスには、談笑する主婦たちや、本を片手に勉強する学生たちに混ざって、PCと向き合いながら黙々と作業をしている人が、結構な人数で見受けられます。

ノマドワークと同様に、会社に出勤することなく働く働き方の一つにテレワークがありますが、両者の違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。確かにわかりにくいのですが、強いて言うなら、ノマドワーカーは個人事業主が多いのに対し、テレワーカーは会社との雇用契約が結ばれているケースが多いという違いが挙げられます。平成30年3月の国土交通省による調査では、すでにテレワーク制度を取り入れている事業所は全体の16.3%となっており、制度を取り入れている事業所では、過半数の人がテレワーク制度を利用しているという結果もでています。今後このテレワーク制を取り入れていく企業は、年々増えていくことでしょう。

アート業界はノマドワーカーの宝庫

ここで、私が働いていたアート業界について話を戻したいと思います。ひとことでアート業界といっても、銀座などにギャラリーを構える個人経営のコマーシャルギャラリーもあれば、国や地方自治体から補助金をもらいながら運営をしている公的なギャラリーや美術館もあります。また最近は、期間限定で開催されるアートフェスティバルも盛んで、「越後妻有大地の芸術祭」、「瀬戸内芸術祭」、坂本龍一が初代ディレクターを勤めたことでも話題になった「札幌国際芸術祭」など、日本各地でアートフェスティバルが開催され、アートを取り巻く現場も多様化しています。そんな中、私は現代美術の展覧会やアートフェスティバルなどを企画・運営する現場のスタッフとして長い間働いていました。

アートの現場に関わるスタッフの多くはノマドワーカーです。ある時は北海道で、ある時は横浜で、ある時は愛知でというように、場所を変えながらプロジェクトを転々とする人や、東京と地方を行き来しながら必要な時だけ現地に行って仕事をするという働き方をしている人もたくさんいます。もっと言うと、私のようなスタッフだけでなく、作品を展示するアーティスト、宣伝美術を担当するデザイナー、展示企画構成するキュレーター、記録撮影をするカメラマンなど、プロジェクトに関わるほとんどの人たちがノマドワーカーというケースも本当に多いのです。そんな環境で仕事をしていたせいか、私はこの人は仕事ができる人だと思えるノマドワーカーにたくさん出会ってきました。

そんな私が彼らとの出会いから得た、ノマドワーカーとして備えておきたい仕事の心得を、5つの項目にまとめてみました。

1.判断は常に迅速に

常に複数の現場仕事を抱えているノマドワーカーは、限られた時間の中で仕事をこなさなくてはいけません。そのため、仕事上の判断を迫られた時に、過去の経験や専門知識に基づき、迅速に答えを導きだす必要があります。ここで迷って判断をくだすことができない優柔不断な人は、ノマドワーカーには向いていないかもしれません。ただでさえ仕事とプライベートの境目が曖昧になりがちなノマドワーカーにとっては、仕事の効率化こそが自分の時間を確保することにも繋がります。そのため、より充実したライフバランスを保つためにも、迅速に判断し実行する能力は、ノマドワーカーにとって欠かせないスキルの一つといえるのです。

2.報告・連絡・相談の基本は死守

私が関わったアートの現場では、刻一刻と動いていくプロジェクトを、たくさんのノマドワーカーたちと協働しながら進めていました。そのため、より円滑にプロジェクトを遂行するためには、些細なことでも報告・連絡・相談をするという姿勢は欠かせませんでした。通常の職場環境に比べて、関わる人全員が顔をあわせる機会は週1回や月数回の全体打ち合わせの時だけという場合も少なくないため、必要な人に必要な情報をきちんと伝えるという基本中の基本がとにかく大事になってきます。ノマドという言葉から連想する自由きままなイメージとは反対に、アート業界のノマドワーカーたちは、自分の仕事の責任を100%自分でもつという意味において、会社に所属している人よりもよりその意識の強い人が多かったように思います。

3.何をおいても欠かせない、コミュニケーション力


プロジェクトごとに新しいデザイナー、アーティスト、カメラマンなどさまざまな人たちとタッグを組むことになるため、アートの現場は常に新しい出会いに恵まれていました。そのため、アート業界で働くノマドワーカーにとって、コミュニケーション力は必要不可欠なスキルと言えます。

例えば美術の世界では、展覧会のオープン日または前日に、美術関係者を招いて軽食とともに作品のお披露目をするレセプションパーティーを行うのが通例なのですが、そのようなパーティの席では積極的に交流をするよう心がけます。どちらかというと人見知りな性格の私ですが、知った顔を見かければ必ず挨拶をし、気さくに話しかけるということは、お酒の力を借りつつも努力していました。そうすることで、たまたまスタッフを探していたキュレーターや事務局の方から、次の仕事が舞い込んでくるということも少なくありません。私の友人の例をみても、現場が終われば次の現場へとプロジェクトを転々としているアート業界のノマドワーカーにとっては、そのようなパーティの場から次の仕事につながっていくというケースが多かったように思います。

4.とにかく名刺配り。もらった名刺は整理して保管

先に述べたような出会いの多い現場にいるからこそ、名刺交換はかかせないやり取りの一つでした。自分の名刺を多くの人に渡して名前を覚えてもらうことで自分を売り込むことにもつながりますし、人脈を広げていくことで仕事の可能性も広がってい
きます。そして大事なのは、いただいた名刺をきちんと保管し、整理整頓しておくことです。できれば名刺交換した日付と場所を書き添えて、日付順など自分のわかりやすいカテゴリーに分けて保管しておくと、後々役立つことがあると思います。出会いが多い分、相手の顔と名前を一致させるのが大変になりますが、一度自分の頭にその人の存在をインプットしておけば、パーティや展覧会などで再会した際に「ご無沙汰しております、○○でお会いした△△です。」と挨拶をすることができます。たとえ相手が忘れていても、次からは思い出してくれるようになり、つながりを増やしていくことができます。

5.失敗しても、適切なアフターフォローを

いくら責任を持って仕事をしていたとしても、人間誰しも失敗することはあると思います。失敗した時にどのような対応をするかは、その人の真価が問われる瞬間でもあります。たとえ失敗したとしても、その後のアフターケアまで責任をもっておこなう姿勢は、プロジェクト単位で仕事を請け負うノマドワーカーには欠かせない態度と言えます。

ここで、私があやうくアフターフォローを怠りそうになった仕事での失敗談を一つお話ししたいと思います。

アート業界では展覧会のカタログなどに掲載する文章を高名な方々にお願いするケースが少なくありません。依頼先は、評論家や学者であったり、アーティストであったりと様々ですが、その道の専門家にオファーをするので、この時ばかりはいつも緊張します。とある大御所アーティストに執筆を依頼した時のことです。快くオファーを受けてくれたところまでよかったのですが、舞い上がっていたためか、その後の私の対応には粗が出てしまいました。せっかく書いていただいた文章に朱を入れる際、確認を怠って誤った校正をしたメールを送ってしまったのです。結果、忙しい時間をぬって書いていただいたその方のご厚意を踏みにじることになってしまい、翌日「掲載を拒否したい」という電話がかかってきました。そのショックと、プロジェクトに大きな穴をあけてしまうという焦りも相まって、受話器を持ちながら、私は何も言葉を発することができませんでした。先方の意志は硬く、謝罪したからといってすんなり撤回してくれるような状況ではありません。その時の私は掲載を諦めることしか考えられませんでした。

でも、もしここで本当に諦めていたら、私はたくさんの人の信頼を裏切ったことになっていたと、今考えただけでもゾッとします。私が落ち込んでいる最中、先輩スタッフから「本当に諦めていいの? 書いてくれた文章を無駄にしてもいいの?」という叱咤とも激励ともとれる問いかけをもらいました。その言葉に押されて、ダメ元でもう一度掲載許可をいただくために努力してみようと思い直すことができたのです。その日は、寝ずに考えてメールを送り、翌朝一番で電話し、重ねて謝罪の意を述べました。その結果、なんとか気を取り直していただくことができ、プロジェクトにも穴をあけずにすみました。なにより、私が望んでいたすばらしい文章を、多くの方に届けることができたことは今も私自身にとっての財産になっています。

ノマドワーカーも必見! アート業界で生き残るため私が身につけたサバイバル仕事術のまとめ

以上が私が多くのノマドワーカーとの出会いから得た仕事術です。仕事術というほど大そうなものではなく、特定の企業に属する従来の働き方とは異なる選択をすることで、私なりに発見した仕事への向き合い方と言った方がいいのかもしれません。

冒頭にも述べた「働き方改革」が社会に浸透するにつれ、今後ますます私たちの働き方は多様になっていくでしょう。そこで忘れてはならないのが、新しい働き方には、当然良い面もあれば悪い面もあるということです。労働力を供給する側の私たちは、このような仕事のノウハウ云々とは別に、それぞれの働き方のメリットやデメリットをよく吟味し、よりよい働き方ができる社会へと変えていけるよう、声をあげていくという姿勢も持ち合わせていたいものです。

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