事例紹介
2018.08.23

日本にもあったサマータイム、導入している各国との比較と生産性

今年、2018年の夏は例を見ない酷暑です。連日熱中症予報に警戒するようアナウンスがされています。
まるで亜熱帯なみにすっかり暑くなった日本の夏で、2020年にオリンピック・パラリンピックが開催されることに対して、暑さ対策の必要性や懸念がニュースになっています。そのひとつが、「サマータイム」=夏季だけ時間を繰り上げるという施策が浮上し、政府・与党が本格検討を始めたといいます。世界屈指の都市、東京での一大イベントにかけてのこのサマータイム導入という動きは、国全体にも、国民生活へも大きな影響があります。

ここではサマータイムについて、ヨーロッパ諸国での導入例と、日本でも実は導入例があったことにからめ、生産性向上の鍵を考察していきます。

サマータイムを導入している国は案外多い

日本ではなじみのないサマータイムですが、世界各国では多くの国が導入しています。さまざまな国が導入を始めたり廃止したりしていますが、現在、国連加盟国193カ国のうち、60カ国となっており、全加盟国の約1/3の国が導入していることとなっています。アメリカにおいては、サマータイムをデイライトセービングタイム(DST)と呼び、3月の第2日曜日から11月の第1 日曜日までをサマータイムにしています。ヨーロッパでも、3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までがサマータイムの期間になっており、ヨーロッパでの呼び名は、セントラル ヨーロピアン サマータイム と呼ばれています。

サマータイムを導入している国は、日の出・日没の時間が夏と冬ではかなり異なるため、日の長い夏の間、時間を1時間進めて自然光を生かし、電気を節約しようということで、導入が続けられてきているというわけです。特に夏は朝早くから明るくなり、日没も夜遅いために、時間を早めて日中の活動時間を長くして、活動開始するのです。

サマータイムがない日本から見れば、時間が早まったように感じるサマータイム。導入している現地では、サマータイムが始まる日と終る日に時計を1時間早める、遅らせるという作業をするだけで、時間自体は何も変わりません。

サマータイムを始める日には、その日の午前0時を越した午前1時・2時から開始になります(始める時間は国によります)。サマータイムに入る日の少し前から、テレビやラジオなどのニュースで「○日からサマータイムです。家中の時計を1時間早めてから寝てください。さもなければ翌日遅刻してしまいます。」というようなアナウンスが行なわれます。にもかかわらず、当日遅刻してしまう人、時間を間違う人は必ずいます。学校や駅や空港で、間違えた! と焦る人が間違いなくいます。そして、サマータイムが終わる時は同じように逆の告知をし、時計を遅らせて寝ます。

でもやはり、サマータイム開始のとき同様当日早く出勤してしまう人、時間を間違う人が必ずいます。しかしそのあたりは、毎年のことなので、間違えてしまう人は、焦りながらも慣れっこなのかもしれません。

サマータイムによるメリットとデメリット


サマータイムを導入する直接のメリットをあげるとすれば、1時間時間を進めることによって、日没から就寝までの時間を1時間繰り下げるので、その1時間分の電力消費量を減少させることができることです。1時間時間を早めた分、太陽の光を有効に利用することができ、照明や冷房の省エネにつなげられると考えられます。朝も涼しい時間に仕事ができれば、暑いオフィスや外出先でふうふう仕事をするよりも効率アップがのぞめそうです。同時に、暑いときにエアコン消費電力がぐんとあがるリスクも減らすことができそうです。

特に東日本と北海道においてのサマータイム導入を考えてみると、ヨーロッパやアメリカに緯度的にも気候的にも近いうえ、日の出の時間も早いことから、ヨーロッパ同様のメリットが生まれると考えられます。しかし、蒸し暑く寝苦しい夜が続けば、エアコン消費電力についてはサマータイムを導入してもあまり変化がないのではないかと考えられます。また、西日本については、緯度の割に夏は非常に蒸し暑く、夜も寝苦しい日が多いため、家庭でのエアコンの消費電力量が増加し、睡眠不足の人が増える可能性もあり、サマータイム導入のメリットは薄いのではないかと考えられます。

低緯度の国々ではサマータイムが導入されていませんが、その理由として、夏と冬の昼の時間に差が少ないうえ、夕方や夜間になってもエアコンが必要な地域なのであれば、照明による電力消費が減っても、家庭でのエアコンの電力消費量が増大するので省エネの効果が薄くなってしまうことが考えられます。近年の日本の夏は、非常に蒸し暑く、昼夜を問わずにエアコンによる冷房をつけているので、サマータイムを導入したからといってエアコンによる電力消費が減少するとは考えづらいでしょう。

今回の東京オリンピックにおけるサマータイム導入に関してのメリットについては、消費電力がどうこうというよりも、観覧する人々が、野外で暑さに対応できる時間を極力つくり出せるようにする、という考えから生まれてきているようです。しかし、競技中の観客における観覧時間は競技によってまちまちであり、どれだけの暑さにさらされるかは、サマータイムを導入したからといってさほど変わりがないのではないかと考えてしまいます。

むしろ、サマータイムを導入することにより、実際の競技周辺のこと以外で、ビジネス上での生産性の向上や、人々の仕事と休息がメリハリをもたらすことがメリットとして考えられるのではないでしょうか。たとえば、会社が1時間早く始業すれば、オフィスもまだまださほど暑くはなく、早朝なので頭がよく働き、生産性アップが期待されます。そして終業時間については、オリンピックサマータイムということで、国を上げて早く終業することが求められると考えられます。早めに仕事を切り上げて、街に繰り出してオリンピックビューイングを楽しんだり、家庭でテレビ観戦を楽しんだりできるようにし、仕事と休息や楽しみとのメリハリが期待できるのではないでしょうか。

サマータイムに戸惑いがちな日本人


サマータイムに入る時期や終わる時期は、国によってそれぞれ違います。また、同じ国のなかでも、導入している地域とそうでない地域があったりもします。違う国の人が待ち合わせたら一方サマータイム時間の国、もう一方まだ冬時間の国、更に時差があったりなどしたら、サマータイムに慣れない日本人の頭にはややこしく感じるかもしれません。筆者は、以前使っていたデジタル時計にサマータイム機能があるものがあったのですが、なぜか勝手にサマータイムのボタンが押され、大事な約束に1時間遅れてしまったことがありました。

筆者はサマータイム機能の時計にすら戸惑ってしまったので、日本がサマータイムを導入することになれば、さらに混乱してしまうかもしれません。実際、日本全体においても、強制的に時間を早くするという時刻合わせに手間やコストがかかることになるでしょう。

あまりなじみがありませんが、日本でも、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による指示のもと、アメリカ文化にならう形で、1948年から51年までサマータイムが3年間導入されていました。文芸作品や映画にもその名残が散見されます。しかし、わずか3年で廃止という結果を迎えたことから分かるように、不評だったようです。その理由としては、日本人の生活に合わずに労働を多く行ってしまう、疲れる、などといったものがあったようです。一時間時間を早めても、もとからの習慣の終業時間を守って多く働いてしまうという日本人的な長時間労働信仰が垣間見られる意見かも知れません。

しかし、一方で、能率(生産性)があがる、できた時間で余暇を楽しめる、という意見があったことも事実のようです。戦後間もない時代においても、能率があがると感じた人々がいたことは新鮮な驚きを覚えます。戦後間もなくのサマータイム導入については、モーレツに働き経済成長を遂げる日本において、あまりフィットしない制度であったかもしれません。しかし、現在の経済成長が成熟しきった日本におけるサマータイム導入について考えれば、大いなる習慣に変化が必要なために混乱が生まれる可能性も否めませんが、生産性向上や余暇の充実を促進できる可能性をもまた持っている制度であることから、働きやすさや人生の充実にもっとフォーカスしていこうという風潮の現代にマッチする制度ではないでしょうか。

まとめ

サマータイム導入は、日常生活にも大きな影響を生じることは必至です。
一方で、NHKの世論調査(8月3~5日)では、「東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策としてのサマータイム」の導入に賛成が51%、「反対」が12%、「どちらともいえない」が29%という結果でした。
参考URL https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180807/k10011567031000.html
東京オリンピック・パラリンピック開催まで2年とせまり、もし実際に導入するならば準備、整備など様々なことが必要になると思われますが、導入するにあたるメリットや価値について、よく考えてみてはいかがでしょうか。

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