起業家の必読書『スターバックス成功物語』のエッセンスは輝きを失わない

今回の連載では『スターバックス成功物語』(ハワード・シュルツ 著 / 日経BP 刊)の書評をします。読者のみなさんの中にもスターバックスに親しみを抱く方がいらっしゃるでしょう。筆者もそのうちの一人です。スターバックスが、どうやって成功してきたか、本書の内容を振り返ります。

『スターバックス成功物語』の要約

  • 事業を成功させるには社員との信頼関係が第一
  • ブランド価値を損なわずに新しいことに挑戦すべき
  • 危機に直面するたびに自己改革の機会にする

『スターバックス成功物語』はこんな人におすすめ

  • 野心のある起業家あるいは起業を目指している人
  • 人材をマネジメントして育て上げる地位にいる人
  • スターバックスをよく利用し、成り立ちに興味がある人

企業と社員の間に信頼関係を築くには?

著者は、企業と社員の間に信頼関係を築くことが、経営をする上で一番大事だと述べています。では、どのようにそれを達成すればいいのか?本書の内容を振り返ります。

事業計画に対する理解と協力

一般的に事業計画は、経営陣が作成します。ただ忘れてはいけないことがあります。計画を実現するのは、現場の社員だということです。

スターバックスは、社員のことを「パートナー」と呼んでいます。これは社員ひとりひとりに対する敬意の表れです。相手が敬意を示してくれたら、それに応えるために努力する気持ちになりますね。

スターバックスの経営陣は、パートナーが事業計画を理解して、協力してくれるように、時間をかけて取り組んでいます。

採用と研修の方法を体系化

スターバックスの成長速度は、すさまじいものでした。次から次へと新店舗を展開していきます。ここで直面した課題は、新店舗が急速に拡大していきながら、スターバックスの唱える価値観をいかに浸透させるかです。

新店舗にスターバックスの価値観を反映させるためには、パートナーの教育が鍵になります。これまでは、各店舗が独自に行っていました。しかし、スターバックスがパートナーに求める水準を満たすには時間がかかりました。

そこで行われたのが、採用と研修の方法を体系化して提供することです。これによって、各店舗の負担も減り業務に集中できるようになりました。

ストック・オプションの導入

ストック・オプションとは、従業員が所属企業の株式を割引価格で購入できる権利です。スターバックスは、ストック・オプションの権利を全従業員に与えました。小売業では、非常に珍しいことで注目を集めました。

従業員は、所属企業の株式を割引価格で購入できるため、将来的に利益を得やすくなります。企業にとっても、従業員が自分たちの持つ株式の価格を上げるために、一生懸命働く動機になり、恩恵をあずかることができます。

企業のブランド価値を高めるために必要なこと

一般的に、企業のブランド力を高めようとすれば、広告を出すことを検討するでしょう。しかし本書によると、スターバックスのブランドは広告のみに頼らないといいます。スターバックスのブランド価値を高める上でキーとなることを示していきます。

理念や使命を明文化して浸透させる

ある企業が誕生して事業を始める前に、なぜそれをやるのか理由を考えることが大切です。理念や使命といえばわかりやすいでしょうか。スターバックスでは、これらのことをミッションステートメントと呼んで明文化しています。

  • 働きやすい環境を提供し、社員が互いに尊敬と威厳をもって接する。
  • 事業運営上の不可欠な要素として多様性を積極的に取り入れる。
  • コーヒーの調達・焙煎・流通において、常に最高級のレベルを目指す。
  • 顧客が心から満足するサービスを提供する。
  • 地域社会や環境保護に積極的に貢献する。
  • 将来の繁栄には利益率の向上が不可欠であることを認識する。
  • ミッションステートメントの最大の役割は、重要な意思決定を迫られた時に、判断の指針として機能することです。もし、ミッションステートメントに書かれていることと矛盾する決断をしてしまうと、ブランド価値は一気に陳腐化してしまうでしょう。逆に、ミッションステートメントに沿った経営を続けていれば、一貫性のあるブランド価値を生み出すことができると、本書では述べています。

    質の高い商品を生み出し続ける

    ブランド価値を高める最もシンプルな方法があります。質の高い商品を生み出し続けることです。上述したミッションステートメントで壮大な展望を掲げていても、商品の質が低ければただのホラ吹きのレッテルを貼られてしまいます。スターバックスは、常にコーヒーの品質にこだわり続け、妥協していません。このような姿勢をとり続けていれば、自然とブランド価値も高まるでしょう。

    課題に対してどのように振る舞えば良いのか?

    本書を読めば、スターバックスは成功するまでに、ありとあやゆる障害を乗り越えてきたことがわかります。なぜスターバックスは、直面する課題を解決し続けることができたのか。本書の内容をまとめます。

    長期的な視点で戦略を策定する

    経営学の本を読めば、必ず短期的な視点だけではなく中長期的な視点で戦略を組み立てるべき、と書かれています。しかし実際にそれを行うことは簡単なことではありません。

    著者は、さまざまな課題に直面しながらも、常に先のことを考える冷静さを持つ優れた経営者です。短期的な成果を好む投資家たちからのプレッシャーや前線に立つ社員の疑問の声をくぐり抜けることは容易ではなかったはずです。

    彼は、

    指導者に最も必要なのは、自分自身が不安を感じているときに人々を鼓舞し、自信を与えられる能力だということを、私はますます確信するようになった。

    と、述べています。

    本書は、小さな企業が巨大な上場企業になるまでのサクセスストーリーが描かれています。この本を読めば、将来的に大企業へと会社を成長させたい野心を持つ人がどのような視野を持てばいいかわかるでしょう。

    課題の解決に経験がある人材に任せる

    本書の中には、数々の人物が登場します。スターバックスは、課題に直面すると、それを解決することに長けた人材をすぐに雇用しています。例えば、小売業界の大ベテランであるジェフ・プロートマンやスターバックスの文化に大きく影響を与えたハワード・ビーハー などです。

    著者はこのように忠告しています。

    あなたのやりたいことがはっきりしたら、同じことをやった経験のある人物を見つけることだ

    この忠告からもわかるように、スターバックスは人材の採用に積極的でした。

    一方で、スターバックスの人材の雇用は、順風満帆ではなかったと本書は述べています。ヘッジファンドに相談しても、彼らは人の経験やスキルにのみ着目しており、スターバックスの文化に価値観が呼応するかどうかわからなかったのです。

    まとめると、課題を解決するために積極的に経験のある人材を雇用しますが採用は、スターバックスの文化と合う価値観を持っているかをもっとも重視していたということです。

    危機がおとずれてもチャンスと捉える

    みなさんも「ピンチはチャンス」と、聞いたことがあるでしょう。本書に書かれていることを鑑みると、これは正しかったと言えます。

    1994年6月、ブラジルで深刻な霜害が発生し、コーヒー豆の価格が暴騰しました。1ポンドあたり1.26ドルから1.8ドルまで一気にです。その後もどんどんコーヒー豆の価格は上昇します。

    著者は、決断を求められました。

     ① 価格はもっと上昇すると予想して現在価格で大量買いする
     ② 価格はこれから減少すると予測して、しばらく様子をみる

    著者が選んだのは①でしたが、結果的には②を選ぶべきでした。コーヒー豆の価格は、大量買いした価格をピークに、減少していきました。

    しかしながら、間違った決断から危機的状況に陥ったスターバックスは、まさにピンチをチャンスに変えたのです。

    スターバックスは、予測収益を実現する必要性から、業務をどんどん効率化していき費用を削減していきました。これによって、大打撃を被ることは避けられました。そして、業務の無駄を排除することに成功することができたのです。

    筆者・師田による考察

    私は、スターバックスのファンのひとりです。現在は事務所をひらき仕事をしていますが、以前はスターバックスで仕事をしていました。スターバックスは他のチェーン店とどこが違うのか?本書には答えが書いてありました。それは、スターバックスの「文化」です。

    スターバックスの文化を辿ると、本場のイタリア風エスプレッソとの出会いが由来です。現在、スターバックスは家庭や職場から離れた第三の場所(サードプレース)として、すっかり人々の生活に馴染んでいます。

    スターバックスの文化は、パートナーの接客にもよく現れています。みんな、笑顔で挨拶をしながらテキパキと業務をこなしています。外からみていると、実に見事です。このように、経営陣が掲げている文化を、現場のひとりひとりが理解し、体現している企業はそうそう見つかるものではないでしょう。

    他にも、自由度の高い内装のデザインや期間限定のユニークな商品、追加オプションなど、枚挙にいとまがありません。さらに特徴的なことは、著者も述べていましたが、大企業でありつつも新しいことに挑み続ける起業家精神です。大企業が起業家精神を忘れてしまうと、衰退していくしか道がありません。この点、スターバックスの経営は抜け目がないように思えます。

    現在は、美味しいコーヒーを提供するお店も増えてきました。品質だけでは差別化することは難しいでしょう。それでも、人々がスターバックスを愛し続ける理由は、設立当初から一貫しているスターバックス「らしさ」です。これからもどんどん新しい挑戦をしていって欲しいですね。

    まとめ

    『スターバックス成功物語』は、スターバックスがぐんぐん成長していく舞台裏を生き生きと描いている名著です。ストーリーを読み終えると、著者が数々の経営判断を的確に成してきたことがわかります。まさにトップレベルの経営者です。ここまで解説してきた内容を振り返るだけでも、モチベーションが湧いてくるでしょう。ぜひご一読を。

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