伝説の日本人プログラマーが語る『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』は仕事に対する考え方を一変させるかも

「あなたの仕事は、仕事を終わらせることです」

マイクロソフト社Windows95の「ダブルクリック」や「ドラッグ・ドロップ」の設計思想を生み出した伝説の日本人プログラマー中島聡氏は、『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である』(文響社 刊)の中で上のように述べました。中島氏は、たくさんのエンジニアと仕事をする中で、あることに気づいたといいます。それは、「常に締め切りを守る人は、100人に1人もいない」ということです。本書では、「なぜ常に締め切りを守ることができないのか」明らかにしています。そして、締め切りを守るための具体的な方法を解説してあります。

なぜ仕事の締め切りに遅れてしまうのか?

安請け合いしてしまう

みなさんも「この仕事、金曜までにできる?」と上司に言われて、「はい、できます!」と条件反射的に答えてしまった経験があるのではないでしょうか。著者によると、これは要注意だといいます。なぜなら、仕事の見積もりをパッと見て、正確に導き出すことは、非常に困難だからです。

本書では、仕事を数学の試験に例えて説明しています。数学の試験問題は、2つのタイプに分けることができます。前半の「基本問題」と後半の「応用問題」です。基本問題は、単純作業に似ていて手順を覚えれば誰でもできる問題です。そのため、解く時間を見積もることは難しくありません。一方、応用問題は思考力や論理性を働かせないと解くことはできず、解く時間を見積もることが困難です。これと同様に、仕事にかかる時間にも測りやすいものと測りにくいものがあります。このことを考えずに、仕事を安請け合いしてしまうと「締め切りに間に合わない」ということになるのです。

ギリギリまでやらない

著者は、米国のマイクロソフト本社で勤務した経験があり、日米における仕事に対するスタンスの違いを感じたといいます。日米の仕事スタンスの違いは、「最初に頑張るアメリカ人、最後に頑張る日本人」という一言に現れています。ご存知の通り、日本の企業は残業が多いです。「終電まで粘る」ことも少なくありません。一方、アメリカ人はそれほど残業をしません。その代わり、朝早くに出社します。なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?著者は、「仕事に精を出す時間」と「家族と過ごす時間」の優先順位が日米で異なることを理由の一つとして挙げています。日本人は、「仕事 > 家族」です。対してアメリカ人は「仕事 = 家族」です。

さらに日本人は、仕事にギリギリまで真剣に取り組まない傾向があります。著者は、「ラストスパート症候群」と表現しています。いわば「火事場の馬鹿力」の発想です。そのため、仕事前日に徹夜で仕事をするも、結局終わらずに締め切り延長をギリギリになって申し出る、ことに陥りがちです。一般的に、締め切り直前の徹夜は生産性が低いといわれています。焦燥感や不安感が集中力を妨げるだけではなく、睡眠をとらずにいると思考能力がどんどん低下するからです。仕事の締め切りを守るかどうかは、上司による評価に大きな影響を与えるため、改善する必要があるでしょう。

全体の計画を考慮しない

全体の計画を考慮しないことは、仕事の締め切りに遅れるというよりも、締め切り間近に計画にないことを突然おこなうことで、上司がその対応に腐心するというパターンです。本書では、「天才プログラマーが、なぜトップのチームに配属されなかったのか」という例が挙げられています。要点をまとめると、天才プログラマーは締め切りギリギリになって、才能と能力が優れている故に、設計にない機能を独自に追加、結果的に上司が調整に奮闘する。そんなシナリオです。少し特殊な例かもしれませんが、チームで働く時は全体の計画の枠内で仕事をする必要があります。

「ロケットスタート時間術」とは?

「ロケットスタート時間術」が生まれたきっかけ

本書では、著者がなぜ「時間術」の本を書いたのか、少年時代から遡って解析しています。最初のきっかけは、小学生の時の夏休みの宿題の話です。著者は、夏休みの宿題をギリギリになるまでやらない子だったので、親戚から「海で遊ばないか?」と誘われた時、宿題に追われていて行くことができず、とても悔しかったといいます。そこで、次の年からは夏休みが始まったらすぐに宿題を片付けて、「いつでも遊ぶ準備OK!」にしたそうです。これによって、嫌なことはさっさと片付けて、余った時間を楽しいことに使う、という価値観が形成されたのでしょう。その後、中高、大学、職場においてもその姿勢は変わりませんでした。著者は、効率を徹底的に追求するという点において並並ならぬ熱意を持ち、本書のメインテーマである「ロケットスタート時間術」を生み出したのです。

時間術①:すべての仕事でスピードを重視

著者によると、仕事が遅い人は「評価恐怖症」すなわち人から悪い評価をされることに恐れていつまでも仕事を納めることができない病を抱えている人が多いといいます。確かに、人は誰でも高く評価されたいので、完璧な仕上がりになるまで、提出したくないという心理は当然あるでしょう。しかし、著者は「すべての仕事はやり直しになる」と一蹴します。

筆者は、仕事をもらったらプロトタイプ(試作品)を速度重視で大まかに作り、細部は後で考えることを推奨しています。この考え方は、エンジニアだけではなくいろいろな職種でも応用可能です。大事なことは、彫刻を掘るのと同じように「全体→細部」という手順を踏むことです。プロトタイプの作成を本当の締め切りより早く設定して、それに向かってスタートダッシュをきりましょう。これで、同僚に差をつけることができます。

時間術②:パレートの法則(2:8の法則)を意識する

きっとみなさんは、「パレートの法則(2:8の法則)」について聞いたことがあるでしょう。そもそものパレートの法則は、「顧客のうち全体の2割が8割の売り上げを生む」という考え方です。しかし、パレートの法則はさまざまな状況を説明するのに、しばしば引き合いに出されます。本書では、仕事の締め切りが10日後だとすると最初の2日間に仕事の8割を終わらせるという意味で使われています。これが、「ロケットスタート時間術」のキモとなります。

「最初の2割の期間で仕事の8割を終わらす?無理じゃないだろうか?」と思うかもしれません。しかし、いつも締め切り間近になった時は、全体の2割くらいの期間で仕事を終わらせようと奮起しますよね。つまり、最大限集中する時間軸を前に持ってくる。筆者は、それが重要だと述べています。仕事を早く終わらせて余った時間を生み出すことが仕事の出来を大きく左右するからです。著者は、この余った時間をスラックと呼んでいます。

時間術③:仕事に集中できる状況を作る

著者は、朝が仕事に集中するのに最適であるとしています。理由は、次の3つです。

  1. 外部要因の締め切りが設定できる
  2. メールをチェックする必要がない
  3. 話しかけてくる人がいない

著者は、朝4時に起きて仕事にとりかかるといいます。そして、「外部要因の締め切り」となるのは、家族が起きてくる時間だそうです。また、朝はメールを送ってくる人もいないことに加え、話しかけてくる人もいないので、集中力を途切らせることなく仕事に集中できると述べています。

会社勤めをしている人は、出社前にカフェで仕事をするのもいいでしょう。著者はここでもパレートの法則を当てはめて、一日のタスクのうち8割を午前中に終わらせ、午後は流すとうスタイルを勧めています。当然、朝早く起きると日中に眠くなります。そんな時は、仮眠をとりましょう。仮眠は、生産性を高めるために必須の習慣です。

「ロケットスタート時間術」を実践するために

「ロケットスタート時間術」の中身がわかったところで、「いや、会社勤めをしていたら無理でしょ」と思う方もいるかもしれません。そんな方に、筆者はロケットスタート時間術を実践するコツを説明しています。

中期・長期の仕事は縦に切り分ける

会社で働いていれば、1,2週間で終わるような短期の仕事、1~3ヶ月で終わるような中期の仕事、半年~数年かかる長期の仕事など、プロジェクトによって期間はさまざまです。短期の仕事では、前章で説明した「ロケットスタート時間術」をそのまま活用することができます。しかし、中期・長期の仕事では、「2割の期間で仕事の8割を終わらす」ことは少々無理があります。筆者はこれに対して、仕事を縦に切り分けるといいと説明しています。

例えば、1年スパンのシステム開発について考えてみましょう。まず、1年を3つに切り分けます。すると、

  1. 要件や設計を定義する → 2ヶ月
  2. コードを書く(開発) → 6ヶ月
  3. テストをして移行する → 4ヶ月

のようになります。

まだ、これでも一つ一つの期間が長いので、さらに切り分けていきます。例えば①の2ヶ月つまり60日を6つに分けたとします。例えば、顧客のヒアリングやドキュメント作成、工数(作業量)の見積もり、などにです。すると、一つ一つの仕事が10日になるので、始めの2割で8割を終わらすことが現実的に可能になります。このように、時間軸を縦に切り分けることで、ロケットスタート時間術を実践できます。

平行する仕事は横に切り分ける

基本的に、会社勤めをしていると複数の仕事に関わることが多いでしょう。そんな時には、どうすればいいのでしょうか? 著者は、並行する仕事は横に切り分ける、と解説しています。つまり、一日を縦の棒グラフのように考えてみましょう。すると、一日は朝・昼・夜のように3つの時間帯に切り分けることができます。そして、「朝は仕事A」「昼は仕事B」「夜は仕事C」など、きっちりタイムラインを組むことで、マルチタスクによる生産性の低下を防ぐことができます。そして、それぞれの時間帯で「ロケットスタート時間術」を活用すればいいのです。

まとめ:なぜ、あなたの仕事は終わらないのか

本書は、著者の経験から導き出した「ロケットスタート時間術」を紹介することで、みなさんが、明日から「仕事をきちんと終わらせる人」となることを目的にして書かれた本です。また筆者は、仕事を早く終わらせることができたら、余った時間を人生を楽しくするために、どのように有効活用するのか、というメッセージも本書に込めています。そのため、単なる仕事上のノウハウにとどまらず、もっと広い「どう生きるべきか?」を考えるきっかけも与えてくれます。興味がある方は、ぜひご一読を。

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