距離が情報の価値を高める!? 情報発信の秘訣

中身がいいだけではモノ・サービスが売れない時代です。そこでモノを売るためにメディアを通して広告を打ちます。しかし闇雲に情報発信しても広告の効果を最大限に生かすことはできません。
人間は身近なものを過小評価する傾向があります。そこで効果的な情報発の秘訣は遠くから情報を流すということです。身近なところに情報発信をしても当たり前すぎたり、身近だからこそ分かる粗も目立ったりするため過小評価されてしまい、わざわざ拡散されていきません。

逆に情報を過大評価させるためには遠方に流すことです。そして過大評価された情報は話題を呼び拡散されやすくなります。そして遠方でも話題になっていることを知れば身近な人にも改めて評価されやすくなります。

日本人には近い存在を過少評価する傾向がある

「人は目と耳に自然と流れ込んだ情報により、最も強力に扇動される」とCIAが1953年に開催した「ロバートソン査問会」によって示されました。受け身の状態でありながらも自分のもとに入ってくる情報は話題になっている情報だと認識するからです。例えば何となく眺めていたテレビや新聞から自然に目にとまるニュースは、何もしなくても耳に入ってくるから大きなニュースだと感じるのと同じ理屈です。

自分の子供の悪いところはよく見えて叱るけど、他人の子供の良いところは良く見えるのと同じです。「隣の芝生は青く見える」という諺もあります。身近なものを人間は過小評価しがちです。

情報発信は遠くから流すべき3つの理由


情報発信は遠くから流すべき3つの理由があります。

・身近な情報は過小評価されやすい
・遠い存在に人間は権威性を感じやすい
・情報は雪だるまの性質をもつ

一つずつ見ていきましょう。

理由1:身近な情報は過小評価される

身近なところから流れてくる情報発信は過小評価されがちです。そこで情報は近くではなく遠くに流すことで過小評価されづらくなります。物理的な距離が遠いほど過小評価されず内容そのものが魅力的であれば評価されます。

例えば同じニュースでも身近な友人から聞くのとロイター通信から自然に流れてくるのとでは、どちらが大きくて重要な情報だと感じるでしょうか。

  • 身近な友人から「石川県の家の近所でUFOを見たんだ。」
  • ロイター通信のニュースから「石川県でUFOが発見される。」

どちらも同じ内容ですが後者の方が信憑性が高く大変なニュースだと感じるのではないでしょうか。

理由2:遠い存在に権威性を感じやすい

遠くから流れてくる情報には権威性を感じます。例えば私の家の近所には世界中から美食家が訪れる分子ガストロノミーの名店があります。ちなみに分子ガストロノミーとは簡単にいえば革新的な化学料理のことです。一見、外から見ると単なる倉庫にしか見えないようなお店で地元のフリーペーパーで世界的な名店と広告が打たれていても大げさだなと思う人が大半でしょう。私もその一人です。しかしミシュランや日本を代表する美食家のWEBサイトが、そのお店はすごいと取り上げたことで私は興味を持ちました。ミシュランも美食家のWEBサイトも地元からは遠いメディアです。情報が遠いところから流れてくると権威性を感じてしまうのです。

理由3:情報は雪だるまの性質をもつ

情報は遠くから、多くの場所を通過して発信元に戻ってくることで、その価値が膨れ上がります。
例えば地元の魅力を地元に広めようとしたら県内のメディアと遠方のメディアどちらに情報発信をするのが効果的でしょうか。実は遠くのメディアから情報を流した方がかえって地元にも広まります。遠くからの情報は権威性が増し、しかも権威性がました情報は各地に拡散されることでより話題性のある情報に変わるからです。

距離が情報の価値を高めた神子原米のブランディング戦略

距離が情報の価値を高めた事例として石川県の能登半島の限界集落の神子原米がいかにブランディングに成功していったのかについてご紹介します。神子原米はローマ法王が食べた米としてメディアを騒がせて注文が殺到した石川県の神子原村産の米です。

ローマ法王に米を食べさせた男


ローマ法王に米を食べさせた男というキャッチフレーズで知られる石川県の元スーパー公務員の方で高野誠鮮という人がいます。彼は石川県の能登の羽咋市にある限界集落、神子原村を活性化させるために神子原の農家の米を情報発信を通してブランディングすることに成功しました。そしてブランディングされた米は土地の名前をとり「神子原米」として高く売れるようになり地元の農家は儲かり結果的に地域が全国でも注目され活性化しました。

高野誠鮮氏の活動は『カンブリア宮殿』というテレビ番組で紹介されたりTBS系の連続ドラマ『ナポレオンの村』のモデルにもなりました。

石川県の神子原米が有名になる過程

神子原米をブランディング化する経緯が面白いので簡単にご紹介します。高野誠鮮氏は米のブランディングの話題づくりのために権威性のある遠い存在に米を献上するというPR戦略を考えました。権威性のある遠い存在に米を献上し食べてもらうことで、あの有名な人が食べた米という話題作りをするためです。

ローマ法王に米を食べさせたというキャッチフレーズで有名な高野氏ですが、実は最初からローマ法王をターゲットにしていた訳ではありませんでした。最初は天皇陛下、その次はアメリカ大統領と米を献上する作戦に出ますが失敗に終わります。しかしローマ法王への米の献上が成功し、そこから神子原米を「ローマ法王が食べたお米」というキャッチフレーズで売り出しました。

すると、たちまち話題になりなりました。

ローマ法王が食べたという権威性に全国のメディアも飛びつき情報が大きくなりました。そして最後に地元の人達も遠くから雪だるま式に膨れ上がった情報に圧倒されました。この話題作りによって神子原米は有名になり全国規模の有名デパートのバイヤーが買い付けを希望するほどになりました。

実は私も石川県の人間ですが、おそらく地元の新聞などで神子原米は美味しくて評判というニュースを聞いても、わざわざ買わなかったと思います。しかしローマ法王が食べて全国でも話題になっていると聞いて買いにいきました。

情報を遠くから流すことと権威性をうまくとり入れることで話題をつくるというシナリオは偶然ではなく高野誠鮮氏の戦略通りだったのです。

遠くのメディアに直接、ネタを送る

遠いところから情報を流すという広報戦略はまぐれ当たりではなく神子原米のブランディング以外でも成功しています。例えば高野氏は石川県羽咋市の町おこしをする際に「UFOで町おこし」という企画をはじめました。その時に情報を流したのは地元のメディアではなく北海道、九州でした。すると偶然、北海道に旅行に行っていた羽咋市の人が北海道現地で羽咋市がUFOで町起こしをするというニュースを見たと地元の家族や知人に伝えました。それがどんどん噂として広がっていきました。

情報をあえて遠くに最初、発信することで拡散していく方法には再現性があります。同じ情報も発信するターゲットによって拡散のされ方が異なるのです。

SNS発信でもジャンルの遠いところを狙ってみる

高野氏の情報発信はメディアプレス、報道機関を利用していました。では最近、流行のSNSマーケティングではどうでしょうか。例えばプログラミングの情報をIT関連のクラスタにばかり発信せずに全く違う分野に投げかけてみるのも一つの方法です。ITとあまり関係がない農業や美容、飲食関係のクラスタにあえてプログラミングの魅力を発信することによって珍しく興味を持ってもらえるかもしれません。そしてプログラミング×農業、プログラミング×美容という具合に情報が発信元に帰ってくる間に思わぬ付加価値が生まれる可能性もあります。

特にSNS発信はコストもかからないため、普段リーチしようとしている層以外に情報発信してみることで思わぬ効果が期待できるかもしれません。

例えば高野氏の事例では棚田オーナー制度のリリースをアメリカのAP通信、フランスのAFP、イギリスのロイターにFAX、電話をしたとあります。するとロイターからイギリスの新聞「ガーディアン」で記事になり、イギリスの領事館の職員が棚田オーナー1号になりました。このニュースにマスコミは食いつき話題になりました。日本の棚田とイギリスのメディアではジャンルが流石に遠いのですが、それでも遠方から流したことが結果的に話題性に繋がりました。

高野山大学をタイに紹介する事例

日本は現在、少子高齢化が進み大学も今や入学者を集めるのが難しい時代になってきています。
私がタイの国立大学で働いていた頃、国際交流基金や密教で有名な高野山の僧侶も参加するタイ全土の日本語コンテストの審査員をしたことがあります。その時の縁で海外からの留学生を集めたい高野山大学と私が勤めていた大学とでMOU(留学提携)を結ぶことになりました。

高野山大学はお世辞にも入試倍率が高い大学とは言えません。近年の入試データを見ても志願者数が募集人数を下回っています。

そこで何とか入学者を集めたい高野山大学と日本留学の希望者もいる勤務先のタイの大学で利害が一致しました。

そこで私は学内で学生に向けて高野山大学のPRをはじめました。高野山大学は仏教系の大学で仏教国のタイとも相性がよく、しかもタイの日本語学科の学生にとっては日本語だけではなく日本の文化や働き方なども学べる良い教育機関でした。

高野山大学はタイから見れば遠方の大学だったので、そのまま高野山大学の強みや魅力を学生に伝えました。すると日本では志願者数が募集人数を下回る大学でもタイの勤務校では、かなり話題になりました。やはり遠いところにあるものは魅力的に感じるようです。

そして高野山大学自身も日本の地元メディアだけではなくタイの遠方からわざわざ学生が留学にくる教育機関だということをアピールする狙いもありました。

情報やPRは近いところだけではなく、あえて遠くから狙うこと事例です。私自身はこのPRの立ち上げの段階でタイの大学を退職してしまいましたが、タイ側では遠いところにある日本の仏教系大学ということで感心がもらえましたし、日本でもタイの留学生がわざわざやってくる大学ということで話題性をつくる種まきはできたと思います。

物理的な距離もジャンルの距離も遠いところに発信してみる価値はある


ターゲットに直接、訴求する以外にも情報を遠くに流して拡散させていくことで話題性が膨れ上がることもあります。もちろん必ずしも成功するわけではありません。ローマ法王に米を食べさせた高野氏も天皇陛下、アメリカ大統領へのアプローチに失敗しています。しかし情報発信の時に遠いところから発信された情報が話題性・権威性が大きくなって戻ってくることも多いのです。特に大きなコストがかからない場合は発信したいものを遠くのメディアやジャンルに積極的に売り込みにいくことで想定以上の効果がでることもあります。

遠方の人の気持ちになって考える

特に日本人は身近なものを過小評価してしまう傾向があります。そのため遠くからの情報に権威性を感じやすくなります。逆に言えば自分の身の回りの身近な魅力的なコンテンツに気づいていない人も多いのではないでしょうか。

例えば田舎のボロボロの古民家は地元の人にとっては珍しくもなんともない、持っていると税金だけかかってしまう代物かもしれませんが海外の人から見れば風情と趣のある泊まってみたい家だと思ってもらえるかもしれません。

自分自身や身の回りにあるコンテンツの中には、もしかしたら自分が過小評価しているだけで遠方の人から見たらとても価値があることも珍しくはありません。そこで遠方の人がどう評価するかを考えながら遠方の人の気持ちになって自分の発信したい身近な情報やコンテンツを探したり作ったりすることもできます。

まとめ

情報発信では遠方から流した方が雪だるま式に情報が膨れ上がっていきます。距離があるほど情報価値も高まっていきます。その代表歴がローマ法王に米を献上することで全国で話題になった神子原米のブランディングです。遠方の権威的な存在、ローマ法王が食べた米ということで話題になり全国ニュースにも取り上げられ神子原米は人気になりました。

情報発信であえて遠方に発信することで思わぬ大きな相乗効果も期待できます。自分の持っている商品やコンテンツ、身近な土地の魅力を遠方から情報発信することで価値の再発見にもなるのではないでしょうか。

何か紹介したいもの、売り出したいものの情報をあえて近くからではなく遠くから流していくことで情報発信に成功するケースも珍しくありません。何を伝えるかも大切ですが、どこに最初に伝えるかも広告や情報を発信する人にとって重要です。

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