労働時間を短くすることで日本の生産性の問題は解決するのか|働き方改革

日本の戦後、1960年代〜80年代の高度成長期がもたらした大きな成功は、長時間労働を積極的に勧める滅私奉公的に支える働き方と、年功序列の厳格な階層構造によってなし得たものでした。武士のような存在からも考えられるように、日本人は一度お上と決めた人物に対して、盲目的なほどの忠誠心を持ちながら仁義を切って時代を生きてきた民族です。

成功を収めて世界的にも有名となった経営者たちの自伝を読んでみても、寝る間も惜しんで死ぬ気で働き、仕事以外のことは妻に丸投げしながら成功を手にしていることを読んで取れます。日本文化の深いところで、お上に仕え、長時間労働を奨励してしまう感情が存在しているのです。

しかし、そのような働き方は、いつの間にか時代遅れとなってしまいました。現在では長時間労働を強要する会社はブラック企業と呼ばれ、企業の口コミサイトにマイナス評価を書き付けられてしまう時代になりました。少子高齢化で働き手が減っていくなかで、企業は働きやすさをもっと追求しアピールし続けないと、よい働き手をキープできなくなってくるのです。

ネガティブなニュースが多い日本

日本人は、長時間労働の弊害にもっと早く気づくべきでした。うら若くかわいらしい女性が働く環境に絶望し、自死を選んでしまう、そんなニュースが流れる世の中にいったい誰がしたのでしょうか。ネットでさまざまな記事を読んでみても、育児について見てみれば、夫や周囲のママ友の愚痴がたくさん。周りの理解が少ない中、もがきながらも頑張るママの姿が見て取れます。仕事について見てみれば、上司にセクハラやパワハラをされた、会社でとんでもないことが誰も指摘されず横行してきた、といった記事が沢山でてくるのです。

本来であれば、戦争や民族間の紛争もなく、経済的にも豊かであり、識字率も高く、お財布や携帯を落としても戻ってくる平和な日本は、世界でも幸せ度が高い有数の国であるはずなのです。にもかかわらず、ネットやテレビではネガティブな話題ばかり、いったいどうしてなのでしょうか。

このままでは日本人の自尊心があぶない

私が考えるには、私たち日本人が潜在的に持っている、会社に忠誠心を持つ仕事第一主義が、日本人の生活や自尊心を締めつけ続けていることに一因があるのではないかと感じます。高度成長期の長時間労働をよしとする風潮が、家族に家庭をないがしろにされたという被害意識を抱かせ、子供に親は子供よりも仕事のほうが大事であると思わせ、そして仕事をする働き手自身にとっても、仕事以外のことに重点を置くことへの罪悪感を覚えさせてしまう。

そのような構造のまま、この時代をむかえてしまったように考えます。

終身雇用という体制の問題

日本では長らく終身雇用が採用されてきました。この雇用方法は、働き手を会社に取り込むものであり、欧米諸国のように、仕事によって会社に雇用されるのとは異なる雇用システムです。終身雇用の場合、会社に雇用されている限り働き続けることができる反面、畑違いの部署移動を命じられれば、それを受けて、仕事を遂行することになります。

部署や社内の配置転換などで、ひんぱんに異動が発生すれば、その都度新しい業務をこなす必要が出てきます。部署替えや配置転換、昇進などで仕事内容が変わってしまうと、新しい仕事を覚えてこなしていく力が必要となってしまいます。結果として仕事をするスピードを高めるための経験を十分に積めないため、長時間労働につながっています。

長年仕事内容を変えずに同じことをしていれば、仕事のスピードアップは可能であり、生産性向上についても追求が容易くなるはずです。しかし、働き手が会社に雇用されているというシステムでは、本人がキャリア内容について確固たる線引きができる人材でない限り、会社の事業内容に人を合わせていかざるを得ない状況になってしまいます。

生産性の低い日本

日本における生産性についての統計を見てみると、

OECD(経済協力開発機構)加盟国(EU加盟国22か国、そのほか13カ国の計35カ国)のなかでも、日本の時間当たりの労働生産性は46.0ドルで、OECD加盟35ヵ国中20位。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いている。

http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/より)
とあります。高齢化と人口の減少に伴って、日本の経済成長への唯一の希望は、生産性の向上が鍵をにぎっています。

第2次安倍政権も、2016年8月から働き方改革というスローガンをかかげ、ようやく時間外労働の削減、ワークライフバランスの改善、女性と高齢労働者のスキルの向上などをうたい、諸処の問題を改善させていこうとしているようですが、なかなか結果が出ていません。月末の金曜に仕事を早く終え、帰宅時間を早めるプレミアム・フライデーの試みは、ロゴを作って有名企業に採用させたりとさまざまな施策がはかられていますが、なかなか浸透していません。

人ごとではない働き方改革をすすめよう

今後、日本社会には、効果的なワークスタイルの改革が必要であると考えられます。そのためには、日本の働き方の根本から見直しと、多様性についての認識を広めることが重要です。企業は、生産性を向上させるための技術にもっと投資を行なうべきでしょう。また、雇用に関する法的基盤を時代にあったものへと変更し、仕事のスタイルを大きく変えていけるように政府は、より具体的に労働規制を検討していくべきだと感じます。

多くの働き手は、働き方改革について、非常に懐疑的で人ごとのように感じていることでしょう。メディアや他の企業からそのニュースや取り組みについて聞いたことはあっても、自社では何も進んでいないという人が多いようです。
働き方を本当に変えていくためには、日本企業は長時間労働のわりに生産性が低いという事実をもっと直視すべきです。なぜ長時間労働が横行してきてしまったのか、必要以上に美しすぎる書類作成、執拗なまでの厳しい管理体制などなど……。部外者から見ればあきらかに問題であることを指摘し、改善できるコミュニケーション、体制づくりが必要でしょう。

少しづつ増えてきた時短正社員の流れ

多種多様な働き方を推奨し、生産性をあげて勤務時間を減らしてプライベートへの時間をとれるようにできるための取り組みとして、企業も少しずつ取り組みを進めているようです。たとえば大手商社の丸紅では、会社・社員双方が、キャリアの段階や、ライフステージに応じて働く環境を整えて、中長期的にみたときの社員ひとりひとりの「会社への貢献」を最大化することを目指し、ワーク・ライフバランスを推進しています。

すなわち、妊娠出産、子育て、介護などといった、個人生活におけるライフステージの変化によって退職をする社員を減らし、そのかわり長いスパンで会社に貢献することをすすめるということです。具体的な施策としては下記のとおりです。

・短時間勤務を選ぶ場合、育児・介護を事由に取得することが可能であり、育児の場合は子が小学校4年生6月末まで、介護の場合は介護事由が存在する限り取得可能。
・1日2時間までの遅刻、早退、勤務中断(中抜け)を認める。家族との役割分担や仕事の状況に応じ、利用日や利用時間をフレキシブルに変更できる。
・2010年に育児・介護関連制度の改訂を行い、短時間勤務に加え、時差勤務の仕組みを導入。1日1時間まで、15分単位で始業時刻を繰り上げ/下げできる制度。1日1時間までであれば短時間勤務を併用することも可能。
・短時間勤務を育児目的で長期間取得する場合、子どもの成長に応じて勤務時間を見直すことを促している。復職時に短時間勤務を利用し、時差勤務に切り替え、通常勤務に戻るといったパターンをとる社員も増えている。

厚生労働省 短時間正社員制度導入ナビより抜粋

ほかにも、同様の短時間正社員制度導入をすすめる企業も増えてきています。
このような情報をもっと政府は取り上げていくべきではないでしょうか。その結果、追随する企業や取り組みも増えていくことができると考えます。

他にも、時短であるが正社員なみの時給に特化した求人サイトサービスも増えてきています。確実に、長時間労働だけにとらわれない正社員、働き方の多様性を理解し推進していく時代へと流れができつつあるのです。

まとめ

働き方改革は、日本では成功しているとは言えませんが、 失敗した、と決めつけてしまうのは時期尚早です。

アメリカやイギリス、ドイツなどの他の国からも学べることがあるはずです。この過渡期を乗り越えて、仕事だけではなく一人ひとりの生活や家庭を大切にする時間の使い方ができるように制度や環境、意識改革をわれわれ一人ひとりが進めていくことが肝心なのではないでしょうか。

事例に学ぶ

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと言います。ビジネスについても同じことが言えるでしょう。
他の企業の戦略や取り組みを分析し、そこから抽出した要素を組織に取り入れてみることで、あなたのビジネスを成功に導く鍵が見つかるかもしれません。

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