プロジェクト管理とチームビルディングの成功法はあの昆虫が知っていた

とあるプロジェクトマネージャーに話を聞いたところ、学生時代に「ある昆虫」のシミュレーションをC言語で作成した際、非常に感動した経験があったそうです。

その「ある昆虫」とはアリのこと。

アリは巣穴から出て、餌を見つけたら戻ってくる行動を取ります。単純作業のようですが、彼はこの動きを見て「同じ粒度の機能をたくさん集めることで、全体として合理的な機能を実現できる」ことを発見しました。

彼は「プロジェクトマネジメントの基礎は、この時の感動を起源にしているのではないか」と今になって感じているそうです。つまり、アリはチームビルディングに必要なルールと、チームを維持するために必要なことを教えてくれます。そんなアリからプロジェクトの管理方法とチームビルディングの方法を学びましょう。

1.最適でもルールに違反した機能は全体に浸透しない

アリのシミュレーションを試行すると予想外の出来事が起きたそうです。すべてのアリは一見すると、単体で見れば必ずしも効率的とは言えないルールに従ってエサを探し、巣に戻ってきます。このことにより、ひとつの結論にたどり着いたといいます。

それは、ルールに反した機能を付けると、たとえそれが最適な機能であっても、全体としての機能を損ねうるということです。

たとえば、一部のアリにルールに反しながらもより知的なルール(部分最適なルール)に従わせたところ、一部の知的なアリは効率的なルートで巣に戻ってこれますが、通常のルールに従って行動しているアリが戻ってくることができなくなりました。こうなるとアリのコロニーは存続できません。

なぜこのような結果になってしまったのでしょうか。シミュレーションでは、個々のアリは他のアリからフィードバックを受けて次の行動を決定しています。新しいルールに則って行動している一部の知的なアリのフィードバックによって、それ以外のアリが迷子になってしまうことが分かりました。

一見効率的なルールであっても、それが必ずしもコロニー(組織、チーム)にとって最適解であるとは限らないのです。

2.再現性のある失敗体験こそが成功のもと

プロジェクトチームで声の大きいメンバーから、過去の成功体験をもとにしたルールを強制された経験がある方も多いのではないでしょうか。プロジェクトが全く同じ背景、目的や体制になることは稀です。にもかかわらず、過去の成功体験を再現しようとして、今のプロジェクトチームにとって最適ではないルールを強制しようとしても上手くいかないでしょう。

アリのシミュレーションを例にとってみましょう。エサを探すアリが、アメ玉が落ちている場所を見つけました。これはアリの成功体験です。しかし、アメ玉が同じ場所に落ちていることはほとんどありませんので、成功体験を再現しようとしても失敗します。

アリは単純なルールにだけ従って行動するので、成功体験を再現する気がありません。しかしながら、コロニー存続というプロジェクトに対して最適なアプローチを獲得しています。これは、過去の成功体験を再現しようとしがちな人間との大きな違いと言えそうです。

反対に、アリの天敵であるアリジゴク(土を掘って巣にし、落ちたアリを捕らえる昆虫)に捕まってしまうパターンを考えてみましょう。
アメ玉とは違い、アリジゴクはいつも同じ場所にいます。アリジゴクに捕まる体験は再現性のある体験といえます。

残念ながらアリジゴクがいる場所を知ったアリはアリジゴクに食べられてしまうため、知識を貯めることはできません。しかし、私たち人間はアリとは違います。プロジェクトで失敗したとしても食べられてしまうことはないので、失敗体験から得た知恵や知識を活かすことができるでしょう。

3.失敗体験を推進力に変えるチームをつくる

失敗を活かしたルール作りこそがチームビルディングの初手として有効です。ポイントを紹介します。

粒度をそろえる

システム設計書や製造されるソースコード等の成果物は、ルールを基にして粒度の揃ったものに統一することが重要です。

できるだけシンプルなルールにする

ルールは複雑なものや難解なものではなく極力シンプルにします。また、チームメンバーひとりひとりで性格や考え方が違うので、ルール以外の行動に制約を作らないようにしましょう。

アリのシミュレーションでは、何のためにルールに従って行動しなければならないかをアリ一匹一匹は理解していないものの、必ずルールに則って行動します。「ルールを正しく理解」することよりも、「ルールに従った行動が容易であること」を大切にしましょう。

ルール通りの成果物を作る

チームメンバーはルールに背いて、勝手な判断で成果物を作ってはいけません。ルールに背いて作られた成果物は、成果物全体としての品質を下げたり、悪影響を与えたりすることがあります。

ルール従い、たくさん失敗を蓄積しよう

ルールに従ってさまざまなシミュレーションを行い、多くの失敗を蓄積しましょう。アリはシミュレーションではなく、大量の試行によって成果を出していますが、私たち人間には頭脳があるので賢く使うことができます。

たとえば、ミーティング時にはDesignDocやシステム構成図などのドキュメントを駆使する、プロトタイプなどを作ってフィードバックを得る仕組みを作るなどさまざまな工夫を凝らしてみましょう。プロダクトをリリースして、小さなスプリントを繰り返すことで高い成果を期待できます。

4.プロジェクトチームを管理・維持するために必要なこと

プロジェクトチームの管理や維持にも、アリのシミュレーションが参考になります。アリのシミュレーションは単純なルールのもとで行われていますが、そこにはさまざまなヒントがあります。

彼がシミュレーションを作った当初、エサを探すだけの環境にした場合、アリに個体差がない方が効率的にエサが集まったといいます。しかし、このシミュレーションに子育てや天敵の襲来などのイベントを盛り込み始めると、アリに個体差を付ける必要が出てきました。

すべてのアリを遠くまでエサを探しに行ける個体に設定すると、天敵に気づくのが遅れ、挙句の果てに巣が壊されてしまったのです。天敵の襲来に備えるため、疲れやすくて巣から遠く離れられないアリがいた方がいいという結論に至りました。

このシミュレーションを人間のプロジェクトチームに当てはめて考えましょう。

チームのメンバーには個性(ゆらぎ)を持たせること

同じタイプのメンバーばかりを集めた場合、1つのアクシデントで体制が崩れてしまい、フォローできないおそれがあります。

ルールを統一しながらも、必要となるさまざまな能力の得意不得意はメンバーごとに異なった方が良いでしょう。また、不得意や不慣れなことが多い新人にも、失敗体験を早めに作り出すという役割があるのです。

そのメンバーに対して能力に合った作業を与えること

プロジェクトには、さまざまな仕事が必要です。能力は必要でなくとも、作業し続けなければプロジェクトに支障が出る仕事もありますし、先進的な技術を駆使するスペシャリストのみができる仕事もあります。全体の仕事内容を理解して、能力に合った作業をを割り振らなければいけません。

能力の有無だけでメンバーを判断する必要はありませんが、自分の利益だけを追求するメンバーを選ぶのは避けましょう。

アリ同様に人間も疲れると理解しておくこと

働き者のアリにも休息は必要です。アリが疲れを感じて休むと、巣の中で待機していたアリが働き始めるのです。

人間も同様です。疲れで休みを取ったメンバーの代わりに、他のメンバーが仕事を受け持つこともあります。

メンバーが余裕を持って動けるように、チームメンバーの1日のタスクにバッファがある状態をキープしておくことが重要です。少なくとも残業はバッファとして機能させておきましょう。

「プロジェクト管理とチームビルディングの成功法はあの昆虫が知っていた」のまとめ

アリのシミュレーションはあくまで私が作ったゲームルールに従っているため、実際のアリの働き方とは異なる可能性もあります。しかし、現在やり手のプロジェクトマネージャーとしてバリバリ活躍している彼は、アリのシミュレーションがプロジェクトマネジメントについて学ぶ大きな機会になったと感じているそうです。

アリのシミュレーションから得られるたくさんの教訓をプロジェクトマネジメントに活かしていただければと思います。

参考サイト
森の国:http://www.sanin.com/site/page/daisen/institution/morinokuni2/communication/tanken/arijigoku/

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