コーチングや人間関係に悩んだときに実践したい「ポジション・チェンジ」実践編

前回は「ポジション・チェンジ」をコーチングに応用し、人間関係の悩み解決について糸口を探す方法を紹介しました。今回は、実際にポジション・チェンジを使って職場の人間関係の向上に取り組んだ、私の経験についてお話しします。

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新入社員ならではの焦りや悩みが指導者への拒絶反応に

私は大学を卒業後、製薬会社に新卒採用で入社しました。新人研修を経て、MR(メディカル・リプレゼンタティブ=医薬情報担当者)つまり、医療用医薬品を医療機関へ説明するなどの活動担当として現場に配属されました。

私の配属された営業所にはメンバーが7人おり、3人で構成されるチーム2つを1人のマネージャーがマネージメントしていました。私のチームは、ベテランの女性の先輩と、男性の先輩と新人の私、という構成でした。

マネージャーは、自身もMRを長年経験しているため、MR活動について細かくアドバイスをくれる方でした。毎月最低1度の営業同行の際に細やかに指南してくれるのはもちろん、毎月の会議で重点施設の状況を紹介する際にも改善点やアクションプランを一緒に考え、ノウハウをたたき込んでくれました。

今思い返すと、熱心に丁寧に指導してくれていたのだとわかるのですが、当時の私にとっては、プレッシャーがどんどん募るだけでした。なぜなら、新人でできないことばかりだったため、指導されればされるほど覚えることが多くなり、ただただ焦燥感にさいなまれて責められているだけのように感じてしまっていたからです。

「ここはどうなっている?」
「これはやったのか?」
「ここができていない」
「これをやっておくように」

毎日のMR活動に慣れるのに必死な私に、マネージャーの指導ひとつひとつが重くのしかかりました。いろいろなことを畳みかけるようにいわれるたび疲労が溜まっていき、次第にそれらの厳しい言葉や指導が「私の可能性を伸ばすためのもの」ではなく「私がいかに使えないMRかということをダメだしされている」と、受け止めてしまうようになったのです。

そして営業への同行はおろか、上司であるマネージャーの顔を見ることすら苦痛に感じるようになりました。

ポジションチェンジによって受け止め方が変化

ちょうどその頃、私はコーチングスクールに通いはじめ「ポジション・チェンジ」を応用したコーチングの講義に参加していました。
そのコーチングスクールでは、毎回の講義の中で、スクール生同士の実践シミュレーションを行います。そこで、私は上司であるマネージャーと自分との人間関係をシミュレーションの題材として扱うことにしました。

自分のいすで自分の気持ちを出し切る

前回の記事で説明したように、まずはいすを配置するところから始めました。

自分のいすとマネージャーのいすを、しっくりくる位置に配置します。いすの角度や距離をしっくりくるまで調整したので、7〜8分かかったと思います。マネージャーのいすが真っ直ぐ私のいすのほうに向いており、私のいすもマネージャーに向かって真っ直ぐ向いていて、かつ、その距離は2〜3メートル離れているという配置にしました。

私の「一生懸命向き合おうとしているが怖い」という気持ちが、いすの距離に表れていたのだと思います。

次に、自分のいすに座り、マネージャーのいすに向かって自分の気持ちをいいました。

「なぜ厳しいことばかりいうのですか?」
「正直、疲れてしまいました」
「一生懸命頑張っているのを認めてほしい」

まさに目下の大きな悩みだけあって、このような言葉が後から後からあふれ出てきました。ここでは自分の感情を吐き出すだけなので、普段から感じていることを思う存分吐き出しました。

相手のいすで相手の立場になりきる

自分の気持ちをすべて出し切った後、今度は上司であるマネージャーのいすに座りました。マネージャーの普段の姿勢を思い出し、できるだけマネージャーになりきるように努めました。

そうすると、横についていたコーチが、私が先ほどまで自分のいすで吐き出していた言葉をいってくれます。それを聞いて、マネージャーのいすに座っている私がどんな気持ちになったかということをコーチに聞かれました。

私は、こう答えました。

「そんなふうに受け止められていると思わなかった」
「能力を否定しているわけではなく、もっと力をつけてほしいと思って自分なりにいった」
「戦力になるように育てたいと思っていた」

このような言葉が自然に出てきました。不思議なことに、「自分の気持ちをすべて吐き出した後、上司であるマネージャーになりきる」という、ただそれだけのことで、マネージャーの気持ちを本気で想像することができたのです。そしてそれは、自分にとってもまるで理解不可能な感情などではなく、十分に共感できるものなのでした。

第3者の立場から冷静に俯瞰する

自分のいすと上司であるマネージャーのいすに座り終わったら、最後に2つのいすが見渡せる第3者の位置に立ちました。そこに立ち、コーチに「2人はどう見える?」と改めて聞かれたとき、私は不思議な感覚になりました。第3者の立場で冷静に俯瞰してみると、ありとあらゆることが客観的に見えてきたのです。

今まで、私はマネージャーの言葉に追いつめられていると感じていたけれど、マネージャーは追いつめるつもりなどはなく私の成長を思って指導していたこと、そしてマネージャー自身も、指導のことや会社の目標などで悩みを抱えていることが感じられたのです。

当然ながらマネージャーも人間で、私と同じように悩みを抱えていること、そして私のことをできないと思っているわけではなく、これからのために育てていきたい、成長してほしいと思っているのだろうと想像することで、私の心はとても軽くなりました。

その講義の後から、マネージャーとのコミュニケーション自体が変わったわけではありません。しかし、私の心の持ち方が変わったことによって、マネージャーからの言葉の受け止め方が変わりました。そして、仕事に取り組むことが以前より少し楽しく、やりがいを感じられるように変わっていったのです。

つまり、私とマネージャーの間に何かが起こったわけではありませんが、このポジション・チェンジの実践シミュレーションによって、私の受け止め方に変化が現れ、それが実際に環境を好転させることになったといえます。

まとめ

人はなかなか主観から離れて物事をとらえることはできないものです。

しかし、ポジション・チェンジでは自分の主観を意図的に取り払い、相手や第3者の視点に立つことができます。そのため、自分本位な考え方では気づかなかったことに気づいたり、それを受け止めたりすることができるのです。その結果、自分の考え方に変化が起き、相手との関係のとらえ方も変わってくることが期待できるのです。

私自身もポジション・チェンジを活用して、自分以外の視点で上司であるマネージャーとの関係をとらえ、その気持ちを本気で想像し共感できたことが貴重な体験となりました。お互いの食い違いを埋める解決策を導き出すとまではいかなくとも、自分の受け止め方を変えることによって、何かしらの変化が生まれることはあります。

相手を無理に変えるのではなく自分が変わることで、相手やそれまでの環境に変化を与えたり、改善のきっかけになったりするのではないでしょうか。

人間関係に悩んだ際には、ぜひポジション・チェンジを実践し、自分に、相手に、環境に、変化が生まれるかを試してみてください。

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