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2018.07.13

2つの映画『オリエント急行殺人事件』鑑賞で、名探偵ポワロのタスク解決能力を感じる

私たち現代のビジネスパーソンは、情報の大きな波の中に飲まれ、新しいニュースやテクノロジーの流れと日々対峙し続けています。目新しい情報や権威や考え方、主張を理解し租借することに疲れを感じるときはありませんか? そんなときは日常から離れ、映画作品に自らを投じてみましょう。普段の生活から数時間離れるだけで、リフレッシュした気持ちが生まれると同時に、人生や仕事に新しく取り入れてみたい何かをつかめるときがあります。新しすぎて感情移入しづらいテレビ番組を見るのに疲れたら、古くから活躍しているキャラクターの世界にひたってみるのもいいかもしれません。

イギリス生まれのミステリー小説作家、アガサ・クリスティは、時代を越え現在に至るまで人気を博す名探偵エルキュール・ポワロを生み出し、彼の活躍するミステリーを数多く残しています。なかでも代表作のひとつ『オリエント急行の殺人』はその独創的な大団円から、高い人気のある作品です。1974年に社会派映画作品を多く世に送り出してきたシドニー・ルメット監督と、2017年には俳優兼監督のケネス・ブラナーとにより、映画化されました。

時を経て、なお人々の支持を得る名探偵ポワロにおけるタスク解決能力と、この一風変わった殺人事件を実行するにあたったチームについて、1974年度版、2017年度版の映画2本を見比べ、ビジネスに関連する考察をしてみましょう。


この物語のあらすじ
シリアでの仕事を終えたポワロは、イギリスへの帰途に就いた。一等車両にはポワロの他、さまざまな職業、国の出身者が乗り合わせて季節外れの満席だった。その中の1人、アメリカの富豪サミュエル・ラチェットがポワロに護衛を依頼してくる。ラチェットは脅迫状を受け取っており、身の危険を感じていたのだった。しかし、ポワロはラチェットに良い印象を持たず依頼を断る。列車は積雪による吹き溜まりに立ち往生してしまい、翌朝ラチェットの死体が彼の寝室で発見される。彼は、刃物で全身を12か所も刺され殺害されていた。現場には燃やされた手紙が残されており、手紙を解読したポワロは、当のラチェットが幼女誘拐殺人犯であったことを突き詰める。ラチェットの正体を知ったポワロは捜査を始め、友人の国際寝台車会社の重役と共に乗客たちの事情聴取を行なう。雪に閉ざされた列車からは犯人は逃げられないはずだが乗客たちはそれぞれアリバイがあり誰も容疑者に該当しない。がやがて、ポワロは真相を導き出し、乗客たちに2つの解答を提示する。一つは、何らかの理由でラチェットと敵対していたギャング等の人物が途中の駅で列車に乗り込んでラチェットを殺して列車から降りたというもの。もうひとつの推理はどんなものか? ポワロはもう一つの推理を話し始める……。

ポワロ氏のビジュアルとコミュニケーションの関係性


画像:公式サイト(https://www.agathachristie.com/)より

エルキュール・ポワロ は、アガサ・クリスティが描く原作では小柄の男性で、緑の眼に卵型の頭・黒髪の持ち主。そして、特徴的な、端がぴんと跳ね上がった大きな口ひげを蓄えている人物です。
1974年の映画『オリエント急行殺人事件』で、アルバート・フィニー演ずるポワロ。フィニーは公表されている身長は174センチ。原作のポワロほど小さくはありませんが、映画では首を短くすくめ、ほとんど首をなくし、コミカルな印象。小柄の男性の印象を得ることに成功しています。なぜか自然にかもしだされる風変わりな雰囲気。それは、探偵業にて被疑者から油断と意外な本音を引き出すことにも有利なルックスとなります。

対する2017年の映画でのケネス・ブラナー演ずるボワロ。大げさとも言えるような、フィニーよりも大きな口ひげを蓄えたポワロ。なぜブラナーはこんなに立派な口ひげをつけることにしたのかと不思議になるほどです。ブラナーの公表している身長は177センチ。舞台で活躍した肢体を生かした演技も特徴的な彼は、イギリス出身の俳優。なんともイギリス紳士然としたポワロとなり、ポワロにしては格好良すぎな仕上がりである気がし、良いルックスを隠すために大きすぎる口ひげを蓄えることにしたのではないかと推測します。髭の印象から、きれい好きで理路整然さを常に求める倫理観と、自らを世界最高の探偵であるとする自信を感じ取ることができます。常に整理・整頓を心掛け、身なり(特に口髭)に注意を払い、乱れを許さないきれい好き。その姿になぜかコミカルさを覚えます。

髭を蓄えたり、身なりにその人らしいオリジナリティを持たせると、つっこみどころを周囲に与えて話の中心になれたり、仕事ができるアピールができたりと、身なりから生まれるコミュニケーションは多いに仕事に役立ちます。あなたも、ポワロのように髭を整えるのは面倒でも、不快にならない程度の髭をたくわえたり、服装に特徴を持たせていつもネクタイを赤くしてみたりと、コミュニケーションに活かせる身なりや服装にこだわってみるのもいいかも知れません。

威厳と権威がチームに犯罪を完遂させる力を与える

この映画の被害者である、何者かに殺されるアメリカ人富豪の悪党ラチェット・ロバーツを演じるのは、1974年度版の映画ではアメリカ人俳優リチャード・ウィドマーク。彼は漫画家、手塚治虫の作品にしばしば登場する冷酷な悪役キャラクターのモデルでもあります。2017年ではジョニー・デップがラチェットを演じています。

ネタバレにはなりますが、当初この物語はこの悪党を殺した犯人を偶然オリエント急行に乗り合わせたポワロが推理する流れで話が進行するわけですが、実は犯人が単独犯ではなく、乗り合わせていた12人が皆関係していたとわかるときが、この作品の斬新なブロットが見る人にインパクトを感じさせるとことが最大のヤマ場でもあります。殺人をチームで行なうことの、陰でまとめていたのは、ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人。このロシアの貴婦人を1974年度版では俳優ウェンディ・ヒラー、 2017年度版ではイギリス王室から「Dame(デイム)」の称号を授与されているジュディ・デンチが演じています。特にヒラーの演ずる公爵夫人の衣装にはインパクトがあります。カラスのような羽を施したそのスタイルは、威厳と高潔さをもつ人そのもの。一方、デンチの公爵夫人はあまりセリフがなくとも、その存在感だけで圧倒的な権威を感じさせます。

1974年度版と2017年年度版、この2つの映画にはキャストの大きな違いがあります。それはアーバスノット大佐の扱いです。イギリス人の大佐の役を、1974年度版であのショーン・コネリーが演じていますが、2017年度版では、アーバスノット氏は大佐でなく、医師になっています。演ずるは、アフリカ系の俳優、レスリー・オドム・Jr。大佐の存在は、ショーンコネリーのスター性と相まって、殺人事件を実行させるにふさわしい進行役を感じさせます。一方、医師となったアーバスノット氏は、医師であることから殺されたラチェットの状況確認に能力を発揮しますが、殺人事件をチームで実行しようとするリーダーシップがあるかについては不明です。

この殺人事件は、特別な地位にある権威ある人物と、彼らの意思に従うチームメンバーの運命共同体の関係性が生まれたからこそ、完遂できた事件であるといえます。権威や権力という力は、ときにそれが犯罪のように非道なことであっても、メンバーにタスクを実行させる力を生むことがあると感じさせます。殺人という非道なタスクであれども、タスクを実行するときには、完全なる動機付けと、ぶれない実行力が求められるのです。

ポワロ氏のタスク解決能力を引き出すための裏付け

ポワロは、世界一の探偵であると自負する自信家であり、実際その実力を持っています。ケネス・ブラナー版のポワロでは、悪党、ラチェットに用心棒の仕事を依頼され、「顔が嫌だ」と仕事を断る一種の痛快さを感じる場面があります。ポワロは、自分自身の勘や理念に完全に自信を持っており、自分の意見を持っている人物であることがわかるシーンです。ビジネスの世界でも、自分の意見をはっきりと持つことは非常に重要なポイントです。そしてその意見を持つに至るまでの学びは、その人独自に育つものです。いつもぶれない意見を持てるように行動や学びを追求していきたいものです。

そして、ポワロは、常に身綺麗にし、お手いれに余念がなく、自分のスタイルを追求して自信を持っています。その独特な口ひげを保つために、ひげカバーをして眠りにつくほど、自分と、自分のこだわりを大切にしています。自分自身を大切にすることは、一番自分自身にしかできないことであり、常に自分を上機嫌に保つことに通じます。常に機嫌がいいことは、ビジネスにも好都合です。ポワロのように、自分を大切にし、拘りを追求してみましょう。

大団円でのポワロ氏の違い(ネタバレ)とタスク解決への鍵


この映画では、ポワロが、乗員12人の共犯で殺人が行なわれたことを突き止め、皆に自分の推理を話す迫力たっぷりのシーンがあります。フィニー演ずるポワロが推理を皆に述べる1974度版のこのシーンは、列車に問題の12人と、ポワロと一緒に事件に協力した2人をあわせた15人が豪華列車の1車両に集まって、ポワロの推理を30分あまり聞くことになります。ここでのフィニーと、このシーンの迫力は映画最大の見せ場であり、必見です。ポワロがほぼ一人で、時にまくしたてながら、すごい勢いで弁舌をふるうとき、ショーン・コネリー、イングリッド・バーグマンなどの蒼々たる映画スターが狭い車両でポワロの熱弁を神妙に聞いているさまがなんとも強烈です。

一方、2017年度版のブラナーが演ずるポワロの推理シーンは、雪のために停車してしまっていた列車の近くのトンネル内に、問題の12人と関係者を長テーブルに集め、ポワロが推理を述べるシーン。人いきれがこちらにも伝わってきそうな1974年度版とは全く違う、雪の中でのシーンの構図は、さながら、レオナルド・ダヴィンチの絵画、『最後の審判』のような荘厳さを感じさせ、その美しさに心を奪われます。

最後の重要なこのシーンでポワロは、悪党ラチェットによる犯罪の犠牲者でもあった12人が、制裁のために行なった殺人を裁くのか、またはその真実を隠して、平凡な架空の殺人犯人をでっちあげるかという決断をしようとします。このときに、フィニーとブラナーのポワロには、決定的な違いがあります。フィニー演ずるポワロは、この事件をどう裁くのかを列車の責任者に一任させるのです。ビジネスでいえば、大きな決断を丸投げするようなもの。このフィニーのポワロの姿には、おおらかさや優しさを感じます。

一方、真実を善か悪かの二元に固執させているブラナー演ずるポワロは、12人による殺人を確信したいま、「私の口を封じるために殺せ!」と銃を取り出します。このブラナー演ずるポワロの姿には、白か黒かはっきり決めなくてはならないという一種の窮屈さを感じます。ビジネスには、白黒をつけられずにグレーにならざるを得ないときもあるはずです。ビジネスにて極限状態を迎えたときに、タスクをどう解決していくべきなのかを、担当者はどのような態度を取るのかで、ビジネスの船先はがらっと違っていく可能性があるのです。そのようなシチュエーションのとき、どう動くべきなのか、この2つの映画を見比べて考えさせられました。

名探偵ポワロは細やかな観察や知識から、最大の結果を得るというタスク解決能力に長けた達人です。
彼を参考にするも良し、この文句無しの娯楽作、『オリエント急行殺人事件』を楽しみながら、ビジネスへのヒントを見つけてみてください。

 

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