アメとムチはもう古い モチベーション3.0の新しいコーチング手法とは

チームを引っ張っていくにはアメとムチが必要だと考える人も多いのではないでしょうか。例えば営業なら良い成績をあげたら報酬を多めにしたり成績が不振ならカウンセリングなどと称して叱ったりするマネージャーもいるかもしれません。しかし短期的には有効なときがあってもアメとムチだけでは人は育ちません。アメとムチばかりに頼りすぎてしまうとチームのメンバーはそれぞれの仕事に対するやりがいを見失ってしまう可能性すらあります。特にクリエイティブなどの新しいものをつくっていかなければいけないチームのリーダーはアメとムチに頼りすぎてはいけません。特に経験の浅いリーダーは結果が出ないことや自分のリーダーシップのなさを隠すためにアメとムチに頼ろうとしてしまいがちです。アメとムチは確かに即効性はありますが頼りすぎてはいけません。そこでアメとムチを超えたモチベーション3.0の考え方をご紹介します。

モチベーション3.0はやる気を一番、引き出す効果的なコーチング

アメとムチを捨てたらどうやってチームのモチベーションを高めれば良いのだろうと悩んでしまうリーダーやマネージャーもいるかもしれません。アメとムチの代わりに使えるのがモチベーション3.0です。モチベーション3.0をうまく使いこなせればアメとムチを捨てマネージャー・リーダーとして成長することができます。

モチベーション3.0とは?

モチベーション3.0とは「自分の内側から湧き出るような動機付け」のことです。

モチベーション3.0はアメリカの作家、ダニエル・ピンク氏の著書『モチベーション3.0、持続するやる気をいかに引き出すか!』というタイトルに由来する言葉です。2009年に書かれた本です。

自分の内側から湧き出る動機付けは例えば、

  • エンジニアならプログラミングを通して良いサービスをつくることを楽しめること
  • デザイナーならユーザーファーストの使いやすいデザインづくりを楽しめること
  • カレー屋のシェフならカレーづくりを楽しめること

などが挙げられます。つまり自分が携わっている仕事そのものを楽しめることがモチベーション3.0の動機付けです。

モチベーション3.0でチームのやる気が一番、引き出せる

モチベーション3.0の考え方では仕事そのものを楽しめるようにすることがチームのやる気を長期的に見て一番、引き出します。高い報酬を提示してやる気を引き出したり課したノルマ(目標)をクリアできないという理由で報酬を下げたり降格させたりするアメとムチの考えとは正反対の考え方です。

モチベーション3.0は単なるアメとムチを使い分けるよりもチームのやる気を引き出せるとアメリカの作家ダニエル・ピンク氏は主張します。

モチベーション3.0はチームをクリエイティブにする

モチベーション3.0はチームをクリエイティブにします。クリエイティブに必要なのは仕事そのものを楽しんで取り組むことです。無理やりやらせる仕事からはクリエイティブな発想はなかなか生まれません。むしろ自発的に自分が仕事そのものを楽しみ自主的に取り組むところから創意工夫が生まれるのではないでしょうか。内面から引き出されるモチベーションには3つの特徴があります。

  • 自律性 主体的に行動する
  • 熟達  経験を積んで成長しようとする
  • 目的  社会を変えようという個人レベルの損得を超えた目的

内面からモチベーションが引き出されることでクリエイティブな活動をするのに重要な3要素が満たされます。人から無理やり動かされ、成長しようともせず、自分の報酬のことしか考えない人が良い仕事ができそうでしょうか。無理矢理、アメとムチで人を動かそうとすると仕事そのものにやりがいを見出せないチームになってしまいます。

モチベーション1.0と2.0には限界がある

モチベーション3.0があるということは1.0と2.0もあります。モチベーション1.0や2.0でチームをマネジメントしようとしていないでしょうか。もしも自分のマネジメントやコーチングの発想が1.0や2.0で止まっているようなら3.0へのアップデートを検討しましょう。

生存を目的とするモチベーション1.0

モチベーション1.0は「生理的動機づけ」です。生物は生きるために食べること、寝ること、安全を脅かされないことなど本能的な欲求があります。衣食住を満たすための生物としての基本的な欲求に対する動機づけです。例えば「生活のために働いている」という状態です。しかし自分の生活のためだけに仕事をするのでは良い仕事をするには限界があります。

しかし衣食住足りて礼節を知るという諺もあるほどで生理的な動機づけを十分に満たさなければ当然、モチベーション2.0、3.0へのアップグレードはできません。モチベーション1.0や2.0の土台の上に3.0を築くことができます。チームとして仕事がメンバーの生活を守れるだけのビジネスとして成り立っていることはマネジメントの前提条件です。

報酬を目的とするモチベーション2.0

ボーナスや罰金などによる報酬の動機づけモチベーション2.0です。つまりこの段階がアメとムチです。報酬は金銭的なものだけではなく地位や役得など様々な形があります。例えば成果報酬型の会社員ならば仕事の成績をあげ高い報酬を目指す、フリーランスならば自分の売上をとにかく伸ばそうとする、それがモチベーション2.0です。モチベーション2.0を刺激するなら例えば営業成績次第でインセンティブ報酬を与えたり成績の悪い従業員は給与をカットするなどすれば良いのです。

しかし報酬を目的とするモチベーション2.0だけでは、仕事そのものを楽しもうとする自律性や成長しようとする意思、自分だけでなく社会も変えようとする目的意識を持つことが難しくなります。アメとムチもいきすぎるとチームのやる気を損ねます。

教育心理学でも大切な内発的動機づけと外発的動機づけ

私は教育心理学には内発的動機づけと外発的動機づけという言葉があります。モチベーション2.0や3.0は実はダニエル・ピンク氏が既に心理学にあった内発的動機づけや外発的動機づけを再解釈して彼なりに新たに定義したものです。

そのためダニエル・ピンク氏のモチベーション3.0の話を知ったとき教育心理学のことを思い出しました。教育心理学では子供の学力を伸ばすには内発的動機づけが必要だと言われています。

内発的動機づけ(モチベーション3.0)で子供は伸びる

内発的動機づけは学習そのものを楽しんで行うための動機づけです。例えば宿題で国語や算数の問題を解く楽しさそもののを教える、気づかせることが内発的動機づけを意識した指導です。子供は素直なので面白い勉強や授業には進んで取り組みます。一方でつまらない勉強や授業になると途端にやる気をなくしてしまいます。子供の学力を伸ばすには内発的動機づけを刺激することが大切です。

外発的動機づけ(モチベーション2.0)で子供はやる気を最後にはなくしてしまう

外発的動機づけを刺激すると子供は最後には伸びなくなると言われています。例えばテストで良い点数をとれたらお小遣いをあげる、悪い点数をとったらお小遣いを減らすといったことで外発的動機づけを刺激できます。しかしお小遣いを増やすことを目的に勉強を続けたとしても長続きはしません。それどころか教育心理学の知見では外発的動機づけを刺激しすぎると仕事そのものへのモチベーションが低下すると言われています。

アンダーマイニング効果といって内発的動機づけによって行われた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、動機づけが低減する現象があります。例えば算数が好きな子供にテストで良い点数をあげたら、おこづかいを増やすのが外発的動機づけです。しかし、お小遣いを急にあげなくなった途端に子供は勉強しなくなってしまうことが多いのです。

アメとムチが役立つことも?報酬を与える外発的動機づけが効果的なケース

アメとムチは全く役に立たない訳でもありません。実はアメとムチによる外発的動機づけが効果のあるケースもあります。アメとムチに頼りすぎてはいけませんが、アメとムチが効果のあるケースもおぼえておきましょう。

関心をまったくもってもらえないとき

勉強や仕事にまったく興味・関心をもってもらえないときがあります。例えば子供が算数にまったく興味がないケース、大人なら営業職に興味がないケースが当てはまります。そんな時に使えるのがアメとムチです。算数に興味のない子供に勉強を頑張ったらお小遣いをあげると言えば、お小遣い目当てに頑張る子供も出てきます。また大人ならインセンティブで良い営業成績をあげれば、その分報酬を上乗せするという話になれば報酬目当てに仕事に積極的に取り組む人もいます。

報酬を目的とした動機づけでは仕事も勉強も長続きしません。しかし最初に興味をもってもらうためのきっかけとしてアメとムチを使うことができます。ただしアメとムチに頼りすぎて使い続けるのは長期的にみると良い結果になりません。

短期的に成果をあげたいとき

仕事が短期的に成果をあげたい場合はアメとムチが有効なケースもあります。報酬目当てに一時的にはモチベーションも上がるからです。中長期で良いチームをつくる際にはアメとムチは良い影響を与えません。しかし短期で目先の効果をあげたい時はアメとムチをうまく使えば効果が期待できます。

単純な仕事のとき

仕事自体が単純で多くのスタッフがやる気を出せないこともあります。そんな時にもアメとムチは有効です。仕事そのものが単純すぎて、やりがちのもてないものなら仕事にやりがいを見出せない人も出てきます。しかし報酬を高めに設定すれば少なくとも報酬を得るために仕事に取り組む人も出てきます。ただし単純な仕事が今後、AI化、機械化などで減っていくとすればアメとムチによるマネジメントが通用するところも減ることになります。

教育現場で私が失敗したアメとムチの学級経営

私は日本の小学校やタイの国立大学で教えていたことがあります。今から振り返ると教育現場では厳しい指導をしなければと力みすぎていました。

例えばタイの大学では大学内の成績GPAが就職を大きく左右するため良い成績が報酬の代わりでした。遅刻した学生や勉強しない学生には、相応の成績をつけ真面目に勉強している学生には良い成績をつけていました。例えば講義を途中でトイレだと行って抜け出し帰ってこないので学食に行ってみると、講義をサボってカオマンガイを食べていた・・・という学生には厳しく指導しました。

講義の雰囲気を緊張感のあるものにしていたものの学生は、あまり生き生きとした表情を見せていませんでした。

単に厳しいだけの指導では人はついてきません。確かに一見、真面目な学級、教室にはなるものの児童も学生も表情が生き生きしていませんでした。つまり子供も大人も外国人もアメとムチによるマネジメントやコーチングはあまりうまくいかなかったということです。むしろ授業・講義で学生に興味をもって取り組んでもらえる工夫が必要でした。

勉強そのものが楽しいと思ってもらえるように改善したら学生が生き生きした

日本の小学校でもタイの大学でも私自身が授業や講義に慣れてくると余裕が生まれ、どうすれば勉強や講義が楽しめるかを考えて指導をするようになりました。例えば小学校ならば社会科の時間に単に講義形式で教えこむだけでなく自分で調べたり発表したりする時間を積極的に取り入れてみました。タイの学生にも一方的なパワーポイントによる講義をやめ学生の発表の場を増やしたりアンケートをとって興味のあるテーマを積極的に教えたりしました。

工夫もせずに単に厳しい態度をとるだけの指導や講義は教師は楽ですが、教えてもらう方は辛いしつまらないのです。しかし手間をかけ児童・学生が勉強・講義を楽しめるように工夫をすると少しずつ生き生きとした表情をするようになりました。

アメとムチだけで人は育たない。仕事そのものの楽しさを教えよう

教師もマネージャーも余裕がないと安易にアメとムチに頼ろうとしてしまいます。しかしチームの強みを長期的に伸ばしていくためには仕事そのものの楽しさややりがいを教えることが大切です。確かにモチベーション1.0の生きるための生理的動機づけ、2.0の外発的な報酬もチームをつくっていくうえで必要な土台です。

しかしAIや機械化によって今後は自主的に行動し成長でき社会も変えていける自律的な人材を集めたチームを育てていく必要があるのではないでしょうか。しかしアメとムチだけでは自律的な人材を集めたチームをつくることはできません。仕事そのものの楽しさややりがいを感じられるマネジメントを心がけましょう。

まとめ

モチベーション3.0とは「自分の内側から湧き出るような動機付け」のことです。生理的な欲求による動機づけのモチベーション1.0、報酬による動機づけのモチベーション2.0の土台の上に成り立つ動機づけです。

チーム1人1人が主体的に積極的に動き高いモチベーションを保って仕事をできるようにするには仕事そのものを楽しめる、やりがいのあるものにする工夫がマネジメントに必要です。単にアメとムチだけに頼るマネジメントはマネージャーの工夫や力量のなさを隠して楽をしているだけかもしれません。アメとムチに安易に頼りすぎないマネジメントをしていきましょう。

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