多くのフリーランスを含め20万以上の事業者が使う請求書発行サービス/Misocaの開発スタイル

請求書を書くという面倒な作業を「シンプルに」したことから多くの支持を集めたのが、クラウド請求管理サービス・Misoca(ミソカ)でした。株式会社Misocaのミッションステイトメントは「世の中を仕組みでシンプルに」です。
代表の豊吉さんは、「良いプロダクトを作り、良いチームを作るというのは簡単ではありません。最高のプロダクト、最高のチームを目指すことをやめることは絶対にありません」と高らかに宣言しておられます。
そんな熱いメッセージを受け取ったまま、名古屋本社にお邪魔してMisocaさんの開発スタイルについてお話を伺いました。

豊吉さん プロフィール:

株式会社Misoca 代表取締役
岐阜県生まれ。2002年に名古屋でフリーランスとしてWeb制作を始める。幾つかのWebサービスの開発や売却の実績を積み、2011年6月にスタンドファーム株式会社(現・株式会社Misoca)を設立、現在に至る。Misoca誕生のきっかけは、「ムダが嫌いで紙をなくしたいのに、どうしても紙で書き送らなければならなかった請求書という仕組みは、5年後にはなくなるだろうと思った」ところから。

プログラムを通じて無駄を省き、未来にあるべきものを自分たちで作っていきたい、が信条。マニュアルづくりも大好き。そして、ランニングファンでもある。

https://www.misoca.jp/
https://www.misoca.jp/contact

リモートメンバーもいるので、オンラインですべて集約できるようにしている

大井田:

本日はありがとうございます。豊吉さんとはあるイベントでご一緒させていただいて以来です。どうぞよろしくお願いいたします

豊吉:

よろしくお願いいたします。

大井田:

今回の目的は、プロジェクト管理の方法をお伺いすることなのですが、Misocaさんのプロジェクト管理の現在のスタイルはどのようなものですか?

豊吉:

具体的なツールを挙げると、TrelloとesaとSlackでということになりますね。Trelloを基盤として、esaでドキュメント管理をし、コミュニケーションはSlack。あと、ソースコード管理は別にGitHubを使ったりですね。

大井田:

そのスタイルに至る経緯はいかがでしょう

豊吉:

2011年の会社設立からしばらくは2、3人でなんとなくアジャイル型で開発を進めていました。当時は受託開発もしていました。それが、2013年に資金調達をしてMisoca一本でやっていくと決めて、プロジェクトも3〜4人で進めることになった際に「スクラム」を採用したのが始まりです。

最初は、ホワイトボードに付箋を貼ってかんばん管理するという方法でした。それが、リモートメンバーが増えてくると、アナログでかんばん管理するということが困難になっていきました。カメラでホワイトボードを映しながらリモートで繋ぐなんてことをしていたわけですが、それ自体がストレスになってしまいます。そこで、クラウドツールを採用することを考えて、Trelloに落ち着きました。

大井田:

リモートメンバーがいるということで気をつけておられることはありますか?

豊吉:

オフラインでのやりとりもきちんとテキストで共有するということですね。おそらく他社さんと比較すると、Trello内のやり取りなどは非常に多いと思いますし、一部の人の間だけで完結してしまったタスクや途中のやり取りなどもきちんと共有しようというルールは徹底しています。

社内のそういう空気の影響で、Trelloのエクスポートツールを独自開発したエンジニアもいるほどです。

大井田:

それは頼もしい限りですね

全員がプロジェクトの当事者になれるように、と考えているのが独自性かも

大井田:

Misocaさんが特に工夫をしている点というと

豊吉:

こだわっているのは、プロジェクトの「はじめ」と「終わり」です。どんな小さなプロジェクトでも、始まりは「インセプションデッキ」を書いてチームで共有するところからです。そして、最後は、プロジェクトの振り返りをして、知識として社内資産化します。プロジェクト管理とは、「振り返りプロセスを通して、ものごとを改善してもっとよくしていこう」という試みだと考えていますから、この最後の振り返りはもっとも重要ですね。

大井田:

インセプションデッキについて、もう少し教えていただけますか

豊吉:

プロジェクトの目的、やること・やらないこと、「品質」「スコープ」「予算」「期間」の優先順位、どれを大事にするかということを、このプロセスを通して、チームメンバー全員の意識合わせをします。

引用:
インセプションデッキとは、

インセプションデッキは10個の質問と答えから構成されます。
我われはなぜここにいるのか(Why1)
エレベーターピッチを作る(Why2)
パッケージデザインを作る(Why3)
やらないことリストを作る(Why4)
「ご近所さん」を探せ(Why5)
解決案を描く(How1)
夜も眠れなくなるような問題は何だろう(How2)
期間を見極める(How3)
何を諦めるのかをはっきりさせる(How4)
何がどれだけ必要なのか(How5)
この10個の質問は、顧客(ステークホルダー)と開発チーム間で認識を合わせるべき重要な項目といえます。
https://blog.nextscape.net/research/agile/inceptiondeck
https://agilewarrior.wordpress.com/2010/11/06/the-agile-inception-deck/

大井田:

スクラムイベント、具体的には週次のミーティングやいわゆる朝会などはどうしていますか?

豊吉:

振り返りのミーティングは、KPT法を用いています。これは、そもそもTrelloで管理できるようにしています。「Keep」「Problem」「Try」とそれぞれのリストが存在します。ミーティング時には、KPTのカードをすべて音読して共有するところから始めています。改善すべきことがあればタスク化し、その実施がどういう結果に至ったかというところまで、きちんと管理できるようにしています。

大井田:

チームメンバーの役割はいかがですか

豊吉:

ミーティング時には、ファシリテータ、タイムキーパー、議事録係を決めます。これは、特定の人がいなくてもミーティングができるようにと考えていったらそういう方向が決まったとも言えます。特徴的なのかもしれませんが、大袈裟に言うと誰もがプロジェクトを率いることができる体制を目指しています。

大井田:

その体制のための工夫もされていますか

豊吉:

はい。これも、Trelloを使っています。どのプロジェクトにも、「はじめに」というリストを作ります。ここに、プロジェクト運用に関する「マニュアル」を置いています。例えば、ドキュメントを作る際のルール、週次スクラムミーティングの進行ルール、など幾つものルールが誰でも確認できるようにまとめています。

大井田:

なるほど。それはユニークですね。カードをドキュメントとして活用されるわけですね。こうしてお話を伺っていると、Trelloを使い込んでおられる印象ですが、そもそもアナログから移行される時に困ったことはなかったですか? あるいは、物足りなさを感じられたとか

豊吉:

それはやはり、一覧性とか即時性という点でどうしても劣るな、と思っていました。オンラインツールの宿命でもありますが

Misocaらしさが失われない開発スタイルがあると思う

大井田:

他に、開発スタイルとしてMisocaさんの独自性というと

豊吉:

「ペアプログラミング」を大事にしている点ですね。いま、Misocaはエンジニアの数も約20人になっていますが、うちリモートメンバーは7名です。昨年1年間で、エンジニア数が1.5倍になっています。開発言語はRubyが主ですが、採用のときは開発スキルというよりは開発に関する文化が折り合うかということを重視しています。

ペアプログラミングに慣れていただく必要もありますし、開発以外の社内カルチャー、例えばランチでの話題に違和感がないなんていうマッチングも非常に大事だと思っています。

ペアプロを重視するがゆえ、技術的にはとても優秀なのにテキストコミュニケーションの苦手な方の採用を見送ったというケースもありました。

引用:

ペアプログラミング(ペアプロ)とは、
ペアプログラミング(英: pair programming)は、2人のプログラマが1台のワークステーションを使って共同でソフトウェア開発を行う手法である。 一方が単体テストを打ち込んでいるときに、もう一方がそのテストを通るクラスについて考えるといったように、相補的な作業をする。
https://codezine.jp/article/detail/10264
https://gist.github.com/j5ik2o/2970973

大井田:

採用については、当社もいま悩みながら前進中です

豊吉:

もう一つあげるとすると、プロジェクトについて兼任させることはほぼないですね。一人1プロジェクト体制です。

大井田:

というと、さきほど誰もがスクラムマスターになれるようにとお話がありました。ベロシティというか、生産性管理みたいなことはどうされているのでしょうか?

豊吉:

いわゆるマネージのできる人(あるいは得意な人)とまだ勉強中という人たちとの比率が、1:2くらいなんです。プロジェクトごとにその力量差がどうしても現れるので、現状ではバランスをうまくとって任せるという考えで進めています。ストーリーポイント算出もプロジェクトごとに任せており、そこは厳格に管理していないです。

大井田:

ずばり、いまMisocaさんでプロジェクト管理という視点でお悩みのことはありますか?

豊吉:

進行の可視化がもう少しうまくできれば、という点でしょうか。これは、タスクをスプレッドシートにインポートしてバーンダウンチャートを表示するなんてことをしているくらいです。

大井田:

なるほど。それは他社さんでも同様の試みをしていると伺いますね

未来志向のエンジニアへ向けて

豊吉:

開発スタイルというのは、どんどん変わる必要があると思っています。組織のあり方にもよりますし、チームの人数によっても変わるでしょう。ただし、「振り返り」がとことん大事で、それがベースだと思います。「振り返り」によって、しばらくしたら見違えるような組織になっていた、なんてこともありうることだと考えています。
Misocaも、いまでは開発についてぼくが決めていることはほとんどなくて、実際には開発に充てる人数を決めてる程度です。ですから、今回こういう機会をいただいて、多くのエンジニア仲間に伝えるとすると、「変わる」チームをたくさん作っていくこと。みんなで、そういう試みをもっと前進させていきたいですね!

大井田:

とても励みになるメッセージです。当社もそういう応援のできる会社でありたいです。
本日はどうもありがとうございました。

豊吉:

ぼくも、タスク管理は好物なので、楽しいお話でした。
もう一つ感じたのは、自分自身はプロジェクト管理について、こうしたい・ああしたいとよく考える方だと思うのですが、いざこんな機会をいただくと意外と出てこないものでした。やはり、「現場」で変えるもの、ということなのかと実感しましたね。

取材を終えて

Misoca(ミソカ)とは、データを入力してボタンをクリックするだけで簡単に請求書の作成・発行から郵送あるいはCSVエクスポートまでができるWebサービスです。現在では、なんと20万ものユーザー(2017年10月時点)を抱えておられます。
豊吉さんは、2016年2月に弥生株式会社にバイアウトしていることを「運が良かったから」とお話されていましたが、ロジカルな考え方、かつそれを実践してこられたことこそがその道を切り拓いたのだと、改めて感じ入りました。豊吉さんは、静かに熱い人物でした。
お忙しい中、時間をいただきましてありがとうございました。

TeamHackersでは、これから数回にわたってスクラム開発事例を個社インタビューを通してご紹介していきます。引き続き、ご購読をよろしくお願いいたします。

事例に学ぶ

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと言います。ビジネスについても同じことが言えるでしょう。
他の企業の戦略や取り組みを分析し、そこから抽出した要素を組織に取り入れてみることで、あなたのビジネスを成功に導く鍵が見つかるかもしれません。

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