求心力のあるビジョンとミッションで結束力のあるチームをつくろう

私がまだシステム開発ベンダーでプログラミングをバリバリやっていたころ、進捗管理と品質向上に本気で取り組んでいるチームに入ったことがあります。

10年以上前のことですが、いまだに忘れられない現場です。その現場では徹底したマネジメントが行われていましたが、それは窮屈なものではありませんでした。強い結束力をもったチームが目標達成に向けて一丸となって挑んでいたと記憶しています。

そのチームは、私がチームビルディングにあたって理想とするチーム像のひとつです。

そこには明確なビジョンがあり、ミッションがありました。求心力のあるビジョン・ミッションとはどのようなものでしょうか。本記事で私なりの考えをお話しします。

私が経験したシステム開発現場のお話

当時私が参加したシステム開発ベンダーのチームは、「顧客(事業会社)が思い描く理想像を共創すること」をビジョンとし、「提供サービスの事業ドメインに日本で最も詳しい開発チームとしてソリューションを提案・構築すること」「日本の社会インフラとなっている提供サービスのシステムを正しいデータで稼働させ続けること」をミッションとしていました。

チームはミッションを達成するためにいくつかの取り組みを一途に実践していました。

  1. 実行中・積み残しの取り組みに関する優先順位付け
  2. システム開発に必要な時間の予定・実績の管理、振り返り

特に上記2点を、1チームだけではなく組織全体の課題としてとらえました。徹底的な管理と毎週の定例会での議論、「実績が予定を超過した時点で、定例を待たず話し合いの場を設けて今後の取り組みに活かす」といったマネジメントに対するチーム全員の合意と信頼、また、それを実践する情熱があり、当時の私は圧倒されました。

チームの原動力のひとつ「求心力のあるビジョン・ミッション」なのだと学びました。

有名企業のビジョンを見てみよう

よいビジョンを考えるにあたり、まずは有名企業のビジョンを見てみましょう。
ネットで「ビジョン」と検索してトップに表示されたのは、ソフトバンクグループのビジョンでした。

“「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指して
ソフトバンクグループは、情報革命で人々の幸せに貢献し、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指しています。このビジョンの実現に向けて、時代に必要とされる最先端のテクノロジーと最も優れたビジネスモデルにより、「人々を幸せにする」情報革命を推進していきます。
(中略)
経営理念である「情報革命で人々を幸せに」には、「もう誰も一人ぼっちにはしない」「勇気と愛で世界を変えよう」という思いが込められています。

引用元:ソフトバンクグループ”

「もう誰も一人ぼっちにはしない」など、携帯電話事業を展開している会社らしいビジョンだと思います。ソフトバンクグループのビジョンは、世界がそうなれば絶対に幸せだろうと思わせてくれる力があると思います。

また、ソフトバンクグループのビジョンは文章のほかに、イメージ映像が公開されています。まるで映画の予告編動画のように、企業のビジョンを映像としてイメージすることができます。

ビジョンはみんなの夢


優れたビジョンは、「こういう世界になっていてほしい」と誰もが願う未来像であるようです。

ビジョンはチームの環境そのもの。ある場面では文化(カルチャー)となり、ある場面では制約になります。チームのカルチャーが普遍的な夢によって支えられていることが、困難なミッションに立ち向かっている際のモチベーションになるのではないでしょうか。

しかし、そのようなビジョンをつくるのは意外と難しいものです。議論を進めるうちに利己的なものになってしまったという経験はありませんか? 理想像は主観から生み出されるものですから、客観的なチェックがやりにくいものです。私はビジョンがある程度出来上がったところで「家族に話しても恥ずかしくないビジョンになっているか」と見直すことにしています。

ミッションは理想の実現に向けた自分たちの使命

ミッションとは、ビジョンのために自分たちに何ができると考えていて、何を達成するかという宣言です。

ミッションをつくるにあたってのファーストステップは、自分たちが何者であるか定義することです。たとえば最初にご紹介したチームでは、自分たちは「提供サービスの事業ドメインに日本で最も詳しい開発チーム」であると自負していました。

そういった自負をもったチームであれば、理想(ビジョン)の実現に向けて、そのチームにしか達成できない何かがあるはずです。それが自分たちの使命になるのだと思います。

ビジョン・ミッションの必要性

マネジメント層を廃止したフラットな組織が、多くの場合に機能しないことは広く知られています。グーグルをはじめとするさまざまな組織の働き方の先進事例、研究、アイデアを集めたサイト「re:Work(リワーク)」では次のように述べられています。

”Googleはこれまで、マネジメント業務の大切さを必ずしも正当に評価してきたわけではありません。2002年、すべてのマネージャーを廃止して管理職のいない組織にするという「実験」を行いました。しかし、この実験は失敗に終わりました。

2008年には、調査チームが、マネージャーは重要な存在ではないという一部の意見を証明しようと試みますが、すぐにまったくの正反対であることがわかりました。つまり、マネージャーはきわめて重要な存在だったのです。

引用元:Google re:Work”

マネージャーがもつべき資質のひとつとして、明確なビジョンと戦略をもっていることを挙げています。

”They have a clear vision and strategy. People want to understand and be invested in the mission. They want to know how their work connects to the bigger picture, which is not possible without clarity of vision and strategy.

マネージャーは明確なビジョンと戦略を持ってなくてはいけない。部下はミッションに共感し、力を注ぐ。彼らは自分の仕事が、全体のなかでどこに役に立っていいのかを知りたがる。

これは明確なビジョンと戦略をマネージャーが持っていないと共有することができない。

引用元:Inc.”

ボトムアップでつくったビジョン・ミッションは退屈なものになりがち


みなさんは、マネージャーからのトップダウン方式ではなく、現場からの提案でつくられるボトムアップ方式のビジョン・ミッションを見たことがありますか?私の経験上、そのような背景でつくられたビジョン・ミッションは退屈なものになりがちです。

実体験では、そのような組織の多くはビジョン・ミッションを「いいね」の数で決めます。「いいね」の数が多いものには次のような特徴があります。

  • 達成した事実であること
  • 誰かから褒めてもらえたこと
  • 目先の課題であること
  • 取り組みが目先の課題に対するソリューションであること
  • 取り組みが実現可能性の高いソリューションであること


では、「こういう世界になっていてほしい」と誰もが願う未来像とはどのような性質をもつでしょうか。

  • 達成していない
  • 実現していないので誰かもまだ褒められていない
  • 未来を見据えた課題である
  • 未来を見据えた課題に対するソリューションのためのものである
  • その時点では実現可能性が高いとはいいがたい


このような夢は確かに創造的であるのに「いいね」を多く得ることができません。「いいね」が多い取り組みというのは、マネジメント層からの心理的負荷が少なく、仕事をやっていても楽しいものです。しかし、困難に立ち向かっていけるような結束力ではないことを心にとどめておきましょう。

まとめ

2019年5月にトヨタ社長が「終身雇用を守るのは難しい」と発言したことが話題になりました。将来が不確実な今の時代、数字目標を追うだけの仕事では結束力のあるチームづくりは難しいでしょう。

チームを結束させてプロジェクトを推進していくためには、仕事の意義目的を明確に伝えることのできるリーダーが求められます。

そのためには求心力のある力強いビジョンとミッションが必要です。「チームが団結していないのでは」といった不安を感じたら、一度原点に立ち返ってビジョンとミッションをつくってみてはいかがでしょうか。そして、リーダー自身が使命の達成のために日々真剣に取り組み、その姿をチームメンバーに見てもらいましょう。

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