人の心に向き合う『響き合うリーダーシップ』が訴えかける世界観

世界的家具メーカーのハーマンミラー社を「もっとも働きがいのある企業」と呼ばれるほどに成長させた元CEOのマックス・デプリー。彼のリーダーシップ論をまとめた25年以上読み継がれる名著『響きあうリーダーシップ(英題:Leadership Is an Art)』が海と月社により復刊しました。P・F・ドラッカーやビル・クリントンをはじめ、数多くの著名人に高く評価される『響きあうリーダーシップ』について考えていきましょう。

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リーダーシップに欠かせない3つのこと


『響き合うリーダーシップ』の冒頭には、リーダーシップに欠かせないことが3つ書かれています。一つずつ確認していきます。

誠実さ

「誠実さ」がリーダーには求められることについて、異論はないでしょう。マネジメントの父であるP・F・ドラッカーもリーダーの「真摯さ」がいかに大事なことかを説いています。

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誠実さを失う例の一つに「言行不一致」があります。誠実さは、個人を超えて社会に求められる大事な要素です。リーダーは、必ず有言実行を意識する必要があるでしょう。

関係を築き、育む手腕

現代社会において、他の人と協働せずに生きることは難しいです。例えば、私(筆者)はライターで、一般的な社会人より人との関わりが少ないでしょうが、諸手続きや記事の編集、素材のデザインなど、いろいろな人が関係しています。

デプリー氏は、「人」との関係に目をつけました。つまり、人との関係を良くすることで、メンバーが持ち前の能力を十分に発揮できると述べています。そして、人間関係には「心」が重要だとも言います。この辺りは、本記事で繰り返し述べるテーマです。

コミュニティの構築

私たちのほとんどが少なくとも一つは「目標」を持っています。コミュニティの存在は、目標を達成するにあたり不可欠です。デプリー氏によると真のリーダーは、コミュニティを構築するだけではなく、正しく舵取りをするべきと主張しています。

リーダーシップは「アート」である

リーダーシップの「アート」とは「人々を解き放ち、もっとも効率よく人間味のある方法で働いてもらう」ことだ

ここでは、デプリー氏が『響き合うリーダーシップ』で主張していることの一つを解説します。
デプリー氏は、人の「関係」には2種類あると述べています。1つ目が、「契約関係」で2つ目が「心の関係」です。契約関係は、規則や報酬などを法律が定める契約にまつわるものです。ここは特に気にする必要がありません。デプリー氏が大事だと考えているのは、「心の関係」です。

近年市場における競争は、グローバル化や情報の流動性の高さなどによって激しくなり、変化の速度も増しています。このような環境において、人々は企業に短期的な成果を求めるようになりました。そのため、企業は目先の利益や売上をはじめとする定数的な成果指標の達成に苦戦しています。

上述した背景により、企業は本来であれば重要視するべき「人」を大切にすることを後回してしまいがちです。デプリー氏が述べる「心の関係」は、まさに企業の「人」に焦点を当てたものです。

「心の関係」は、無気力ではなく自由をもたらす

「心の関係」がチームにもたらす恩恵に関するデプリー氏の主張を2つにまとめます。

  1. 心の関係は、仕事の満足度に大きく影響する
  2. 心の関係は、メンバーの潜在能力を引き出す

結果、これからのリーダーは企業の「人」に焦点を当てた「心の関係」を作ることがとても大事になっていくはずです。

「参加型」マネジメントとは?

人に本来ある多様性という価値を信じるなら、進むべき唯一の道は、人々を参加させることだ

前章でも少し触れたように、リーダーが人々の心の関係を重視することで、彼らの潜在能力を十分発揮することができます。では、理想的な「心の関係」を生み出すにはどうすればいいのでしょうか? 5つの方法を説明していきます。

方法①:人を敬う

デプリー氏は、人々はお互いの多様な才能を相互に理解し合い尊敬することが大切だと述べています。それによって、「弱み」だと悲観していたことが実は「強み」でもあると気づくこともあるようです。

方法②:方針や業務より、自分たちの信念を優先させる

みなさんは、「仕事」と「私生活」の間にはっきりと異なる価値観を持っているでしょうか? デプリー氏は、両者における価値観は一致していた方がいいとしています。つまり、信念を貫くことが仕事における方針や業務よりも優先度が高いとする考えです。

方法③:仕事上の権利を認める

『響き合うリーダーシップ』では、すべての人々が地位にかかわらず持つさまざまな権利をリスト化しています。それを見ると、私(筆者)の過去の職業経験を思い出しつつ「これは無理だな」「これはイケてる」「これは微妙」など、評価を下すことができました。一つひとつの権利をここでは紹介しませんが、みなさんが想像しているよりも人々は多くの権利がもたらされるべきだと考えるでしょう。

方法④:「契約関係」と「心の関係」の役割と関係性を理解する

「心の関係」については、上述した通りです。報酬や条件、制約などを決める「契約関係」ではなく、もっと人々の心を考慮した関係です。

組織で働くもっとも優秀な人々は、ボランティアのようなものだ・・・(中略)・・・ボランティアに契約はいらない。「心の関係」が必要なのだ

人々の間に「心の関係」を築けるかどうか、リーダーの手腕が問われるところです。

方法⑤:「関係」は「構造」より重要だと理解する

繰り返し述べているように、『響き合うリーダーシップ』の主張は「人」を重視することです。そのため、組織の「構造」ではなく人と人との「関係」を築き上げることが大切なのです。

あなたは「すぐれた」組織で働きたいだろうか、それとも「すぐれた人のいる」組織で働きたいだろうか

答えは明白ですね。

企業の見えない資産を引き継ぐ「語り部」の存在

『響き合うリーダーシップ』では、1960年代のナイジェリアで起こったことが書かれています。一言で述べると、村に電気が引かれたことで住人が家にこもるようになり、みんなが集まる夜の集会に人が姿を見せず、部族の「語り部」としての機能を失った、ということです。

本記事を読んでいる方の多くは、社会に出て働いている人だと思います。少し記憶を遡って就職活動のことを思い出してみてください。きっと連日、会社説明会に参加した経験があるでしょう。そして、次のことに気づいたはずです。それは、魅力的な会社もイマイチな会社もすべての会社が、それぞれの「物語」を持っていることです。

デプリー氏は、企業の物語を伝えて意見を交わす「語り部」の必要性を訴えています。そのため、意識的にそのような「場」を設けることもリーダーシップの一つとなります。

リーダーに不可欠な「コミュニケーション術」

活力のある組織には、たいてい連帯感がある。相互依存、相互利益、互いへの信頼、そしてシンプルな喜びからなる連帯感だ

『響き合うリーダーシップ』では、組織の連帯感を生み出すためには正直かつオープンなコミュニケーションが必要だとしています。勿論ご存知の通り、リーダーのコミュニケーション能力が重要であることは最早、常識になっています。デプリー氏は、コミュニケーション機能を2つの言葉で表現しました。

  1. 教育する
  2. 解き放つ

1つ目の「教育する」では、人々がお互いに学び合うことで、企業の理念や使命への理解が強まるとしています。2つ目の「解き放つ」では、人々の潜在能力が十分発揮できるようにすることで成果を生み出すことができるとしています。

私(筆者)が「なるほど」と思ったことは、企業におけるコミュニケーションは相手の仕事の内容や責任について完全に理解していなくても、相手の役割や成功に心から熱意を抱くことができる、ということです。これによって、コミュニケーションを始める時の心理的障害(ハードル)を取り除くことが可能になるでしょう。

筆者の感想:『響き合うリーダーシップ』を読み感じたこと

私(筆者)が『響き合うリーダーシップ』を読んでみて、一番思ったことは「類書と異なるアプローチでリーダーシップを論じている」ことです。他の本は、リーダーシップを理論的に解説しようとしています。一方、『響き合うリーダーシップ』はややエッセイ風なほど、良い意味で「主観的」にリーダーシップを考察します。そのため、デプリー氏のあたたかい人柄を文章を通じて感じることができ、愛着を感じました。

みなさんは読んだ本を読み返すことがありますか? 恥ずかしながら私(筆者)は、記録はつけるもののなかなか再読することはありません。しかし、『響き合うリーダーシップ』は繰り返し読むことで初めて、自分の血肉となるような気がしました。今後、リーダーシップに関する本を読むたびに『響き合うリーダーシップ』で説かれていたことを思い出すでしょう。さすが時が経っても評価され続ける作品ですね。

まとめ:響き合うリーダーシップ

『響きあうリーダーシップ』による、リーダーシップ論をここまで述べてきました。

一番重要な点は、『響きあうリーダーシップ』が「人の心」に焦点を当てたアプローチをとっていることです。本文中にもあるように昨今の社会は、「人の心」がないがしろにされる傾向が見られます。しかし、リーダーは『響きあうリーダーシップ』が説いてる内容を忘れてはなりません。もちろん、ビジネスでは、利益や売上、規則も大事です。ただ、ビジネスを支えているのは「人の心」です。『響きあうリーダーシップ』を読むことで、リーダーシップの本質を考え直すことも良いでしょう。

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