チーム
2018.04.26

烏合の衆をまとめ上げるリーダーシップ (3) 連載第8回

~新メンバーを迎え入れるにあたって – リーダーに求められる気配り 目配り 思いやり~

前回、ブルックスの法則(人月の神話)の例を用いて「同じスキルをもったメンバーを追加するよりも、先にリーダーを招聘すべき」と書きましたが、そうは言ってもメンバー本人のモチベーションやスキルが理由でメンバーを交代したり追加したりするケースもあるでしょう。今回はこうしたケースにおいて、チームリーダーがどう振る舞うべきかについていくつか論じてみたいと思います。

デスマーチが発生しているプロジェクトに新メンバーを迎えるにあたって

メンバー追加時に行なう、新メンバーへの申し送り事項

新メンバーを迎え入れるにあたり、まずリーダーは、招聘理由を正直に伝えましょう。ある程度の火消し戦歴を持つメンバーであれば素直に「鎮火お願いします」というオーダーでいろいろ察してもらえるかとは思いますが、今後チームとして取るリカバリプランを示しながら申し送りをすることで、立ち上がりが早くなります。リカバリプランについて新メンバーから質問や指摘事項があったとしても、ベテランのそれは貴重な戦訓ですので、耳を傾ける価値があるでしょう。

一方、そこまでデスマーチ経験のないエンジニアを迎え入れる場合、申し送り事項の再優先事項は「メンバーを萎縮させない」ことです。決して「ここで耐え抜いたらどこでもやっていける」「貴重な○○を習得する機会」などのように、事実を覆い隠したり事実と異なったりするようなことを言ってはいけません。

正直に「今プロジェクトが炎上中であり、メンバーを追加して遅れをリカバリしたい」を伝えるのはもちろん必要ですが、「これは、いままでのやり方が悪くて遅延したと見込んでいる」「今回からやり方を変えてプロジェクトをすすめる」「いままで高稼働だったメンバーも強制的に定時または定時後1時間程度で帰宅させる」などの対策もセットにして現状を説明し、「普段どおりのスキルを発揮してくれればよいし、既存メンバーに遠慮してつきあい残業をする必要もない」ことも合わせて伝えましょう。

新メンバーを迎え入れたことを既存メンバーに周知する

リーダーは、デスマーチが発生しているプロジェクトに新メンバーを迎え入れた際、既存メンバーへ新メンバーを紹介します。このときに絶対気をつけなければならないことは以下の3つです。

•新メンバーが銀の弾丸を持っていると思わせてはいけない
•既存メンバーの士気が下がっているときは、新メンバーが染まらないように最大限の注意をはらう
•比較的精神が安定しているメンバーを新メンバーのメンターにすること

1番目についてですが、エンジニアどうしであまり起こり得ることはないのではと思うのですけれども、既存メンバーが新メンバーを勝手に期待して勝手に失望してしまうことを厳に警戒します。チームの体制がお客様に見えている場合においては特に、過度な期待は本人にとってプレッシャーとしかならず、却って本領を発揮できなくなる場合もありますので要注意です。

2番目ですが、これはもうチームのモラル、常識、治安の問題です。ですので、リーダーは、新メンバーを迎え入れる前に、既存メンバーの士気を俯瞰的に見ておきましょう。もし、ネガティブな考えに引き入れようとする既存メンバーがいると非常によろしくないので、できるだけ彼らに染まらないよう配慮する必要があります。

こうした、本来業務で気にしなくてよいはずのプレッシャーと誘惑から新メンバーを守るのが3番目です。リーダー自らがいつも新メンバーに張り付いてメンターになるわけにもいかないので、既存メンバーから現実的な考えができ、比較的精神が安定しているメンバーを、新メンバーのメンターにするとよいでしょう。

どうして新メンバーが銀の弾丸を持っていると思わせてはいけないのか

例えば、デスマーチが発生しているプロジェクトに追加メンバーをアサインする際、大抵においてこれまで以上に、プロジェクトが求めるスキルセットにマッチしているかを重要視するでしょう。この前提において、チーム内外からは自ずと新メンバーへの期待が高まるはずです。

しかし、着任する新メンバーのスキルやモチベーションがどうあれ、既存メンバーへの過度の期待は、本人へのプレッシャーになるばかりか、場合によっては既存メンバーのモチベーションが下がることにもなりかねません。

新メンバーに対する期待が、彼の実力に伴うものであればよいのですが、極限状態や膠着状態において人は「勝手に期待して勝手に失望」しがちです。また、本来仕組みや交渉で解決しなければいけない課題を個人へ押し付けるようなことは、チームとして言語道断です。

こうした理由から、新メンバーへの過度の期待を抑止すべきなので、リーダーは新メンバーが銀の弾丸を持ってやってきたと既存メンバーへ思わせないよう、配慮が必要なのです。また、こうした配慮は、新メンバー本人ではなく、リーダーの責任において行われるべきです。あくまで新メンバーは、本来やるべきタスクに集中してもらい、コードを実装する以外の面倒ごとはリーダーが巻き取りましょう。
リーダーは、既存メンバーに対してもそうなのですが、特に新しく迎え入れたメンバーに対する期待値のコントロールは細心の注意を払うべきです。

既存メンバーの士気低下に新メンバーを染まらせない

炎上中のプロジェクトに新メンバーを迎え入れるにあたり、もっとも警戒しなければいけないのは、既存メンバーの士気低下に新メンバーを染まらせないことです。特に、既存メンバーのパフォーマンスが悪いことによるメンバー交代を行なう場合は尚の事です。

新メンバーが既存メンバーから業務の引き継ぎなどを受けているときに、顧客やプロジェクト、会社や上司、リーダーについてネガティブな話を振られるかも知れません。こうしたケースすべてを防ぐことは難しいのですが、しつこいようであればメンターに相談するような仕組みを作っておくことをおすすめします。

デスマーチが発生しているプロジェクトにおけるメンターに期待される役割

デスマーチが進行中のプロジェクトにおいて、メンターの役割は非常に重要で、いわばチームの衛生兵といった役割が期待されます。メンターとしてのスキルにフォーカスしたテーマは、いずれ深掘りし整理した上で取り上げてみたいと思いますが、今回はデスマーチ中という観点からいくつかピックアップしてみたいと思います。

メンバーの健康状態観察

まず普段から、メンバーの健康状態を観察しましょう。挨拶や執務中、休憩時の会話などから、メンバーの疲労度を推し量ります。ただし、ストレートに「疲れてる?」と聞いても正直に答えてくれるとは限らないので、見た感じ疲れていそうか、以前より疲労の色を見せていないかなどを観察しましょう。

ほかにも、今までミスのない仕事をしていたメンバーのミスが増えたなどのような兆候があるかを観察することで、負荷の少ないタスクへコンバートしたりすることができるようになります。ただし、ここでも気をつけたいのは、減点法の人事評価に繋げないことです。あくまで、メンバーの疲労度から適切にタスクを割り当てることが目的です。

メンバーの相談窓口

メンバーはデスマーチの日常において、少なからず多方面への不満や不安を抱えているものです。中には、リーダーに直接言いにくいこともあるでしょう。こうした場合にメンターはメンバーの相談窓口として機能することで、多少なりとも言いにくいことを角の立たない形でリーダーへエスカレーションすることができます。

また、先ほども述べたように、既存メンバーが新規メンバーへあらゆるネガティブな情報を吹き込むということは、仮にそれが事実であったとしても、何ら生産性に寄与しない上に、新メンバーの負荷にも繋がりかねません。ありていに言えば、こうした行為は「当たり散らす」のと何ら変わりはなく、プロとして、大人として大変に恥ずかしい行為だと言わざるを得ません。

私は、ボトムアップアプローチで何かしらの問題解決をチームへ求める際、必ずしも改善案込みの要望である必要はなく、メンターに愚痴をこぼすのはありだと思っています。むしろこうしたコミュニケーションがなく、改善か退職かという二元論というのも、いろいろな意味で勿体無いのではないでしょうか。

まとめ

•デスマーチが発生しているプロジェクトに新メンバーを招聘する際は、招聘理由を正直に伝えるとともに、単なる要員追加ではなくチームとして現状を良くしていくということもセットで伝えること。
•デスマーチが発生しているプロジェクトに新メンバーを迎え入れた際、新メンバーに過度の期待を抱かせないよう気を配ること。
•既存メンバーの士気低下に新メンバーを巻き込まないよう最大限目を配ること。
•デスマーチが発生しているプロジェクトにおいて、メンターの役割は非常に重要である。

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