烏合の衆をまとめ上げるリーダーシップ (1) 連載第6回

前回、技術者のいない発注主企業(プロジェクトオーナー)から複数の下請企業が並列に1つのプロジェクトを受注した場合のハンドリングについて考察してみましたが、今回は同じような商流で、いわゆる「フリーランスの集合体」の場合について考察してみたいと思います。

フリーランスや複数社のメンバーをまとめるリーダーに求められる資質は何か?

複数企業の座組の仕方があまり上手でないプロジェクトは、各社の担当営業の仕切りが悪かったり、あるいは社間の力関係があったりするなど、エンジニアの手を離れたいわゆる「政治」のレイヤーで始まることが多い印象ですが、技術者のいない発注主が複数のフリーランスを集めて始めるプロジェクトは、単に「そこまで考えていない」ケースが多いように見受けられます。
例えばクラウドソーシングなどで発注主がプログラマーとデザイナーを1名ずつ集めて始めたプロジェクトのように、単に機能単位で役割分担しているだけであれば、いわゆる全体を統括するリーダーは、メンバー間のコミュニケーションが普通にできている限り、それほど必要とされないかも知れません。

しかし、もう少し人数が膨れ上がったりした場合には、やはりリーダーシップを発揮できるメンバーが1人はいないと、プロジェクトの捗りかたが違ってきます。このような座組のしかたで始まったプロジェクトで求められるリーダーシップは、前回のような「最初に強引にイニシアティブを握ってしまう」タイプではなく、「温厚な調整型」「飲み会の幹事型」のような振る舞いができる人に資質があるでしょう(もちろん強力なリーダーが請われるケースもありますが、本稿では例外とします)。

フリーランスの集合体で求められるリーダーシップとは

先ほど申し上げましたように、フリーランスの集合体でのリーダーシップは、なぜ「温厚な調整型」「飲み会の幹事型」がよいのかについて、少し説明しますと、様々な理由で集まったフリーランスは、そもそも各メンバー間に雇用関係や上下関係がないフラットな関係が前提です。また、こうした関係性での働き方を求めていない傾向にありますので、強引にリーダーシップを振りかざそうとすると、うまくいくプロジェクトも人間関係で困難化してしまいかねません。

ですので、烏合の衆であるフリーランスたちが集まったプロジェクトにおいて、いわゆるリーダーシップというよりは「コードを書く以外の面倒ごとを積極的に巻き取る役割」といったロールが求められるでしょう。つまり、各メンバー間の潤滑油的な存在で「温厚な調整型」「飲み会の幹事型」のリーダーが1人いれば、各メンバーの意思が同じ方向を向くようになり、スムーズにプロジェクトが進行するでしょう。

どうやってフリーランスの集合体でリーダーを決めるのか

いわゆる「温厚な調整型」「飲み会の幹事型」なリーダーがいて、その存在を誰もが認知していればよいのですが、「せーの」で集まった烏合の衆では、なかなかそうもいかないでしょう。
我こそは是非立候補したい、という方がいらっしゃれば是非やってみてください、という結論で本節はおしまいになってしまうのですが、なかなかリーダーが決まらない場合は、それとなくプロジェクトオーナーにリーダーを決めて欲しいという要望を出すとよいでしょう。

しかし、プロジェクトオーナーもあまりメンバーの素性をよく理解していない場合、いきなり「我々の中からリーダーを指名してくれ」と言われたところで困るでしょうから、「プロジェクトの意思決定において、メンバーの意見を集約して技術的な観点からまとめる役割を誰かにお願いしたほうがいいですよ」「チャットやBTSツールなどで司会的な役割を担う人を早めに決めておくとプロジェクトの進行がスムーズですよ」といった、柔らかい表現で促すことをおすすめします。

リーダーはメンバーたちとプロジェクトオーナーをどう取り持つか

烏合の衆であるメンバーたちがある程度まとまったところで、プロジェクトオーナーとの調整はどうするのか、という課題はまだ解決していません。プロジェクトオーナーと各メンバー間のコミュニケーション方法、コミュニケーションの仕組みについては前回同様フラットであるべきなのですが、プロジェクト内でのコミュニケーションについてはもう少し踏み込んでルールを作ったほうがよいでしょう。いくつか例を挙げますと、
• 機能別または非機能要件などの担当をゆるく決めておく
• 誰にお願いすればよいかわからないことは、バイネームではなくプロジェクト全体に呼びかけ、全員で考える
•  タスクの分配についてはオープンな場で議論し、その過程はなるべく可視化されるようにする
•  ただし、追加工数の金額についてなど、センシティブな話題は個別連絡の例外を認める

このようなルールを最初に作っておくと、各メンバー間がフラットであり、プロジェクトオーナーとの折衝もやりやすくなります。こうしたルールでオープンなコミュニケーションをとる場においては、強力なリーダーシップというよりはモデレーター、ファシリテーター的な振る舞いをしたほうがよく、大きなストレスがかからずにメンバーたちとプロジェクトオーナーの間を取り持つことも可能になるでしょう。次に、ファシリテーターに求められるスキルについて知識化してみたいと思います。

ファシリテーションスキルとは

各メンバーやプロジェクトオーナー間を取り持つリーダーに求められるのは、いわゆる強力なリーダーシップというよりも、モデレーター、ファシリテーター的なスキルであるのですが、こうしたスキルを「ファシリテーションスキル」と呼びます。

ファシリテーションスキルと聞くと、単に「司会者的な役割をすればよいのでは」と思う方もいらっしゃるかも知れません。しかし、確かに司会者的な役割「も」担いますが、最初にこう思った方はもしかしたら「主観的な意見をもたない傍観者的な存在」とみなしているのかも知れません。
そうではなく、ファシリテーションとは何か、を日本ファシリテーション協会のサイトから引用しますと、

ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。その役割を担う人がファシリテーター(facilitatior)であり、会議で言えば進行役にあたります。

とあります。
そして、ファシリテーションの4つのスキルというものも定義されており、
• 場のデザインのスキル ~ 場をつくり、つなげる ~
• 対人関係のスキル ~ 受け止め、引き出す ~
• 構造化のスキル ~ かみあわせ、整理する ~
• 合意形成のスキル ~ まとめて、分かち合う ~
としています。

こうして目次だけ見ても、非常に前向きで合理的な考えのもとに編み出されたスキルセットであるとイメージできるかと思いますが、同サイトにはこれらのスキルセットやマインドについて詳しく書かれていますので、是非訪問して熟読されることをおすすめします。

ファシリテーションスキルをフリーランスのプロジェクトにどう発展させられるか (社会性と広がり)

ファシリテーションスキルをフリーランスのプロジェクトへどう持ち込み発展させるか、について、私はこう考えます。
• その場(プロジェクト)にいる全員が向かう「あるべき方向性」を示すか、または場の流れを前向きにする
• 特定の意見や発言者に偏らず、プロジェクトメンバーが意見を出しやすくする
• 議論の発散だけでなく、収束も促す
• メンバーの多様性は重視しつつもプロジェクトのゴール(目的)はブレない
このたった4つを守るだけでも、メンバーは前向きにプロジェクトへ参画することができ、即席の烏合の衆がいつの間にか力強いチームとして機能することすら夢ではなくなるでしょう。

本稿のまとめ

・フリーランスの集合体など、即席のチームには、調整役的な役割のメンバーをリーダーにするとよい
・リーダーは強力なリーダーシップよりも、ファシリテーションスキルが求められる
・ファシリテーター的なリーダーがプロジェクトの進行を支えることで、烏合の衆から力強いチームへと変えることも可能になる

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