一人ひとりの知的生活習慣から学ぶナレッジマネジメント

普段の生活の中で、ナレッジマネジメントについて意識することはありますか? 
「特に知的な仕事や生活をしているわけではないから、ナレッジマネジメントとは無縁だ」という人もいるのではないでしょうか。

しかし、仕事や家庭、または個人がもっている日々の「情報」や、これまでに得た「経験」「知識」に対して、「これは何かに使える」「これは覚えておこう」と思うことはありますよね。また、「会社でナレッジマネジメントを始めるのだけど、どんなことをすればよいのだろう?」などと悩んでいる人もいるかもしれません。

そこで今回は、一冊の本から一人ひとりの知的生活習慣を見直すことについて考えてみました。

知的な生活を身につけるためのヒント

知的な生き方や思考の方法論などの著作で知られる、英文学者の外山滋比古氏が著した『知的生活習慣』という本があります。情報化社会を生き抜く上で、情報の扱い方、知識の習得の仕方などという観点から、自身の生活における知的生活習慣を見直して、知的な生き方を身につけるヒントが書かれています。

具体的にどんなことが書かれているか、関連する箇所を抜き出してご紹介します。

・日記を書く:

昔は心覚えで毎日書くことが良しとされていたが、情報過多の現代では、むしろ毎日書いて一日のできごとを頭の中から出して「忘れる」という効用がある

(著書いわく「頭の中のゴミ出し」)

・知識の消化:

知識を吸収する「記憶」は、食べ物を食べるのに似ている。不要なものや消化ができないものまで取り入れるため、定期的な消化作用が不可欠。知識を取り入れるということも同じで、知識を入れたら消化作用に値する「忘却」が定期的に必要。

・忘却の方法:

人間の自然の摂理である「レム睡眠」で不要なものを自動的に忘れる。ほど良く汗をかく「有酸素運動」や「入浴」で気分爽快に忘れる。常に「メモ」をする。

・勉強すること(知識)と考えること(思考)は別もの:

「知識」が増えれば増えるほど、脳の「思考」のスペースが小さくなる。すると、ものごとを「考える」力がなくなる。
「知識」を得たら、すぐに使わずに時間をおいて変化するのを待つ。「知識」はそのままでは使えず、時間をかけて生産性を得る必要がある。そのような「知識」は「思考」と対立せずに、変容して実装できるまでに昇華する。

・朝どり思考:

朝目覚めてすぐの頭は、昨日のゴミ出し(脳の記憶を「忘れる」)が完了していて、脳の働きが一番良い。その時間帯に「考える」作業をおこなう。勉強する、本を読む、何かを考えるのにうってつけの時間である。

・人間は知識のために生きるのではない:

よりよく生きるためにある程度の知識や技術は必要である。しかし知識の量的価値はあまり大きいものではない。知識そのものは無力で、生活の中や仕事の中で使用したときに、はじめて力を発揮する。

「なぜ?」「どうして?」と考えることが大切


外山氏は同書の中で、「情報」や「知識」はどんどん頭から捨てていき、ものごとを「考える」ことを推奨しています。

特に、毎日あらゆるところから情報が流れてくる現代では、常に自分の頭で「なぜ?」「どうして?」と考える余裕をもつことが必要だそうです。思いついアイデアや着想はすぐに書き留め、それが生かされる時を待ちます。

また、「情報」は右から左に流すだけではなく、有益なものはストックしておきます。こうしてストックした情報や知識を一括管理します。すると共有した一人ひとりの中で、受け取った情報や知識が実際の生活や仕事で使えるものになります。さらに、アイデアや考えを融合することにより、新たな情報や知識となり昇華していくのです。

日常生活の中にある「知的」な側面を見直してみる

ナレッジマネジメントを仕事で実践する目的や効果を理解できても、普段の生活の中にどのように取り入れたらよいか分からない人も多いでしょう。初めてナレッジマネジメントを行う人にとっては、「仕事だけ」のマネジメントになりやすいのです。

普段の生活の中でもナレッジマネジメントを取り入れるには、知的だと思われる側面を見直すことが大切です。それは、単に情報を「集める」「共有する」ことや経験や知識を「共有する」、また業務が「効率的になる」ことだけにとどまりません。その先にある、一人ひとりの思考や他者の考えなどとの融合が可視化されることで、より強固なナレッジマネジメントが期待されます。

同書の内容にあった「日記を書く」「知識の消化」「忘却の方法」は、日々の生活の中にすぐ取り入れることができるものです。仕事の場面では「日報または週報」を書き、毎日しっかり7〜8時間の睡眠をとります。また週1〜2回の定期的な運動で知識を「忘却」し、脳の中をクリーンにしましょう。これだけでも、ひとりの知的な生活が改善されます。

得た知識は、他者と共有することでより有効に活用できます。たとえば社内で得た「知識」をそのまま顧客に提供しても、顧客は魅力的な製品やサービスだと思わないこともあるでしょう。魅力的だと感じてもらえる製品やサービスに昇華させるためには、社内の関係部署の人たちと共有して、魅力的なサービスにする方法を考えてみるなどの作業が必要です。また、「知識」を一旦どこかへ保存して寝かせることで脳に「考える」スペースができるので、思考力を働かせることができます。

「朝どり思考」は、朝型の人にはピッタリの方法でしょう。朝一にソーシャルメディアなどを見ずに、「考える」作業を行う。企画を練ったり、自分の考えをまとめたり。はたまた仕事の勉強をしたり、関連書籍を読んだり。脳の働きが活発な時間帯に一人ひとりがアウトプットを高めることは、組織全体のナレッジマネジメントにつながります。

まとめ

「知識」や「情報」を「収集・取得」し「共有する」ことが目的となってしまいがちなナレッジマネジメント 。だからこそ、収集・共有した先に「何をするのか」「どんな効果を考えているのか」を明確にする必要があります。

ナレッジマネジメントは経営手法の一つではありますが、一人ひとりの知的な生活習慣を見直すことにより、個人の生活をも知的にし、知的なものを生活化できる側面もあります。「知」と「生活」を融合することによって、人間としての価値が大きく高まると考えられます。

一人ひとりの貴重な経験や知識、そして情報を財産として共有できる知的生活習慣におけるナレッジマネジメントを、 人生をより充実させるために役立ててみてはいかがでしょうか。

参考:『知的生活習慣』外山滋比古、ちくま新書(2015)

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