事例紹介
2019.06.08

スクショ規制は誰得?! クリエイターが著作権関連の動向をチェックしておくべき理由

写真の無断使用やデザインの盗用。著作権にからむ騒動がたびたび起こりますが、メモ代わりに撮影したスクリーンショットを保存していただけで「著作権侵害」になるという法律が成立しかけていたことをご存知でしょうか? 

今回の騒動に限らず、仕事でクリエイティブ業務に携わっているという人には、著作権問題に敏感であってほしいと思います。特に疑問を抱くことなくやっていることでも、判決例や法律改正をきっかけに「アウト」になってしまうことも……。

スクショ撮影が著作権法違反? 危うく誰もが著作権侵害のリスクに

買った本、テレビのワンシーン、好きな芸能人のTwitter……。なんらかの著作物をスクリーンショットに撮って自分のSNSに投稿したという経験は、多くの人に覚えがあると思います。

たとえばそのスクリーンショットをもとに商品を作って売買すると明らかな違法行為になりますが、スクリーンショットを撮る行為「だけ」では罪にあたらない、というのが今のところ世の中の判断です。ネットニュースのキャプチャでも記事に関連する画像が使われていて、本文を読んでいくと「本人のInstagramより」というリンクが差し込まれているのを目にしたことはないでしょうか。

ところが、このスクリーンショットを撮ること自体が危うく著作権侵害のひとつになるところだったのです。

発端となったのは、「海賊版サイト」に対する対策案が検討されていた文化審議会。「海賊版サイト」では、人気マンガのコンテンツを権利者に無断でアップロード、公開していました。ただし、審議会の方針では対象は広く、マンガに限らず「あらゆる著作物のコンテンツ」とされていました。さらに、一般の人がメモ代わりに著作物をスクリーンショットに撮って保存していたとしても、違法ダウンロードに該当するという方針でした。
(参考:朝日新聞DIGITAL
https://www.asahi.com/articles/ASM2D6F8NM2DUCVL03V.html

この方針には、漫画家をはじめとするクリエイターサイドからも猛反発が起こりました。
たとえば販売関係者が新作の宣伝のために表紙デザインやページのスクリーンショットを公表したり、作品のファンがスクリーンショットを文章の「引用」のように使って感想をツイートしたりというように、使い方によっては権利者側にもメリットのあるケースがあるからです。

現に、漫画家のおかざき真理さんや星景写真家のKAGAYAさんなど、ご自身の作品のスクリーンショット使用を独自の条件つきで許可しているクリエイターもいます。

結果として、今回はスクリーンショットを規制する法案は成立しませんでした。ですが、もしもこの著作権法改正案が実際に施行されていたとしたら、どうなっていたでしょう? 一般の人の生活にも、なにかしらの影響が出ていたのではないかと思います。

「著作権侵害なんて無縁」という安心は禁物。加害者にも被害者にもなりうる

仕事でクリエイティブ業務に関わっている人であれば、ぜひ普段から著作権問題について意識してほしいと思います。その理由は、「いつでも・誰でも、被害者・加害者の両方になり得る」可能性があるからです。

私も、数年前にクライアントワークで撮影した写真を無断使用されたことがあります。私自身が取材し写真を撮影、文章も作成した上でWebサイト向けに納品した仕事でした。

記事が公開になった数カ月後、ふと地元の広告情報の印刷物を見ていたところ、同じ取材先が掲載されているのが目に留まりました。掲載写真が私が撮影したものと酷似していたため、もやもやしたものを感じて、先輩フリーライターである知人に経緯を相談しました。

このとき、知人は私が撮影してWebサイトで公開されている写真と広告媒体に掲載の写真をスキャンしたものを拡大して比較、建物のガラスに「通りを走行している同じ車」が写り込んでいることを確認してくれたのです。

その後、クライアント対先方の会社で話し合いがなされ、事態は穏便に収束しました。ただ、話し合いの中で相手方は「担当者が、インターネットで画像検索をして出てきた画像を使った。それが違法だとは認識していなかった」と説明したのだそうです。

「違法という認識がなかった」という先方のいい分が事実だったとしても、こういったケースが著作権侵害の裁判で争われた場合には、通用しないかもしれません。それというのも、過去の裁判では「無料素材の画像を使用したが、使用者に20万円の損害賠償が課せられた」という判例もあるからです。

この事例では、被告側は「写真は使用料無料のフリーサイトから使用した」と主張したのだそう。ところが①被告はどこのフリーサイトから写真を見つけてきたのか明らかにしなかったこと、②もし画像見本をコピーしようとした場合は、「作品の本使用には料金が発生し ます。事前に使用条件をご確認ください。」という注意事項が表示される仕組みになっていたことなどから、その主張が認められるには無理があったようです。
(参考:知的財産裁判例(全文)平成27年4月15日 損害賠償請求事件 )

クリエイティブ職であれば、法律関係は常にチェックしておきたい

大企業であれば、著作権や特許を専門に扱う部署があるでしょう。ですが、個人事業主・フリーランスのクリエイター、あるいは小規模の会社でクリエイティブ業務に携わるチームでは、誰もが知的財産に関する法律の知識をもっているわけではないと思います。

もちろん、私もライターというクリエイティブ職ではありますが、関連する法律に精通しているとはいいがたいひとりでした。「少しでも勉強しておくと、のちのち役に立つだろう」という気持ちで、数年前に知的財産管理技能士の資格を取得しました。

このとき勉強したおかげで以前よりは知識が身につきましたが、法律はその時々で変化していくもの。今回のスクリーンショットのように規制の方向に進むこともあれば、2013年の改正案での「著作物の写り込み」(写真・ビデオの背景的に著作物が写り込んでしまった場合は著作権侵害にあたらない)のように、緩むこともあります。

最近では、知的財産に詳しい弁護士がブログで発信をしていたり、法律関係のWebメディアが一般の人向けにわかりやすい記事を掲載していたりと、専門知識がなくても情報を取り入れやすい環境になってきています。

普段から、ニュースの中で「著作権」「知的財産」という言葉にアンテナを立てて、情報に触れるようにしておきたいものです。

まとめ

写真やイラスト、デザイン、文章など、日常生活のあらゆるシーンに著作物は存在しています。クリエイターであれば自分の著作物を守ることも、他者の著作物を侵害しないようにすることも必要でしょう。

また、法律の改正にともなって、それまで問題にならなかった行為がある日を境に違反行為になってしまう可能性も。難しい法律をいちから学ぶ必要はないと思いますが、ニュースや専門家の情報発信に注意を向けて、情報収集しておくことをおすすめします。

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